僕が琴里に精霊であると突きつけた数日後、僕は〈フラクシナス〉にいた。
理由はただ一つ。士道と琴里のデートを観るためだ。
ただ、普通であれば僕はここにいなくても良いはずだ。だって僕はあくまでも外部協力者。士道の友人として。精霊に詳しい者として。そして情報収集に優れている者で、協力を依頼された。それだけだ。
じゃあ何故ここにいる?難しく考える必要は無い。ただ頼まれたのだ。ここにいて、自分のデートを見守ってくれと、士道から。理由はよく分からないが、自分も手っ取り早く終わらせようと思っていたから都合が良かった。だから引き受けた。
だから、僕がここですることは一つ。
選択の妨害だ。
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さて、そろそろ選択肢が現れる頃か。少し邪魔をさせてもらおうか。
「総員、選────」
「待った」
金髪の男......確か神無月恭平だったか。
神無月が号令をかけようとしたところで僕は待ったをかける。
「......どうかされましたか?」
「いやね?今回の攻略対象は琴里だ。この〈フラクシナス〉のリーダー。そんな相手に選択肢の中の行動が通用すると思うのかい?」
「......ではどうしろと?」
「別に何もしなくてもいいんじゃない?だってほら、ぶっちゃけ琴里ってもう士道のこと好きでしょ?」
そう。僕がいるからかモニターには琴里の好感度が示されていないが、既に琴里の士道への好感度は最大値だ。それも、ずっと変わっていない。そもそもこのデート自体が所謂茶番なのだ。本当は必要ない。ただお互いの合意があって、口付けさえしてしまえばそれで終わりだ。
これは琴里の我儘だ。しかし、今回は僕が後押ししたのもあり、琴里が思い詰めることもあまりないだろう。
「......しかし、もしもがあるかもしれない。その時に────」
「もしも、って何?士道を操り人形みたいにしておかないといけないの?それほどのもしもって何?」
おっと、村雨令音が口を挟んできたからついついキツい口調になってしまった。自分が関わらなかった物語がどのようになるか知っているからだろうか。どうしても村雨令音には辛辣になってしまう。────何しらばっくれてんだ、ってつい思ってしまう。
まあ、そんなことは置いておいて、これからのことを考えよう。とりあえず選択肢は全て選ばないようにさせる。あくまでも全て五河士道に任せるスタンスだ。
突然襲撃してくる鳶一折紙は......放っておいても大丈夫だろう。というか、下手に介入すると面倒になる可能性が高い。何故なら、今の鳶一折紙は〈イフリート〉という精霊について調べる必要がなく、そもそも昔街を燃やした精霊が五河琴里と結び付けられるものがない。鳶一折紙が精霊〈イフリート〉を調べるきっかけになったのはご存知の通り時崎狂三の〈時喰みの城〉だ。しかし、そのイベントが丸ごとスキップされ、五河琴里が精霊の力を使う必要が無くなった。これだけで鳶一折紙が襲撃してくることはゼロに近くなっている。まあ、どうしても〈ホワイト・リコリス〉とかいう頭のおかしいCR-ユニットが〈AST〉の元に届くのを止めることは出来ないが、それを使う理由もないだろうし、さすがに来ないだろう。......誰も余計なことをしなければ、だけど。
とにかく第二の精霊が関わってくるまでは最大限警戒しておくに越したことはない。
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結局、鳶一折紙の襲来も無く全てはスムーズに終わった。いやぁ、杞憂で済んで良かった良かった。
......物語を薄っぺらくしてしまっている自覚はあるし、それを悪いとも思っている。しかし、僕はオベロンロールをすると決めたんだ。だから、オベロンというキャラクター......いや、存在に敬意を持ってこの世界を壊す。それをする為にはこのデート・ア・ライブという物語の各所に関わる必要がある。場合によっては、本編に記されていないところでも。その結果ストーリーがぐちゃぐちゃになってしまう。この生き方を選んでしまった以上、それは仕方の無いことなのだろう。......ただ、僕だけは本来の道筋を知っている。それなら、しっかり覚えておかないとね。だって─────
