アフターシンエヴァ「加持リョウジの物語」   作:ヨスキ

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二十 『教育的弐』

 

 サクラの家についた。

 リョウジは、とりあえずシャワーを浴びせさせている。

 これからどうすべきか、考える時間も必要だ。村に帰る、だけでいいのか。何かリョウジが納得のいっていないことがあるなら、それを解決した方が良いんじゃないか。そんなことを考えていた。

 

 家に向かう車の中で、今まで何があったか、尋問した。申し訳なさそうに説明していた。まぁなんか、年頃にはありそうな、恋物語。

 ・・・いつもなら楽しく聞けそうな、内容だった。

 ただ、いつも以上にコネメガネが食いついて、それを抑えようとしてた。今盛り上がってもしょうがないんだよ。

 それで、リョウジが好きな子に会いたくて、5階の病室まで外の壁を伝って、窓から入った話で、バカップルが騒いでた。

「ロマンチックぅぅ!」

「窓から入るって、そうだね、なかなか勇気いるよね。入れてくれたんだ?」

「・・・うん。」

「いやあああロマンチック。今度やろうシンジ君。あのマンションで。」

「え、ど、どういうこと?」

「下から登ってきてよ。排水管とか使って。」

「危ないでしょ。死んじゃうよ。」

「それくらい会いたくて会いたくてたまらなかったんだよ。素敵だにゃあ。」

 リョウジが照れてた。

「ゲッ、て思って、窓開けなかったら格好悪かったね。」

「アスカそういうことしそうだよね。」

「どういう意味よ。」

「ロマンチックとか鼻で笑いそう。」

「失敬な。」

 ほんと失敬な。

 でもまぁ、話から、彼女に喜ばれてはいそうだった。

「ちょっと姫。この恋愛は成就させねばですぞ。」

「んんんん」

 シンジの運転する車の後ろで、シートに体を預けた。

「また熱い恋ごころが沸き起こって、少年はバイクに乗って走り出すんだよ。」

「たきつけるのやめなさいよっ。せっかく問題がおさまったのに。」

「恋愛は永遠のテーマだもんね。少年時代のそれは、一生に関わる大事な問題だよ。」

「落ち着いたら、良い思い出になんのよ。」

「・・・へぇ。」

「・・・なによ。やめなさいよ。」

「さっきからなに喧嘩してんの?」

「「してないっ」」

「そう?」

 

 サクラの部屋で報告会。というか尋問会。

 サクラがひどかった。

 さすがにリョウジが気の毒にも思えた。

「寝取ってやればえぇやないですか!」

「あんたエセ関西弁がひどいよ。」

「エセってひどくないですか?」

 4人で取り囲んで、結局どうしたいのか、確認するんだけど、煮えきらない。人のことだとこれほどまでにヤキモキするものなのかと、思い知った。他人事だから、だけど。でもまぁ、弟分の大事なことだ。

「シンってやつのことが、きっと今も好きなんですよ。僕の出る幕じゃないんですよ。」

「かああああああああああ!!!!」

「サクラさん、落ち着いて。僕なんか怖い。」

「そんなんでどうするんですか!どうせまだその女の子が頭から離れないんでしょ!」

「・・・はい。」

「キャッ。」

「なら告白してくるしかないじゃないですか!」

「ねぇ、治療が終わってから、とかじゃダメなの?もしくはその友達が出てきてから、とか。」

「何言ってまんのん!姉ちゃん!」

「そろそろぶっ飛ばそう。」

「タイミングを逃したら、一生後悔しますよ!話から察するに、二度と会えないかもしれないじゃないですか!さよならして会えなくなって、二度とその燃えるような情熱が得られないと気づいたら、どうするんですか!」

