「やあ、僕はロビン・グッドフェロー」   作:Ask〈アスク〉

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前よりは長いです。


「最後は気楽に自然に」

 プロローグは一旦終わり。ここから全ては始まっていく。だけど忘れないでほしい。彼は元々、ここにいるべきではないことを。

 

「ここに来る前に、精霊と話したことがあるんだ」

 

 彼の計画は意識が目覚めた時から決まっている。つまり、明かされていない真実もある。

 

「微力ではあるけど、力にはなれると思うよ?」

 

 それがどのようなものかは定かではないが、確実に言えることがある。

 

「今が攻め時だよ、士道」

 

 彼の計画には、全て織り込み済みということだ。

 

 

 

 

 

 

 空間震の警報が鳴り始めた。

 僕は誰にも見つからないように校舎から離れる。確かこの空間震はこの校舎に直撃する。屋上なんかにいたら死んでしまう。僕はあくまでも人間だ。妖精でもなければ英霊でもない。

 校舎から出て、近くにあった茂みに身を潜める。誰にも気づかれていないことを確認して魔術で服を変える。

 その服装はゲームで言う第二再臨。頭に被った王冠と白を基調としたふわっとした装いで、元からあった王子様という印象をさらに強める服装だ。

 これで接触する準備は整った。あとは空間震が発生するのを待つだけ─────。

 そんなことを考えていると、強い音が全身に響いた。強い風が吹き、思わず腕で顔を覆ってしまった。風が止むと同時に校舎を見てみると、前に街で見たような光景になっていた。具体的に言えば、校舎の一部が抉れていた。

 空間震の発生をこんなに近くで見たのは初めてだ。「アレに巻き込まれたら確実に死んでしまう」と、そんなことを考えていると、五河士道が校舎の前に立っていた。さて、僕もそろそろ出番かな。僕は足音を立てないように、慎重に、それでも見失わないように素早く尾行した。

 原作通り士道は僕たちが通っている教室に入っていった。中から会話が聞こえるが、まだ入るときではない。

 しばらく待っていると、発砲音が聞こえてきた。大方ASTが精霊に向けて撃ったのだろう。防がれているだろうが。入るなら今だ。僕は誰かのピンチに助けに来た救世主のような気分で教室に入って言った。

 

「民間人もいるのに撃つなんて、いつからASTはそんなことをするようになったんだい?」

 

 僕が言うと、五河士道と精霊は僕の方を見る。精霊は僕に警戒している。五河士道はとても驚いている。

 

「貴様、何者だ?」

 

「ロ、ロビン!?どうしてここに......」

 

「そんなの、決まっているじゃないか。君たちを助けに来たのさ。こんな風にね!」

 

 僕はそう言うと、ASTに向けて魔術で作った粉を振り撒く。この粉は吸った人を眠らせるものだ。

 キラキラと陽の光を反射しながらASTの周りに散った。次の瞬間、一人、また一人と下に落ちていった。

 

「おっと危ない」

 

 魔術で自身を強化し、予め持っておいたクッションを落ちている先に投げた。これで大怪我をすることはないはずだ。にしても、やっぱり一人だけ化け物じみた奴がいる。鳶一折紙。こいつだけは僕が粉を撒いた瞬間にその場から離れていた。こいつの対処はしっかり考えてある。

 

「ねぇ、そこの君!僕と取引しないかい?」

 

「......どういう意味?」

 

 鳶一折紙は完全に僕のことを警戒している。まあ、当たり前だろう。

 

「そのままの意味さ。君の欲しいものを何でも一つあげるから、今は手を引いてくれないかい?」

 

「......信用できない」

 

「まあ、そうだろうね。でも、約束しよう。取引に応じてくれたら、何としてでも君が欲しいものを手に入れる。例えば......彼の私物、とかね?」

 

 僕が五河士道の方に目を向けながら言うと、全く変化のなかった表情が、少しだけ動いた。これはあともう一息か?

