帝国最強のかませ犬になった僕ですが   作:zelga

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この辺から作者の推測に基づく独自設定が顔を出し始めます。そういうのが苦手な方はご注意ください。

……いやまぁ、原作で追求が少なすぎて資料が足りないからしょうがないんですよ、うん。


第5話 「前座」

『……さて、イースリイ。小細工はもう種切れかの?』

『ハ、ハハ……グベッ!?』

 

 

 

「ク、クソッタレが……」

 

 

吹き飛ばされた先で友人(イースリイ)が殴られている音を聞きながら、思わず唸る。

 

イースリイの作戦のおかげで、ようやくあのババアに一撃ぶち込めたと思ったのに……まるで効いてねえ。

 

ようやく掴んだチャンス、ありったけの力を込めたってのによ……。

 

 

「どうにか喰らわしてもノーダメージじゃ、はなっから勝ち目がねえじゃねえか……あ?」

 

 

 

 

 

≪――――――――――――――≫

 

 

 

 

 

なんだ、あれ。

 

そう思い、俺は体を起こして上空を見る。普段この付近を飛ぶ奴なんぞいないってのに、それは俺たちの真上を飛んでいるようだった。

 

あれは確か……飛行機だったか? 

 

 

 

 

≪―――――――――――――!≫

 

 

 

 

 

いや違うな、にしては小さい。

 

……あ、あれだ。前にイースリイが言っていた戦闘機ってやつ。人間を少ししか運べなくした代わりに超速くなったヤツ。その割にあまりにも遅すぎるから話半分しか聞いてなかったぜ。

 

 

で、なんでそれがここに?

 

 

 

 

 

≪―――――――――ァァァァ!≫

 

 

 

 

 

「…………んんん?」

 

 

戦闘機ってやつから、何かが出てきた?

 

あぁ、間違いねぇ。妙に小さな点がある。それはどんどん大きくなっていって、それと同時に何か声のようなものが聞こえてきた。

 

 

……て、まさか!?

 

 

 

 

 

「こんにちはァァァァァァァッ!!」

 

 

 

その声が響いた後、それが地面に思いっきりぶつかる。見た目通りの勢いだったのだろう、衝撃と土煙が勢いよく周囲にまかれ、思わず目の前を手で覆う。

 

それがやがて晴れてきて、改めて前を見る。するとそこには、1人の子供(ガキ)が立っていた。

 

 

「ん、やっぱり全部で4人か~……」

「え、なに……!?」

「ん?」

 

 

隣に立つポーラが驚きながら呟く。

 

その言葉が聞こえたのだろうか、少し下を向いた状態でヘラヘラ笑っていた子供が俺たちのほうに顔を向けてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――アハッ」

 

 

――その声を聞いた瞬間、背筋が凍った気がした。

 

 

「「「ッ!!??」」」

「…………」

 

 

ただ一言、そこには異常に濃縮された感情(ナニカ)が籠っていた。それはあまりにもおぞましく、泥のようにねばついている。

 

それをまともに受けてしまい、思わず一歩下がる。そして周りを見ると、やっぱりイースリイとポーラも感じたみたいだ。二人とも顔が青くなっている。

 

 

「ひぃ……ッ!」

 

 

特にポーラはそれが顕著だ。俺やイースリイは冷や汗をかいている程度で済んでいるが、あいつは完全に呑まれていた。体を震わせ、そこから動けなくなっている。

 

 

「……さて、と」

 

 

その様子もそいつはジッと見ており、そう呟きながら右手を動かす。

 

 

ダランと垂らしていた腕。それをゆっくりと上げていき――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、僕ニッケル! 君たちの名前は何かな、かな!?」

 

 

――天高く上げ、笑顔でそう言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……痛くないとはいえ結構な衝撃だったな、もうやらないでおこう。

 

 

服についた土埃を払いながら、心の中でつぶやく。

 

 

いや、原作を見ているから大丈夫とはわかってるんだけどね? 流石に今まで一度もやったことないから怖いよ、紐無しバンジー。それに予想以上の衝撃でちょっとびっくりしちゃってさ、気が緩んじゃった。おかげでポーラちゃんの声を聴いたとき、思わず生の韋駄天だぜヤッター! と心の中のオタクが顔を出しそうになったよ。まあすぐさま抑えて、少し声が漏れる程度で済ませることができたんだけど。

 

 

……とまぁ、そんな事はさておき。

 

僕の心の底からのあいさつはしっかりと効果があったようだ、そう思いながら正面を見る。

 

 

「…………あ?」

「…………へ?」

「…………えっと」

「…………?」

 

 

呆然、そう表現するのが一番似合っているだろう。そんな表情を4人中3人が浮かべていた。

 

 

「あれ、もしかして聞こえてない?……ていうかもしかしてお取込み中だったかな? 君かなりボロボロだけど」

「え? あ、いや……お構いなく?」

 

 

そう言いつつ、呆けているうちの1人で金髪の少女に修行(リンチ)を受けていたのであろう青髪の韋駄天――イースリイに話しかける。それに対し彼は言葉を返そうとするが、少し妙な返事を返してきた。

 

