アフターシンエヴァ「加持リョウジの物語」   作:ヨスキ

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九 『お腹とお墓』

 村の祈念碑建設工事が段々と進んでいた。道路もできつつあった。お金ってのは、あるところにはあるんだって、こういう時思う。民衆が辛い労働を強いられているとき、王様の住む宮殿から同じ格好の男たちが何か材料を肩に担いで、通り過ぎていく感じ。それだと印象が悪すぎか。まぁ、あっというまに何かが出来上がっていくのを見ると、村ももっと楽になるようにお金が流れないかな、と思ったりする。そうすれば便利になって、ここが無くならずに済むのに。流れって、どうやったら変えられるんだろうか。

 

 最近、クレイディトの寮にいなきゃならない時以外は、相田先生のところにいた。村にも僕個人の居住スペースがあるんだけど、日中仕事がないときとか、夜のご飯の時とか同じ時間を増やすように言われていた。きっと親のことを話したから、僕の変化が気になったんだと思う。ぼく自身も、家族と暮らしている感覚もあって、特に嫌だと思わなかったから、言われたとおりにしていた。

 ただ、アスカさんが、最近よくからんでくるようになった。僕よりあの人の方が、変化が大きい気がする。

「あんた最近携帯ばっかり見てない?」

「そうですか?」

「女でしょ?」

「乙女さんですね。」

「照れ隠しでしょ。」

「相田先生、アスカさんがしつこいです。」

「ケンスケに頼るんじゃないっ。」

「・・・いや友達ですよ。」

「女でしょ。」

「なんでそんなに気にするんですかっ。」

「正直にいいな。」

「いやです。プライバシーの侵害ですよ。」

「ケンケン、リョウジが女たらしになっていくよ。」

「相田先生に頼るんじゃないっ。」

「・・・もう放っておきなよ。子供じゃないんだから。」

「やっぱり先生話がわかる!」

「お年頃の男は、女の子のことしか考えてないんだから。」

「そ、んなことないですよ!」

「いいよ。健全だよ。」

「名前教えな。」

「絶対嫌です。」

「携帯貸しな。」

「絶対嫌ですって。」

「どんな子?」

「もう嫌だっ!」

 先生の家から走り去った。

「ちょっとからかいすぎじゃないか?」

「・・・こんなに楽しいとは知らなかったわ。ちょっとヒカリのところに行ってくる。」

「・・・最近よく行くね。」

 すいか畑にいた。

 すいかがいいぞ、って言われて育て始めて、なんか性に合うというか、確かに面白くて、個人的にも作っている。

 小さいすいかが、段々と大きくなる。なんか、母親のお腹を連想していた。人に言えないけど。

 単純に、段々と育っていく野菜を見るのは楽しい。達成感がある。

「はじめまして。」

 畑の前で声をかけられた。振り向いたところにたっていたのは、白髪というか灰色の髪をした、色の白い男性だった。作業服を着ているけど、なんか着慣れていないのか、本人の特徴にあっていないのか、サイズも違うのか知らないけど、ちぐはぐな印象だった。

