小説のプロローグと第一話を書こうとしたら暴走して失敗しましたが、これはこれで残したかったので投稿しました。

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キシア・マリゴルドの日常

 私は朝というものが嫌いだ。

 メイドが開けたカーテンから射す朝日から身を守るように、布団に包まりながらそう思う。

 それは、私を柔らかく包みこむシルク生地の羽毛が私を二度寝へ誘っているからでもないし、何かと世話を焼いて貰っているメイドがそれを奪ってでも仕事をしようしているからでもない。

 どうせ二度寝は出来ないし、メイドを睨んだところで優秀な彼女はいつの間にか私を食卓に着かせ朝食を食べさせてしまうのだ。

 抵抗虚しくメイドに引っぺがされた布団は諦め、私は寒さに負けぬよう、シーツの上で縮こまって蟲のようになっている。

 

 朝が嫌いなのは、夢から目覚めてしまうから。

 夢をずっと見ていたいわけじゃない。

 夢は所詮夢でしかなく、目覚めて30秒もすれば忘れてしまう。

 

 私は、夢から目覚める瞬間の、全て(世界)が壊れるようなあの感覚が嫌いで、どうしようもなく手に入らなくなった何かが手から零れていくあの感覚が大嫌いだ。私にとって、かけがえのないものが無くなっていくようであり、それが何より耐え難い。何も出来ない事が腹立たしい。あぁ、夢から私を目覚めさせている奴が居るのなら八つ裂きにしてやるのだけれど。それは叶わないだろう。

 

 

 蟲のように丸まる私を食卓に着かせ、慣れた手つきで人間型にしたメイドの甲斐もあり、朝食を終えた私は、制服に着替えてから髪を整えていた。

 金色の髪は朝日に照らされ、絹糸の様な手触りと共に輝いている。

 私の、左目と同じ色合いの髪は自慢であるが、

 

 ……腰まであると偶に面倒になってくるのよね。

 

 自分はメイドにやって貰うが、彼女が居なくならば酷い有様になるだろう事は間違いない。

 そう思いながら、メイドから濃い臙脂色の女子用学生鞄を受け取る。

 通常の学生鞄を再設計し、防犯能力を高めたという売り文句のこれは、合金やらを仕込んでいるというわけではないそうなのだがやたら重い上に硬い。

 正直重いから使いたくはないのだが、知り合いがテスターをやってくれと持ってきた品である以上、無下にも出来ない。性能自体は良いので、せめて背負えるようにする為ベルトを取り付けて貰って使っている。

 教材の電子化で、嵩張る上に重い紙の教科書を持ち運ばなくても良いのがありがたい。今の重量に加えて紙の教科書を持ってこいと言われたら、学校に置いて置くくらいしかないだろう。

 

 「そろそろ出る時間ね、えぇと……あら?」

 

 壁の時計を確認すると、家を出ないといけない時間まで少し余裕があった。

 何時もならもう出ている時間だと思ったのだが、今日は早起き出来たらしい。

 それならばと、二本のベルトに腕を通して背中に鞄を背負い、鏡の前でポーズをキメる事にした。

 私は美しく無敵で可愛く無敵だ。無敵が二回あるということはつまり無敵の二乗。ウルトラに無敵で可愛いという事ですわ。それにこの前決めた目標の為にも、キメポーズの研究は忘れてはいけないだろう。何故ならばキメポーズがあると素敵だからだ。ふふふ、こうやって日々私は高められていく……恐ろしいですわね、流石私。あぁ、このポーズならこっちの手はこの角度で、顎はもう少し下げた方が良いわね。これならパーフェクト。恐ろしい……恐ろしいわ……! 自分のキメポーズ力が高くて恐ろしい……!

 

 

 

 

     ※

 

 

 

 この後、時計がズレていたせいで学校に行くのがギリギリになり、遅刻しかけた悪役令嬢が居たとか。


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