アフターシンエヴァ「加持リョウジの物語」   作:ヨスキ

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十一 『きっと君は』

 

「もうしばらく街に行くのやめなさい。」

 アスカさんが、僕の居住スペースまでやってきて、突然そういった。

 これから街に行こうとしているところだった。

「嫌です。」

「命令よ。」

「上司じゃないですよ。」

「保護者として」

「いつから保護者になったんですか。先生だって、保護者ってわけじゃない。」

 最初は温和な顔をしていたけど、今の言葉で、目つきがするどくなった。そうか。この人は、こういう顔して戦ってたんだ。

 でも、黙って命令をきく犬じゃない。

「僕ちゃんとやってますよね。」

「やつれた顔して、ミスも増えてきた、って聞いてる。」

「ちゃんとやってます。」

 子供みたいに反抗していた。

「いうこと聞いてりゃいいのよ。もうやめなさい。」

「嫌だ。」

 けんかの一歩手前のところで、周りに人が集まってきた。

 にらみあった。今までそんなことがあったかわからない。

 人が集まったことに少し動揺したのか、アスカさんがため息をついて、態度を軟化させた。僕は一向にかまわなかったけど。

「・・・せめて仕事に穴を開けないように気をつけな。大人なんだから。」

「・・・はい。」

 バイクにまたがった。罪悪感が、少しだけ生まれた。

「リョウジ。」

 エンジンをかけるのをやめた。

「・・・悪かったわ。」

「・・・いえ、こちらこそすみません。」

 喧嘩をしたくない。じゃあなにやってんだ、僕は。

 その日も、病院を外から眺めて、意味もなく街をウロウロしてから、また村に帰った。

 

 

 仕事が終わってから、街に来た。夜だったから、面会なんてできっこない。窓を見ていたって、そこから顔を出してくれるわけじゃない。ただ、病院を見に来ただけ。ただそれだけのためにバイクを飛ばしてきた。バカだな、と思う。でも、したいことをするだけ。大人なんだから、誰に文句を言われる筋合いもない。アスカさんにだって。

 5階を見ていた。たぶんあそこに見える部屋にいるはず。そう思って何回も同じ場所を見ていた。あそこから、彼女が顔を出してくれないかと思って、ずっと見ていた。

「本当に、彼女が好きなんだねぇ。」

 驚いて視線を下に下げると、仲良くなった受付のお姉さんがいた。時刻はもう夜だから、勤務時間ではないはずなんだけど。

「びっくりした。お仕事は?」

「もう終わった。」

 僕が立っている横に立って、同じように、5階の方を見ていた。どうしてだろう。不思議に思って、何を話し出すのか待っていた。

「あのね。」

「はい。」

「5階のベランダ、端っこから、向こう側に伸びてるでしょ?」

「はい。」

「細いけど、一応、向こう側につながっているの、非常口として。」

「はぁ。」

「非常階段が1階まで伸びてるね。見づらくしてるけど。」

「そうですね。」

「一応の、アルミ製扉があるよね。緊急時には、開けたり、横から出たり。まぁその程度の作りなんだよ。割と国営でも。」

「はい。」

「うっかり開いてたら、うっかり入れちゃうよね。不用心だよね。」

「・・・・・・」

 受付のお姉さんが、カギのキーリングに指を入れて、まわしていた。

「5階から、病院の建物内に入れるんですかね?」

「そんなことしたら、騒がれちゃうよね。中にいる人にね。」

「そうですね。」

「でもまぁ、非常階段から、ちょっとどうにかしてベランダに行って、窓からいれて、って言って、誰かが中に入れちゃったら、どうだろうね。同意、みたいになるかな?ならないかな?わからないけどね。でも5階の人、すごい位の高い人みたいだからね。」