「・・・はじめまして。」

「加持リョウジ君、だよね。会いたかったよ。」

「・・・はぁ」

 渚カヲル、と名乗った男性は、はじめからなれなれしいというか、なんか妙な雰囲気の人だった。

 ただ父と友人だった、と聞いて、少なからず緊張した。父親については、あまり詳しく人となりを聞くことがなくて、どう反応したらいいかわからなかった。

「渚、さん。」

「カヲルって呼んでよ。」

「カヲル、は、無理ですよ。年上ですし。」

「シンジ君とは仲がいいんだろう?僕は彼と友人だよ。同じように接してくれると嬉しいな。」

「シンジ君と友達なんですか?」

「あぁ、親友以上の関係だ。」

 あれか。大人の世界の。

「なにか別のことを想像している?」

「心が読めるんですか?」

「親密になりたいと思う人の気持ちは、わかると思う。」

「ナンパみたいですね。僕男ですよ。」

「ノープロブレム。」

「急に英語。」

「・・・お父さんに似ているね。」

「・・・そうですか?」

「嬉しいよ。」

「僕は別に嬉しくないです。」

「嫌いなのかい?」

「好きも嫌いもないです。会ったことないんで。」

「そうだね。でもいい人だった。会えなかった人でも好きになることは良いことだと思うよ。」

「・・・はぁ。」

 変な人だ。

 すいかの育て方を教えてほしいというので、なんだか居心地は悪かったけど、いろいろと話をした。

変な人だ。

「・・・大丈夫ですか?」

「・・・大丈夫。ちょっとぼうっとして、動悸がして、体温が上がっている気がするだけ。」

「熱中症ですよ!帰りましょう!」

「・・・農作業って大変だね。生きていくのって大変だ。」

「やべぇ。幻覚を見てる。末期だ。」

 鈴原先生のところへ担いでいった。

 

 

「すいません。役場から来ましたぁ。」

「・・・フフッ。どうぞいらっしゃい。これからよろしくお願いします。」

「クスッ。じゃあ、すいません。お名前を教えてください。」

「綾波レイです。こちらは娘のアンです。」

「あらかわいらしい子。誰に似たのかしら。」

「両方ですね。」

「のろけてるわね。」

「でも本当よ。」

 レイが村にやってきた。綾波レイ。零号機パイロット。エコヒイキ。あたしの友達。

 年月を重ねると、色々な関係性に変化するもんだ。あたしも年を取ったんだな。

「アスカもゆっくりしていって。役場のお姉さまだものね。」

 二号機パイロット、とは当然もう呼ばない。役場のお姉さんと、村に引っ越してきたお母さん。変な感じだけど、自然な感じがする。

 感情が豊かになって、おしゃべりがどんどん上手になっている。もともと口数が少なかったレイが、感情を知って、その感情のままに話が上手になっていくと、印象がガラリと変わる。そして今は決定的に

「かわいい・・・」

 赤ちゃん。いまだに目の前の奇跡が信じられない。でもそこにいる。かわいい目をしてこっちを見てる。お母さんと同じ髪の色。

 母親になって、彼女の印象がまた変わった。強くなった気がする。

 アンちゃん。

 1って意味なんだろうか。

 数字、番号を意味する名前をつけることに、あたしは、少し緊張してしまった。これまでの、自分と同じ形の顔。あたしも他人事じゃなかった。

 でもそれも母親の顔を見るまで。

 本当に、幸せそうに、優しそうに、見守っている。

 愛とともに、名前を呼んでた。

 ちょっと泣けた。

 アンちゃん。

 素敵な名前。

「・・・見ていい?」

「・・・触っていいよ。抱っこする?」

「いい、いい、いい。」

 恐ろしい。目の前のか細い命。この手に抱くなんて。脅威を相手に爆風の中を這いずり回る方が、まだ気が楽な気がする。

 

 おっぱいをあげているところを見せてもらった。

 ただ黙って見ていた。不思議な、幸せな感覚だった。自分だったらどうするだろう。母親の立場で、赤ちゃんの立場で。

 そんなこと今はあるわけないんだけど、目の前の母親と赤ちゃんの両方を見ていた。

 終わったらしい。

 赤ちゃんが、むっふーん、みたいな顔してる。ちょっと意外。笑顔とかじゃないんだ。

 でもかわいい。

「じゃあ、抱っこして。げっぷさせてくれる?背中をトントンすると、げっぷするから。」

「えっ!?はっ?ちょっ、ちょっと、ま、ま」

 突然わきに手を差し込んだ状態で、赤ちゃんが搬送されきた。3号機みたい。なぜか赤ちゃんが仏頂面。あたしを見てる。

 わきに手を差し込んで、肩に置いた。

「わっわっわっわっ。赤ちゃん。すごい。やわらかい。あったかい。小さい」

 何言ってんだあたし。

 トントントントン…

「ねぇ、これでいいの?強すぎない?そもそもこのあたり叩けばいいの?」

 トントントントン…

「げっぷって、ゲップっていうの。ゲブっとかいうの?」

 トントントントン…

「ねぇ、合ってる?レイ?お母さん?ママ?ちょっと?」

 トントントントン・・・

「・・・寝てる。」

 トントントントン・・・

 ケッフッ…

「はぁぁぁぁぁっ!?言った。ケフッって。超かわいい。」

 誰だあたし。

 しきなみあすからんぐれーもとせんじとくむしょうさよしっ。落ち着けあたし。

 キャラが崩壊、ってやつだ。

 