 

ありゃ、まだ脳内処理できないなこれ。てかもう傷治りだしてるし、韋駄天の治癒力ってやっぱすごいなー。

 

 

「……おい、なんだテメェは?」

「ん?」

 

 

そんなことを考えていると、ようやく正気に戻ったのだろう。イースリイの後方から三白眼の韋駄天――ハヤトが僕に近づきながら声をかけてきた。

 

 

「服からしてあのジジイの仲間か?」

「うん、そうだよ!」

 

 

そう尋ねてきたので素直に答えると、ハヤトはさらに呆れたような表情になる。そして僕の目の前まで来た彼は少し高い身長を活かし、僕を見下ろすように詰め寄ってきた。

 

 

「人間なんかがここにきてどうする気だ、アァ?」

「それがね~、博士が君たちの力を計りたいんだって! というわけで僕と戦ってくれないかな、かな?」

 

 

ハヤトがそうすごんでくるが、僕は笑顔のまま要件をしっかりと伝える。

 

うんうん。こちらがお邪魔している側なんだし、目的はまず最初にわかりやすく伝えなきゃね。

 

 

そしてこちらの意図が分かったのだろう。ハヤトは頭をガシガシと掻きながら、詰まらなさそうに口を開く。

 

 

「ふざけんな、人間なんかと戦って何の意味が…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念、君に選択権はないんだ☆」

 

 

その瞬間。彼の体はブレ、数瞬後に岩に激突する音が響いた。

 

 

「――ガッ!?」

「大丈夫~? 骨は数本逝ったと思うんだけど~?」

 

 

思っていたより吹き飛んだみたいだ。岩壁には大きな穴が開き、ハヤトは驚愕の表情を浮かべながらそこにめり込んでいる。

 

まったく、そもそも上空から生身で落ちたのに無傷だった時点で人間じゃないことを疑いなよ。……まぁ、そんなことを考えれるのはここじゃイースリイくらいなんだけど。

 

そう考えながら声をかける。やはり大したダメージではないみたいで、ハヤトはすぐに姿勢を立て直す。そして壁を背にしてこちらを睨み、口を開いた。

 

 

「テメェ、いきなりなにしやがる!」

「なにって、実力を試してるんだよ?……ほら、やり返してみなよ」

「ッ、てめえ!」

 

 

僕の返答が癪に障ったのか、壁を蹴って猛進してくる。これは映像でも見た加速付きの蹴りであり、ギュード君の胴体に大穴を開けた一撃だ。

 

 

「喰らいやがれェェェェッ!!」

「……あ、忘れてた」

 

 

そう呟いた直後、僕の下にハヤトが着弾する。さっき僕が落ちてきた時以上の衝撃だったらしく、僕を中心とした地面は大きく凹んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘッ…………な、に?」

「いやいや、僕としたことが。大切なことにまだ答えてもらってないじゃないか」

 

 

ハヤトの右足を受け止めていた無傷の右手を見ながらそう言い、彼のほうに顔を向ける。

 

最初のほうに聞いていたと言うのに、答えてもらうのをすっかり忘れていたよ。

 

 

「改めまして、僕はニッケル。お兄さん、君の名前を教えてよ!」

「クソッ……放せ、放せっての!」

「なるほど、ハナセッテノ君と言うのか! よ~し、名前もわかったところで再開だァァァァ!!」

「な、ああァァァァァ!?」

 

 

やっぱりね、名前を教えてもらわないと話すときに言えないから不便なんだよ。いや~、教えてもらえてよかったな~(すっとぼけ)。

 

そう思いながら、足をつかみつつ高速で回転する。常人なら遠心力だけで気を失うほどの勢いで回り続けた後、手をパッと放す。するともちろんその勢いのままハヤトは再び吹き飛んでいき、何度もバウンドした後、今度は壁に当たらずに地面に倒れた。

 

その様子を見ながら僕はハヤトの下へ歩いていき、仰向けの彼の目の前で座って顔を覗く。

 

 

「これはどうかな、ハナセッテノ君。目は回っているかな、かな?」

「こ、この……!」

「う~ん、全然その様子はなさそうだね。さすがは韋駄天、耐久力は伊達じゃないみたいだ!」

 

 

そう言い返す彼の目は一切死んでない。目を回している様子もないようで、そのことを素直に称賛する。

 

でもまぁ耐久性は大体わかった。それじゃ、次は今の彼の攻撃力を計るとしよう。

 

 

「ッ、この野郎!」

「うぐッ!」

 

 

倒れた姿勢のまま放たれた拳を、僕は顔面に受ける。そして姿勢が崩れたのチャンスと見たのかハヤトは瞬時に立ち上がり、僕を射程圏内にとらえた。

 

 

「オラオラオラオラァッッ!!」

「アヴヴヴヴヴヴヴッ!」

 

 

次々に放たれる拳を、そのすべてを顔面を中心に受け続ける。

 

どうやらさっきのやり取りが本気で頭にきているらしく、その1撃1撃が先ほどの蹴りに匹敵するほどの威力だ。これギュード君だったら10回以上は死んでるんじゃないか?

