アフターシンエヴァ「加持リョウジの物語」   作:ヨスキ

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 エヴァンゲリオン終劇に感化されて、文章を作ってみました。
 世界線として、いくつか書いてみたのですが、長めでは2作目のものになります。相田ケンスケ役の岩永哲哉さんが、舞台あいさつで薄い本に触れていたのをきっかけに妄想を膨らませたものです。
 
 リョウジ君単体で主人公にする技量はなく、アスカ主人公にもしています。二次創作であって、作者の願望強くでていると思いますので、不快に思われたらごめんなさい。
 大人になって、村で過ごして、リョウジと近いところで生活している。父親代わりのケンスケがいて、2人は恋人同士として生活している。そういう新しい家庭感がいいな、と思って書き始めた気がします。


壱 『キックスタート」

 センタースタンドを立てて、思い切り蹴ったらエンジンに火が付いた。良い音がする。古臭くて嫌いじゃない。

 それから、クセッ毛の男に手招きして、後ろに乗せた。けげんな顔をしながら、素直に後ろに乗った。

「やばいですって、アスカさん。」

 足のバランスを考える。体の重心、後ろの男の重心。

「絶対怒られますって。やめましょうよ。」

 左手のクラッチ、右手のアクセル、ブレーキは指にかけておく。ヘルメットは、ない。

「っていうか無理ですって。危ない。」

「うるさい。」

 目の前に作った自作のジャンプ台、ってほどじゃないけど、ちょっとした台。少しぬかるんだ地面。最悪大けがにはならない、と思う。

アクセルをふかしてみる。バイクも走りたがってる。

「先生に怒られますよ。」

「うるさいっての。」

 もう一度アクセルを開く。やっぱり、良い音だ。ケンケン最高。

「死にたくなければちゃんと乗れ。」

「っていうか乗らなければ、死なな・・ウォッ!!」

 ごちゃごちゃうるさいのでフライングスタートだ。あたしはバイクの気持ちに正直に従っただけ。

 バイクは自作の台を通って、ほんの少し跳んだ。いや、気分に合わせて思ったよりも跳んだ。最高に気持ちのいい日差しと風の中、宙を飛んだ。

 一瞬すべてがスローモーションになる感じ。目から入る情報が、匂いが、日差しが、一気に体に飛び込んでくる感覚。もうずいぶん長いこと離れていた感覚が、あたしの体から呼び起こされた。

 大人になったし、ずっこけるのはプライドが許さない。とはいえ、それなりに安全に考えたつもり。ちょっとテンションが上がっちゃったのが、ちょっとした想定外。

 サスペンションの感覚とタイヤのグリップを逃さないようにしつつ、自分を見失わないように、自分の重心を考えて着地した。強烈な衝撃があっても、その感覚から逃げちゃいけない。絶対逃すな。

 そう思いながら車体を振り回して、何とか止まった。最高。

背中の男がいなくなったけど。

 周りを見ると、離れたビチョビチョの泥の中に、リョウジがうまく転がってた。

「ってぇぇぇぇぇぇ。」

 ゆっくり立ち上がった。深刻なケガはしてなさそうだった。つなぎが泥だらけで、頭も泥をかぶってた。

 一応あたしが悪い、ってことになるだろうから、サイドスタンドを立てて、ゆっくり歩いて近づいた。

「大丈夫?」

「・・・死にかけましたよ。」

 言いながら振り返った顔は、半笑いだった。

「アハッ。アハハハハハハハハハハハ。」

 お腹を抱えて笑い出したあたしの顔を見て、リョウジも困った顔と笑顔の半々になっていた。

「・・・アスカさん。人殺しかけた自覚ないですか。」

「アハハハハハハ。無い。」

「ひでぇっ!」

「アッハハハハハ。むっちゃ、跳んだ。腹痛い。」

 面白すぎて泣けてきた。そんなあたしの顔を見て、笑って話す成長した男の顔は、ミサトそっくりだった。

 

 

「村の若い人材が失われるところだったよ。」

「すいまっせえん。先生。」

「まったく・・・」

 そう言いながら笑って許してくれる、バイクを直した張本人。あたしがどう乗るか、わかってるくせに。

「オフロード用でもなければ、タンデムで飛ぶとは思ってなかったよ。やっぱり空が似合うんじゃない?」

「なによ。」

「どうせ血が騒いだんでしょ?」

「・・・それは否定できないわね。」

 正直にそういった。だって、あなただってそれを見込んで渡してくれたでしょ。

「まぁ喜んでもらえてよかったよ。」

「フフッ。」

「でも今度はかわいそうな男子の命を載せないで頼むよ。」

「了解。先生。」

 わざとらしく敬礼してみた。

 

