「もうしばらく街に行くのやめなさい。」
アスカさんが、僕の居住スペースまでやってきて、突然そういった。
これから街に行こうとしているところだった。
「嫌です。」
「命令よ。」
「上司じゃないですよ。」
「保護者として」
「いつから保護者になったんですか。先生だって、保護者ってわけじゃない。」
最初は温和な顔をしていたけど、今の言葉で、目つきがするどくなった。そうか。この人は、こういう顔して戦ってたんだ。
でも、黙って命令をきく犬じゃない。
「僕ちゃんとやってますよね。」
「やつれた顔して、ミスも増えてきた、って聞いてる。」
「ちゃんとやってます。」
子供みたいに反抗していた。
「いうこと聞いてりゃいいのよ。もうやめなさい。」
「嫌だ。」
けんかの一歩手前のところで、周りに人が集まってきた。
にらみあった。今までそんなことがあったかわからない。
人が集まったことに少し動揺したのか、アスカさんがため息をついて、態度を軟化させた。僕は一向にかまわなかったけど。
「・・・せめて仕事に穴を開けないように気をつけな。大人なんだから。」
「・・・はい。」
バイクにまたがった。罪悪感が、少しだけ生まれた。
「リョウジ。」
エンジンをかけるのをやめた。
「・・・悪かったわ。」
「・・・いえ、こちらこそすみません。」
喧嘩をしたくない。じゃあなにやってんだ、僕は。
その日も、病院を外から眺めて、意味もなく街をウロウロしてから、また村に帰った。
仕事が終わってから、街に来た。夜だったから、面会なんてできっこない。窓を見ていたって、そこから顔を出してくれるわけじゃない。ただ、病院を見に来ただけ。ただそれだけのためにバイクを飛ばしてきた。バカだな、と思う。でも、したいことをするだけ。大人なんだから、誰に文句を言われる筋合いもない。アスカさんにだって。
5階を見ていた。たぶんあそこに見える部屋にいるはず。そう思って何回も同じ場所を見ていた。あそこから、彼女が顔を出してくれないかと思って、ずっと見ていた。
「本当に、彼女が好きなんだねぇ。」
驚いて視線を下に下げると、仲良くなった受付のお姉さんがいた。時刻はもう夜だから、勤務時間ではないはずなんだけど。
「びっくりした。お仕事は?」
「もう終わった。」
僕が立っている横に立って、同じように、5階の方を見ていた。どうしてだろう。不思議に思って、何を話し出すのか待っていた。
「あのね。」
「はい。」
「5階のベランダ、端っこから、向こう側に伸びてるでしょ?」
「はい。」
「細いけど、一応、向こう側につながっているの、非常口として。」
「はぁ。」
「非常階段が1階まで伸びてるね。見づらくしてるけど。」
「そうですね。」
「一応の、アルミ製扉があるよね。緊急時には、開けたり、横から出たり。まぁその程度の作りなんだよ。割と国営でも。」
「はい。」
「うっかり開いてたら、うっかり入れちゃうよね。不用心だよね。」
「・・・・・・」
受付のお姉さんが、カギのキーリングに指を入れて、まわしていた。
「5階から、病院の建物内に入れるんですかね?」
「そんなことしたら、騒がれちゃうよね。中にいる人にね。」
「そうですね。」
「でもまぁ、非常階段から、ちょっとどうにかしてベランダに行って、窓からいれて、って言って、誰かが中に入れちゃったら、どうだろうね。同意、みたいになるかな?ならないかな?わからないけどね。でも5階の人、すごい位の高い人みたいだからね。」
「そうなんですね。」
「知らないけどね。」
話が終わったのか、カギをポケットに入れて、ぼうっと5階を見ていた。
「・・・中に入れて、くれますかね?」
僕の質問に、受付のお姉さんが、はじめて真顔でこっちを見た。笑ってた。
「そんなの知らないよ。」
「ですよね。」
僕も笑った。