「......少しいいかな」
────っと、長いこと考え事にふけっていたようだ。
村雨令音が声をかけてきたのを確認して返事をする。
「......おっと失礼、少し考え事をしていたよ。で、何の用だい。令音さん?」
「......これはもしもの話、なのだがね」
......この普段の村雨令音からは感じられない異様な雰囲気は......なるほど、そういうことね。
「精霊に所謂リーダーの様な存在がいて、その存在がシンに精霊の封印をする力を与えた......とするなら、もちろん、それは何か計画があるだろう」
「......何が言いたいのかな?」
「計画を間接的にとはいえ、邪魔する者が現れた時。その存在はその者をどう思うだろうね?」
「......計画に何らかの過程が必要なのであれば、その過程を崩された時に初めて邪魔者だと認識すると思うよ。でも、精霊は誰かに従って行動しているわけじゃない。だから、そのリーダーの様な存在の前提がやや不自然ではあるけどね。だから、しいて言うなら────」
僕はそこで一旦言葉を切る。
村雨令音はいつもの隈が消えた目で僕を見つめて言葉を待っている。
「────始祖、と言うべきかな。精霊を生み出した親のような存在。そういうものであれば、存在しても不自然ではないかな?」
「......確かに、その方が自然だな。感謝するよ。精霊の考察の参考に─────」
「────で、結局何が伝えたかったんだい?」
僕がそう言うと、村雨令音の目が少し細くなった。
「......それは、どういうことかな?」
「いや、答える必要は無いよ。察しはついてるから。でも、こう言って引き止めないと僕が『始祖の精霊の存在を知っている』という情報だけ持っていかれるじゃないか。そんなの、不公平だ」
僕は笑顔で言う。ねっとりとした笑顔だ。FGOのオベロンを参考にするなら、ヴォーティガーンの姿での笑顔がイメージし易いだろうか。
「まぁ、公平不公平はどうでもいいんだ。僕が何かを企んでいることはそちらも勘づいているだろう?その企みが自分の計画の邪魔になると思って、釘を刺しに来た」
「......何が言いたいの?」
口調が変わったな。なるほど、その立場で話を聞いてくれるのか。都合がいい。
「僕はね、誤解を解きたいんだ。僕の企みは、決して直接士道を害すことは無いし、邪魔にもならないと。そう伝えたかったんだ」
「......それは、本当......?」
「もちろん!......僕のことを信じてくれるのであれば、僕に士道を任せてくれないかな?」
村雨令音は考えるような素振りを見せる。
「......まあ、信じてくれなくても良いよ。行動で信用させるからね」
「......そう、ね。しばらく様子を見させてもらうわ。......妙な真似はしないように」
「ああ、言われなくとも」
村雨令音の気配が消えていく。
これで暫くは様子見、ということで僕に干渉してくることはない......と思いたい。
さて、次は......八舞姉妹か。
正直、面倒だ。実質的に小さな島に隔離され、自由に行動できなくなる。更にカメラマンとしてついてくる女は〈DEM〉のエレン・M・メイザース。
今の最強と言うだけあって、おそらく僕では持って一○数分。それも、こちらからはまともにダメージを与えられないだろう。......まあ、ヴォーティガーンの方で戦えば少しはダメージも与えられるだろうが。
どこまで行っても僕はただの偽者で、本物のオベロンではない。この世界の魔術体系もFateとは違うし、そんな中で上手くやっている方だとは思う。
とりあえず、次の攻略はとても不自由なものになるだろう。できることも少ないだろうし。
ボロを出さないように大人しくしているのが吉、かな。
長い間放置していました。申し訳ないです。
色々頭から飛んでることも多いので、次の投稿もかなり時間がかかる可能性があります。