「はっ。ごめん。寝てた。」

「お疲れ様です。ママさん。」

 ゲップの後、抱っこに変えていると、無表情からだんだんと寝ていった赤ちゃんを見て、幸せな気分になっていた。やっぱり両親に似てる。

 かわいい。

 お母さんって大変だな。

「ほんと大変そうだね。なんか目にくまあるし。」

「夜泣きがあるからね。なんか、すごい、」

「・・・寝た。」

 ほんと大変なんだな。

 レイを起こさないようにしてしばらくすると、どっかから父親が帰ってきたので、天使を引き継ぎした。

「久しぶりだね。会えてうれしいよ。」

「・・・あんただけはなんかまだ緊張感がとれないわ。」

「シンジ君のおかげで、こうしてまた会えた。これからは村にいる友達として接してくれるかい?」

「前向きに善処します。」

「ありがとう。」

「あんたどこまで本音なのかしら。」

「本音とウソを切り替えて立ちまわることは苦手だよ。黙ってるのは得意かな。」

「コネメガネと一緒で、底が見えないわ。」

「でも彼女のことは信頼している。僕のことも信じてほしいな。」

「これからの行動次第ね。母親を助けてあげなさいよ。言われなくてもだろうけど。」

「はい。これからよろしくお願いします。役場のお姉さん。」

 抱っこの仕方が、よく似合ってた。当たり前だけど、父親なんだな。

 

 

 久しぶりに街に行った。リーナと会うのも久しぶりの気がした。

 でもシンがいない。携帯に連絡しても出ないし、メッセージも見ている様子がない。家に行っても、誰も出なかった。あの親父さんに出くわすのかと不安だったが、結局シンも誰も会えなかった。

 何かあったんだろうか。

 リーナは笑顔だったけど、やっぱりさみしそうだった。

 今車のハンドルを握っているのは、タケだった。

 タケ。マッちゃんと一緒に最初に僕に絡んできたやつ。

 似てるって思ってたけど、よく見ると全然違った。妙な感じだ。今まで興味がないから、きっとみんな同じで特徴がないんだって見方をしていたんだと思う。

 マッちゃんは、年下の雰囲気があって(結局何歳なんだか聞きそびれている。)タケは同い年。兄貴分と子分って構図は変わらないけど、タケは、正直言って好きになれなかった。

 なんかいつもイライラしていて、そのくせ遊ぶときに無茶をしたがる。シンがいるとおとなしい。いないと調子にのる。自分の力を誇示したがる。

 今もハンドルを調子に乗って左右にゆすったりしているけど、正直言って楽しくない。助手席の女の子とゲラゲラ言い合ってるけど、一番後ろの僕たちは、なんだか気持ち悪くなってきた。

 リーナの方を見ると同じように思っているのか、笑顔なんだけど、眉間にしわをよせて僕の方を見ていた。ただ、ちょっとだけ連帯感ができていて、それだけで少し心がやわらいだ。でも相変わらず車が、一人よがりに右に左に動いてる。

「ちょっと危ないよ。」

「あぁっ!?」

「危ないって!もうちょっと普通でいい!」

「あ、りょーかーい」

 そう言いながらわざともう一度左右に振った。全然面白くないのに。ダメだ。聞きゃしない。黙っていた方が良かったかもしれない。

 あきらめていたら、車が突然

 ガガタッ!

と、何かを踏んだ感覚があった。自分の座っているところの下を、何か硬い何かが、車の下を通っていったような、気持ちの悪い感覚。

 車が急停止して、車内が静かになった。

「なに?どうしたのタケちゃん?」

「やべえひいた。」

 あわてて外へ出た。運転手は黙ってた。

 暗い道路に何か小さいものが落ちている。

 一瞬だけ、赤ん坊のような大きさだと思ってしまい、血の気がひいた。

 近づけなかったけど、なにかが手遅れになる前にと思って、近づいた。

 タヌキだった。大人のタヌキ、1匹。村でもよくみるようになった。自然動物。畑作り側からすると害獣とされる動物。

「んだよ!タヌキじゃん!」

 気が付くと運転してたタケが近づいてきた大声を上げた。今更だけど酒臭い。気にしてなかった。

 タケは安心したのか、その倒れてこと切れている、少しだけ痙攣しているタヌキに近づいて、靴で軽く蹴りだした。

「うぅわ。きめぇ。はじめてみた。」

「ほんとだ。街にもいるんだね。」

 タケとマッちゃんが話しているのが聞こえる。なんで明るくしゃべっていられるのかわからなくて黙って見てたけど、蹴る脚の強さが気になって、さっきまでの運転へのイライラがつのって喋ってしまった。