「でも、まぁ。僕、うっかり入っていいもんだと思っちゃいますよね。もし開いてたら。」
「誰も責められないよね。捕まる前にベランダから階段にいっちゃえば、開いてたところうっかり入った人だもんね。」
この人は、なんで、こんなことをしてくれるんだろう。横目でそのお姉さんを見た。
「・・・彼女ね。なんか、さみしそうだよ。家族もほとんど面会に来ないし。」
顔の向きも何も変えずに、そういった。
「病院ってさ。治療のためのもんだけどさ。なんか、いろいろ浮き彫りになるよね。家族の問題とか。」
お姉さんが、ぼんやりとそう言っていた。
「だからまぁ、頑張ったら。」
「・・・ありがとうございます。」
そういうと、もう僕に目線を合わせることはなかった。
後ろ姿が格好良かった。
さて、うっかりしないと。
ただ5階に来ただけ。うっかり。だって開いてたんだもん。
非常口は閉まってた。そりゃそうだ。ずっと開いてたら不用心だもの。
ただ、建物外側に設置された非常階段の、手すりの向こう側をのぞき込むと、ベランダが見える。
下を見るとすげぇ高い。でも距離は、ちょっとだけ、足を延ばすと、すぐ届く。
僕はうっかり、手すりの上に立って、目の前の排水管を持って、うっかりベランダの方の手すりに足をかけた。
おっとうっかり。
ベランダにおりた。
ドキドキしていた。
半端じゃない高さの上を行ったってのもあったけど、今誰かに騒がれたら、どうなっちゃうんだ?
その時は非常階段の方へ飛ぼう。それしかない。
それに。
まずリーナに会いたい。
深呼吸した。
ベランダを中腰であるいた。潜入しているみたいだ。窓があって、その先に彼女がいる。いるはず。いてほしい。いてもらわなきゃ。
窓から中をのぞき込んだ。カーテンが見えたけど、隙間が多くて助かった。
いた。
ベッドの角度を変えて、座った状態でいた。寝てないんだ。
何かを考えているようだった。痛みに耐えているのかもしれない。
少し興奮して、一度隠れた。ダメだ。どうしよう。ここまできたのに。一旦自分のおでこを両手でさわった。
今さら何言ってんだ。
勇気を出せ。
窓に近づいた。手を軽く握って、窓に近づけた。一瞬、待って、叩いた。
中の彼女の顔が、動くのが見えた。こちらに。固まっていた。驚いてる。当たり前だよな。手を振った。月明かりで、僕の顔は、見えているはず。
それから、彼女の体が動くのが見えた。
怖くなって、少し離れた。
考えてみたら、彼女は僕があらわれるのなんて、微塵もうれしいと思ってくれていないんじゃないかと思い始めた。今さら。だとしたら、恐怖だろうな。突然、5階のベランダに人が現れたら。やばい、なんてことしてるんだろう。今さら、そんなことを思って、彼女の動きを見守った。ゆっくりとベッドから動こうとしてる。
窓から離れて、ベランダの手すりまで下がった。驚かれたり、怖がられたりしたくなかった。ベランダの下はコンクリートの地面。落ちたら痛そうだった。
ほんの少し、時間があった。よけいに不安になった。人を呼んだかもしれない。
僕だと気づいてほしい。お願いだから、笑ってくれないだろうか。
・・・考えてみたらヤバい奴の行動じゃないか。バカだな。なんでこんなことを。
ガタッ。
窓のロックがあいた。
ゆっくり窓自体が開いた。
息を止めて、何かが始まるのを待った。
何も始まらなかった。窓が開かれただけ。
「あ、あの・・・こんばんは。」
何言ってんだ。
「ごめん。僕、リョウジ。わかる?」
何言ってんだ。ほんと。
「リーナ」
「リョウジ」
名前を呼んでくれた。ちょっとだけ安心した。
「会えなくて。ごめん、あの、非常口の方があいてて。驚かせてごめん。」
嘘も入っていたけど、これはついていい嘘だ。たぶん。
「あの、中、入っていい?」
一瞬の間があった。彼女は、すぐそこにいるんだろうか。
「いいよ。」