「そうなんですね。」

「知らないけどね。」

 話が終わったのか、カギをポケットに入れて、ぼうっと5階を見ていた。

「・・・中に入れて、くれますかね?」

 僕の質問に、受付のお姉さんが、はじめて真顔でこっちを見た。笑ってた。

「そんなの知らないよ。」

「ですよね。」

 僕も笑った。

「でも、まぁ。僕、うっかり入っていいもんだと思っちゃいますよね。もし開いてたら。」

「誰も責められないよね。捕まる前にベランダから階段にいっちゃえば、開いてたところうっかり入った人だもんね。」

 この人は、なんで、こんなことをしてくれるんだろう。横目でそのお姉さんを見た。

「・・・彼女ね。なんか、さみしそうだよ。家族もほとんど面会に来ないし。」

 顔の向きも何も変えずに、そういった。

「病院ってさ。治療のためのもんだけどさ。なんか、いろいろ浮き彫りになるよね。家族の問題とか。」

 お姉さんが、ぼんやりとそう言っていた。

「だからまぁ、頑張ったら。」

「・・・ありがとうございます。」

 そういうと、もう僕に目線を合わせることはなかった。

 後ろ姿が格好良かった。

 さて、うっかりしないと。

 

 ただ5階に来ただけ。うっかり。だって開いてたんだもん。

 非常口は閉まってた。そりゃそうだ。ずっと開いてたら不用心だもの。

 ただ、建物外側に設置された非常階段の、手すりの向こう側をのぞき込むと、ベランダが見える。

 下を見るとすげぇ高い。でも距離は、ちょっとだけ、足を延ばすと、すぐ届く。

 僕はうっかり、手すりの上に立って、目の前の排水管を持って、うっかりベランダの方の手すりに足をかけた。

 おっとうっかり。

 ベランダにおりた。

 

 ドキドキしていた。

 半端じゃない高さの上を行ったってのもあったけど、今誰かに騒がれたら、どうなっちゃうんだ?

 その時は非常階段の方へ飛ぼう。それしかない。

 それに。

 まずリーナに会いたい。

 深呼吸した。

 ベランダを中腰であるいた。潜入しているみたいだ。窓があって、その先に彼女がいる。いるはず。いてほしい。いてもらわなきゃ。

 窓から中をのぞき込んだ。カーテンが見えたけど、隙間が多くて助かった。

 いた。

 ベッドの角度を変えて、座った状態でいた。寝てないんだ。

 何かを考えているようだった。痛みに耐えているのかもしれない。

 少し興奮して、一度隠れた。ダメだ。どうしよう。ここまできたのに。一旦自分のおでこを両手でさわった。

 今さら何言ってんだ。

 勇気を出せ。

 窓に近づいた。手を軽く握って、窓に近づけた。一瞬、待って、叩いた。

 中の彼女の顔が、動くのが見えた。こちらに。固まっていた。驚いてる。当たり前だよな。手を振った。月明かりで、僕の顔は、見えているはず。

 それから、彼女の体が動くのが見えた。

 怖くなって、少し離れた。

 考えてみたら、彼女は僕があらわれるのなんて、微塵もうれしいと思ってくれていないんじゃないかと思い始めた。今さら。だとしたら、恐怖だろうな。突然、5階のベランダに人が現れたら。やばい、なんてことしてるんだろう。今さら、そんなことを思って、彼女の動きを見守った。ゆっくりとベッドから動こうとしてる。