「よせよ。」

「・・・はぁっ?」

「いや、よせって。いくらなんでもかわいそうだろ。」

 そういうと、タケがきょとんとしたあと、不快な高い声で笑い出した。

「うける。やっぱ山の人間だよな。家族ひかれてイラッとした?」

 タケが酒に酔って乱暴になるのは、みんな知ってたから基本相手にしなかった。相手にするやつもいたけど、僕は近くに寄りたくもなかった。

 今は、シンがいないこともあって、余計にイライラした。

 マッちゃんとまた話し出したけど、途中で自分がコントロールできなくなった。

「マッちゃん、もう一回ひいてトドメさそうよ。」

「おい!」

 僕の腕を誰かが引いた。リーナだった。でも、もう遅かった。

「あ?」

「いいかげんにしろ。」

「なに?喧嘩?とむらいなんとか?」

「下手くそな運転で気分悪いんだよ。」

 タケの眉間にしわが寄った。マッちゃんと女の子が、タケの前で手を添えて静止してた。

「はぁっ!?」

 完全に喧嘩腰になったけど、にらむのをやめなかった。リーナが僕の腕を引く力が強くなる。相手にするな、って。でもイライラした。

 タケの方もそうだった。いかにもって感じで

「いいかっこうしてんじゃねぇよ!」

とすごんできた。それをマッちゃんがなだめている。

「ダメだってタケちゃん。シンちゃんにぶっ飛ばされるよ。喧嘩しちゃだめだって。」

 聞こえてるのか、聞こえてないのか、タケがしばらくこっちをにらんだあと、車の方に歩いて行った。マッちゃんも女の子も僕を見ないで、付いて行った。

「リーナ行くぞ!」

 リーナは、僕の腕をつまんでいた。おびえたり、怒ったりもしていない。まっすぐタケの方を見ている。

 タケが眉を上げて、なぜそうするのかわからないって顔で、運転席に乗ってから窓から手を出してドアの外側を叩いた。

「おいっ!乗れよ!」

 リーナは、口に笑顔で、手をひらひらさせてた。その姿を見て、タケは、文句も言わず、イライラした顔のまま前を向いて、しばらくして車を走らせた。

 海の見える、誰もいない道路で、2人取り残された。

 死ねっ、って捨て台詞に、いらついていた。

 

