彼は思う。彼は少し、いや、かなり変わっていると。
何処がどう変わっているかは、見た目も経歴もそうだが、言葉で説明するのは難しい、もっと深いところだ。
「ここは······?」
だが、彼は彼のその違和感を知ることはできない。少なくとも今は。
「何が起こっていたんだ······?」
彼は上手く隠している。
だが、仮面が剥がれてくる日は、いつか必ずやってくる。
「なあロビン、お前、嘘とか、ついてないよな······?」
その日がいつ訪れるか、それはわからないが。
「······っ、ここは······?」
五河士道は〈フラクシナス〉のベッドの上で目覚めた。
周りを見て、ここがどこかわかったらしい。
そんな彼に声をかける人物が一人。
「大丈夫かい?士道」
「ロビン······」
ロビン・グッドフェロー。彼が傍にいた。
士道は、彼に対して悪い印象を持っていない。寧ろ、好印象だ。
だが、今回のロビンの行動は、士道にとって少しだけ不可解だったようで、信頼が揺らぎつつある。
それはもちろん、ロビンも気づいている。
「さて、まずは一つ謝りたい。僕の口からしっかりと彼女について説明すべきだった。本当にすまない」
「い、いや、そんなに謝らなくても······それより、あの場所で何が起こっていたんだ······?真那はなんであんなところに······」
士道は頭を下げて謝るロビンを見てすぐに話題を変える。
だが、士道は真那が何故あの場所にいたのかは本当にわかっていない。
「その目で観て、その耳で聴いた通りさ。彼女は精霊を殺す立場にいる。〈AST〉みたいなものだけど、彼女はそこら辺の〈AST〉より強い。わかりやすく言うなら、折紙より強い、って感じかな」
「な─────」
士道は言葉を失う。
琴里と同じような年齢の少女が、何故そのような力を持っているのか。それが分からない。
「ま、崇宮真那についてはこれくらいかな。次は狂三のことだけど、彼女については何となく理解したかい?」
「······ああ、少しだけ」
「それでいい。彼女はとにかく残虐だ。目的のためならばどんな手段でも使う。それが例え、殺しであったとしても」
そういうロビンの表情は、士道から見て少し悲しげに見えた。
まるで、長年の友の変化に困惑しているような、その変化を嫌っているような。そんな感じに見えた。
「そのせいで、彼女はこう呼ばれている。最悪の精霊〈ナイトメア〉と。彼女に目をつけられてしまえば、文字通り悪夢を見ることになる。それが夢で終わればいいんだけど、そんなわけもない」
「······狂三の目的ってなんだ?何のために人を殺しているんだ······?」
士道が言うと、ロビンは少しだけ目を見開いて、迷うような素振りを見せて言った。
「······彼女の目的については、彼女から直接聞いたことがないからなんとも言えない。ただ、誰かを殺すことが目的なんじゃないかと、僕は思っている」
その答えに、士道は違和感を覚えた。
何故その結論に至るのか。この部分を削って答えていると感じた。
その答えに納得がいかず、士道はつい、言葉に出してしまう。
「······なあロビン、お前、嘘とか、ついてないよな······?」
「─────」
ロビンは驚いたような顔をして士道を見ている。
何故そんな顔をするのか。士道の中では、その反応は不安を煽るものだった。
「······嫌だなあ、そんなこと、する訳ないじゃないか。確かに、僕は遠回しに言ったりとか少しだけ情報を隠したりするけど、誓って嘘は言っていないよ。憶測は嘘に入らないよね?」
だが、笑顔でそんなことを言う彼を見ると、自分の思い違いかと思ってしまう。
少しでも親友を疑ってしまった自分を叱りたい。士道はそんなことを考えていた。
「堅苦しい話はここまでにしよう。今日は、士道一人だけのために物語を選んできたんだ」
「それは嬉しいな。どんな物語なんだ?」
「そうだな······名付けるとするなら────「世界を救った一般人」かな。親友の
「わかった。しっかり聞く」
士道が言うと、ロビンはゆっくりと語り始める。
「あるところに、一人の少年がいました。彼は普通の人間で、家族がいて、友達がいて、夢へ思いを馳せるような普通の少年。そんな彼に、普通ではないことが起こった。ある日突然、とある場所へと連れていかれた。その場所は、過去で起きた異常を修正する、というか施設だった。彼は廊下で倒れていて、目を覚ました時、目の前に一人の少女がいた。この少女が、これから彼を支え続けるパートナーとなる。少女に案内されて施設内を歩き、サボっていた職員の人と話したりしていた。そんな時だった。なんと、その施設が爆発してしまった。少年は爆発に巻き込まれなかったものの、少女は爆発に巻き込まれたしまった。少年は少女を助けようと手を握った。その時、運がいいのか悪いのか、過去への移動が行われてしまった。その過去で様々なことを知り、少年は七つの過去の異常を修正するというミッションが課せられた─────」
ロビンの話はとても長かった。だが、いつも勝手に耳に入ってくる彼の話す物語とはどこか違っていると感じた。
士道は少し考え、答えに行き着く。ずっとキラキラしている話じゃない、と。
ロビンの話す物語は、いつもおとぎ話のようにキラキラと輝いている話────勇気とか友情、協力に勝利というようなものばかりだった。
だが、今士道に話した話はそんなものではなかった。
確かにそのような要素はあった。だが、それだけではなく、醜さや泥臭さ、そういったお世辞にもキレイとは言えない要素の方が多かった。
「──────どうだったかな?たった一人の親友に贈る物語は」
「······なんて言うか、意外だった。ロビンがこんな話をするなんて」
いつも教室で聴こえてくる物語との差の大きさに驚いている士道。
「いやいや、僕だってこういう話のストックもあるんだよ?」
「じゃあ、どうして教室ではああいう話をしないんだ?」
特に何かを疑っている、ということは無い。ただ、士道は単純に気になったのだ。
「······何となくだよ。特に理由はない。でもあえて理由をつけるとするなら、人気者になりたいから、かな?」
そんなふうに笑って言うロビンに、士道も笑いながら言い返す。
「何言ってんだよ。とっくに人気者じゃないか」
士道がそう言うと、二人は顔を見合わせて笑う。
そんな些細な会話で、士道は思う。ロビンは信用できる人だと。疑う必要なんて、なかったんだと。
できるだけ早く書けるようにします。