 窓から離れて、ベランダの手すりまで下がった。驚かれたり、怖がられたりしたくなかった。ベランダの下はコンクリートの地面。落ちたら痛そうだった。

 ほんの少し、時間があった。よけいに不安になった。人を呼んだかもしれない。

 僕だと気づいてほしい。お願いだから、笑ってくれないだろうか。

 ・・・考えてみたらヤバい奴の行動じゃないか。バカだな。なんでこんなことを。

 ガタッ。

 窓のロックがあいた。

 ゆっくり窓自体が開いた。

 息を止めて、何かが始まるのを待った。

 何も始まらなかった。窓が開かれただけ。

「あ、あの・・・こんばんは。」

 何言ってんだ。

「ごめん。僕、リョウジ。わかる?」

 何言ってんだ。ほんと。

「リーナ」

「リョウジ」

 名前を呼んでくれた。ちょっとだけ安心した。

「会えなくて。ごめん、あの、非常口の方があいてて。驚かせてごめん。」

 嘘も入っていたけど、これはついていい嘘だ。たぶん。

「あの、中、入っていい?」

 一瞬の間があった。彼女は、すぐそこにいるんだろうか。

「いいよ。」

 気絶しそうになった。安心したのと、嬉しくて。小さくガッツポーズした。

 窓枠に足をかけて入った。部屋の中は、広かった。個室、だとは思うけど、すごい広い。

 目を慣らせた。彼女は、右手に、いた。

 窓から降りた。

 彼女は窓枠に、左手を添えて立っていた。

 僕は窓枠に、右手を添えて立った。

 黙っていた。

 彼女は、驚いたような、何かを決めたような顔をしていた。そりゃ5階から人が来たんだもん。もしかしたら警戒しているのかもしれない。

 奇麗だな、と思っていた。

 化粧もしていない、部屋は入院着。でも窓からの光を浴びた姿が奇麗で、心が奪われていた。

 気が付くとずっと黙っていた気がする。ぼうっと二人で立っていた。何をやっているんだろう。

 彼女の顔が奇麗で、見とれていた。でも何かしゃべらないと。

「ごめん。急に。良かった。入れてもらえて。」

「うん。」

「あの、座ろうか。体、大丈夫?」

「・・・うん。」

 そういうと、ゆっくりと彼女は背中を向けた。そこではじめて気が付いた。右足を不自由そうにしていることを。入院着も、外側から開いて確認できるようなものだった。右足に大けがを負った。

 ゆっくりとした動きに慌てて、彼女の左側から体を支えた。痛そうで、辛そうだった。

 ゆっくりと移動して、ベッドの前で彼女を座らせるために正面にまわった。自然と彼女が僕の首に手をまわした。

 時間がとまって、つばをのんだ。彼女の首が近くて、香りがした。首が近くて、自分の表情が固まった。噛みついたら吸血鬼みたいだ、って、気持ちを落ち着かせるために、しょうもないこと考えた。首の下にある胸が、何もつけていないのが分かって、緊張した。支えようとしてつかんだ腰が、やっぱり下着以外になにもないのが、手の感覚で感じ取れた。細く、柔らかい体に、衝撃を受けていた。悟られないようにした。

 ゆっくりと座らせた。

 座った彼女が、黙って僕を見ていた。

 どうしてそんな顔をしているんだろう。よほど動くのがつらかったのか、表情と言うか気持ちがつかみとれない。

「あの」

 まだ緊張していた。近くに丸椅子があったから、引き寄せて座った。

「びっくりしたでしょ。」

「うん。」

「ごめんね。騒がれたら、捕まると思った。あはは。」

「・・・うん。」

 会話がはずまない。どうしてだろう。まだ緊張しているのかもしれない。

「あの、シンも連絡つかなくて、一緒にきたら、面会できたかな。」

 彼女が黙った。

「最近連絡つかないんだ。何か知ってる?」

 少し視線が下がっていた。目が死んだような。

 話題を間違えたのかもしれない。わざわざさみしい思いをさせたかも。

「・・・事故。大変だったね。心配したよ。」

「・・・大丈夫。」

「・・・でもけがは?」

「足がね。ちょっと。意識失って、気が付いたら、手術終わってた。」

 やっぱり大けがだったんだな。見ればわかるけど、事故の衝撃を想像すると、痛みが伝わる。

「・・・でも命があってよかった。」

「ありがとう。」

 段々と話ができるようになってきた。僕は安心してきたけど、同時に、彼女のトーンが下がってきたように思う。連絡がつかないシンのことを考えていたのかもしれない。少し、嫉妬した。でも話題として、あいつに頼っているところもある。

 気づくと、彼女は、窓の外を見ていた。僕の方を見てほしいなと思っていたから、少し残念だった。彼女の見ている先を見た。街がある。走っている車もある。奇麗な景色だ。お金持ちの見る視点は、一般人とは違うのかもしれない。まぁ関係ないっちゃないけど。

 視線を戻すと、いつの間にか僕の方をぼんやり見ていた。驚いた。

 それから

「足。見る?」

 彼女は、そういうと、右足の入院着に手を伸ばした。外側が紐で結ばれていて、全部ほどけばそこから全て見えるようにできていた。その結び目を1個ずつ外した。

 ・・・肌着はつけてるんだよね?

