帝国最強のかませ犬になった僕ですが   作:zelga

9 / 10

……言葉は、不要だな。(原作検索結果を眺めながら)



第9話 「衝撃」

「ピサラ大将、またこの女が映りました」

「…………」

 

 

部下からの連絡を受け、私は報告書に落としていた視線を正面の大画面に移す。そこには例の韋駄天達の拠点であろう島の一部が映っており、今は一人の少女が映し出されている。

 

金髪で小柄な少女、この情報だけを知っている部下達は何故私がこんなに警戒しているのか疑問に思っている事だろう。

 

だが私は、私たちは知っている。

 

魔王様から提供された映像に映っておらず、ジーサーティンの報告と合致するその外見。

 

 

……間違いない。奴が4人目の韋駄天であり、あのニッケルを殺した張本人だ。警戒するなと言う方が無理なものである。

 

 

「海軍兵による目撃情報もすべてこの女のみ。報告にあった他3名は確認できておりません」

「ふむ……」

 

 

続けられた報告の内容に、顎に手を当てながら考え込む。

 

実際その通りであれから1日経過したが、派遣した軍隊からはこの韋駄天しか視認の報告が上がっていない。

 

茶髪三白眼の少年の韋駄天、金髪ツインテールの少女の韋駄天、青髪メガネの少年の韋駄天。この3名の報告は一度も出ていないのだ。

 

 

(なぜこいつだけ……まさか、既に分散したのか?)

 

 

しかしニッケルと戦闘した後に即分散だと?

 

魔王様の言う通りならば、連中は謀にも長けている。そんな彼らが行うのには少し疑問が残る。

 

 

……誘い込む罠か? それとも他に何か――――

 

 

『おい、聞こえるかピサラ』

「ッ!……オオバミ博士、どうなさいましたか?」

『監視中にすまんが、もう一度会議室にきてくれんかの?』

 

 

思考の海に沈みそうになったところで、突如魔王様から通信が入る。ハッとして返答を返すと、どうやら再び招集との事らしい。

 

しかし、会議ならば例の戦闘後に既に行い、報告できることはすべてしている。いまさら何を……?

 

 

「何か、追加の報告でも? それならば今ここで……ッ!?」

 

 

追加の報告ならば、今ここで聞けばいい。そう判断した私はそう言おうとしていたが、続けて言われた魔王様からの言葉に呆然とする。

 

その後私は承諾し、急いで部下に指示を出してその部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました、ピサラです」

「おぉ。来たな、ピサラ」

 

 

扉を開けると、既に魔王様は会議室の中にいた。修理が大分進んでいるのか、今回は上半身はいつもの身体だ。と言っても、下半身は台車のようなものに連結されているのだが。

 

 

「遅いわよ、ピサラ」

「作戦室からここはかなり離れている。これでもかなり急いできたんだぞ」

 

 

先に来ていたのだろう、タケシタとブランディはすでに着席している。そして茶化してくる彼女にそう言い返しつつ、私も隣に着席する。

 

 

「だな。……それで魔王様、先ほどの話は本当なのですか?」

「あぁ、本当じゃ。やはり信じられんか?」

「えぇ、まぁ……」

 

 

それを確認したタケシタが魔王様にそう切り出す。それを魔王様は肯定するが、それを聞いても私たちはそれに対し確信を抱くことができていない。

 

当たり前だ、なぜなら――――

 

 

 

 

 

「本当なのですね? ジーサーティンが生きていたというのは」

 

 

ジーサーティンの帰還、それは私たちにとってそれほどの衝撃を与えていたのだから。

 

 

「あぁ、そうじゃ。なんでも深海に潜伏して韋駄天の目を誤魔化し、帰還する補給艦に忍び込んておったらしい」

「しかし、そんな報告は……」

「口止めしておったそうじゃ。わずかでも動揺し、それを韋駄天共に察知されるのだけは避けたかったのじゃろう」

「なるほど……それで、ジーサーティンは今どこに?」

 

 

内容を聞きつつ、彼の状況を把握する。しかしそれでも疑問が晴れ切らないのは、この場所にジーサーティン本人がいないからだ。

 

そこで彼の現状を聞くと、博士は一度目を伏せてから口を開いた。

 

 

