HALO:IF battlefield of SPARTAN 作:コレクトマン
ヴァーゼル市街地戦で勝利したカイトたちは、ヴァーゼル橋奪還作戦である“春の嵐”作戦について野営テント内で作戦会議を行っていた。
「第7小隊の働きにより西岸の敵拠点を征圧。陣地を構え、攻勢の足掛かりを得る事が出来た。これより正規軍ヴァーゼル防衛大隊と協同で、“春の嵐”作戦が開始される。我が義勇軍は本作戦の先陣を切る形でヴァーゼル橋を渡り東岸敵本陣を制圧に掛かる」
「協同…か。正直に言って、正規軍はあまり当てにできないな」
カイトは正規軍の行動にはあまり期待していなかった。そんなとき、ファルディオはエレノアに正規軍の援軍や物資の補給供給などの動きはどうなのか聞こうとした。
「大尉。ヴァーゼル橋を渡るには敵橋頭堡を突破しなければなりません。正規軍からの援軍や物資供給等の支援は有るのでしょうか?」
「……正規軍は我等が橋頭堡を攻略した段階で、攻勢を開始するとの事だ」
「そんな……俺達を捨て駒みたいに扱いやがって……」
「漁夫の利狙いか。……俺ならまだしも、義勇軍を漁夫の利を得るためのエサとして使うのは気に入らないな」
義勇軍を捨て駒として扱う正規軍にファルディオとカイトは嫌気をさすのだった。
「諸君らの気持ちは分かる。私も兵士時代には同じ事を感じていたわ。だけど、時に無茶や無理を承知で作戦に臨むのが軍隊というものなのよ」
「……分かりました」
「しかしファルディオやカイトの意見も一理ある。我々だけで、あの橋頭堡を突破するにはどうしたものか……」
橋頭保を突破する方法を模索する中、ウェルキンがエレノアにある事を言い出した。
「バーロット大尉。橋付近の偵察に行ってよろしいでしょうか?」
「橋の偵察……?ああ、構わないが」
「ウェルキン、橋付近を偵察してどうするんだ?」
「正確には川の深さを調べたいんだ。もしかしたら、突破口を開く方法が見つかるかもしれないんだ」
ウェルキンの言う突破口を開く方法にカイトも興味を持ったその時に、タッタッタと駆け足の音が聞こえた。バッとテントの扉を開くその人物はアリシアだった。
「ウェルキン!」
「メルキオット軍曹、どうした?」
「あっ……作戦会議中に済みません!」
「もう終わったから大丈夫よ。それより何か用事があったのでは?」
「は、はい……ウェル……ギュンター隊長!隊員同士が口論を起こしているんです!」
「口論?」
隊員同士の口論という言葉にウェルキンは首をかしげり、カイトは前に聞いた隊員のことについてもしかしたら、あの二人が何かしでかしたのか?と考えていた。カイトとしては当たってほしくない内容だが……
「隊長に止めて頂きたく、ご同行をお願いしたいのですが……」
「え、僕が……?うーん……させておけば良いんじゃない?」
「させておけば良いって……何を無責任な事を言ってるんですか!」
「無責任というか、思っている事を言うのって結構重要なんじゃないかな。お互いの意見をぶつけ合う事で、結束力が強まる事だってあると思うよ」
「そ、それは……そうかもしれませんが……」
ウェルキンの言葉ももっともだが、その意見のぶつかり合いでブレーキが効かず、最終的に暴力沙汰になってしまうこともあるためにカイトはほっとけなかった。
「ウェルキン、お前の考えではそうかもしれないが、それで殺し合うまでの発展になってしまったら元も子も無い。俺も同行する、万一のためにな?ほら、急ぐぞ!」
「ちょ、ちょっと……。」
「済みません、ギュンター隊長とカイト中佐をお借りいたします。失礼します」
カイトはウェルキンを引っ張りながらもアリシアに案内される形で現場に向かうのだった。そんな様子をエレノアとファルディオは見ているのであった。
「あいつの隊も……大変ですね」
「そうやって隊は成長していくものよ」
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一方、その口論では、イサラとロージーがいがみ合っていた。それを様子見で見ているラルゴとマリーナ。そして、急いで到着したウェルキンとカイトがその場に入る。
「やめないか!」
「何事だ!」
急いでその口論の輪の中に入るカイトとウェルキン。その時にロージーはウェルキンが来たときにつまらなさそうにイサラから離れる。カイトはマリーナに状況を説明してもらう。
「マリーナ、いったいどういう状態だ」
「ダルクス人の風評被害。イサラはロージーに絡まれた」
マリーナの簡易な報告とは言え、内容がすでに穏やかじゃないこと理解する。嫌な予感がこんな形でなってしまったことにカイトは頭を悩ませる。ウェルキンも正確に状況を把握すべく何があったのかを聞き出すのだった。
「一体、何があったんだ?」
「言わなくても分かるだろ!このガキだよ!何でこの部隊にダルクス人が紛れ込んでるんだ?こんな不吉で油くせぇヤツと一緒に戦えるか!こいつは大昔からロクな事をしない疫病神なんだよ!」
「……確かに私はダルクス人ですがあなたと何ら変わりの無い人間です。それに“ダルクスの災厄”は歴史的根拠の無い風説に過ぎません」
イサラの言う“ダルクスの災厄”。カイトは、ダルクス人を迫害する原因である風説をあまり信じてはいなかった。むしろ、この世界の文化や伝統、イデオロギーには興味を持たなかった。