 聞けなかった。気にしていたけど。

 あまり気にもせず、彼女はパっと、見せた。腰骨から、足先まで見えた。肌着はなかった。驚いていたけど、反応しないようにした。

 太ももに金属がついていた。太い骨を固定するためのもので、中の骨を固定して、外側から固定して動かないようにしていた。細かいことはわからないが、そういうものだとわかった。縫合後もあって、血管が少し際立っていた。

 黙った。

 彼女の、奇麗な、右足を見ていた。

 それから、海の上の彼女を思い出していた。あのターンを。

 悲しかった。

 でもそう言ってはいけないと思った。

 言葉を探した。

「綺麗だよ。」

 口をついて出た言葉は、動揺していたのか、本音だったのか、その場にふさわしくなかった。

 彼女から枕を投げつけられたから。

「ふざけたこと言わないで。これのどこが奇麗なの?ふざけないでよ。ほんと」

「ごめん。いや。ごめん、そんなつもりじゃ。」

 手を前に出して弁解した。彼女の眼は吊り上がっていて、本当に怒っているんだと思って、怖かった。

 驚いた。

「適当なこと言えば喜ぶと思った?醜いじゃん。」

「醜くは、ないよ。痛そうで、辛そうだ。ごめん。そういえばよかった。」

「みにくいよ。まともに動かなくなった。ダンスなんかできない。歩けもしない。裂けて傷だらけで縫い目があって中にボルトがあって、醜いじゃん。醜いよ。」

 醜いという単語を、好んで使っているみたいに繰り返した。あまり、使い慣れる言葉じゃない気がした。

「ちゃんと治るよ。」

「適当なこと言わないで!」

 大きな声に驚いた。彼女の表情にも。にらみつけた表情は、僕に対する嫌悪感でいっぱいだった。それで動揺した。

それから、部屋の外の、廊下の奥の方で、光がついた気がした。

「・・・伏せて」

「え?」

「伏せて。隠れて。」

 慌てて彼女のベッドの下に隠れた。

 地面すれすれで視線を移動させると、部屋の入口ドアが開くのが見えた。

「あの・・・どうかしました。」

「すいません。ちょっと気分が動揺していて、声が大きくなっちゃったんです。なんでもありません。」

 すごい凛とした喋り方をしていた。砕けてない、よそいきのしゃべり方。

「大丈夫です。お手数おかけしました。」

「・・・そうですか?じゃあ・・・」

 そういって、扉を閉めて、看護師らしき人の足音は離れていった。

 ちょっと待って、立ち上がった。

 心臓が、ずっと走り回っていた。捕まったら終わるって思っていた。

「はぁっ。ビビった。海で警備員に追いかけられた時みたいだね。」

 笑って言ったんだけど、リーナは少しも笑ってくれなかった。

 まずいことを言った。励ましたかったのに、裏目に出て・・・

「シンね。今逮捕されてるんだって。父親と一緒にやった強盗で。」

 

「・・・え?」

 突然のことに、耳を疑った。逮捕?

「バカだよね。父親の言うこと正直にやったんだよ、きっと。」

 あの時見た、シンの父親。悪意の塊のような顔。父親。

「本当に?」

 僕の質問は無視された。

 じゃあ、あいつは、今。唖然としていた。

 黙っていたら、はだけた右足の入院着が気になった。腰骨の内側まで見えていたから、隠してあげないと思って手を伸ばしたら、彼女が自分でサッて戻した。慌てて手をひっこめた。

 彼女に嫌われそうだと思って、動揺していた。

「彼が好きなんだ。」

「・・・え?」

 聞き間違えだと良いと思ったけど、そうじゃなかった。

「もう別れたって・・・」

「わたしが振られたの。」

 僕が話された内容に愕然としていたけど、比べて彼女の口調は軽かった。

「シンの家、生まれた時からニアサーのせいで生きていくのが必死だったって言ってた。安全地帯、補給物資の奪い合いで、それで母親が子供置いて逃げて、父親は悪いことするようになったって聞いた。でもシンちゃん、母親も父親も恨んでない。だからすごいと思って、好きになって、わたしも、親のこと、見つめなおそうと思って。」