「今はわしの研究室におる。報告を直接聞くために連れてきたはいいが、奴の消耗具合がかなり重くてな。ある程度回復するまでは、あそこから動かせそうにないの」

「そんなに……ジーサーティンも攻撃を受けていたと?」

「いや、奴が言うには攻撃の余波だけでそうなってしまったらしい。もっと話を聞きたかったのじゃが、限界のようで奴はすぐ眠ってしまいおったわ」

「そう、ですか……」

「わかっておる、これを伝えるためだけに呼んだわけじゃないわい」

 

 

そこまで言った所で、魔王様はまぁ待てと言いながらモニターを出す。そしてこれじゃったかだとか確かこれじゃな等と言ったことを呟き、そしておぉこれじゃこれじゃと台車部分にあるスイッチを押す。

 

すると魔王様の目が光り、モニターに映像が映し出された。

 

 

 

 

 

……目が光った、うん。

 

 

「「「…………」」」

「おぉ、うまくいったようじゃの。……さておぬしら、この映像が何かわかるか?」

 

 

あの身体は機械なので不思議なことではないのだが、私たちにも思うことはあるわけで。

 

どこか遠い目をしている私たち3人に魔王様が問いかけてくる。そこで改めて映像を見ると、それはどうやら1人称の映像のようだった。

 

 

恐らく、場所は私たち魔族専用の訓練所。そして正面に映っているのは……。

 

 

「ニッケル、だな」

「えぇ。それにしては幼いわね……ピサラ、これ何年前の映像なの?」

「それはおそらく、この先を見ればわかるかと。……始まります」

 

 

 

 

 

映像には映っていないが、ネプトが開始の合図をする声が聞こえる。

 

それと同時にニッケルが視点主の元に接近し、そこから近接格闘が始まる。次々と繰り出される攻撃をいなしつつ、視点主はじっくりと隙を待つ。そして焦れてきたのか大振りになったところを狙って反撃し、ニッケルとの距離をとった。

 

 

『ッ、クソ!』

『……ここだ』

 

 

そしてその瞬間視点主は右腕を変形させて狙いを絞り、高速の弾丸を放つ。ニッケルは1発目はかろうじて回避に成功するが、ほぼ同時に撃たれた2発目が胴体に命中する。衝撃力に押されてニッケルの身体が後方へと飛ぶが、空中で姿勢を整えて着地した。

 

 

『イッテ~……容赦ないなぁ、ジーサーティン』

『殺傷力は抑えてある。さっさとお前もアレを出せ』

『わかってるよ……それじゃ本気で行こうかな、かな!』

 

 

そう言ったニッケルは両手を地につけ、腰から触手を1本出して突撃した。

 

 

 

 

 

「……やはり、ジーサーティンのようですね」

「そうね。それに映像は大体10年前の物かしら、まだ互角に戦えてるみたいだし」

「ふむ、そうなのか」

 

 

続行された戦闘を眺めつつ、私とブランディはそう結論付ける。タケシタはいまいちピンと来ていないようだが、それは彼が実際にニッケルと戦った回数が少ないからだ。

 

だが私たちにはわかる。このニッケルは、まだ弱い(・・・・)。映像を見ると、触手を出してからはジーサーティンと互角に戦えるようになっている。と言うことはおそらく、この映像はニッケルが訓練に参加してから半年程度といった所だろう。

 

 

「この頃はまだ攻撃が荒いし、簡単に勝ててたんだけどねぇ……」

「そういえばこの辺りからでしたか、ブランディがニッケルの相手をするようになってきたのは。……それで博士、この映像は?」

「うむ。まぁ簡単に言ってしまえば、これはジーサーティンの記憶じゃ。今あ奴は研究室にいるのじゃが、脳をスキャンする装置を取り付けておる。そこで映像記憶を読み取り、こうしてモニターに映しておるというわけじゃな」

「「「映像、記憶?」」」

「映像記憶と言うのは……まぁええか、それはあまり関係ないわい」

 

 

聞きなれない言葉に、私たちはそろって首をかしげる。

 

その様子を見て魔王様が何か言おうとするが、目を閉じてそれを止める。それに付随して映像は途切れ、改めて魔王様は何かを探し出した。

 

 

「細かいことは気にするな。要するにこれは、ジーサーティンが見てきたものをそのまま映せるという事じゃ。つまり……」

「ッ、例の韋駄天の実力を直に見れるということですか!」

「そういう事じゃ……お、あったあった」

 

 

どうやら見つけたようで、再び魔王様の目が光る。するとどこか高台のような場所からの光景が映り、ニッケルと三白眼の韋駄天が戦っている様子が映し出された。

 

 

 

 

 

「……やはり、この少年は情報通りの強さといった所だな」

「そうね、この程度なら楽勝だわ」

「と言うことは、やはり問題は……」

 

