えらいこっちゃ、えらいこっちゃ、ヨイヨイヨイヨイ♪
(仕事が終わり、久々に小説詳細を見た作者の第一感想)
やっべえなにこれ死んじゃう痛すぎるわマジでヤバイ痛い痛い痛い首切られてる瞬間を全力で意識してるからなそら痛いわなヤバイヤバイ死ぬ死ぬてか普通に死にかけてるイタイイタイ畜生全く笑えねえぞヤバイキツすぎるあぁ畜生痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイ――――
――だけど、まだだ。まだ死ぬには早すぎる。
全力で思考を止めるな、脳味噌を回し続けろ。本当に死ぬその瞬間まで決して気を緩めるな、ショック死やら気絶やらしたら本当に終わりだ。かと言って適度に痛みは受け流せ。この脳味噌は人間ベース、過度なストレスで脳死されたらそれでも終わりだ。
「……まさか、ニッケルの奴がこうもあっさり殺られてしまうとはのぉ」
ゾブル帝国・会議室。その室内の空気は重く、中央に立っているわしも思わずため息をついてしまうそうになる。
――襲撃は失敗。またジーサーティンとニッケルのMIA判定。――
それほどまでに、ピサラたちから報告されたこの内容が衝撃的だったのだ。
「再確認じゃ、ピサラ。4人目の韋駄天、そやつにニッケルは殺られたのじゃな?」
「えぇ、恐らく。ジーサーティンからの報告によるとギュードを殺した韋駄天は予想通りニッケルの足元にも及びませんでした。しかし4人目との戦闘開始から数分後、突如ジーサーティンが連絡を中断。そして……」
ピサラがそう報告しながらモニターを見る。そこには状況確認のために飛ばした偵察機からの映像が流れていた。
「数秒後に爆音とともに両名との通信途絶。そして急ぎ見に行った結果が、これか。……そして、ニッケルの体内に仕込んだ盗聴器は?」
「駄目ですね……爆音から数分で音声が途切れています」
「800年前、魔族が滅びる前から生き残っている韋駄天がいるとは……。クソ、してやられたわ!」
ニッケルの体内に仕込んだ盗聴器は特別性、そう簡単に壊れることはない。なのに壊されたということは、相手は発信源を特定することができていたというわけだ。
それはつまり、わしがあの小僧に仕掛けた発信機はバレバレ。我々の戦力を計るためにわざと放置し、誘い込んだというわけか……!
「オイオイ、それってまずいんじゃないか……?」
「もしそいつが乗り込んできたら、俺たちは……!」
「ブ、ブランディさん! お願いします!」
「ヘッ!? いやその、無理よ! まだ自分磨きが足りないっていうか……!」
動揺が伝わったのか、室内が騒がしくなる。恐怖する者、怯える者、頼る者。様々な思いで言い合っておるが、その誰もが同じことを考えておるじゃろうな。
――自分では勝てない、と。
「やかましい、黙らんか貴様ら!……確かに今の我々では勝つのは難しい、だが隠れておるわけにもいくまい」
そう言いながら、この先の作戦を説明する。それはひとまず、他3人の韋駄天を抹殺するというもの。あの3人は未だひよっこだが、放っておくと化け物じみた強さになるかもしれん。芽が育ち切る前に潰さなければならんだろう。
そして監視・捜索は軍隊を使用する。韋駄天が人類の味方である以上、人間だけで構成された軍隊には下手に手を出せまい。そして分散し孤立した状態を探し出し、そこを討つ!