「・・・」

 コネメガネの目が、腹立った。なんだよ。一般論の話だろ。あたしの話じゃないだろ。

 あたしケンスケいるし。

 こういう話でいちいち絡まれるの、ホント苦痛になってきたな。大人ならさらっと受け流した方がいいのか。

「もう、ダメですよ。会う方法も、どっちもないじゃないですか。」

「女の子は、正攻法で会えないの?」

「本人の前に、そもそも家族が会わせないようにしてるんですよ。」

「はぁ、なんか、そういうことが今の時代あるんだね。」

「なんか大昔の戯曲というか演劇の世界みたいだね。国道から大声で愛を語ろうよ。窓から笑顔で返事してくれるかもしれないよ。マイレイディ!マイラブ!」

 コネメガネが急に指を照明灯の方へ向けて悦に浸ってた。

「5階じゃ、声届かないよ。」

「もうあの受付の人に頼るのもね。」

「真希波さんの知ってる話だと、だいたいどうなります?」

「・・・叶わぬ恋で両方死んだり。」

「「「おい」」」

「もうやめましょうよ。帰りますよ、村に。おとなしくしてます。」

「あかん。」

 サクラが両腕を組んでにらんでいた。兄弟って言うのも似るんだな。あのドクターゴリラ、本気出すとこんな顔する。

「なんであんたが決めんのよ。」

「絶対あかん。許しまへん。絶対告白はさせます。」

「だからなんであんたが決めんのよ。」

「お兄ちゃん話聞いたら怒って街に返しますよ。男がすたるで!とか言って。」

「それで動画とったり話のネタにするんでしょ?」

「当たり前やないですか!」

「開き直るな!」

 ピンポーン

「ほら、お客さんだよ。」

「あ、誰だろ。」

 サクラがモニターの方を歩いて行った。

 あぁだこぉだ、話していた。あたしは、なんとなく、誰がきたか察しがついた。

 画面を確認したサクラが、真面目なトーンになった。

「あ、わ。あの。」

 そういってサクラがあたしの方を見た。

 あたしはサクラに向かって、黙ってうなずいた。サクラはそれを見て、モニター越しに対応していた。あと数分でここへくる。シンジとマリは、気づかず別の話を続けていた。

 どんな会話をするんだろうか。自分は、そのとき、どうあるべきだろうか。

 ピンポーン

 サクラが入口に歩いて行って、扉を開けた。

「相田先生・・・」

 リョウジが椅子から立ち上がった。

 無言でサクラに挨拶してから、家の中に入ってきた。部屋に静寂が広がった。バカップルも、黙ってケンスケを見ている。

 あたしに、一瞬目線を送った。

 リョウジを見つけてすぐにメッセージを送信していた。

     リョウジ見つけた。サクラの家に行く。あんたどうするの。

     行くよ。

 どんどんメッセージの文量が減っている気がする。あたしに合わせているんだろうか。それとも、だんだんケンスケとの距離がさらに縮まっているのかもしれない。それなら、いいんだけど。

 時間を考えれば、急いでここに向かったのだろう。

 リョウジに何て言うつもりだろう。

 まだわからなかった。信頼はしている。

 でも、怒って、叱って、殴るかもしれない。

 たまには殴ることも必要よ?そう思うでしょ?思う。ケンケンはそういうのしないじゃない。

 鈴原と話したことを、思い出していた。自分が言ったことが間違っているとは思わない。

 それでも、叱らないでほしい。

 自分は気持ちが抑えられなくて、殴りつけたくせに。

 ケンスケはリョウジを殴らないであげてほしい。

 あの、本当に申し訳なさそうにした、少年の顔は、大事にしてあげてほしい。親について悩んで、同じ年頃の少年たちと交流して自分を見つめて、同じ年頃の少女に恋をして、走り出してしまった少年を、殴らずに、抱きしめてあげてほしい。

 でも、最後は、ケンスケに任せる。

 あんたが、リョウジの父親代わり。ミサトにたくされた、大事な役目。

「先生・・・あの・・・」

 立って下を向いたリョウジの前に、黙って立っていた。

 周りも、黙っていた。

 それからケンスケが、リョウジの肩に手を置いた。

「ごめんな。」

「・・・え?」

 それからゆっくりと、リョウジのことを抱きしめていた。

 リョウジは、困惑しているようだった。

「なんで謝るんですか?」

「・・・僕は、お前の父親じゃないから、代わりとしてのその役目も、ちゃんと全うできなくて、辛い思いさせたな。」

「・・・悪いの僕ですよ。先生。すみませんでした。」

「良いご両親だったんだぞ。」

 