 

その様子は終始ニッケルが優勢をとっており、苦戦している様子も見られない。予想通りの状況に私たちはそうコメントするが、この後が本番だということもわかっているので楽観視などできるはずもない。強いて言うなら他の3人の韋駄天はやはりまだ弱く、私たちで十分に対処が可能だということだ。

 

 

『な、あの女どこから攻撃しやがった……!?』

 

「……来たな」

「さて、お手並み拝見と行かせてもらおうかしら」

「ニッケルをも殺しうる韋駄天、私たちより格上なのは間違いないが……」

「さあ、始まるぞい……!」

 

 

そして突然ニッケルの身体がブレ、岩壁に激突する。そして先ほどまでニッケルがいた所に立っている少女を見て、私たちは気を引き締める。

 

それは監視映像にも映っていた、4人目の韋駄天。彼女の動きを少しで見切ろうと、私たちは真剣な表情で映像を見つめ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「「「「は??」」」」』

 

 

――そのあまりの光景に圧倒され、数分後には誰も何も言えなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あぁ、これはマズったのぉ。

 

 

ジーサーティンの記憶を眺めながら、そうわしは確信する。

 

それを裏付けるかのようにタケシタ、ブランディ、ピサラは先ほどから一言も話しておらん。それは間違いなく、この映像に圧倒されてるからだろう。

 

 

(まずニッケルじゃ、まさかここまで成長しているとは……)

 

 

一応の比較として訓練時代の映像も見せたのじゃが、まるで比較にならない。この戦闘が始まってすぐにわしは思った。

 

 

まず手数が違う。腰から伸びる触手は4本になっており、それらを自在に操っている。

 

続いてパワーが違う。一発一発に必殺の威力が込められており、外れた際の地面への衝撃からその威力がうかがえるというものだ。

 

そして何より速さが違う。本人は多少速くなった程度なのじゃが、触手の速度が段違いじゃ。だからと言って精密性は失われているわけではなく、むしろ目を見張るほどに向上している。

 

 

強い、まさしく帝国最強の兵士。そう思えるほどのポテンシャルを発揮しているニッケルじゃが、わしらが一言も発せないのはそれが原因ではない。

 

 

「……ブランディ、今の防げます?」

「無理無理無理無理、絶対に無理! なんなのあれ、時間差なうえにどれか1つでも通したらその穴をこじ開けて連撃してくるとか滅茶苦茶よ!」

「私も、今ではできるか怪しいな。しかし……」

 

『……ふざけんなよ、何であれを防げるんだ!?』

 

 

――そのニッケルの猛攻を、あの韋駄天は涼しい顔で受け止めているからじゃ。更に反撃をする余裕もあるようで、ニッケルはそれを紙一重で躱しているように見える。

 

 

それはまさしく、異次元の領域での戦い。

 

奴の戦いを分析するため、実力者であるこの3人を集めた。……じゃが、結果的に敵との格差を見せつけるような事になってしまったようじゃ。

 

 

「こんなのどうしろって……あら?」

「動きが、止まった……?」

 

 

ブランディとピサラが話し合っている途中で、突然二人の戦闘が止まる。そして少し距離をとった状態で相対し、何か話し合っているようだ。

 

 

「……会話はさすがに聞こえないか」

「この距離ですからね。まぁ、こんなに鮮明な映像で見られることを幸いと思うべきなのでしょう」

「流石はジーサーティンといった所よね、魔族一の視力の良さは伊達じゃないわ」

「じゃが、何を話しておるんじゃ? リンがニッケルに話しかけているようじゃが……」

 

 

しばらく話し合いが続くが、ニッケルがさらに距離をとる。そして再び何か話したかと思うと、リンは右手を突き出す。そして――――

 

 

 

 

 

『――ッ、あれは……!』

 

「え、なに?」

「剣、ですね。……手から、出しましたね」

「……全く、想定外のことが多すぎるな」

「あの剣――」

 

 

『悪いが話は後だ。通信を終了し、撤退する!』

 

「――……これ以降、通信はつながらなかった。そうじゃな?」

「はい、その通りです。つまりあの韋駄天が攻撃するとしたら、この後になるんですが……」

「なんでニッケル置いて逃げ出してんのよ、あの馬鹿! これじゃ攻撃の正体もわからないじゃない!」

 

 

二人が構えてる映像が終わり、急いで山を下りる様子に切り替わる。ジーサーティンは遠距離主体とはいえ身体能力は人間の比ではない。身のこなしの軽さも加わってすぐさま山を下り、森の中を疾走し始めた。