「先生は自分の女に甘いっ!!!」

 チッ

 でかい声で叫ぶやつ、ちょっと前より体がでっかくなったからって、声まででかくしなくていいのに。

「死にかけたんですよ!?やめましょうって言ったのに。」

「言ったっけ?」

「言いました!」

「男がチマチマ言ってんじゃないわよ。」

「あ、それ性差別っていうらしいですよ。」

「ハッ。美人の腰に手まわしてうれしかったくせに。」

「美人ゴリラの腰の間違いです。」

 足早ぇ。くそっ。

 

「あいつも言うようになったね。」

「かわいげが無くなってきた、っていうのよ。」

「美人を外さないところが、また父親っぽいというか、さすがだな。」

「外したら、バイクに括り付けて空で地獄見せてやる。」

「怖っ」

 ケンスケがバイクを整備し終わった。乗ってみてよ、と言われて乗っているうちに楽しくなってきた。でも少し物足りなくなって、ジャンプ台を作って、泥に水巻いて、傾斜を計算した。

「また悪ふざけしてますね。」

なんて言い出した、笑顔のまぶしい若い男に目がいった。

 あの人にどんどんと似ていく男が、あたしを見守っているように思えて、ちょっとからかおうと思った。

 予想以上に吹っ飛んで少し驚いた。

 

 

 リョウジは、クレイディトに所属して、今も新しい土壌での種子保存や、研究をする部門で、職員として働いている。以前は特例的な助手のような扱いだったが、16歳を過ぎたあたりで、正式に職員として働くようになった。未成年ではあるものの、特別な事情を考慮して、成人と同じ役職が与えられている。世間的には少年、村ではもう立派な大人として過ごしている。それから約1年。もう立派な職員の一人だ。

 あたしと面識を持つようになったのは、最後の戦いの後だった。それより前は人との接触を避けてきたし、ケンケンが間にいたから、あたしからミサトにリョウジの話をすることもなかった。

 きっとミサトはしたかったんだろうとは思う。でも余裕はなかった。あたしもミサトも。

 ケンケンの家に住むようになってしばらくして、はじめてちゃんとした挨拶をした。リョウジはあたしがプラグスーツを着てうろつく姿を、見たことはあったみたいだったけど、目の前にいる年上に見える女性と同一人物だと一致させることが難しかった。あたしもわざわざ説明しなかった。その方が良いと思う。でも、元エヴァパイロットで、体が変化して急激に大人になった、ってことは、説明して、理解したようだった。

 そのころからあたしのことは、さん、づけで話す。

 親のことは、まだ、リョウジに伝わっていない。

 一生伝えない、というのが、ミサトの希望だったから。

 一生。

ケンスケは悩んでいた。リツコとよく話していた。

「碇シンジ君は、友達ですか?」

 突然そう言われた。でもその後会話は続かなかった。自分がどんな顔をしていたかわからない。

シンジと面識がある、というのは聞いてはいた。ケンケンがそう言っていたから。

 たった一回話しただけで、仲が良くなれるのは、リョウジのよいところなんだろうな。きっと親に似たんだ。一度も会ったことのない、二人の親。

 シンジのおかげでは、絶対ない。

 リョウジから名前が出た時は、最後の戦いから時間がたっていなくて、もう二度と、会うことはないんだ、と思っていたから、奇麗な言葉でも並べて、ちょっとは良い思い出として語ってやればよかったのかもしれない。

 まぁ、結果として、そうしなくてよかったわけだけど。

 

「・・・なんかいつにもまして不機嫌な顔してますね。」

 タブレットの向こう側の、のんきな成人男性の顔を見て、ちょっと前を思い出していた。

「・・・あれ?もしかして電波」

「つながってるわよ。」

「なんだ、固まってるから、無線の調子が悪いのかと思ったよ。」

 村の無線の設備が、少し充実した。インフラとして社会全体の無線事情が一番発展していた時期というほどではないにしろ、少しずつ道路も、無線状況も良くなってきている。少し寂しくもあるが、やはり便利であることは間違いないし、現状を発展させていくこと、ともすれば維持するためにも、便利さに目を向けて取り込まないといけない。生き物も、環境も同じだろうと思う。