「ミサトさんから言われて、絶対にお前を見守るって、決めたのに、力になれていなかったな。」

「そんな、こと、ないです。」

「ごめんな。お前が立派に育ってることに甘えてて、ダメな大人だったな。」

「先生、ほんと、すみませんでした。」

「殴って教えてやるっていうのも、僕できなくてな、お前が大事だったし、自信がなくて。」

「先生・・・」

「ほんと、ごめん、な。」

 先に、ケンスケが、泣き出した。意外だった。

「お前が無事に戻ってきてくれて、よかった。」

「先生、すみません。」

 リョウジが泣きながら、答えてた。

 良かった。

 ケンスケのことが愛おしくみえた。

 二人が、親子のようにも、兄弟のようにも見えて、嬉しかった。

 

「来るならウダウダ考えてないで、早く来なさいよ。バカケンスケ。」

 そう言いながら、背中をグーで軽く叩いた。

「ごめん。」

 笑いながら言うケンスケの顔が愛おしくなって、腕を手でつまんでた。

 ちょっとして後ろの視線に気づいた。

 振り返ると、コネメガネがシンジの目を後ろから覆って見えないようにしていた。

「・・・なにしてんの?」

「・・・青少年には刺激の強いツンデレの現場を見まして。」

「ぼくもう限界です。」

「・・・バカップルがイチャイチャすんじゃないわよ。」

「「どのくちでいう」」

 

 

 ケンスケも混じえて、リョウジから話を聞いた。少年として、どんな経験を積んだかをリョウジはおとなしく、正直に、誠実に説明していた。親のことについては、村でもまた、ゆっくり話をしようと思う。

 入院している女の子の話について、ほほえましく聞いていたケンスケだけど、

「なんか、良い話だけど、僕から何か言えそうにない話だな。どうしたらいいか、全く想像がつかない。今何をすべきか・・・」

ってことだった。

「・・・リョウジは、このまま村に帰ると、後悔が残るか?」

 ケンスケが真面目なトーンでリョウジに話しかけている。

「・・・いえ。帰りますよ。」

「そうか?」

「・・・もうどうしようもないですし・・・」

「リョウジ君!」

「サクラちょっと黙ってて。あんた、ちょっと落ち着いた方が良いんだよ。今だけだって。そういう気持ちは。」

 リョウジに諭すようにあたしが言った。

「本当に気持ちがあれば、ちょっと時間がたっても残ってるもんだし、意外と時間がたてば落ち着くもんよ。今すごい好きだ、って思ってたって、時間がたつと、落ち着くかもしれないし。子供の時の、ちょっとした病みたいなもんだって。」

「うん。それはそう思うよ。」

 ケンスケが同意した。

「ケガ治ったら、また会いに行けばいいじゃん。または、その、シンって友達?そのうち外に出てくるんだから、その時にちゃんと話して、ダメならダメってことにしたらいいじゃん。彼女がその男とったりしてもしょうがないじゃん。あんたのこと思って、悪い関係続けないように気を使ってくれてるんなら、良い奴なんだから、つかず離れず関係続ければいいじゃん。今熱くなって告白がどうのとかいってるから、切羽詰まった感じになるんだって。」

「・・・いや、もう会いませんよ。」

「なんでそんな極端に考えんのよ。」

 リョウジは、黙って机の上を見ていた。

「今が一番重要な時期って、リョウジ君だってわかってるんじゃない?」

 コネメガネが口挟んだ。ちょっとだけ、目が本気になってた。

「・・・どうして。」

「タイミング逃しちゃいけない、って気持ち、姫だってわかってるくせに。」

 シンジが黙って聞いてた。ちょっと笑ってる。

 あの時の、わたしが、寄り道って言ったあの時、あの話、する気じゃないよね。

「煽らないでよ。」

「友人として、だよ。姫。これは、友人としての、アドバイス。」

「・・・生きるか死ぬかのことじゃないでしょ。」

「・・・まぁねぇ。でも、生きていくうえで大事なことだったでしょ?」

「・・・別に。」

「・・・ウソツキ」

 腹が立ってきた。なんでだろう。

 今は、リョウジの話だから。一度深呼吸した。

 これ以上混乱しても、いいアドバイスができない。

 生きるか、死ぬか、そんな時だったから。

 そういう風に、あたしとリョウジを比較してるのか、そう思うと、卑怯な気もした。リョウジは、今、本気で悩んでいるのに。

 考えてみたら、この4人が集まっているときに、こういう話してて、いいんだろうか。

「リョウジ君。」

「・・・なに?」

「その子が好きなんだ?」

「そうだね。」

 迷いなくそう言ったリョウジを、シンジは優しく笑って見てた。何かを思い出してるかもしれない。あたしはケンスケを見た。ケンスケは目を合わせると、机の上のあたしの手に手を重ねてくれた。申し訳なかったけど、少しだけ気持ちが落ちついた。

