「やあ、僕はロビン・グッドフェロー」 作:隠したい年頃
彼は、ただ目的を達成するために進んでいる。無駄な行動は極力避け、最善の選択をする。
「彼女の攻略だけど、僕は役に立てそうにない」
不自然な行動を取らないように意識し、完璧に振舞っている。
「......やっぱり、こうなるとは思ってたよ」
だが、それはいつまで続けられるのだろうか。もうとっくに、ボロは出ているかもしれない。
「こうなったら、もう見過ごすことはできない。少し反省してもらうよ」
結局、彼はただの一般人なのだから。
時は過ぎて放課後、時崎狂三が五河士道に声をかけている。内容は原作通り学校の案内。
僕は帰ろうとするのだが、五河士道に呼び止められた。
「......どうしたんだい?」
「ああ、いや、ロビンは狂三と知り合いなんだろ?じゃあ俺なんかよりロビンに教えてもらった方がいいと思うんだけど......」
「あらあら、
時崎狂三はそう言って僕を見る。
推薦なんてしてないんだが......まあいい。乗ってやるとしよう。いろいろ都合もいいし。
「そうだよ。理由はいろいろあるけど......ちょっと来てもらえる?」
「あ、ああ」
そう言うと、五河士道は僕についてくる。時崎狂三には聞こえないように、小さな声で説明する。
「まず、これだけは言っておくよ。彼女の攻略だけど、僕は役に立てそうにない」
「......そう、か......」
「だから、彼女がどんな精霊か、少しでも君に伝えたくて彼女と二人きりになれる状況を作った。僕には少し、説明が難しいからね」
まあ、最悪の精霊という一言で済むものではあるが。
「......なんとなく、わかった。ありがとな。なんていうか......ロビンに頼りきりになっちまって」
五河士道は申し訳なさそうな顔で言う。それに僕は笑顔で返す。
「いいや、大丈夫さ。それに、士道は一人じゃない。だろ?」
「......そうだな、うん。ロビンがせっかく作ってくれたこの機会。絶対に無駄にはしない」
「ああ。その調子だ。じゃあ、後は頑張ってね」
僕はそう言って教室を出る。
はぁ......使いやすい駒ではあるが、目を離すとすぐこれだ。だが、お互い目的には不干渉という取り決めなので仕方ない。
しばらくはやることもないだろう。ゆっくりと時間を潰そう。
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放課後、買い物をした帰りに路地裏ツンと鼻につく匂いがした。これは。
「血の臭い......ということは」
僕はその路地裏に足を踏み入れる。
先に進んでいくと、そこには予想通り、血溜まりと死体となっている時崎狂三がいた。
「.......やっぱり、こうなるとは思ってたよ」
これも原作通りのイベントだ。
不幸にも三人のチンピラにぶつかってしまった彼女は、彼らに連れられ路地裏に入っていく。そこで三人を殺した。その後、現れた崇宮真那に殺された。
「はぁ......
僕はそう呟いて、その路地裏を後にした。
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後日、時崎狂三が遅刻してきた。本人は気分が悪かったと言っている。
それを見た鳶一折紙が驚愕していたのだが、まあ、彼女が殺されたことを知っているからだ。
そんなことはどうでもいい。
確か、五河士道が三人同時デートの約束をするのは今日だ。僕は役に立たないと既に五河琴里にも伝えてある。理由も話した。まあ、適当だが。
だから僕は時崎狂三関連の作戦には参加しないことになっている。
士道が今日時崎狂三とデートの約束をするというのか聞いているので、そのデートの日にやることも決まっている。
ずばり、それは時崎狂三を一度殺した人物、つまり、崇宮真那の調査だ。
これは五河琴里から内密にと頼まれたことだ。何故かは彼女の尊厳のために隠させてもらうが、とにかく調べてこいということだ。
だが、僕は別に調べる必要も無い。全部知ってるから。
崇宮真那は、〈DEM〉が派遣した〈
本当はもっといろいろあるけど、伝えるのはこのくらいで十分だろう。伝えるのは五河士道のトリプルデートが終わった後でいいだろう。
「ロビン!今日はどんな話をするの?」
「ん?ああ、ちょっと待ってね」
考え事をしている最中に、みんなが僕の周りに集まってきた。
そういえばそうだった。今日が話を聞かせる日だった。何の話にしようか。
しばらく考えて、ある話に決めた。
「......よし、今日はこの話にしよう。これは悪い女王さまが倒された後の話─────」
そう言って、僕はみんなに話を聞かせる。
ああ、こんな話を真剣に聞いているみんなが気持ち悪い。全部が全部、ツギハギだらけの物語なのに、誰も気づかない。
そんな気持ちを隠しながら、僕は語っていく。
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五河士道のトリプルデートが始まった。
一応様子を見に来たのだが、とても忙しそうだ。まるで働き蟻のようだ。でも、一途ではないので働き蟻に失礼かもしれない。
にしても、木の上なんて雑な場所にいてもバレないものだね。不思議だ。
