雑なパロディてんこ盛りの何でも許せる人向けです
シーズン2の4話くらいの時系列のお話です。
「……マックイーン。起きるのですマックイーン……」
そう自分の名前を呼ぶ声に、メジロマックイーンは閉じていた目蓋をゆっくりと開きました。
すると目に飛び込んできたのは──何ということでしょう。
目の前には、何だかいつもとは明らかにタッチの違うヒラコー風のゴールドシップ的な何かが立っています。
「だ、誰ですの……?」
一目で分かるやべえ不審者。ウマ娘ならUMA娘に、マックイーンは恐る恐る訊ねます。本当なら今すぐ逃げしたいところですが、誇り高きメジロ家の一員たる者そんな無様な真似はできないのです。
そんな健気な彼女に、謎のUMA娘の答えは
「ワタシはあなたのフレンズ、ゴールドシップの精ですゴルシ」
「いやああああ!?」
無理! これは無理!
メジロ家の誇りでも太刀打ちできない圧倒的カオス存在に悲鳴を上げて逃げ出そうとするマックイーン!
「あいや待てい。今日はこのワタシ、迷える子ウマであるアナタの質問に何でも答えてしんぜようゴルシ」
ですが背中越しにかけられた言葉にピタリと足を止めます。何を隠そうマックイーンには今まさに悩んでいる事があったのです。
「……本当ですの?」
「モチのロン。さあどーんと相談してみんさいゴルシ」
「で、では……」
コホンと喉を整え、マックイーンはぎゅっと両手を組んで祈るように言いました。
「精霊さま。私はメジロ家の一員として恥ずかしくないウマ娘であるよう優雅にそして誇り高く生きてきました。ですがあのゴールドシップと出会ってからというもの、いつもあの方の奇行に振り回される毎日。ついには他の方々にもツッコミキャラとして認知され、今やpixivやTwitterでは私とゴールドシップの漫才絵が溢れています。この状況はなんとかならないものでしょうか?」
「無理じゃね(鼻ほじ」
「いいやああああ!!」
嗚呼無情!
切実な乙女の悩みを鼻ほじりながらバッサリやられたマックイーンは、ショックのあまり再び逃げ出そうとします。が
「ふっふっふ。逃げられないでゴルシ。ここは全てがワタシの思い通りになる『ゴルシ空間』。オマエはもうここから出られないのでゴルシよ」
「マジですの!?」
どうあがいても絶望!
「オマエはこれからワタシと一緒にコースに丸太を打ち付けたり、ゴルシちゃん号に箱乗りしてターフを爆走したり、オールナイトで木魚ライブを開催したり、マジなんだかネタなんだかよく分からない奇行をやりまくるんだゴルシ!」
「ひいいい!?」
何ということでしょう。そんなことをやった日にはもうメジロ家の誇りどころかマックイーンのイメージが崩壊して、完全にネタキャラなお嬢様(笑)になってしまいます。
「お婆さまぁーーー!」
絶望の悲鳴を上げるマックイーン。哀れ彼女はこのまま一度落ちれば二度と戻れないというネタキャラ道へと堕ちてしまうのかと思われた、まさにその時──
「鼻毛●拳奥義──鼻●激烈拳!」
「ぎゃああああべしっ!?」
びゅんっと鋭く大気を裂いて、どこからか伸びた極太の鼻毛が鞭のごとくゴルシの精を打ち、一撃で倒してしまったのです。
「ぐぅっ……だがワタシがここで倒れようとも、いずれ第二第三のゴルシが……がくり」
「危ない所だったな。こいつは偽物だ」
「あ、あなたは……!?」
絶体絶命の危機に現れた救世主の姿に、マックイーンは思わず息をのみました。
ジャ●プのバトル漫画出てきそうな筋骨隆々の肉体! いかついグラサン! そして天を衝く巨大な黄色いアフロヘアー! いったい何ボボなんだ!?
「同じハジケリストの友の危機を見過ごしてはおけない。早く目覚めるがいい。ゴルシが待っている」
「は、はい。危ない所をどうもありがとうございま──」
「お姉ちゃーーん! アチキを置いてかないでーー!!」
「今度は何ですの!?」
そして号泣しながらマックイーンにすがり付く謎のトゲ付きオレンジ謎生物──首●パッチ!
「何で一人で行っちゃうの! 一緒に夢の11Rを目指すって約束したじゃない!」
「いや知りませんよアナタなんて!? 離して! 離してくださいまし!!」
もはや涙目になって振りほどこうとするマックイーンの服を掴み引き止めようとする首領●ッチに、正義の鼻毛がぶち当たる!