 

 

『クソッ、情けねぇなぁオイ……!』

 

「情けないって思ってるんなら今すぐ戻りなさいよ……!」

「まぁまぁ、落ち着けブランディ。……こう言うのもあれだが、ジーサーティンがいても何もできんよ」

「何もって……例えば、あそこで見ていた未熟な韋駄天を狙撃してあいつの気を逸らすこととかは?」

「あの2人があそこにいたのは、あの韋駄天の視界に入る範囲だからだ。下手に撃っても、防がれる可能性が高い」

「えぇ。それに、当たったとしても致命傷になるとは限らない。……本当に厄介ですね、韋駄天というものは」

「うぐぐ……!」

 

 

ブランディは焦ったように過去のジーサーティンに向かって文句を言うが、タケシタとピサラは冷静に返す。そう言われて何も言い返せないのだろう、ブランディは少ししょんぼりとして映像を見始めた。

 

 

『ハァ、ハァ……クソ、まだか!? 海岸まであとどのくらい走れば……!』

 

 

焦っているのだろう、少し視界がブレている。木々の間を走り抜け、一直線に向かう先は移動用の高速戦闘機だろうか。

 

そして息を荒げながらジーサーティンは走り続け、森の中をついに抜け出し――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………は?』

 

 

――直後、空中に放り出された。

 

 

「「「「ッ!!??」」」」

 

『な……うわああぁぁぁぁッ!!』

 

 

直後、鳴り響く轟音。そして遅れたやってきた衝撃波に見舞われ、ジーサーティンは吹き飛ばされる。荒れ狂う視界の映像だが、端々に金属の破片や、島を構成していたであろう土やら木やらの破片が一緒に飛んでいるのが映る。

 

 

『ガハッ! ッ、なにが……!』

 

 

そして何回転もしたのち、海にたたきつけられる。それで映像が乱れたが、何とか意識を立て直したようじゃ。

 

海中を泳ぎ、水面に浮上する。そして息を整えつつ、島があった方向を見て――――絶句する。

 

 

『なん、だ、これは……?』

 

 

そこには、見違えた島の様子が映っていた。かつて土地があったであろう部分は大きく抉れ、海水が押し寄せている。

 

彼が見張っていた山も、駆け抜けた森も、戦闘機を停めていた海岸も。

 

ジーサーティンの視界には、そのどれもが映っておらんかった。吹き飛ばされたのだ、あの一瞬で。

 

 

『なにがあった……ッ、戦闘機は!』

 

 

しばし唖然としていたが、ハッとして周囲を見渡す。そして少し離れたところで浮いているコックピットを見つけ、急いでその元まで泳ぐ。

 

 

『こいつで!…………ま、そうだよな。金属の塊が海に浮くわけがねぇ』

 

 

たどり着き、コックピットに乗り込もうと一度水中に潜ったジーサーティンが、諦めたように呟く。それもそのはず、その戦闘機はコックピットしかなかったのだ。それ以外はすべてバラバラになっていたようで、それが周囲に浮かんでいる金属片の正体なのだろう。

 

だがそのまま、ジーサーティンはコックピットの中に入る。キャノピーはすでに砕け散っており、開かずとも中に入ることができた。

 

 

『クソ、どうする? 戦闘機無しで、ここからどうやって離脱を……あ?』

 

 

ずぶ濡れのまま倒れこみ、ジーサーティンがそう呟く。何かないかと身をひねった時、彼のポケットから小さな袋が転がり落ちてくる。それを拾い、奴はしげしげと眺めながら口を開いた。

 

 

『これ、確かニッケルが……ん、それにこいつは……?』

 

 

そう呟きながら、ニッケルが座っていたのであろう席に視線が移る。そしてそこで何かを見つけたようで近づき、その片手に収まる機械を拾い上げ、その光る画面をのぞき込み――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――む?」

「あれ、映像が……?」

「魔王様、どうかなさいました?」

 

 

突如映像が途切れ、三人の視線がわしに集まるのを感じる。再び起動しようとするが、うんともすんとも言わない。

 

なぜこうなったのかを考え、両手をポンと叩いた。

 

 

「……どうやら、ジーサーティンの奴が起きたみたいじゃの」

「あぁ、なるほど。寝ている間しか映像は移せないのですね」

「ここまで、ですね。……しかし魔王様、ここからジーサーティンはどうやって身を潜めたのですか?」

 