 一息ついた。

「今でも好きなんだ。ごめんね。」

 軽く突き放したような言い方だった。

「・・・でも、僕は」

「やだ。やめてよ。」

 笑って、視線をそらされた。

「1回キスしたくらいで、大したことじゃなくない?」 

 そんなこと。

「でも僕にとっては」

「勘違いだって。」

 違う。勘違いじゃない。間違いないんだ。それとも、君がしたことが、君の勘違いの行動だって言いたいのかな?そうじゃないと思いたい。

「・・・なんで急に、そんなこと言うの?」

「・・・わたしリョウジ君好きじゃないよ。」

 今度こそ、僕は、何も言えなくなった。ショックで、言葉を失う、ってこういうことだと思った。彼女の一言が、僕を、致命的に傷つける。

 何をされたところで、彼女の意のままなんだと思った。

「面会とか、したくないから、わたしがしたくないって言ってるんだよ。」

 でもなにかにすがりたかった。

「・・・それは嘘だよ。知ってる。周りから聞いたから。家族の意向なんでしょ。」

 バツが悪そうに下を向いた。やっぱり、嘘なんだ。どうしてか、今彼女は僕に嘘をついてまで、突き放そうとしてくる。どうして・・・

「お母さん、病院で見たんだけど、何て言ってたの?」

 僕の質問に、愕然として僕の方を見た。

 黙っていた。

 突然、本当に突然、彼女は悲しい顔をして、目に涙が見えた。

「バカなことしたツケだって。トワの足ばっかり引っ張って、って。もうダンスもしなくていいって・・・怒ってた。脚も醜くなったって、それから、会ってない。」

 彼女の頬に涙が流れていた。

 僕は口を開けて、黙っていた。何を返したらいいのか、さっぱりわからない。

 しばらくして、彼女がしゃべりだした。

「なんで君が泣くの?」

 言われて、僕が泣いていることに気が付いた。

「でも、そんな、いくらなんでも、ひどい・・・」

「やめて、ママを悪くいわないで」

 混乱した。ヒドイ親じゃないか。君だって苦しそうにしている。なんで君がそんなに悲しまなきゃいけないんだ?

「君にママを悪く言われたくない。」

 悲しい顔が、敵意に変わっていて、混乱した。・・・どういう意味だ?なんで僕が

 僕に親がいないから?

「もう帰って。お願い帰って。」

 矢継ぎ早にそう言われた。嫌だ、もう少しそばにいさせてほしい。

「また会いたい」

「嫌。わたしはもう会いたくない。君は、もう私たちと違うから。来ない方がいい。」

「また、会いたいんだ。」

「嫌。」

 にらまれた。

「人呼ぶよ。」

 女の人から、本気で拒絶されることが、これほど緊張して、悲しいことか、はじめてしった。そのままスゴスゴと、情けない姿で窓から出て行った。気が付いたら病院の1階で肩を落としていた。 

 

 僕は、君の痛みを少しだけ理解したつもりだった。

 君の美しい右足が、傷ついた。

 肉が裂け、大きな骨が折れて、金属ボルトが固定された。

 かわいそうに。

 

 傷の痛みが、僕に伝わっていた。

 泣きたいほど痛かった。足の苦痛が全身を伝って、歯を食いしばっても、苦痛はおさまってくれない。全身がこわばった。触って、痛みを、和らげてあげたかった。

 きっと、あの海の前で見せてくれたターンは、できなくなった。

 これからどれほど回復するかわからない。

 身体的な痛みなんて、君はほとんど気にしてないのだと思う。

 あれほど周りに、素敵な笑顔を広げていた君。

 

 寄り添うべき人が、僕じゃダメなんだろうか。

 一番身近にいるべき人は、彼女を傷つけていた。

 どうしてそんなことできるんだろう。

 

 僕は気にしないよ。君は今も奇麗だよ。僕は君が。

 そんな気持ちで、傷ついた少女の気持ちも考えず、自分の気持ちを口にした。

 君のことを何も知らない。子供みたいに。

 恥ずかしかった。

 自分が。

 彼女が怒った姿がおそろしかった。

 彼女が悲しそうな顔が、悲しかった。

 自分のことが、憎くて、どうにかしてやりたくなった。

 




 ロマンスが書きたい、ってことで、二次創作でやるべきじゃないのかもしれませんけど、許してください。
 親に惑う子供、っていうことを書きたくて、オリジナルキャラ2人もそうしたかったんですね。エヴァでは、いない、っていうのが前提だったり(TVシリーズだと、前提として親のいない14歳の子供達だった気がするんですけど)、シンジ君は二人ともいるけど、どう向き合うか、っていうことがテーマだったりするんだと思うんですけど、二次創作なので、あれこれ考えて苦しみました。ごちゃごちゃしすぎると訳がわからなくなるし、どこまで書くか、っていうことを。
 あとは、リョウジ君がどう苦しんでいくか、っていうことを意識して、技量不足ですが、とりあえず納得はしています。
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