 

 

 

 

 

……でも、現時点じゃやっぱこの程度か。

 

 

「ッ、涼しい顔しやがって……!」

「ふ~む……防御がすごい割に攻撃は全然なんだね、ハナセッテノ君!」

「さっきから変な名前で呼びやがって……俺はハヤトだっつうの!!」

「あ、そうなの?」

 

 

こう話している間にもハヤトの攻撃は続いているし、僕はその攻撃をすべて受け続けている。

 

だが残念、それらが僕にダメージを与えることはない。原作がそうだったように、この時点でのハヤトは攻撃がてんでダメみたいだ。

 

 

まぁ、彼の成長は今後に期待ってことで。もうそろそろ退場してもらおうか。

 

 

「それじゃハヤト君に、一つ良いことを教えてあげよう!」

「なッ!?」

 

 

そう言いながら拳を受け流し、勢いのまま彼の背後に回る。そのまま両手で彼の左腕をつかみ――――

 

 

 

 

 

「攻撃っていっても、殴る蹴るだけじゃないんだぞ☆」

 

 

背中側に引っ張りながら、全力で捻り上げた。

 

 

「この……ッ!?」

 

 

低い音が周りに聞こえるくらいの音量で響き、ハヤトは顔をしかめる。

 

だが別に腕をちぎったわけではないので、すぐさま反撃をしようとこちらを振りむき、反撃の構えをとろうとする。

 

 

だが残念、すでに触手で彼の両足を拘束しているのさ!

 

 

「な、なんだこれ!?」

「ハイ今のうちにもういっちょ!」

「おお!?」

 

 

驚いている間に右腕もつかみ、同じようにして捻り上げる。音が響いたのを確認したのち、触手から解放して少し距離をとった。

 

 

「テメエ、さっきからなめやがって……!」

 

 

さて、これは実験だ。あくまでこれは予想でしかないが、はてさてどうなるかな?

 

 

「まあまあ、これで最後だからさ。もうちょっとだけ付き合ってくれないかな、かな?」

「ッ!! くたばりやがれェェェェェェッッ!!」

 

 

そう考えつつ、クイクイと手招きをして挑発する。

 

それを見たハヤトは全力でとびかかり、一瞬で僕の目の前に近づいて――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

「ワォ、結構情熱的なんだね☆」

 

 

――攻撃することなく、僕の胸元に体を突撃させた。

 

もちろんそれはかなりの勢いだったのだが、そこはしっかり受け止める。何が起きたのかわかっていないのだろう、ハヤトは茫然とした表情で目を見開いていた。

 

そしてそれは、あまりにも致命的な隙だ。

 

 

「テメエ、今何を……ッ!?」

「そうだな~……まあ強いて言うなら、痛みに慣れるのは良いことばかりじゃないってことかな☆」

「うぐッ!」

 

 

そう返事をしつつ、触手を展開して攻撃する。まだ自分の状況を把握しきれてないハヤトはそれを避けることはできず、一瞬で両腕を根元から切断する。

 

そしてその勢いのまま連続で刺突を繰り出し、身体にいくつもの穴をあけた。

 

 

「さてハヤト君。君は何回殺せば死ぬのかな、かな?」

 

 

これでも死なないんだから、韋駄天って本当にチートだよね。

 

そう思いながらも再び足を拘束し、片腕を変形させて狙いを顔に定める。大穴、もしくは顔をすべて吹き飛ばすつもりで一撃を放とうとして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

 

――今度は僕が吹き飛ばされ、岩壁にめり込むこととなった。

 

ダメージはない。だが、深い衝撃が僕の中に走っている。

 

 

(クソ、ずっと意識していたっていうのに……!)

 

 

注意は常に向けていた。いつ攻撃が来てもいいよう、迎撃用の触手もこっそり準備していた。

 

だというのに、結果はこれだ。

迎撃は結局の所間に合わず、衝撃吸収に回すことしかできていない。

 

そう考えながら壁から出て、地面に降り立つ。そして正面を見ると、そこにはハヤトの傍に立ち、こちらを見ている少女の姿があった。

 

 

「変わった人間がおるものじゃな。……ここからは、わしが相手をしようか」

 

 

 

 

 

……あぁ、やっとだ。

 

やっと、その声を聞くことが出来た。

ずっと待ちわびていた!

ずっと待ち望んでいた!!

 

 

「ク、ハハ……ッ!!」

 

 

そんな心情が溢れそうになるのを内心必死に抑えつつ、僕はいつものように口を開いた。

 

 

「そうかそうか! 次は君が戦ってくれるんだね!?」

 

 

待っていたよ、最強の韋駄天――――リン!!

 

 

 




今更ながら感想と評価のお礼をば。

くまさぶろうさん、退会したユーザーさん、フィディリィーさん、ハイウェイすたー5ごうさん、鈴木颯手さん。感想ありがとうございました!
姉妹の兄で弟2さん、ゼロ.さん、nyunyu4211さん、鈴木颯手さん。評価ありがとうございます!

まだ5話だというのにこの評価と感想量……有難い限りです。

なのになぜ未だに原作で検索しても私の小説しかないんでしょうね??
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