 

会議室の明かりをつけつつ、ピサラがわしに問いかける。まぁ確かに、それは気になるじゃろうな。あれでは重要なパーツがまだ姿を見せておらん。

 

 

「確かに我々魔族は、深海の水圧程度ならば耐えます。しかし人間と融合している以上、酸素が必要なのでは?」

「あ、そうよ。軍隊が来るまで半日、少なくとも数時間はかかっているはず。その間どうやってあいつは深海に?」

「うむ、これは起きとる間に聞いとるわ。なんでもあの袋の中に、特注の潜水器具が複数入っとったらしい」

 

 

人間でも一時間くらい潜れるようなやつがな、と言葉を続ける。それを聞き、タケシタは不思議そうに首をかしげて口を開く。

 

 

「はぁ……それはまた、なぜ?」

「ニッケルの奴、任務が終わってから遊ぶ気だったようでな。そのためにこっそり用意させていたそうじゃ」

「はぁ……」

「それは、なんというか……」

「……ま、これ以上話す意味はないことじゃな」

 

 

運がいいのか悪いのか。ニッケルの行動の結果にどう反応してよいか三人が戸惑っておったので、話題を切り替えるために三人のほうへ顔を向ける。

 

 

「とにかく!……これで、敵の格はわかった。ピサラ、決して焦るなよ?」

「……はい、わかっております」

「よし、これで会議は終わりじゃ。……わしは研究室に戻り、ジーサーティンの話を聞くことにするわい」

 

 

そう言って、扉に向かって移動を開始する。その背後で、まだ話し合っている三人の声を聴きながら。

 

 

「……難しいことだが、この映像を見れてよかったな。お前たちは、あのニッケルの強さは知らなかったんだろう?」

「そうね。……だとしても頭が痛いわ、何なのよあの韋駄天の強さは」

「少なくとも、警戒は最大限にするべきでしょう。……あと、ジーサーティンの映像はまた見たいですね」

「だな。……まぁそのためには、また眠ってもらう必要があるのだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そんな訳あるか。寝ていようがいまいが、本来あの機械は問題なく動くんじゃよ)

 

 

研究室に向かって移動しつつ、先ほどの会話を思い出す。知らないこととは言え、誤魔化せてよかったわい。

 

今回の不具合の原因は決まっている、スキャン用の機械が壊れたのだ。

 

 

じゃあなぜ壊れたのか? ……なんとなくだが、その答えもわかっている。

 

 

そう考えていると、研究室にたどり着いたことに気づく。新調された扉は防音性もばっちりなのじゃが、開かずともわずかに振動している様子から部屋内の様子は何となく想像がつくわい。

 

 

「全く、あ奴ら(・・・)は……」

 

 

そう言いながら、扉に手をかける。そしてゆっくりと開き、中の光景が目に入る――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうするんだこれ、コードがズタズタじゃねえか! これ映像も送れてないんじゃ……?」

「だからごめんって! まさかこの程度で千切れるほど柔だと思ってなかったんだよ!」

「あんだけ笑いながら暴れたらそうなるに決まってんだろ! この馬鹿が!」

「しょうがないじゃん、思い出し笑いしちゃったんだから!」

「だからってあんな狂ったような笑い方するんじゃねえ! 思わず目が覚めちまっただろうが!」

「痛い痛い痛い! やめてよ、僕今手も足も出ないんだから!……あ、文字通りだねこれ!」

「うるせえ!……にしても、なんか不思議な気分だな。俺がお前の生殺与奪を握れてるなんて」

「でもその気になれば僕、簡単にジーサーティン殺せるよ? 触手が今どこに入ってるか忘れてないよね、よね?」

「……あぁ、そうだった。てかそのせいでこんなに疲れて……やべ、また眩暈が」

「……あれ、ジーサーティン? 生きてるー? おーい? 現状君が死んだら僕も死ぬんだけど、けど〜??」

 

「なにやっとんじゃ、この馬鹿タレ共……」

 

 

取り合えず、二人の頭に拳骨を落とそう。

 

わしはそう決意した。

 

 

 

 





ここまで読んでいただきありがとうございます。

赤悪鬼さん、ミスドおいしいさん。感想ありがとうございました!

PC356さん、GOMAshioさん、SerProvさん、うみ人さん、梶尾十平さん、Tanukiさん、りうまえさん、最果てさん、消炭さん、ああかかかやさん。評価ありがとうございます!


作品内最大文字数の話なのに展開がほぼ進んでない……なんでや。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。