「バ鹿野郎!!(鼻毛ツッコミ」
「ひでぶっ!?(吐血」
「弟なら姉の花道を笑顔で見送ってやれ! お前が駄々をこねてたら……マックイーンが安心して未来に帰れないだろうが!」
「未来になんて行きませんわよ!? というか私にはこんな弟はいません!」
怒涛の展開にマックイーンのSAN値はピンチです。
一方、鼻毛で殴り倒された首●パッチの脳裏にはマックイーンとの思い出が走馬灯のように甦っていました。
幼い頃、たった一人の姉であるマックイーンに「その耳が弟に似ている!」とひでぶされた思い出。メジロ家最高傑作の座を賭けスイーツ限定フードファイトで激闘を繰り広げた思い出。マックイーンのように速くなれない事に落ち込む自分に「姉より優れた弟はいない!」と優しく語りかけてくれた思い出。どれもかけがえの無い二人のメモリアルです。
「どれ一つ心当たりがありませんけど!?」
「くっ……そうだな。なら俺がしてやれることはただ一つ、マックイーンを安心させるために……俺はお前に勝たなくちゃいけないんだ!マックイーン!」
「訳がわかりませんわ!? いや……こないでくださいましっ、ちょ、止め──」
「いっくぜえ!! ジャ●アンーーー!!」
「いーーーーやーーーー!?」
………。
……。
…。
「……ックイーン……マックイーン」
「ん……ぅうん。……っは!」
パチッと目を見開き、マックイーンは悪夢から目覚めました。
未だに胸はバクバクとしていますが、もうあの恐るべきハジケリスト共はどこにもいません。代わりに自分の顔を上から覗き込んでくるのは
「ゴールドシップ……?」
「やっと気がついたか。気分はどうだ? 随分うなされてたぜ?」
「うなされ……いったい私は……? ふえっ!? な、なぜ膝枕されてますの!?」
木陰でゴールドシップに膝枕されている。
それを理解した途端、顔を真っ赤にして慌てて起き上がろうとしたマックイーンでしたが、即座に頭をぐいっと押さえられてゴールドシップの膝に強引に寝かされてしまいました。
「大人しく寝てろよ。てか、覚えてないのか?」
「お、おぼえてないとは?」
うるさいくらいに鳴り響く胸の鼓動と頬の熱さを感じながら、マックイーンがそう聞くと、ゴールドシップは
「お前、特訓中にいきなりフラって気を失ったんだよ。それで優しいゴルシちゃんが起きるまで木陰で膝枕してたって寸法だ」
その言葉で、マックイーンは思い出します。
春の天皇賞に向けて、今日もマックイーンはトレーナーから渡された超重量蹄鉄付きスニーカーを履いて特訓していました。
いつもなら一緒のスペシャルウィークは用事があっていないので、ゴールドシップと二人きり。うつ伏せになり「今日はスペがいないから大丈夫。スペがいないから安全安心無事故無違反……」とガクブルしながら呟き続けるゴールドシップの上をぴょんぴょん跳ぶマックイーンでしたが、ふいに目眩がしたと思ったら体に力が入らなくなり、そのまま意識が薄れ「スペがいないから踏まれない踏まれなぎゃああっ!?」という悲鳴を聴きながら、目の前が真っ暗になってしまったのでした。
「ああ……思い出しましたわ。ご迷惑をおかけしましたね。ゴールドシップ」
「気にすんなよフレンズだろ。体は大丈夫か? 痛みとかは?」
「頭が少しぼうっとして気だるい感じはしますが、痛みはありませんわ」
「よかった。きっと薬が効いたんだな」
「薬? あなたお薬など用意してましたの?」
「俺じゃねえよ。たまたま通りがかったアグネスタキオンが気前よくくれたんだ」
「アグネスタキオン!?」
よりにもよって個性派ぞろいのウマ娘の中でもマッドサイエンティストとして恐れられるアグネスタキオンの薬を使われたという衝撃の事実。白衣姿のアグネスタキオンが不気味な笑みを浮かべながら、気絶している自分に怪しい薬を飲ませる悪夢のような光景を想像し、マックイーンの顔から一気に血の気が引きます。
「あっ、あなた何て人に何てことをさせてるんですの!」
「おいおいそんな言い方は酷くねえか。マックイーンが元気になったのはタキオンのおかげなんだぜ」
「……っ。たしかに、そうですわね。いくらあの方が少々奇特とはいえ、私を思い善意でしてくれた事にケチをつけるような物言いは、メジロ家の者として礼節を欠いた振る舞いでしたわ。……どうやら私、タキオンの事を誤解していたのかもしれ──」
「そうだな。あいつは何考えてるか分かんない奴だけど『この前読んだ漫画に登場した薬を戯れにリアルで作ったものの、丁度いいモルモットがいなかったから助かったよ』ってただで治療してくれたから悪い奴じゃないんだよな」
「体のいい人体実験ですわ!? ガチのマッドサイエンティストですわ!!」
畜生アグネスタキオンはやっぱりアグネスタキオンだったよ。
「というか何ですかその漫画に出てきた薬って!? 副作用とか後遺症はないんですの? ま、まさか次に目覚めたら見た目は子供頭脳は大人になっていたなんて事は……っ」
