HALO:IF battlefield of SPARTAN   作:コレクトマン

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第二章 決別

 

 

ウェルキンたちが住んでいたブルールの町は、帝国軍の襲撃により僅か二時間足らずに制圧された。帝国にとっては一局面でしかなかったこの戦いこそが後にガリアの英雄と称えられるウェルキンの初めての戦いとなり、後に帝国から複数の異名で呼ばれることになるカイトのこの世界での初の戦闘でもあった。

 

時刻は既に夕暮れの時間となり、ウェルキンたちはブルールの町から少し離れた場所から占領されたブルールの町を眺めて悲しみに浸っていた。

 

「戦争が始まって……こうなる覚悟はしていたつもりだった。でもね、自分の生まれ育った街が壊されて……沢山の人達が一瞬で死んでしまった……こんな事が起きるなんて……今でも信じられない……」

 

「アリシア……」

 

「……」

 

カイトも戦争による悲劇をよく知っていた。だが、ウェルキンたちの世界よりこちらの方がひどいものだ。コヴナントによるガラス化で各植民地惑星が破壊され、人類の死亡者数は既に数十億人を超えている。カイト自身も何か言いだしたいのだが同言葉にすればいいのか分からなかった。そんな重い沈黙が流れるさなか、それを破ったのはウェルキンだった。

 

「気ままに生きている様に見える鳥や虫達も、自分の縄張りを持っているんだ。そして、その縄張りを守る為に命懸けで戦う習性がある。人間も生き物である以上……その宿命からは逃れられないのかもしれない。……でも生き物達は争い合っている様に見えて、種族を越えて共存している事もあるんだ」

 

「……共存?」

 

「うん、僕はその共存の仕組みを知りたいんだ。それを知る為に、自然科学を学んでいる。その仕組みが分かれば人間の暮らしに活かせる様な気がするんだ」

 

「仕組み……か」

 

「そして何時か教師になれた時、子供達にそれを教えて行く事が出来たら……争い自体を無くす事が出来なくても……共に手を取り合って生きて行けると思う」

 

「ウェルキン……」

 

ウェルキンの言葉にカイトもコヴナントとの戦争が終わった後のことを考えていた。約30年も渡るコヴナントとの戦争は種族の関係を直すのにはもはや不可能なほど長く戦いが続いた。もしも、もし戦争が終結してコヴナントと和解するというIFのことを考えていたが、それはあり得ないとその思考を切り離すのだった。そしてカイトは二人に今後のことはどうするつもりか聞きだすのだった。

 

「……二人はこれからどうするつもりだ?」

 

「ランドグリーズに向かおうと思う、いまの状況なら、召集令が出ているはずだから」

 

「召集?」

 

カイトは思わず首を傾げた。ウェルキンが言うに、ここはガリアという中立国で、小学校から大学までの教育機関では、軍事教練が必修科目になっているらしい。そして国民民兵制度なるものも存在し、有事の際には一般市民男女問わず、すべてが義勇軍として召集されるのだという。カイトが元いた時代ではUNSCという国連宇宙軍という正規軍が存在するが、国民民兵制度で集められた義勇軍は存在しない。それ以前にカイトのいた世界には国民民兵制度が存在しないからだ。カイトはカイトでこの世界の常識を知らないがゆえに何とも言えなかった。そんな時にウェルキンがカイトにある質問をする。

 

「……ところで、僕からも質問があるんですがよろしいですか?」

 

「質問……?」

 

「あなたはどこかの国の軍人だというのは分かりました。ですが僕は、あなたという存在を見たことも、また聞いたこともありません」

 

ウェルキンはカイトを真剣な表情で見つめながら続けた。

 

「スパルタンさん……あなたは何者ですか?」

 

ウェルキンから自分は何者なのかを問いだしてきた。カイトも薄々自身の正体を隠すことはできなくなっていることに気付いていた。特に、この世界の戦争に介入した時点でUNSC規則をいくつか無視したのだ。自身が別世界の存在であることをウェルキンたちに話さなくてはならないことを……

 

「……分かった。話そう、俺自身の正体を」

 

そう言ってカイトはヘルメットに手をかけ、ヘルメットを外そうとする。本来ならスパルタンの素顔を晒すことは厳密に禁じられている。もっとも、カイトのいた世界で死亡してこの世界に飛ばされた時点でもはや秘匿義務など無意味に等しい。ヘルメットを外したカイトは改めてウェルキンたちに自己紹介をする。

 

「国連宇宙軍、UNSC特殊作戦部隊“アヴェンジャーチーム”所属。SPARTAN-Ⅲ A(アルファ)105こと“カイト”。それが俺の名前だ」

 

「UNSC?……国連宇宙軍?……」

 

