「やあ、僕はロビン・グッドフェロー」   作:Ask〈アスク〉

3 / 14
物語を進めていきます。


「さらに念入りに」

 翌日、五河士道は明らかに様子が変だった。あの後僕はクレーターの場所まで行ったのだが、そこには誰もいなかった。

 精霊も、五河士道も、ASTも。

 僕がいた場所はクレーターから結構離れていたから、おそらく精霊やASTを見ていないと判断されるだろう。実際、見ていないしね。

 

「おはよう、士道。昨日はどうだった?妹さんは見つかったかい?」

 

「あ、ああ、見つかったよ......」

 

 この反応は確実に<フラクシナス>について知ったな。まあ、ここまでは予定調和みたいなものだ。ここが変わってしまったらそもそも物語が始まらない。

 

「そうか!なら良かったよ!変な音が聴こえたから危ないとこにでも巻き込まれたかと思ったけど、無事なら何よりだよ!」

 

「......あ、昨日はごめんな。突然帰っちゃって」

 

「大丈夫だよ。妹を見つけて安心したんだろう?なら仕方ないさ!」

 

「礼はまた今度するよ」

 

「じゃあ期待させてもらおうかな?」

 

 笑いながらそう言う。ここで礼を断るのは何となく違うと思った。せっかくなら受け取っておこう。

 しばらく他愛のない話をしていると、僕の周りに人が集まってきた。そして、昨日のことについて質問してくる。

 

「ああ、昨日はちょっと用事ができちゃってね。どうしても急ぎの用事だったから、抜け出しちゃったんだよ」

 

 まあ、ある意味嘘ではない。

 僕はオベロンみたいに「言ったことは嘘になってしまう」というような呪いは持っていないから、嘘にはならないだろう。

 

「それよりも、今日はいろんな話をしよう!嘘か本当かわからないけど、楽しい話さ!」

 

 集まってきた人々は僕の話が楽しみのようだ。それじゃあ、「妖精國ブリテン」の話でもしようか。人間的に考えて醜いところは隠して、美しいところだけを。

 

「これは大昔の話────」

 

***********************

 

 僕の話は面白かったようで、みんな笑っていた。これで少しは信頼されるようになったかな?

 放課後、五河士道が呼び出されて教室からいなくなっていた。

 ああ、そうだ。確か<フラクシナス>制作のギャルゲーで特訓するんだったっけ。

 あのタイミングで僕が精霊と関わらなかったのはこれを避けるためだと言っても過言ではない。正直クリアできる気がしない。

 一週間くらいでクリアできるらしいが、その間もちょくちょく声はかけておこう。たぶん、ものすごく顔色悪くなってるからね。

 でもその間に()もやることをやっておかないとな。さて、今夜は忙しくなるぞ。なんてったって、裏工作を進めるんだからな。

 そういえば、村雨令音が学校に先生として配属されたな。とっくに知られてるだろうし、ある意味一番どうでもいいから放っておくか。

 

***********************

 

 だいたい一週間が経った。

 予想通り、五河士道は日に日にやつれていき、目には隈ができていた。

 

「士道......本当に大丈夫かい......?なんて言うかこう、ものすごく疲れてないかい?」

 

「......ああ、いや、大丈夫だよ......」

 

 どうしようか。昼休み頃に一度魔術で眠らせてあげようか。気休め程度にはなるだろうか。ここで何もしなくても話は進むだろうが、信頼関係は作っておきたい。

 

「......昼休みに屋上に来なよ。魔法をかけてあげるよ」

 

「......?それってどういう────」

 

「おっと、それはその時のお楽しみ。また後でね!」

 

 僕はそう言って自分の席に着く。すると、昨日と同じようにまた人が集まってくる。次はどんな話かと楽しみにしているようだ。まるで虫のようだ─────おっと、まずいまずい。そんなことを考えているとすぐにボロが出てしまう。気をつけなければ。

 今日はどんな話をしようか。モルガンが王になった理由にしようか。もちろん、醜いところは隠してね。

 

「さて、今日はこの話をしよう─────」

 

 醜いところを隠すのが、こんなにも気持ち悪いなんてね。

 

************************

 

 昼休み、屋上で五河士道を待っていると、別の誰かが屋上にやってきた。それは、五河士道の妹、五河琴里だった。

 髪を留めているシュシュの色は白。つまり、今は年相応の性格というわけだ。だが、何故ここに来たのだろう。

 

「君は確か、琴里だよね?士道の妹の」

 

「うん!そうだよ!おにーさんは?」

 

「僕はロビン・グッドフェロー。よろしくね、琴里」

 

 僕は笑顔を作って言う。すると、五河琴里は目をキラキラと輝かせて言った。

 

「おおー!王子さまみたい!かっこいい!」

 

「ははは、そうかな。そう言って貰えるのは嬉しいな」

 

 笑ってそう返す。だんだんこうして薄っぺらく笑っている自分が気持ち悪くなってきた。

 

「そういえば、どうしてここに?」

 

「んー?おにーちゃんはここに来れないって言いに来たの!」

 

「それは......残念だな、疲れているようだったから休ませてあげようと思っていたのに」

 

 僕は残念そうな顔をして言う。

 

「わかった、じゃあ士道に伝言を頼めるかな?」

 

「なにー?」

 

「魔法はお預けってね」

 

「わかったー!」

 

 琴里は元気よく返事をすると、学校の中に入って階段を降りていった。

 そうだった。特訓が終わったら特訓が始まるんだった。これは最初に接触しなくて本当に正解だった。

 そうなると、また空間震が発生するが、どうしようか。今回は接触しようかな。うん、そうしよう。姿はもちろん、あの姿でね。




進みましたか......?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。