気絶しそうになった。安心したのと、嬉しくて。小さくガッツポーズした。
窓枠に足をかけて入った。部屋の中は、広かった。個室、だとは思うけど、すごい広い。
目を慣らせた。彼女は、右手に、いた。
窓から降りた。
彼女は窓枠に、左手を添えて立っていた。
僕は窓枠に、右手を添えて立った。
黙っていた。
彼女は、驚いたような、何かを決めたような顔をしていた。そりゃ5階から人が来たんだもん。もしかしたら警戒しているのかもしれない。
奇麗だな、と思っていた。
化粧もしていない、部屋は入院着。でも窓からの光を浴びた姿が奇麗で、心が奪われていた。
気が付くとずっと黙っていた気がする。ぼうっと二人で立っていた。何をやっているんだろう。
彼女の顔が奇麗で、見とれていた。でも何かしゃべらないと。
「ごめん。急に。良かった。入れてもらえて。」
「うん。」
「あの、座ろうか。体、大丈夫?」
「・・・うん。」
そういうと、ゆっくりと彼女は背中を向けた。そこではじめて気が付いた。右足を不自由そうにしていることを。入院着も、外側から開いて確認できるようなものだった。右足に大けがを負った。
ゆっくりとした動きに慌てて、彼女の左側から体を支えた。痛そうで、辛そうだった。
ゆっくりと移動して、ベッドの前で彼女を座らせるために正面にまわった。自然と彼女が僕の首に手をまわした。
時間がとまって、つばをのんだ。彼女の首が近くて、香りがした。首が近くて、自分の表情が固まった。噛みついたら吸血鬼みたいだ、って、気持ちを落ち着かせるために、しょうもないこと考えた。首の下にある胸が、何もつけていないのが分かって、緊張した。支えようとしてつかんだ腰が、やっぱり下着以外になにもないのが、手の感覚で感じ取れた。細く、柔らかい体に、衝撃を受けていた。悟られないようにした。
ゆっくりと座らせた。
座った彼女が、黙って僕を見ていた。
どうしてそんな顔をしているんだろう。よほど動くのがつらかったのか、表情と言うか気持ちがつかみとれない。
「あの」
まだ緊張していた。近くに丸椅子があったから、引き寄せて座った。
「びっくりしたでしょ。」
「うん。」
「ごめんね。騒がれたら、捕まると思った。あはは。」
「・・・うん。」
会話がはずまない。どうしてだろう。まだ緊張しているのかもしれない。
「あの、シンも連絡つかなくて、一緒にきたら、面会できたかな。」
彼女が黙った。
「最近連絡つかないんだ。何か知ってる?」
少し視線が下がっていた。目が死んだような。
話題を間違えたのかもしれない。わざわざさみしい思いをさせたかも。
「・・・事故。大変だったね。心配したよ。」
「・・・大丈夫。」
「・・・でもけがは?」
「足がね。ちょっと。意識失って、気が付いたら、手術終わってた。」
やっぱり大けがだったんだな。見ればわかるけど、事故の衝撃を想像すると、痛みが伝わる。
「・・・でも命があってよかった。」
「ありがとう。」
段々と話ができるようになってきた。僕は安心してきたけど、同時に、彼女のトーンが下がってきたように思う。連絡がつかないシンのことを考えていたのかもしれない。少し、嫉妬した。でも話題として、あいつに頼っているところもある。
気づくと、彼女は、窓の外を見ていた。僕の方を見てほしいなと思っていたから、少し残念だった。彼女の見ている先を見た。街がある。走っている車もある。奇麗な景色だ。お金持ちの見る視点は、一般人とは違うのかもしれない。まぁ関係ないっちゃないけど。
視線を戻すと、いつの間にか僕の方をぼんやり見ていた。驚いた。
それから
「足。見る?」
彼女は、そういうと、右足の入院着に手を伸ばした。外側が紐で結ばれていて、全部ほどけばそこから全て見えるようにできていた。その結び目を1個ずつ外した。
・・・肌着はつけてるんだよね?