「そんな名前や部隊は聞いたことがないわ。それにスパルタンって特殊部隊すら初めて聞くわよ?」

 

ウェルキンとアリシアはカイトの言うUNSCやスパルタンという単語を知らない。カイトのいた世界では常識なのだが、ここは別世界なのだから知らないのも当然である。

 

「当然だ。何せ、この世界には存在しないからな。ここからは余計な混乱を招く可能性があるからできれば他言無用で頼む」

 

詳しく説明する際にある程度覚悟を決めたカイトはウェルキンたちに説明する。

 

「俺は……この世界とは違う別の世界……異世界とでも言えばいいのか?そこからきた。……とはいえ、俺は一度死んでいるのだがな」

 

「えっ…?」

 

「うそっ…!?」

 

カイトの言葉はとても衝撃的だったのか、ウェルキンやアリシアは口を開けたまま固まった。どんな内容だろうかと覚悟していたウェルキンだが、遥か斜め上を行く内容の回答に、思考が停止してしまったのだ。特に、カイトは一度死んでいるという言葉が衝撃的にも強かった。

 

「驚くのも無理もない。それ以前にいきなりこんなこと言われれば、迷わず精神病院にオススメしているさ」

 

「それはそうなんですが、死んだっていうのはどういうことですか?」

 

「それも含めて説明する。俺は……」

 

その後、カイトはウェルキンたちに自身が体験したことをそのまま話した。カイトがいた世界では人類は宇宙へと進出し、植民地惑星を開拓して人類の繁栄領域を拡大していった。しかし、そんな人類の前に敵が現れたのだ。それがエイリアン他種族同盟連合の宗教国家“コヴナント”である。そんなエイリアンたちのファースト・コンタクトは、“人類の存在自体が異端である”という言葉と返された皮切りにコヴナントの一方的な攻撃によって戦争が始まったのだ。コヴナントの技術力は人類の技術力をはるかに凌駕し、人類は常に劣勢に追い込まれていた。この戦争は約30年も続いて各植民地惑星はコヴナントに破壊され、既に数十億人以上の死亡者がでた。

 

だが、人類もただやられているわけでもない。UNSCがコヴナントと戦争が始まる前に設立した超兵士部隊“SPARTAN”。人類の切り札でもあり、最後の希望でもあったスパルタン。カイトもその一人だ。しかし、それでもコヴナントの攻撃は苛烈を増していき、カイトも地球に一番近い別星系の惑星“リーチ”も陥落し、カイトは一人で大部隊のコヴナント軍と戦闘をしていた。それが己自身が死ぬと分かっていながら戦い続けたのだ。その結果、致命傷を負って戦えなくなったところに巡洋艦による砲撃で肉体諸共消滅した。……そう思われた。しかし、そんな彼を死なせないかの如く運命のイタズラなのか、この世界に来てしまったのだ。肉体と武器の状態を最高の状態でだ。

 

そして今に至り、カイトの体験したすべてだった。

 

聞かされる内容はまさに夢物語のように非現実的でもあった。惑星が破壊されるということはどういうものなのか想像もできなかった。アリシアはカイトの戦闘力を間近で見ていたので本当のことだと理解していた。ウェルキンもカイトの使う銃もこの世界にはないものだと薄々気づいていた。だが、問題はそこではない。彼は一度死んだと言っていた。死者の彼が何故この世界にいるのか不思議でならなかった。

 

「……こっちからも聞かせていいか?この世界の歴史についてを」

 

「……わかった。僕たちが答えられる範囲なら」

 

ウェルキンもカイトにこの世が辿った歴史を説明する。

 

 

 

“征暦1935年”

 

 

 

ヨーロッパ大陸は東西二つの大国によって分断されていた。ブルールの町でカイトが交戦した敵対勢力はすなわち、皇帝を頂点とした専制君主国家“東ヨーロッパ帝国連合(通称『帝国』)”と呼ばれる勢力だ。帝国と敵対しているもう一つの国は、王政を廃した共和国国家の連合体“大西洋連邦機構(通称『連邦』)”である。

 

この世界特有の鉱物資源“ラグナイト”をめぐり勢力争いを広げる両国は、ついに開戦。大陸は戦争の炎に包まれることとなった。後に人々は“第二次ヨーロッパ大戦”の勃発である。

 

圧倒的な戦力を誇る帝国軍は次々と国境を越え、侵攻を開始。その矛先は、連邦のみならず周辺諸国へも向けられた。そして向けられた周辺諸国はここ“ガリア公国”と呼ばれる国だ。

 

ガリア公国は帝国と連邦の中間を位置し武装中立を国是とする小国家である。しかし、その豊富なラグナイト資源に目を付けて奪わんとする帝国は、ガリア公国に宣戦を布告。雪崩を打って、その領内の進撃を開始した。