 

「......どうしてそのことを?」

 

 そのこと、というのは鳶一折紙が五河士道に好意を寄せているということだろうか。考えてみれば、僕が自己紹介をする前に二人の接触はあったが、それ以降は殆どなかった。なのに何故僕がそのことを知っているのか、それが気になるのだろう。

 

「僕の元には多くの情報が集まるんだ。みんなと話しているうちに、その話題も少しだけ出てきたのさ」

 

 実際はこんな情報はない。完全な原作知識と言うやつだ。だけど、こんなことは誰にも確認できない。だからこんな風にデタラメを言いやすい。

 悩んでいるのか、下に落ちたAST隊員達を見ている。しばらくして、ようやく口を開いた。

 

「......今回は手を引く。でも次は容赦しない」

 

「ああ、それでいいとも」

 

 そう言うと、下に落ちた隊員達をクッションごと担いでどこかに飛んでいってしまった。本当に化け物じみた奴だな。

 

「さて、これで邪魔者はいなくなった。ああ、まずは自己紹介だね。ロビン・グッドフェローは世を忍ぶ仮の姿。僕の名はオベロン。妖精王オベロンさ」

 

***********************

 

「妖精、王......?」

 

「まあ、雰囲気的なアレでね?実際はちゃんと人間さ」

 

 混乱している五河士道にそう言う。あそこはそういう場面だと思ったんだ。仕方ない。

 

「こんにちは、精霊のお嬢さん。これからよろしくね!」

 

「私には十香という名がある」

 

「へぇ、そうなんだ。よろしくね、十香」

 

 僕はそう言うが、十香は警戒を解いてくれない。こうなることはしっかり考えていた。今の十香にはきなこパンも効果は薄いから、物で釣ることはできない。だから、他の方法で吊る必要がある。

 

「さて、僕がここに来たのは、さっき言ったように君たちを助けに来たのもあるけど、実はもう一つあるんだ」

 

「それはなんだ?」

 

 気を取り直した五河士道が言う。もう一つのことは、まあ誰にでもわかるだろう。

 

「十香、君と話がしたかったのさ」

 

「私と、話を?」

 

「ああ、別に君を殺したい、なんて思ってもいないし、実は、ここに来る前に、精霊と話したことがあるんだ。だから君のことも気になってね」

 

「他の精霊......!?」

 

 五河士道が驚いたような声を出す。この時点では、まだ精霊は十香しかいないと思っていた。別にこれはいつ教えても物語は進むから、さっさと教える意味でも今この発言をした。

 

「そうだ。みんな話してて飽きない子達だったよ。最近は全く会ってなかったけどね」

 

 僕はそう言って悲しげな表情を作る。それを見た十香も少し悲しげな顔をしている。やっぱり、彼女は感受性豊かというか、騙されやすそうというか......。

 

「だから君とも話がしたかったんだけど......」

 

 僕は一度五河士道を見てから微笑んで続けた。

 

「彼に先を越されたみたいだ。たぶん、前の空間震の時にも会ったんだろう?積もる話もあるだろうし、僕はお暇させてもらうよ」

 

「あ、ちょっと......」

 

 僕は五河士道の言葉を無視して自身を魔術で強化して教室から飛び降りる。強化してるからこれくらいなら大丈夫だ。それよりも、明日のことを考えよう。明日から数日の間学校は休みになる。何より明日は五河士道と十香のデートだ。それに介入する方法は一つしかない。

 

***********************

 

 夜、俺の家のインターホンが鳴った。ドアを開けて誰が来たかと確かめてみると、そこには五河琴里がいた。シュシュの色は黒だ。

 

「琴里じゃないか。どうしたんだい?こんな時間に士道が心配してるかも────」

 

「単刀直入に訊くわ」

 

 琴里は僕の言葉を遮って言う。

 

「あなた、本当に精霊と会ったことがあるの?」

 

 僕はその言葉に笑顔を作って返した。

 

「もしかして、士道から聞いたのかい?まあ、確かに会ったことはあるよ、うん。最近は会ってないけどね」

 

「そう......あなたのことは知らないし、訊いても教えてくれないでしょう?だけど────」

 

 ああ、自分の心が高まるのを感じる。まさかここまで上手くいくとは思わなかった。僕は必死にニヤけそうになるのを抑える。

 

「────私たちに、<ラタトスク>に協力してほしいの」

 

「────ああ、いいとも」

 

***********************

 

 翌日、僕は現代風の服装を身にまとって学校に向かった。今日は学校はないのだが、五河士道がそこに来るのだ。

 僕が学校の前に来ると、校門の前で突っ立っている五河士道を見つけた。僕は五河士道に声をかける。

 

「やあ、おはよう士道」

 

「ロビンか......おはよう」

 

「こんなことになってるし、しばらく学校はないだろうね」

 

「そう、だよな......」

 

 前にも言ったように、空間震は校舎に直撃した。だから今は建て直している。しばらくは学校は休みになって、自由に使える時間が増えるだろう。

 

「なぁ、昨日会ったのって、やっぱりお前なのか?」

 

「そうだよ?当たり前じゃないか。あ、そういえば」

 

 僕はそう言うと、ポケットから小型の機器を取り出して五河士道に手渡した。

 

「こ、これは......!」

 