彼のいた世界……いや、正確には彼であるが、カイトは殺された仲間の仇を取るため、コヴナントに復讐するためにSPARTAN-Ⅲになったのだ。イサラの反論にロージーはいら立ちを隠せないでいた。
「なんだと!?アタイが言いがかりをつけてるってのか!」
「よせ!」
「隊長さんよぉ……俺達はダルクス人と一緒じゃ戦えねぇんだよ。それに実戦経験も無いボウズの言う事なんざ誰も聞きやしねぇよ」
古参兵のラルゴですら、ダルクス人とは一緒に戦えない。新人の隊長だからと指示に従わないと古参兵らしからぬ態度に……
「……バカだろ、お前ら」
カイトはそうラルゴたちに言うのだった。その言葉に怒りを乗せて。
「あぁ?そういや、カイトっていったか?その言葉はどういう意味だ?」
「そのままの意味だ、戯け。ダルクス人がいるから戦えない、新人だから指示に従えない……軍隊をなめているのか、貴様らは?貴様らを見たら正規軍と同様……いや、それ以下の役に立たない存在だ。それだったらまだ訓練中の訓練生のほうがより有能だ」
「なにっ!」
ロージーはカイトの言葉に苛立ち、突っかかろうとするが……
「命令違反に上官侮辱罪、立派な軍法会議ものだ。俺が上官なら今すぐにでも殴り倒して独房行きだ」
カイトが睨みながら言うとロージーは言葉をつまらせた。
「そうは言うが、使えない隊長じゃこっちが困るんだよ。それに知らないのかダルクス人の話を?」
「しらん。そんな絵空事のような話。風説でしかない馬鹿げた話を信じ込みダルクス人だからと迫害し見下す……実にくだない。そういう奴ほど先に死にやすいものだ」
カイトはイサラを見てそのまま言葉を続ける。
「彼女はこんな小さい身でありながら、あんなデカイ戦車を1人で整備していた。普通ならもっと人数が必要だろう」
「ふんっ!ダルクス人の油臭さお家芸じゃないか」
「それが有能の証だ。普通戦車を整備するのにそれなりの人数がいるというのに彼女はたった一人で戦車を整備したんだ。油臭いと言うことは、それだけ真剣に作業に取り組んでいると言う証拠でもある。整備兵が油臭くなかったらサボっているのと同意義だ」
カイトの正論にロージーは何も言い返せなかった。
「さらには戦車の操縦まで出来るときた。1人で整備し即その場で戦闘に参加できる。これが有能じゃなく何になるんだ。お前は古参兵なんだろ、なら軍隊がどんなものか知っているはずだ。どんな理不尽な命令でも実行しなければならない。それこそ、その場で自決しろと言われてもだ」
あまりにも極端の例に全員の顔が青ざめた。そしてカイトはラルゴに睨みながら告げる。
「なぜ助け合わない、なぜ話し合わない、同じ部隊なのだろ、信頼しる仲間……言い換えれば運命共同体、もしくは家族だ。それをガキのような言い訳で何もしないのは訓練生以下の無能だ」
その言葉にムカついたのか、ラルゴはカイトに睨みつけ……
「知ってるようなことを言うな、戦場にでたことがない新人が。いいか、戦場ではな経験がものを言うんだ」
ラルゴの言葉にカイトは“フッ…”と軽く笑う。その態度に当然怒り出すラルゴ。
「何がおかしい!」
「いや…な、まさか俺のことを新人扱いするとは思いもしなかっただけだ。そもそも、俺はある戦争に勝つために作られた存在、いわば
カイトから告げられた作られた兵器。それは己が人間ではないことを認めていると同じことだった。これにはラルゴは眉を顰めるが、カイトは続けざまに言う。
「俺は兵器であるために様々な生還率がゼロに近い任務をこなしてきた。ある時は敵重要拠点を少数精鋭、もしくは単独で占領したり、爆破したり、奪還したりと色々な任務を受けてきた」
ラルゴとロージーは疑わしい目でカイトを見るが、これらは全て事実だ。事実上、カイトの世界ではコヴナントによって防戦一方だったUNSCの切り札として一部のスパルタンに拠点の防衛や攻略、奪還や爆破とそれ以外の任務を含めて様々な戦場を駆け抜けてきたのだ。
「お前らが彼女を疫病神というが、それはくだらない風説がそう仕立て上げたんだろ。むしろ彼女は勝利の女神とも言えるだろう。それでも、まだ文句があるなら……」
カイトは拳を鳴らしてラルゴを睨む。一触即発の中、その中にウェルキンが待ったをかける。
「待ってくれみんな!そんなに僕の指揮が不安なら賭けをしよう」
「賭け……?」
カイトはウェルキンの言う賭けに疑問を抱いた。ウェルキンは賭けの内容を説明する。
「僕は48時間以内に……ヴァーゼル橋を奪還してみせる。もしも僕の作戦が失敗したら隊長を辞任しよう。その代わり、作戦が成功したら……以後は僕やカイト中佐の指示をきちんと聞いてくれるかな?」
「ウェルキン、お前な……」
まさかの賭けの対象に巻き込まれたカイト。これにはラルゴも思わず笑った。
「ハッハハハ!お前、今のセリフ……二言はねぇな?」
「もちろん」
「ち、ちょっと……ウェルキン……」
「完全に巻き込まれたな、これは。……だったら、俺も一つをしよう」
「何だ?エリートの中佐さんよぉ?」
「俺が兵器……というより、超兵士スパルタンの戦い方を見せてやろう。敵が俺たちスパルタンを悪魔と呼ばれる理由をな」
カイトの言う悪魔と呼ばれる理由についてラルゴとロージーは考えもつかなかった。しかし、ヴァーゼル橋奪還作戦でその答えを知ることになるのをラルゴたちはまだ知らない。