ちなみに今は時崎狂三といるのだが......。
様子を見ていると、五河士道がその場を離れてどこかに行ってしまった。時崎狂三はベンチに座っているままだ。
見ていると、時崎狂三は立ち上がって茂みに足を踏み入れた。
......ここも原作通り、か。
悲鳴が聞こえてきた。きっと、チンピラが殺されたのだろう。
少し様子を見ていると、士道が戻ってきた。そして、士道も茂みに足を踏み入れた。
そして、見てしまった。辺りが血で汚れ、今まさにチンピラに向けて銃を向けている時崎狂三を。
五河士道はとても困惑している。それもそうだろう。まさかこんなことをするなんて、夢にも思わなかっただろうから。
......待て、崇宮真那が来ない。どこにいるんだあいつは!このままだとまずい。クソっ介入するしかないか......。
僕はすぐに飛び降りて、士道の前に立ったと同時に木の槍を作る。そして、その木の槍を時崎狂三に向ける。
「あらあらあら、これはどぉいうことですのぉ?ロビンさん?」
「まさか、君がこんなにも愚かだったとは思わなかったよ。白昼堂々と、しかも一般人の目につきそうなこんなところで殺すなんて......。こうなったら、もう見過ごすことはできない。少し反省してもらうよ」
僕がそう言うと、時崎狂三は笑いだした。
「きひ、きひひひひひ!貴方は所詮〈
「そうだね。確かに僕はただの〈
「きひひひひひ!なら、やってみることですわ!」
時崎狂三はそう言うと、僕に銃を向けて発砲する。
僕はそれを目の前に木の盾を生成することで防ぐ。
これで、僕は前での行動が一切わからなくなってしまった。
すぐにその場を離れて、先程までいた場所に数本の木の槍を生やす。
「甘いですわッ!」
後ろから時崎狂三の声が聞こえた。
僕は身をかがめ、指を弾いて音を鳴らす。
「なっ!ぐっ......!」
すると、時崎狂三は僕の前に飛ばされてきた。種明かしをすれば、音を鳴らした瞬間、時崎狂三の後ろに吊るされた小さな丸太を作り出して、それをぶつけたのだ。
「なかなか、やりますわね......」
「いやいやそれほどでも。少しでも行動が遅れていれば、僕は今ここに倒れていたさ」
僕はそう言って余裕の笑みを浮かべる。それを見た時崎狂三は少し悔しそうだ。だが、一手間違えれば僕は死んでいたので、かなりギリギリの戦いだった。
「今回は退かせていただきますわ。ですが─────」
「逃がさねーですよ」
時崎狂三が帰ろうとしたその時、声が聞こえた。
......今更来たのかよ。もう来る必要もなかったのに。
声の主は時崎狂三を切り裂き、時崎狂三からは血が吹き出た。
時崎狂三を殺したのは、〈DEM〉から派遣された〈
「大丈夫でいやがりますか─────兄さま......!?」
「ま、真那......どうして......」
五河士道が言うと、崇宮真那は少し悩んだ後、思い出したかのように言った。
「ああ、そういえばこの女。兄さまのクラスに転校してきやがったんでしたね。詳しいことは言えねーですが、この女のことは忘れやがったほうがいいですよ。存在しちゃいけねー存在なんです」
「そんな問題じゃ、ないだろ......ッ!」
「後、そこのアンタ。確か、ロビン・グッドフェローとか言いやがりましたか。アンタには詳しい話を聞く必要がありやがりそーですね」
「......これは参った。僕としては、今すぐにでも逃げ出したいくらいなんだけどね......」
「逃がすわけねーですよ」
「だよね。知ってる」
僕はそう言って困ったような顔をする。
さて、どうやって抜け出そうか。こんな展開、起こると思うわけがない。即興で考えなければ。
......少々危険だが、これしかない。
「でも......今君に捕まるのは、僕にとって都合が悪いんだよ......ねっ!」
僕はそう言い、魔術で虫を大量に発生させる。
「なっ......!」
崇宮真那は怯んでいる。今のうちに逃げだそう。
「行くよ士道!」
「ッ!あ、ああ」
僕と五河士道は走ってその場を離れた。
できればあの魔術は使いたくなかった。僕の秘策に使う魔術でもあるから。
五河士道はまだ状況を掴めきれていないようだ。一旦落ち着いてもらう必要がある。
「士道」
「......どうした?」
「ごめんよ」
僕はそう言って、士道に眠らせる魔術を使った。しばらく眠ってもらって落ち着いてもらおう。
「こ、これは......」
「安心して、ただ眠るだけだから。難しい話は、また起きてからでもいいじゃないか」
僕がそう言うと、五河士道の身体がふらっと横に倒れた。
「おっと」
五河士道の身体が地面に叩きつけられる前に僕は士道を支える。
耳に機器をつけ、五河琴里に通信を入れる。
「琴里、今すぐ士道を回収してくれ。眠らせてあるから、ベッドに横にしておいてあげてくれ」
『......わかったわ。今すぐ士道を引き上げる』
「ああ、頼んだよ」
僕はそう言って通信を切る。
小さいが、原作との乖離が見られた。しかも、僕とは関係の無い所で。......これからは、もっと慎重に動くべきだな。
話がなかなか進みません。そして、特徴的な口調の二人ですが、これで大丈夫か不安です。