「琴里から言われてたんだ。もしこれをつけてなかったら渡しておけって」

 

 昨日の夜、琴里が家に来た。協力すると言った後、少しだけ話をした。ASTを眠らせた粉はなんだとか、あの姿のこととか、オベロンと名乗ったこととか。もちろんこっちからも最近の士道について聞いた。聞かれるだけ、というのも不自然だからね。

 しばらく話をして、僕がやることも伝えられた。主に僕がやることは五河士道のメンタルケア。そして情報収集。

 メンタルケアはそのままの意味だ。精霊と対峙する上で、悩みが生まれるのは当たり前だろう。そんな時、僕がサポートする。情報収集というのは、まだ具体的な詳細は伝えられていないが、おそらく<DEM>関連だろう。<ラタトスク>と<DEM>は敵対している。だから、少しでも行動の情報が欲しいのだろう。

 琴里が帰る前に、さっき五河士道に渡した機器を受け取った。「たぶんつけてないだろうから渡しておいて」だそうだ。

 

「ど、どうしてこれを、ロビンが......?」

 

「あれ?琴里から聞いていないのかい?なら僕から説明するよ」

 

 そう言って、僕は笑みを浮かべて続ける。

 

「今日から僕は、君のサポートをすることになったんだ。まあ、微力ではあるけど、力にはなれると思うよ?」

 

***********************

 

 五河士道と会話した後、そろそろ十香が現れると思ってその場を離れた。自分用の機器も貰っているので、それを耳につける。

 

「琴里、聴こえるかい?」

 

『何かしら?』

 

 僕が五河士道の方を見ると、制服を着た十香がと一緒にいた。そしてその近くにはASTの鳶一折紙がいた。

 

「士道が十香と接触した。そしてASTの折紙が近くにいる」

 

『ッ!報告感謝するわ』

 

 琴里がそう言うと、通信が切られた。僕は周りに誰もいないことと、通信がちゃんと切れていることを確認して小さく呟いた。

 

「さて、戦争(デート)のはじまりはじまり、と言ったところかな」

 

***********************

 

 デートは原作通り、滞りなく進んだ。僕はあくまでもサポーター。実戦は五河士道に任せなきゃいけない。

 二人は最後の公園に辿り着いたが、僕は二人を見失った、ということになっている。さすがに五河士道が撃たれるイベントを避けるのは難しい。だけど、気づくことはできただろうと言われてしまうといけないので、見失ってしまったということにした。だけど、公園の近くにはいる。だから、発砲音が聴こえてくるのは普通だろう。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 十香の叫び声が聴こえる。機器から聴こえてくる音声によれば、五河士道は<フラクシナス>で回収したらしい。あとは士道が止めるだけだ。

 

「琴里、通信機の回線を士道のものに繋げてくれないか?」

 

『何をするの?』

 

「なあに、ちょっと背中を押してあげるだけだよ」

 

『......わかったわ。任せたわよ』

 

 琴里が言うと、一度通信が切られ、すぐに繋がった。回線が切り替わったのだろう。

 

「士道、聴こえるかい?」

 

『ロビン?どうしたんだ?』

 

「いや、これから君が精霊とすることに、少し悩んでるんじゃないかと思ってね」

 

『っ、知ってるんだな......』

 

 僕は五河士道に言う。優しい声色で、強く言う。

 

「ああ、もちろん。このまま放置していれば、彼女は結果的に街を破壊し尽くしてしまうだろう。それでもいいのかい?」

 

『それは、ダメだ』

 

「そうだろう?なら、今が攻め時だよ、士道。ここで行かなきゃ、君はきっと後悔し続ける。悩んでる場合じゃないんだよ」

 

『っ、そう、だよな......』

 

「なら覚悟を決めなよ。これは、君にしかできないんだから」

 

 僕が言うと、しばらく沈黙が続いた。そして、五河士道はスッキリしたような声で言った。

 

『ありがとな、ロビン。俺、行ってくるよ!』

 

「......ああ!行ってくるといい!士道!」

 

 僕がそう言うと、通信が切れた。

 あとは、原作の通り進んだ。

 五河士道と十香がキスを交し、<最後の剣(ハルヴァンヘルヴ)>が放たれることはなくなった。十香は夜刀神という姓を得て、人間のように学校に通い始めた。だけど、これで終わりじゃない。まだまだ精霊は現れる。

 どこで駒を進めるのかは目処をつけている。あとは流れに任せて待つのみ。

 

「ああ......とても楽しみだよ......そう思わないかい?ブランカ」




次はたぶん別の視点からの物語になります。
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