そう考えながらわしはピサラ、ネプト、コリーに作戦内容を説明する。その途中、モニターに移された映像を横目で眺めながら。
(全く……あれが生き残った韋駄天の実力か。なんじゃあれは、まるで戦略兵器ではないか)
――そこには、かつてあった面積の3分の1を消し飛ばした孤島の映像が映っていた。
『……あれから半日、まさかこんなに対応が速いとはね』
島を囲んでいるであろう軍艦の一部を眺めつつ、僕は呟く。視界に移る範囲だけでも大概な数だが、実際にはその数倍の数の軍艦が島を囲っていた。
狙いは間違いなく僕たちの監視だろうし、人間相手なら手を出しづらいだろうという魔族の考えも見透けている。
『うん、このまま深海を通ることにしよっか。行こう、ポーラ』
『わかった。……でもイースリイ、なんで10日間なんて期限つけたの?』
――だからこそ、僕たちは今深海の底を歩いている。
韋駄天である僕たちは思念体だ、そもそも呼吸自体必要なことではない。つまり海底を歩いて通るなんてこと、魔族の連中が意識するはずもないだろう。
そう考えながら歩みを進めていると、一緒に歩いているポーラが問いかけてきた。それはリンさんから提案されたゾブル帝国の襲撃を遅らせたことへの疑問のようだ。
『プロンテアさんがいた方がいいのはわかるけど、探すのに1週間もかからないでしょ? だって絶対ホタエナにいるもん』
『それはそうなんだけど……普通に呼んでも絶対に来ないよ、特にリンさんの近くにはね』
『そうだけど……』
そう返答するも、ポーラの中では納得がいってないようだった。
まぁそれはその通りで、あくまでこれは理由の半分。今すぐ行動しても十分にゾブル帝国を滅ぼせるであろうリンさんによる襲撃、それを遅らせたのには明確な理由がある。
『今すぐにリンさんがゾブルを襲撃したとしても、魔族を全滅させるのは難しい。特に今回の場合、一匹も取りこぼしてはいけないからね。……それに今ゾブルを滅ぼしたら、3大国家の力関係が崩れてしまう』
『3大国家……ゾブル、ホタエナ、サラバエルのこと?』
『そう。ここでゾブルが消えると、残った2国が争う可能性が出てきてしまう。その辺の調整もして、盤石の態勢で挑みたいのさ』
『ふ~む……そっか。イースリイがそう言うなら、それがいいんだと思う』
『ハハッ、ありがとうポーラ。それじゃ、さっさとホタエナまで移動しよう』
『うん!』
そう会話をしつつ、お互いに荷物を片手に持って移動する。
ポーラが右手に持つのは気絶しているハヤト。ついさっきまでリンさんとの修行でボコボコにされているはずなのだが、意識はともかく肉体は完全に修復している。これは昨日までは確実にみられなかった再生速度だ。おそらくあの魔族との戦いでの敗北、それがハヤトに本気で強くなりたいという意思を芽生えさせ、パワーアップしているらしい。
(……そう、あの魔族。あいつの存在が、どうしても積極的に出づらくさせてくる)
チラリと左手に持つ大きなズタ袋を眺め、思考する。
あの時点で送られてくるのは、間違いなく魔族にとっての最高戦力。それを倒せた以上、今のリンさんは無敵のはずだ。だけどあの動き、あの技、……そして、あの最後の足搔き。それらすべてが、積極的に動こうとすると一抹の不安をよぎらせてくる要因となっている。
『リンさん、いくら何でもやりすぎです! 島の一角が吹き飛んでるし、僕たちも巻き込まれる寸前でしたよ!?』
『もともとあ奴の首だけを切るつもりだったんじゃ! なのに切る直前になっていきなり腕が千切れたせいで、軌道がブレてしまったんじゃよ!』
『……はい?』
『それにちょうどええじゃろ。あの先、たしかあの山頂辺りからこっちを見ている奴がおったはずじゃ。そ奴もついでに消し飛ばせたろうしの』
『ついでで山ごと消し飛ばすんですか……』
『それよりイースリイ、とっととゾブルとやらの場所を教えるんじゃ! この身体が再生し終わったら、速攻で叩き潰してくれる!!』