 

 

 

そして今に至る。

 

 

 

カイトもこの世界の歴史を聞いてもはや何がなんだか分からなかった。生き返った場所が地球と非常に酷似した惑星で、しかも年号がこちらの世界では“征暦”として記されている。もはやSFやファンタジーを通り越して何を言葉にしていいのか正直分からなかった。だが、一つだけ分かったことがある。この世界は一種の並行世界……つまり、パラレルワールドの一つではないのかと仮説を立てた。しかし、あくまでも仮説なのでこれは記憶の奥底にしまっておくことにする。

 

そして、これからの方針としてカイトはあることを決断する。

 

「ウェルキン、俺もランドグリーズに向かう」

 

「えっ?それって……」

 

「あぁ。俺もお前たちについていく。関わってしまった以上、もう見て見ぬふりは出来ないからな」

 

それはUNSCだけではなく、前世で生きた前の世界との決別だった。カイト自身、既に死んだ人間が元の世界に戻れる手段を見つけたとしても元の世界では何十年、はたまた何百年という未来か過去という可能性も否定できない。もはや戻れる可能性は絶望的であった。

 

しかし、それが生きることを諦めることにはならない。この生かされた命をどのように向き合うためにこの世界で戦うことにしたのだ。

 

そう覚悟を決めたときにイサラが赤子を抱えてやってきた。

 

「兄さん、マーサさんが眠りについたので赤ちゃんを預かって来ました」

 

「わぁ、かわいい!」

 

「アリシアが言っていた様に、戦争の中でも生まれて来る命があるんだね。ほら、お前の故郷だよ!」

 

ウェルキンはイサラからマーサの子供を受け取った後、子供に帝国軍に占領された産まれ故郷のブルールの町を見せる。

 

「きっと……ここに帰って来ようね」

 

「ああ……何時の日か、きっと……」

 

ウェルキンたちはいつかブルールの町を取り戻し、元の生活に戻れることを祈る。そしてカイトもウェルキンたちと共に行動することになるのだった。

 

 

 

____________________________________________

 

 

 

ガリア公国城塞都市 首都“ランドグリーズ”に避難してからもカイトは様々な苦難が彼自身に襲い掛かった。

 

ランドグリーズに到着した矢先、カイトはガリア正規軍の衛兵に銃口を向けられ不審者として警戒された。

 

カバーストーリーとしてカイトは各地に旅する傭兵と名乗り、ブルールの町に寄った際に侵攻してきた帝国軍との戦闘に巻き込まれ、止む無く戦闘をしながらもブルールの町の人々と共にランドグリーズに避難し、義勇軍に志願しにきたことを説明し、アーマーのことについてはある研究者を助けた際に譲り受けたものだと説明したが、それでも衛兵の態度は変わることはなかった。そこにガリアの将官らしき人物がやってきて衛兵を制止させた。

 

その将官は、ガリア中部方面軍総司令官“ゲオルグ・ダモン”将軍であった。

 

そんな彼を見たカイトの印象は一目瞭然で分かった。この将官は無能であると。将軍とは思えないほどの軍人らしからぬ肥満体に自慢のなまず髭を生やし、司令部でワインを片手に飲んでいる光景しか見えないほどの無能さにカイトは少しばかり嫌気を刺した。

 

しかし、いかなる相手であろうとも将官で変わりないために礼儀を欠かさず敬意を払った態度を取らねばならない。

 

その後にカイトはダモンに義勇軍への志願のためにやってきたことを説明した。その時にダモンは傭兵と名乗ったカイトをダモン直属の私兵として雇うことを進めたが、カイトはそれを拒否。更にダメ押しにと言わんばかりにカイトは交渉が決裂したの場合には帝国の軍門へ下る覚悟もあると表明する。

 

これにはダモンも顔を真っ赤にしてカイトを睨む。カイトはヘルメット越しなので表情は読み取れないが、ダモンにとってはカイトがこちらを薄ら笑っていることを想像していた。何か物音がすれば、それをきっかけにして銃撃戦でも始まりそうな、まさに一触即発の状態にメガネの女性士官が待ったをかけた。

 

女性士官はダモンにカイトが義勇軍に志願しに来たということを理由に自らカイトの監視を兼ねて彼女が管理すると進言した。

 

ダモンはまだ怒りが収まっていないものの、女性士官の正論に何も返せず腹を立てながらもこの場から去っていった。

 

その後に女性士官こと“エレノア・バーロット”はカイトに義勇軍の志願を正式に受諾される。

 

これが後の歴史において語られるガリア公国の“灰色の悪魔”の名が帝国や連邦に轟く最初の一歩でもあった。

 

 

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