 さて

 どうしたもんかな。タヌキは、もう動かなくなっていた。

「どうするの?」

 彼女が聞いてきたけど、しばらくどうしようか考えていた。近づいて、作業着の袖を伸ばして、直接は触れないようにした。大きさから言って、なんとか動かせるな。よし。

 いつのまにか真横にいた彼女が、触ろうとした。

「ダメ!」

 ビクッてなって、手を引っ込めた。驚いた顔で僕を見ていた。

「雑菌とかが多いから、直接触っちゃダメ。あっちいってて。」

 膝を抱えて、不満げな顔していた。

「ごめん。大きな声出したね。」

 口をとがらせていた。なんでいちいち可愛いのかな。

 とにかく、タヌキをちょっと動かして周りを見ると原っぱの脇に、空き地みたいな場所でがあって、そこに穴を掘った。近くに見つけた大きめの石を使って。

 罪悪感があった。殺してしまったことも、隠すように埋めていることも。

 お墓なんて、大したもんじゃないのは分かっていたけど、一応罪滅ぼし的にそうした。

 そこに入れ土をかけた。

「なにか墓標みたいなものが必要かな?タヌキの名前と、没年とか。」

「いらないよ。」

 笑うのも不謹慎なんだろうけど、なんか冗談に笑っちゃった。

 ひいた本人を責めつづけられるほど、偉いわけでも優しいわけでもなんでもない。

「・・・こいつに迷惑なんじゃないかな。人間に殺されて、墓標まで勝手に作られたら。」

 特に考えずそう言ったんだけど、リーナは何か考えていた。

「自然に還る。それだけだよ。お墓なんて傲慢なのかもしれない。」

「なんか難しいね。」

「まぁ、僕もよくわからない。」

 そういいながら、地面が盛り上がったところを2人で見ていた。

「ご両親のお墓って、あるの?」

「いや。まだない。あんな時代で、しかも遺体がないから、まだ特別には作ってない。どう作るのかも決められてないんだ。」

「ほしい?」

「いや・・・わからない。お墓って、生きている人のためのものなのかな?」

「また、難しいこと言ってる。」

「ごめん・・・」

 両親には、お墓が、あったほうがいいんだろうな。たぶん。きっと愛されていた。周りの人に。

 僕としては、よくわからない。本人たちがどうだったかもわからないのに、お墓なんてどうしたらいいかわからない。

 僕がどうするか、みんな待っているのかもしれない。

 悪いことをしているような、焦りと不安があった。

「両親のこと好き?」

「・・・いや、前も言ったけど、わからないよ。会ったこともないから。」

「会わなくても好きになることあるんじゃない?」

 誰かに言われたことがある気がした。カヲル君だ。

 そういうこともあるんだろうか。好きになっていい人なんだろうか。たぶんそうだけど、素直にそう思えなくて、混乱していた。

 どんな顔をして、僕を見る人だったんだろう。

 

 気が付くと、リーナとの距離が近い気がした。

 右腕のすぐ近くに彼女がいて、不思議に思って振り返った。

 腕を軽くつかまれて、彼女の綺麗な顔がとても近いことに驚いて、動けなくなった。

 目が薄くなって、少し潤んでいるように見えて、現実感がなくなっていた。

 息を悟られないように止めた。彼女の眼は、礼儀正しく閉じられていた。

 時間の感覚がなくなっていた。

 どんどん顔が近づいていたのに、僕は身じろぎもできなかった。

 いいにおいがして、唇が柔らかかった。

 彼女の気持ちが僕に近づいてくれたように、ほんの少しだけ唇が動いた。

 キスをされた。

 どうしてかはわからない。

 

 適切な距離を保った顔が、それでも近く感じて、息がほとんどできなかった。

 また薄く開いた目が、僕を射抜いていた。

 どうして。

 何か言わなくちゃ。

 何か

「シンは・・・」

 考えて出した言葉がそれだった。

 シンが好きなんじゃないの?

 気の利いたセリフとは、逆方向の言葉だった。慌てた。でも彼女はいたずらっぽく笑った。

「・・・あらら」

「・・・ごめん。そうじゃなくて。いや。」

「・・・もう付き合ってないよ。」

「・・・え?」

「・・・もう別れたの。安心した?」

「・・・・・・」

 驚いていた。二人の親密な空気は、僕の勘違いだったのかもしれない。

 嬉しさがこみあげてきたけど、悟られたくなかった。

「そう、なんだ。・・・もう一回してくれる?」

「だめ。最初の言葉が0点だったから。」

 彼女はお墓から離れて、道路の方へ歩き出した。僕に背を向けて。

「ちょっと、ちょっと待ってよ。」

「もう帰ろう。」

「あの、がっかりした?」

 彼女は僕に笑いかけた。

 とてもきれいで、何も言えなくなった。

 2人で、歩いて、街灯が照らす道路を帰った。

 月明かりは少なかったけど、後ろから見る君の姿が神々しくて、現実とは思えなかった。

 




 登場人物にとって重要なシーンと思って、悩んで、作って、結局あぁ技量不足だなぁと思う、痛感することが多かったです。ここは特にそう。二次創作的にキャラクターを転がしているのは苦じゃなく楽しいんですが、やっぱり、難しいです。
 二次創作的な点では、レイの赤ちゃんがいる、ってところですが、名前を考えていくうちに、わりとあっさり決まって、面白かったです。本編の、リョウジ君の君の名前は?っていうシーンから、名前を少し気をつかうとおもったんですが、割とうまく名前そのものはともかく、エピソードを考えるのは面白かったです。
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