『リンさん、待って、待ってください! 再生し終わるまででいいので、僕の話を聞いてください!』
思い返すのは、戦闘後のリンさんとの会話。そこから何とか説得して今に至るのだが、それは別の話。
ここでリンさんの話から分かること、それは、あの魔族は必ず死ぬ直前に何かをしたということだ。しかもそれはリンさんの一撃によって仕込みのタネがほとんど吹き飛ばされてしまって、皆目見当がつかない。
だけどここで重要なのは、何か仕掛けをしたと言うことだ。それはつまり、相手はリンさんの情報を一定以上入手していたことになる。リンさんの強さは、僕はもちろんハヤトすら軽く凌駕している。そんな彼女の攻撃にすぐさま対応して見せるなど、普通ではありえないはずだ。
(あいつはまるで、リンさんのことを知っていて戦いを挑んだようにも見えた。……だけどもそれはあり得ないか、だって
リンさんの実力を知っていたら、あんな少人数で挑みに来るわけがない。だからこそそれはないと判断し、他の可能性を探ることにした。
(なにか、なにかあるはずだ。そうでなければ……)
そうでなければ説明がつかないのだ。あの攻撃の後――――
『ええい、わずらわしい。イースリイ、わしの身体を拾ってこい! 胴体さえくっつけてしまえば、四肢なんぞすぐ回復してやるわ!』
『無茶言わないでください! 何分割されてるかわからないし、ほとんどが衝撃で吹き飛んでますよ!』
――リンさんが全身バラバラになっていただなんて、ふざけた状況には。
「ふぁ~あ……これで全部か?」
「あぁ。担当している艦への補給は済んだ、今運んでるやつが終われば帰れるぞ」
「おし、とっとと戻ろうぜ。あんな辺鄙な島の監視なんざ俺はごめんだ」
「だな。……お、噂をすれば出発だ」
「にしても、子供4人にこの量の監視とはな? そこまでする必要があるのかねぇ……」
「さあな、上が考えていることはよくわから……ん?」
「どうした?」
「なぁ……なんでこの辺、こんなに濡れてるんだ?」
「水漏れとかでは……なさそうだな。あ、あっちにもあるぞ」
「なぁ、思わず俺たちこうやって追いかけてるけど……」
「これってどう考えても水漏れじゃねえよな。誰かがずぶ濡れで歩いているような……と、ここで終わりか」
「てことは……この部屋か?」
「だな。……準備はいいな?」
「動くな! 今すぐ手を挙げ――ヒッ!!」
「名前と所属を名乗れ!……て、えぇ!?」
「……うるさい。いいか、帝国に戻るまでは絶対に俺がいることを他の船員に悟られるな。そして着いたら、オオバミ博士に連絡するんだ、いいな?」
「え、あの……その前に治療を……」
「てか、その手に持ってるのって……」
「いらん、俺は時間まで寝る。わかったら、さっさと行動に移せ!」
「「は、はいぃッ!」」
「生き残っちまったか。……偶然とはいえ、これだけでも持ち帰れそうでよかったよ」
暗闇の中、部屋の隅で壁にもたれかかっている男性は両手に抱えたそれを見る。しかし疲労が限界まできているようでズルズルと座り込み、それを落としそうになる。しかしすんでのところで持ち直し、胡坐をかいた状態で足の間にそれを置く。
「まさかお前がやられるなんてな、ニッケル。これからどうなることやら……あぁ、駄目だ。眠すぎ、る……」
薄れゆく視界の中、足の間に置いてあるそれが最後まで目に映る。その
――まるで眠っているようだな。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
赤悪鬼さん、寂私狩矢さん、おーるどさん、アルトさん、白桜さん、鈴木颯手さん、ランダ・ギウさん、兎山万歳さん、ズングリさん、ハイウェイスター5ごうさん、夜の砂さん。感想ありがとうございました!
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話が全然進まない……何故だ? やはり文章力か?