聞けなかった。気にしていたけど。
あまり気にもせず、彼女はパっと、見せた。腰骨から、足先まで見えた。肌着はなかった。驚いていたけど、反応しないようにした。
太ももに金属がついていた。太い骨を固定するためのもので、中の骨を固定して、外側から固定して動かないようにしていた。細かいことはわからないが、そういうものだとわかった。縫合後もあって、血管が少し際立っていた。
黙った。
彼女の、奇麗な、右足を見ていた。
それから、海の上の彼女を思い出していた。あのターンを。
悲しかった。
でもそう言ってはいけないと思った。
言葉を探した。
「綺麗だよ。」
口をついて出た言葉は、動揺していたのか、本音だったのか、その場にふさわしくなかった。
彼女から枕を投げつけられたから。
「ふざけたこと言わないで。これのどこが奇麗なの?ふざけないでよ。ほんと」
「ごめん。いや。ごめん、そんなつもりじゃ。」
手を前に出して弁解した。彼女の眼は吊り上がっていて、本当に怒っているんだと思って、怖かった。
驚いた。
「適当なこと言えば喜ぶと思った?醜いじゃん。」
「醜くは、ないよ。痛そうで、辛そうだ。ごめん。そういえばよかった。」
「みにくいよ。まともに動かなくなった。ダンスなんかできない。歩けもしない。裂けて傷だらけで縫い目があって中にボルトがあって、醜いじゃん。醜いよ。」
醜いという単語を、好んで使っているみたいに繰り返した。あまり、使い慣れる言葉じゃない気がした。
「ちゃんと治るよ。」
「適当なこと言わないで!」
大きな声に驚いた。彼女の表情にも。にらみつけた表情は、僕に対する嫌悪感でいっぱいだった。それで動揺した。
それから、部屋の外の、廊下の奥の方で、光がついた気がした。
「・・・伏せて」
「え?」
「伏せて。隠れて。」
慌てて彼女のベッドの下に隠れた。
地面すれすれで視線を移動させると、部屋の入口ドアが開くのが見えた。
「あの・・・どうかしました。」
「すいません。ちょっと気分が動揺していて、声が大きくなっちゃったんです。なんでもありません。」
すごい凛とした喋り方をしていた。砕けてない、よそいきのしゃべり方。
「大丈夫です。お手数おかけしました。」
「・・・そうですか?じゃあ・・・」
そういって、扉を閉めて、看護師らしき人の足音は離れていった。
ちょっと待って、立ち上がった。
心臓が、ずっと走り回っていた。捕まったら終わるって思っていた。
「はぁっ。ビビった。海で警備員に追いかけられた時みたいだね。」
笑って言ったんだけど、リーナは少しも笑ってくれなかった。
まずいことを言った。励ましたかったのに、裏目に出て・・・
「シンね。今逮捕されてるんだって。父親と一緒にやった強盗で。」
「・・・え?」
突然のことに、耳を疑った。逮捕?
「バカだよね。父親の言うこと正直にやったんだよ、きっと。」
あの時見た、シンの父親。悪意の塊のような顔。父親。
「本当に?」
僕の質問は無視された。
じゃあ、あいつは、今。唖然としていた。
黙っていたら、はだけた右足の入院着が気になった。腰骨の内側まで見えていたから、隠してあげないと思って手を伸ばしたら、彼女が自分でサッて戻した。慌てて手をひっこめた。
彼女に嫌われそうだと思って、動揺していた。
「彼が好きなんだ。」
「・・・え?」
聞き間違えだと良いと思ったけど、そうじゃなかった。
「もう別れたって・・・」
「わたしが振られたの。」
僕が話された内容に愕然としていたけど、比べて彼女の口調は軽かった。
「シンの家、生まれた時からニアサーのせいで生きていくのが必死だったって言ってた。安全地帯、補給物資の奪い合いで、それで母親が子供置いて逃げて、父親は悪いことするようになったって聞いた。でもシンちゃん、母親も父親も恨んでない。だからすごいと思って、好きになって、わたしも、親のこと、見つめなおそうと思って。」
一息ついた。
「今でも好きなんだ。ごめんね。」
軽く突き放したような言い方だった。
「・・・でも、僕は」
「やだ。やめてよ。」
笑って、視線をそらされた。
「1回キスしたくらいで、大したことじゃなくない?」
そんなこと。
「でも僕にとっては」
「勘違いだって。」