「どうにか、話はしたいよね。」

「・・・シンジ君、ありがたいけど、無理だし、もうあきらめるよ。」

 少し笑ってそう言うリョウジを見て、少しだけ、切ない気持ちになった。言っていることと、考えていることが、ズレているのを自覚した。

「でも」

 リョウジが笑った。

「こんな気持ちになると思わなかったです。」

 ケンスケの方を向いて、さみしそうに笑ってた。

「今まで、ちゃんと生きてきた気がしたけど、こんなに気持ちがぐらつくなんて、思ってなかったです。大人のつもりだったけど、今人生で一番弱くなってる気がする。でもなんでも出来る気もする。彼女が何か言ってくれたら。こんなに苦しくて、嬉しくなるなんて思ってなくて、ずっと混乱しているんです。」

 大人が全員黙って聞いてた。

「もう自分でも、どうしようもないんですよ。気持ちは。彼女が好きです。もうその気持ちも嘘はつけないし、ごまかせない。それで、あんなに嫌われちゃったし、別の好きな子がいるってことだったし。」

 リョウジは笑ってた。

「だから、このままもう終わりにしますよ。なんか、あとにとっておいて、って出来る気持ちでもないし。」

 笑ってたけど、力がなかった。

 本当に大事な気持ちを、あきらめた。そういう顔だった。

 さすがのサクラも、何も言えなかった。 

 

 

 

 ベランダに、マリさん、アスカ、ケンスケを呼んだ。

 タバコをすすめた。

 なんか、大人が悪だくみするにあたって、良い小道具になりそうな気がして。

 けげんな顔をされた。

「今どきタバコで悪ぶるなんて子供、いないんじゃない?ガキシンジ」

「わたし得意じゃないんだけど」

「体に悪いぞ」

 不平不満が爆発だ。先が思いやられる。タバコはもういいと思って片付けた。

「リョウジ君を村に戻して終わり、っていうんじゃなくて、ちょっと、提案があるんだ。聞いてほしい。」

 4人並んでから話をした。

 僕の計画を伝えた。そんなたいしたことじゃない。リツコさんの協力が得られれば、難しいことでもないはず。

 それにどんな結果が得られるかもわからない。全く何もなく、開始早々に終わるかもしれない。幕が上がって、罵声があびせられて、慌てて幕が降ろされて、そこで終わりかもしれない。でも、ちゃんと舞台が整えられたら、リョウジ君の為になるはずだ。そこでどう演じるかは、リョウジ君次第だけど。

「・・・シンジ君が気の利いた演出考えるとは思ってなかったよ。」

「はい今傷つきました。」

「僕そういうの恥ずかしくて考えられないんだ。大人になったな。碇。」

「あれ、どっかで聞いたセリフだな。何だろう?」

「格好つけてんじゃないよバカシンジ」

「ちょっとはポジティブに反応してよ!」

 僕は泣きついた。言わなきゃよかったかな?

「でも、まぁ・・・」

「悪くは、ないと思う。」

「リョウジのためだからな。でもリョウジがどうかな。」

「もちろん本人の意思が第一だね。もしOKなら、リツコさんに協力を依頼してもらえる?」

 