「安心しろって。まあ薬飲んでしばらくたったら急に目を真っ赤にして暴れだしたけど、青い彼岸花っぽいのを使ったら元に戻ったから無問題だろ?」
「問題しかないですわっていうかそれ途中で人間もといウマ娘辞めさせられてますわよね!? 大丈夫なんですの? ねえ本当に私ウマ娘に戻れましたの?」
「大丈夫だって。タキオンも次女は駄目だけど長女なら耐えられるって言ってたし。……あれ? そういやお前って長女だっけ?」
「こ、こうしてはいられませんわ。早くメジロ家に戻って主治医に精密検査をしてもらわなくてわっ……」
自分が竹を咥えた箱入りウマ娘になってしまう想像に顔を青くしたマックイーンは慌てて立ち上がろうとしますが、足に力が上手く入らず再び膝の上にぽすんと横たわってしまいました。
「くっ、情けないですわ。すぐにでも回復して特訓を再開しなければなりませんのに……っ」
「スタミナゲージがゼロなのに無理すんなよ。さっきまで気絶してたんだ。タキオンも気絶は過労が原因だろうって言ってたし、オーバーワークなんじゃないか?」
「天皇賞で勝つためには必要なことですわ。まして今回はテイオーとのレースですのよ。生半可な特訓では勝てません」
「それで特訓中に怪我したら意味ねえだろ。今日だってゴルシちゃんがいなかったら最悪そのまま昇天したあげく変な神様に異世界転生させられて悪役令嬢になるかもしれなかったんだぞ。うわなにそれ面白え」
「……っ」
マックイーンは言い返そうとして、ですがその言葉を寸でで飲み込みました。
それは、ゴールドシップは台詞こそふざけているようでしたが、マックイーンを見つめる瞳は心から彼女の事を思うものだったから。
ゴールドシップは誰よりも破天荒で訳がわからなくて、でも誰よりも仲間思いのウマ娘なのです。
「……それでも、私はやめるわけにはいきませんわ。軽くもしません。限界まで追い込んで、鍛えて、最高の状態に仕上げた己でレースに挑むことこそ誇り高きメジロ家の戦い方。そしてテイオーへの最大の敬意なのですから」
それでもマックイーンは退きません。
マックイーンは気高く、誰よりも堂々と誇り高く駆け抜けるメジロのウマ娘なのです。
「──ですけれど、たしかにあなたの言うことにも一理ありますわね」
だから、これは別に絆されたわけではない。あくまで合理的な判断ですわ。
そう心の中で自分に言いながら
「今日だけは特訓は切り上げて、ゆっくり休養するといたします」
「マックイーン……」
「べ、別にあなたに絆されたわけではありませんわよ。あくまで合理的な判断で──ひゃあ!?」
「うおおおっしゃあ! ならマックイーンが元気になるようにゴルシちゃんが全力全開ノンストップで協力するぜえ!」
頬をほんのり赤くしながら心の中で呟いていたツンデレ全開な台詞をつい口にも出してしまうマックイーンを、ゴールドシップはお姫さま抱っこで勢い良く抱き上げました。
突然の事に目を白黒させるマックイーンに、ゴールドシップはそれはもう良いゴルシちゃんスマイルで
「そうと決まれば大人しく寝てなんていられねえっ。まずは爆走ゴルシちゃん号でターフをドライブだあ!」
「は!? いやなんでそうなりますの? 私ゆっくり休養すると言いましたわよね!」
「なーに言ってんだよ! 寝てるよりおもいっきり遊んで楽しんだ方がよっぽど元気になるだろ。ソースはゴルシちゃんだ!」
「いやたしかにあなたはそうでしょうけど私はって、いや、ちょっ…離してくださいまし…お姫さま抱っこしながらジンジャー2人乗りとか道路交通法に喧嘩売ってますわよ!?」
こうなったゴルシは止まりません止められません。彼女は誰よりも仲間思いのウマ娘なのですっ。
「そんでドライブの後は一緒に丸太を打ち付けて朝まで木魚ライブでうまぴょいだぜ! うひょおおおぅっ・み・な・ぎ・っ・て・きたーー!!」
「いーーーーやーーーー夢だけど夢じゃなかったですわーー!?」
二人はゴルシちゃん号に乗って地平線の彼方まで爆走していきます。
こうしてマックイーンとゴルシちゃんは今日も仲良くうまぴょい(健全)したのでした。チャンチャン♪
お読みいただきありがとうございます。
この話自体はだいぶ昔に考えたものですが、ふと『そういえば本日は無限列車のテレビ初放送だったなぁ』と思いまして何とな~く投稿しました。
我ながら雑すぎるパロディですが楽しんでもらえたのなら嬉しいです。
おまけ
「むー!? むー!?」
「あれから結局マックイーンは鬼ウマ娘になっちまった。けど安心しな。必ずアタシがマックイーンをノーマルウマ娘に戻してやるからよ」
「むー!」
「竹の代わりに人参を咥えさせたマックイーンは今日も元気にむーむー唸ってる。この天真爛漫な姿だけが今のアタシの心の支えだ」
「むむー!」
「ははっ。そう暴れなくてもわかってるよ。さあ行こうぜ。マックイーンを元に戻す方法はきっと強くなれる理由を知ったりできる燃え盛る旅の途中で見つかるさ! アタシ達の戦いはこれからだ!」
「むーーーー!(誰かゴルシを止めてですのーー!)」