違う。勘違いじゃない。間違いないんだ。それとも、君がしたことが、君の勘違いの行動だって言いたいのかな?そうじゃないと思いたい。
「・・・なんで急に、そんなこと言うの?」
「・・・わたしリョウジ君好きじゃないよ。」
今度こそ、僕は、何も言えなくなった。ショックで、言葉を失う、ってこういうことだと思った。彼女の一言が、僕を、致命的に傷つける。
何をされたところで、彼女の意のままなんだと思った。
「面会とか、したくないから、わたしがしたくないって言ってるんだよ。」
でもなにかにすがりたかった。
「・・・それは嘘だよ。知ってる。周りから聞いたから。家族の意向なんでしょ。」
バツが悪そうに下を向いた。やっぱり、嘘なんだ。どうしてか、今彼女は僕に嘘をついてまで、突き放そうとしてくる。どうして・・・
「お母さん、病院で見たんだけど、何て言ってたの?」
僕の質問に、愕然として僕の方を見た。
黙っていた。
突然、本当に突然、彼女は悲しい顔をして、目に涙が見えた。
「バカなことしたツケだって。トワの足ばっかり引っ張って、って。もうダンスもしなくていいって・・・怒ってた。脚も醜くなったって、それから、会ってない。」
彼女の頬に涙が流れていた。
僕は口を開けて、黙っていた。何を返したらいいのか、さっぱりわからない。
しばらくして、彼女がしゃべりだした。
「なんで君が泣くの?」
言われて、僕が泣いていることに気が付いた。
「でも、そんな、いくらなんでも、ひどい・・・」
「やめて、ママを悪くいわないで」
混乱した。ヒドイ親じゃないか。君だって苦しそうにしている。なんで君がそんなに悲しまなきゃいけないんだ?
「君にママを悪く言われたくない。」
悲しい顔が、敵意に変わっていて、混乱した。・・・どういう意味だ?なんで僕が
僕に親がいないから?
「もう帰って。お願い帰って。」
矢継ぎ早にそう言われた。嫌だ、もう少しそばにいさせてほしい。
「また会いたい」
「嫌。わたしはもう会いたくない。君は、もう私たちと違うから。来ない方がいい。」
「また、会いたいんだ。」
「嫌。」
にらまれた。
「人呼ぶよ。」
女の人から、本気で拒絶されることが、これほど緊張して、悲しいことか、はじめてしった。そのままスゴスゴと、情けない姿で窓から出て行った。気が付いたら病院の1階で肩を落としていた。
僕は、君の痛みを少しだけ理解したつもりだった。
君の美しい右足が、傷ついた。
肉が裂け、大きな骨が折れて、金属ボルトが固定された。
かわいそうに。
傷の痛みが、僕に伝わっていた。
泣きたいほど痛かった。足の苦痛が全身を伝って、歯を食いしばっても、苦痛はおさまってくれない。全身がこわばった。触って、痛みを、和らげてあげたかった。
きっと、あの海の前で見せてくれたターンは、できなくなった。
これからどれほど回復するかわからない。
身体的な痛みなんて、君はほとんど気にしてないのだと思う。
あれほど周りに、素敵な笑顔を広げていた君。
寄り添うべき人が、僕じゃダメなんだろうか。
一番身近にいるべき人は、彼女を傷つけていた。
どうしてそんなことできるんだろう。
僕は気にしないよ。君は今も奇麗だよ。僕は君が。
そんな気持ちで、傷ついた少女の気持ちも考えず、自分の気持ちを口にした。
君のことを何も知らない。子供みたいに。
恥ずかしかった。
自分が。
彼女が怒った姿がおそろしかった。
彼女が悲しそうな顔が、悲しかった。
自分のことが、憎くて、どうにかしてやりたくなった。
ロマンスが書きたい、ってことで、二次創作でやるべきじゃないのかもしれませんけど、許してください。
親に惑う子供、っていうことを書きたくて、オリジナルキャラ2人もそうしたかったんですね。エヴァでは、いない、っていうのが前提だったり(TVシリーズだと、前提として親のいない14歳の子供達だった気がするんですけど)、シンジ君は二人ともいるけど、どう向き合うか、っていうことがテーマだったりするんだと思うんですけど、二次創作なので、あれこれ考えて苦しみました。ごちゃごちゃしすぎると訳がわからなくなるし、どこまで書くか、っていうことを。
あとは、リョウジ君がどう苦しんでいくか、っていうことを意識して、技量不足ですが、とりあえず納得はしています。