 これでいいのか、よくわからないけど、リョウジのためにひと肌脱いでやるか、って顔をアスカがしていた。

 視線を交わして、ちょっと照れた。

「そ、れは、彼女がどう思うかな。」

「もちろん、嫌がったら、そこで終わり。帰りたい、やめたい、って言った時点で終わり。ただそれだけ。」

「僕はそこで何をすれば」

「君が思うとおりのことをしたらいい。話をしたり、また会おうねって励ましたり、告白したり、それは君が決めることだ。あと彼女。」

「嫌がられるのかな?」

「わからない。僕たちは、舞台を作る。それだけだ。それしかできない。お膳立て、って言い方で良いのかな。結局のところ、君がやらなきゃいけないね。」

「・・・シンジ君たちに迷惑じゃないか?」

「リョウジ。いまさらそういうことを。」

 アスカさんが低い声で怒った。

「すみません。」

「どうする?」

「・・・この前、完全に嫌われていた気がするんだ。」

「それは、どうか、にゃ。女心は複雑よん。」

 なぜかアスカさんの目が死んだ。

「・・・相田先生。」

「申し訳ないけど、アドバイスはできないよ。専門外だ。」

「情けないこと言ってないで、なんか言ってやんなさいよ。」

 笑って手を上げてた。僕も笑った。

「僕なら盲目的に突っ込んで終わっちゃいそうだけどね。リョウジがそうすれば良いとも思わないから、よく考えな。」

 決心がつかなかった。リーナは、シンのことが好きでも、僕への気持ちは全くないのか。

 少しでもいいから、想ってほしい。僕のことを。でもわからない。

「シンジ君。すごく子供っぽく聞こえるだろうから、恥ずかしいんだけど、教えてほしい。」

「なに?」

「情けないけど、自信がでなくて・・・」

「うん。」

「・・・僕と同じ状況なら、シンジ君はどうする?」

 彼の目を見た。途中から、じっと僕のことを射抜いている視線が、紫色の目が、決意で力強くなっていた。

「絶対やる。」

 シンジ君がそういうと、相田先生も、アスカさんも、真希波さんも、目だけでシンジ君を見ていた。笑顔だった。

 決めた。

「じゃあやる。」

 このまま終われない。

「よろしくお願いします。」

 

 

 コネメガネが、2人だけで聞こえるくらいのトーンで話しかけてきた。

「一世一代のプロポーズをプロデュースしてるみたいだね。テンション上がってきた。」

「遊んでんじゃないよ。」

「楽しそうだよ姫。」

「・・・まぁ、否定はしないわ。」

「すっきりさせたいでしょ?」

 あの船の中を思い出していた。

「・・・ねぇもうやめてよ。」

「いじめたいんじゃないんだよ。姫にも大事なことだったでしょ?」

「・・・そうね。はい。そうですよ。くそ腹立つ。」

 白状した。

 嬉しそうにコネメガネが笑う。

「姫にもセリフを用意しなきゃ。」

「はっ!?なんで?」

「エスコート役なんだから。当然でしょ。」

「嫌だ。」

「シンジ君任せの演出で、リョウジ君たきつけたくせに自分はやらないんだ。」

「ングッ!たき、つけては、いないのに。」

「リョウジ君の一世一代の舞台になるかもしれないよ。姫がやらなくてどうするの?」

「ググッ。」

「格好いいセリフ考えておくよ。」

「恥ずかしいのだったら殺す。」

「にゃはっ。」

 

「碇なんで屋上なんだ?移動せず、個室で話した方がリスクが少ない。」

「ゲン担ぎ、かな。」

「ゲン担ぎ。」

「そう。僕の体験だけど、好きな人とのきっかけの場所だから。それに格好つくかなって。」

「・・・!!コネメガネが珍しく赤くなってる!」

「・・・やめて。」

「ニャンデレだな。」

「サクラ!!」

「はい!」

「カメラとれ!」

「了解しました!」

「やめてぇ!」

 

 逃げ回るコネメガネを追いかけまわした。

 リョウジが笑っていた。

 




 何回も書き直した部分です。どうやったら、リョウジ君にとってのメイン舞台を作れるか、と。ロマンス部分だから、うわ、はずかし、とか、そういう感情と戦いながら、全体が不自然にならないように・・・その上で全員がうまくまわるように・・・。難しいです。子供が大人にお膳立てしてもらう、っていうのも、格好悪かったりしますが、それを含めて、大人も、子供じゃん?みたいなことを含めて話が広がりました。相田先生の、父親母親代わりっていう役回りを、ここで消化させる必要もあったのですが、アスカとの絆みたいなシーンも含めて作れて良かったです。
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