アフターシンエヴァ「加持リョウジの物語」   作:ヨスキ

23 / 26
二十三 『はじめて世界と母を見た日』

 

 やらなきゃいけないことがあった。赤木博士にもらった缶。自分の寝床から持ってきていた。今日開けよう。何が入っていても、受け止めよう。そう思って持ってきた。

「相田先生。赤木博士。」

 話していた二人の前に缶を持って行った。二人がこちらを見た。

「・・・持ってきたのね。」

「はい。あの、まだ開けてないんです。怖いんで、一緒に見てもらっていいですか?」

「・・・いいわよ。」

「ここに座りな。」

 二人が間を開けてくれた。おとなしく座った。緊張していた。

 深呼吸した。

 いつのまにか、クルーの方々ほぼ全員が、僕を囲んでいた。

 缶をおいて、もう一度深呼吸。見ているみんなも中に何があるか、気にしていた。

 よし。

 缶に力をこめた。結構頑丈なやつだった。

 ・・・開かない。笑われた。

「ちょっと頑丈にしすぎたわね。」

「いや、ちょっと・・・こう。」

 音をたてて開いた。

ゆっくり中を確認する。手紙や、メモリーカードも見える。

でもやっぱり、探したのは、写真。見たかった。親の顔、ってやつが。

見つけた。

はじめに見た写真は、20歳くらいの、男女が3人。

「艦長だぁぁぁぁぁ!!」

「加持ぃぃぃぃ!!」

「若ぁぁぁぁぁい!」

 赤木博士に説明してもらいたくて、そちらを見た。

「大学の時の写真。残ってたやつ。3人でとったの。」

 ちょっと泣いてる。

「あら、やだわ。」

 それだけ言って、涙ふいていた。

 写真は何枚かあった。さっきの写真をめくった。

 見つけた。少しくせ毛で、黒髪の女性が、その髪を乱した状態で、顔色が悪くて、汗をかいている写真。ベッドだ。隣には赤ん坊がいる。同じような、くせ毛の赤ん坊。

 僕だ。

 笑ってる。

「君が生まれた直後よ。」

 言われて、実感がわいた。僕が生まれた時。母さんが、僕を生んだ時。

「写真とるなって言われてて、無視してとったわ。」

 赤木博士が涙をふきながら言った。

 

 写真は2枚あった。今見た写真の1瞬後。数秒後だろうか。

 母さんが幸せそうに、僕に、キスをしていた。

 おでこに。

 おでこが熱く感じた。

 

 指に力が入った。写真を傷つけないように気を付けた。

 これは

 

 ダメだ。

 

 涙が止められない僕を、先生と博士が、背中に手を当ててくれていた。

 周りにいた人も泣き出していた。

「僕、俺、さみしくて。」

「・・・そうでしょうね。」

「みんな優しくて、でも、自分の中の気持ちもあって、迷惑かけて」

「気にするな。」

「本当は、親が、俺の為に思ってくれてるならって思えたのに、なんか、」

「ごめんね。」

 赤木博士が、僕の頭をなでてくれた。

 一生懸命、横に振って、誰も悪くない、ってアピールした。

「最後に思ったのは、なんで、一緒に死んでって、言ってくれなかったの、って思ったりして。」

 会場が静まり返った。

不適切な言葉だとは分かってた。こんなこと言って、誰も、優しい気持ちになるわけない。

 最後まで、子供のわがままみたいなこと言ってる。

「船で死ぬしかないなら、お母さんが抱いてくれたり、僕がお母さんを抱いていたら、それでも死んだって、かまわない、って思ったりして。」

「そんなこと言っちゃだめよ。君が生きていけるために、そうしたんだから。」

「・・・はい。わかってるんですけど、なんか、村から見たヴンダー思い出して、あそこから見てたんだって思ったら、なんか・・・」

 思い出していた。あの船。

 誇らしかった。

 船の中に、母さんがいた。

「・・・見てたわよ。甲板にいたわけではないけど。彼女は、いつも君を想っていた。あの時も、絶対にそうよ。」

 また涙が止められなくなった。息が苦しい。涙が熱い。

「最後。どんなでした?」

 そういうと、周りにいた人たちが詰め寄った。泣きながら。

「立派だったぞ。立派だった。本当に、最後まで、立派で・・・」

「艦の責任者はは私です、っていって。全員に退官命令を出したの。誰も反対しなかったのよ。」

 日向さんが、涙をこぼしながら、僕の肩をつかんで言ってくれた。

 長良さんが、優しく説明してくれた。

 みんな泣きながら僕のことを見てくれていた。

「すみません。変なこと言いました。」

「みんな同じだ。」

 高雄さんが、低い声で、落ち着いて言ってくれた。

「誰も彼女を行かせたくなかった。一緒に最後までいたかった。それはみんな同じだったぞ。君の父親も同じように立派だった。誇りに思って、二人の分まで生きろ。」

「・・・はい。」

 涙を拭いて、言うべきことを言おうと思った。大人なんだから。

「お母さんのこと、お父さんのこと、ありがとうございました。」

 畳におでこをつけて、みんなに伝えた。直後にみんなが抱き起してくれて、一緒に泣いてくれた。

 泣き顔が見られたくなかったんだけど、起こされた。みんな泣きながら笑ってた。

 みんなが手を叩いてくれた。みんな優しい。

 お母さん

 お父さん

 ありがとう 

 




 リョウジ君が救われるシーンとして、ちょっと最後に急に増やした場面ではあります。車を洗うシーンで終わる、っていうつもりだったんですけど、なんか足りない気がしたので。でもやっぱり、もうちょっとアイディアがあればよかったのに、と思ったり。難しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。