アフターシンエヴァ「加持リョウジの物語」   作:ヨスキ

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二十二 『祈念碑式典』

 

 祈念碑ができて、その前にセレモニー用のテープが張られていた。あたしがマイクスタンドとスピーカーを用意した。でもそこまでが役割で、あたしも式典を楽しめるよう、昔のクルーと並んでみることが許された。

 式典のあいさつをする人は、村長の坂本さんと、鈴原やリツコ、それに何人かが並んでいた。あたしたち、旧クルーの関係者は人垣の左後ろの方に固まっていて、村人や関係者は中央から右手の方に固まっていた。

「えぇそれでは、この、記念すべきこの日に、こうして皆さんと完成の式典を開けることは、まことに」

「先生ながぁい」

「ちゃんと聞きなさいっ。」

アハハハハハハ

「まぁええわ。村長にはしめてもらわんと、いかんからな。さっ、村長。」

 坂本さんがゆっくりマイクの前に立つ。足取りはゆっくりで、

「はい、村長さんです。」

 アハハハハハ・・・

「えぇと、この祈念碑ができたのは、本当にうれしいことでね。いいですね。こういうのって。とても良いと思います。祈る場所ができるっていいと思うね。」

 相変わらず、軽い口調のおじいさんだ。

 せめてセクハラやら、長い話やらにはならないでほしかった。あのおじいさんを知っている人はだいたいそう思っていたと思う。

 だから意外だった。

「最近奥さんを亡くしましてね。」

 話を聞いている人の声が、ピタッと止まった。

「次男も早くに亡くしていたんだけど、17年前のニアサーとかが、結構大変だったんだけど、なんとか生き残れて、最後の最後にかみさんと二人きりで過ごせて、幸せだったね。それで、かみさんは、最後病気だったんだけど、最後の方で話がちゃんとできてね。ごめんな、もうちょっと幸せにできたらよかったんだけど、っていったら、怒られて、幸せだったって言われてね。最後に何かしてほしいか、って聞いたら、キスして、とか、言うのよ!なかなかおしゃれなかみさんでしょ?それでしてやって、最後抱いてあげたらね、ほんと人間ってすごいよね。それからちょっと笑ったように見えて、そんなに時間たたずに旅立っていったの。」

 みんな黙って聞いていた。

「それで、鈴原君とかにいろいろしてもらって、幸せだったよね。たぶんかみさん、僕に幸せをくれるために言ってくれたんだよね。」

 明るく話す男性が、なんか頼もしく見えた。

「セカンドインパクトもあったし、人生結構大変で、でも僕みたいに最後に言葉を交わせる時ばかりじゃないんだと思うのね。そういう知り合いもいっぱいいて、いきなり何もなく別れがきて、お墓も作れない、ってことがあったりしてね。昔はお墓があって、その下にはその人の体や骨がしまわれていたりしたけど、そうできないことも結構あったと思うの。」

 日向さんが眼鏡をはずしてうずくまってしまった。周りの人が肩を貸してあげたり、背中をさすったりしている。声を我慢できずに、泣き出していた。

 周りでも肩を震わせて、泣き出している人がいた。

「あのぅ。お墓!っていうんじゃなくて、祈念碑っていうのが、いいと思うのね。みんなの思いを受け止めてくれる祈念碑が、敵とか味方とか、誰がどうとか、何が正しくて間違っていたかとか、そういうのはもう、全部一緒にして、祈らせてもらえるってのが、良いと思うの。ありがたいよね。だから、とても良いものを作ってくれたと、感謝してます。どうもありがとう。」

 あいつの姿を探した。なかった。

 リツコが、泣いていた。

「みんながいろんな人を思い描いて、祈るって言うのが良いと思うので、祈りましょう。手を合わせても、なんでもやり方はそれぞれで良いから。」

 みんなが鼻をすすったりする音が聞こえた。日向さんだけじゃなくて、クルーの中には、もう泣き出している人がいる。

 多くのクルーが誰よりも、あの女性の姿を思い描いている。

 あたしも、ちょっと、がらにもなく、だったけど。

「それと、僕はさっき話した通り、奥さんを亡くした寂しい老人なので、今やもめ、独り身なので、奇麗な奥さん募集中です。よろしくお願いします。」

 ・・・誰も反応しなかった。

 話は終わったようだった。

坂本さんが何かを待っていたけど、誰も反応しなかった。鈴原が近づいた。

 マイクに近づいて、小さい声なのにスピーカーで大きく聞こえた。

「村長、村長。」

「なに。」

「良い話と笑う話のギャップがすごくて、みんな置いてけぼりです。」

「・・・すべったの?」

「すべりました。」

「・・・なんで?」

「いや、村長。良い話で終わらせないから。」

 クスクスクスクス・・・

「おかしいじゃん。笑ってよ。」

「いや無理ですよ村長。」

「僕の新しい奥さんは?」

「・・・無理です。これから一生一人です。」

クスクス

「・・・老い先短いのに?」

「村長長生きしそうですけど、一人です。」

 アハハハッ

「やだぁ。新しい奥さん欲しい。アスカちゃんみたいな。」

 突然あたしの名前が出た。びっくりした。あたしの周りにいた人たちもびっくりして、あたしを見た。

「アスカちゃん。アスカちゃんどこですか?」

 マイクででかい声で言うと、前の方にいた人が段々とあたしの方を見始めた。あたしの周りにいた連中が、あたしの方を指さして、ある人は手を振っている。

 やめてほしい。恥ずかしい。

「あ、いたいたいたいた。アスカちゃ~ん。結婚して~。」

 前の方にいる人たちが笑い出した。あたしの方を見て。

 ほんとふざけたじいさんだわ。

 話がうまくまとめられなかったからって、若い女話のネタにして。

「アスカちゃ~ん。」

 すごい手を振ってきた。困ったときに女頼るのってどうかと思う。

「お~い。」ブンブンブンブン。

 はいはいはいはい、ブンブンブンブン。

 あたしが合わせて、笑いながら手を振るのを見て、泣いていた人たちが笑いだした。

 まぁ、雰囲気良くなるなら、別に良いけど。

「愛してるよ~」ん~~~~~チュッ。

 投げキッスしだした。

 ハイハイハイハイハイハイ、チュッ。

 全く、どこまでもふざけたじいさん、

 

 ・・・・・・なんでみんな黙ってこっち見てるの?

「式波少佐が」

「投げキッス・・・?」

 ・・・・・・そんな意外?

 

 坂本さんがマイクを手に持って、低い声で言った。

「見たか、皆の衆。これが、モテる男のテクじゃ。」

 ドッと式典にいた人が沸いたかと思うと、あちこちで声が上がって、手がたたかれた。

「俺にもキスして!」とか

「村長格好いい!」とか

「キャアアア」とか

「アハハハハハ」とか

 なんかあちこちで声が上がった。

 結局坂本さんに全部面白くまとめてもらった感じだった。

 まったく、たいしたじいさんだな。

 あれが年の功っていうんだろうな。

 年の功って、いいな。

 あたしもケンスケと年を取りたい。

 もう置いてけぼりはいや。

 

 式典のスケジュールが全部終わってお開きになった。

 これからは宴会。

 あたしは、

 途中から気持ちが沈んでいった。

 いい式典だったのに。

 




 日向さんをうまく転がしたくなったんですが、タイムオーバーでした。技量もないので。祈念碑を建てるっていう設定を思いついて、たぶん月並みなんでしょうけど、それでも全体的におさまりがよかったな、良かった、と思ったところです。
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