 クレイディトを通じて資材を設置して、ケンケンが代表で管理、設定した電波塔の電波状況をテストする意味合いを持って、街にいる知り合いとよく連絡を取るようになっているわけだけど、話の流れでどういうわけか、あたしがこの画面の向こう側にいる男と話をするようになった。たまに料理を教わったりしている。

 まぁ、単純に、昔ながらの関係を残したい、という、ケンスケの希望に沿った形なのは、わかっては、いる。

「普段の会話にしたって、リツコとかでいいじゃん」

「万全の体制のところとの通信テストは、もう終わってるからね。村の人と、街の人。その相互の情報交換が円滑か、というところが大事なんだ。嫌かい?」

「・・・いや、ってわけじゃないけど。」

「いつも通り真希波さんと話すんだと思えばいいじゃない。」

・・・もしかして、前のことがあったから、疑ってる?試してる?

 だって、やっぱり、不自然じゃない?

「・・・勘ぐってるね。」

 何も言ってないのに。

「本音を言えば、みんなと仲良く話をしたくてね。何、すねたの?」

「すねてないよっ。」

「・・・相変わらずかわいいよ。」

 なんか、最近そういうことを言うようになった。はずい。

 

「リョウジ君は元気?」

「どっかの誰かと違って明るく育ってるわね。」

「誰でしょうね、それは。」

「・・・年々口が軽くなってるわね。」

「・・・年々口が悪くなってますね。」

 ブフォッ、という、画面の後ろにいるであろうコネメガネの声が聞こえた。

「ケンケン!!限界!」

「早っ。ちょっと待ってよ。」

「へそ曲げたらそちらのダーリンに嫌われるよん。」

「アッハッハッハッハ」

 あたしの後ろのいるケンケンが笑った。

 なんだか、あたしが気を使われるためのテストのようだわ。腹立つ。

 っていうかいるなら隠れて笑ってないで表にでなさいよ、コネメガネ。

 

「そういえば今度リョウジが一人で街に行くのよ。泊まりで。」

 話の合間に、伝えるべきことを思い出した。

「え、大丈夫?」

「いくつだと思ってんのよ。」

「未成年でしょ。泊まりで一人って。」

「あたしたちのころと時代が違うのよ。それにもう立派に大人として働いてるわ。たいしたもんよね。」

「もう17歳か・・・」

「あたし昔からエリートだったけど。」

「はいはい。」

「・・・ほんと腹立つようになったなぁ。」

「今は立派な美人奥様ですよね。」

「あんたはどんどん軽薄になっていきますね。」

「軽薄っ。」

 ケンスケが用意してくれた梅酒を飲みながら、他愛もない話をする。そういうこと子供の時にはしなかったけど、割と楽しいということは、感じていた。昔ミサトと、そういう話をしたことを思い出した。

 画面の向こうでカップルもお酒を飲みながら楽しそうにしている。

 それを面白がって見ていられるのも、大人になった証拠なんだろうか。

「17歳・・・」

 シンジが口に手を当てて、考え込んでた。何を考えているかは、なんとなくわかる。

 チラッと、コネメガネの方も見たけど、世間の17歳がどれほどのものか、たぶん今いる4人の内3人はわからない。そもそも昔鉄火場にいた3人だし。

「・・・ダメだ。ケンスケ以外に信頼できる情報ソースがない。」 

「僕も17歳の時には、どうだったかな。ドタバタしてたから。あいつは、そうか、3歳だった頃か。」

「・・・・・・・」

 画面の向こうのシンジが、視線をそらして黙った。話を避けるのもわざとらしいから、広げようとしたんだろうが、どうしても、自分がどうかかわったかを想像してしまい、話が途切れてしまう。こいつは、これからもこうなんだろう。

 前みたいに、落ち込んだりはしない。もう終わったことだし、当事者だったシンジが誰かの心をかき乱さないように、気配を殺そうとしているのを見て、話題を変えようと思った。

「とにかく、リョウジがそっち行くときに、会ってあげてよ。」

「わかった。」

 




 エヴァンゲリオンの映画では、別れ、卒業、というのが出ていたことが、さみしかったので、二次創作で無理やり引き戻している感じです。最初からシンジ君とのつながりがある、という話にしたかったんですけど、村と街、という違う生活圏なんだ、ということも残しているのは、原作に準じたいという気持ちからですね。中途半端に思われるかも。
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