千景万色たゆたう惑星達   作:蟹アンテナ

10 / 12
なぜそんなに先を急ぐのか?オトナたちは言う。でも仕方がないんだ。熱くて危険な快感が、ここにはあるから・・・。(スーパーファミコンソフト、HYPER ZONE「ハイパーゾーン」より


人工迷宮惑星

遠い遠い太陽系によく似た星系に出自を持つ星間文明は、近隣の星系を時空間ワープで移動する技術を開発して以降、様々な星々を開拓しては植民地としてきた。

 

しかし、惑星開発が進むに連れて発生する膨大なゴミ問題が星間文明を悩ませ、宇宙空間への投棄、恒星への射出など無秩序かつ無責任な処理をする植民惑星が多数発生し、処理に失敗したゴミがスペースデブリとなって宇宙船を襲った。

 

中には生物兵器の培養槽など危険極まりない物も投棄されており、それが衝突した宇宙船がバイオハザード汚染され、宇宙船を取り込んだ宇宙怪獣へと進化して宇宙ステーションや軌道エレベーターを襲撃する大惨事へと発展することもあった。

 

それから、星間文明は小惑星帯から外れた天体を改造した宇宙ステーションに各惑星のゴミを受け入れる担当窓口として開設し、各惑星から産業廃棄物の処理を引き受け、その処理機能は次第に高度化学化・拡大化して行き、元が小惑星とは思えないほどに発展していった。

ゴミを処理して、その過程で生成された再利用物は各惑星にとって貴重な資源となり、都市開発やテラフォーミングなどの資材として使われるようになり、星間文明に好循環を齎した。

 

だが、光は突如闇に転じる。

ずさんな投棄をした学術都市のカプセルが事故で破裂し、溢れた生物兵器がゴミを取り込みながら自己増殖・自己進化を始め、あっという間にゴミ処理宇宙ステーションを蹂躙したのであった。

拡張し続けた結果、ゴミ処理施設でありながら、企業従業員が暮らす為の居住区や交通拠点として機能する宇宙港が備えられた宇宙都市とも呼べる規模に発展していた宇宙ステーションは、その人口の分の悲劇があった。

 

逃げ惑う民間人、生物兵器に取り込まれたガードロボ、異形の存在へと変異してしまった人間、混乱によって破損したり機能不全に陥ったセキュリティ、ありとあらゆる災厄が巻き起こる地獄絵図と化したのだ。

 

その蹂躙の嵐から生き残った企業職員やその家族たちは、まだ宇宙ステーションに閉じ込められている同胞の安否を心配し、星間軍とは別に有志の義勇軍を結成し、周囲の静止を振り切って宇宙ステーションに突撃し、星間軍が生物兵器を引き付けている間に中枢の制御装置を奪還する事に成功する。土地勘が生きた結果であった。

 

汚染区画を閉鎖した後、ブロックの連結を緊急解除、生物兵器が跋扈するゴミ集積所を宇宙空間へと投棄すると、大きく数を減じた残存勢力の掃討に移った。

大幅にその機能を落としたゴミ処理宇宙ステーションは、施設の再建に移るが、未だに宇宙空間に漂う汚染区画が宇宙怪獣に進化しないように対策しなければならなかった。

 

核兵器や時空消滅兵器などで汚染区画を処理する事も検討されたが、深刻な核汚染や時空断裂などが起こる可能性もあり、植民惑星も多い星域なので迂闊に大量破壊兵器を使用することは出来なかった。

なので、一次処理として小惑星を粉砕して作った高密度均一コンクリートの壁で覆い、封印することになった。

 

そのままロケットなどを取り付けて恒星へと突入させる案もあったが、使用する燃料が膨大かつ多大な時間を要する事や、外殻が破損し宇宙怪獣が飛び散る可能性もあったのでそれも見送られた。

結局有志の宇宙船団によって緩やかな恒星突入コースに入るように軌道修正され、封印された汚染区画は放置されたまま人々の記憶から消えていった。

 

それから何世紀もの時が経ち、一部の天文学者が偶然奇妙な天体を確認する。

直ぐにそれは大昔に封印された宇宙ステーションの一部と判明したが、ごく少数の人間がその変化に気づいただけでメディアからも大きく取り上げられることも無かった。

 

だが、封印は長き時を経て解かれることとなる、分厚い均一コンクリートを穿ち表面に現れた異形の生物たちは瞬く間にその表層へと広がり、コンクリートを材料にコロニーを形成するのであった。

 

その異変に気づいた星間文明は、多少色めき立ったが軍隊が出動する様なことにはならなかった。

大昔に軌道修正された結果、植民惑星から公転ルートが外れており、放って置いても恒星へと突入するからである。

それどころか、悪乗りした民間人が(と言っても船団を所有できるほどの富裕層であるが)汚染区画へと乗り込み内部の様子を撮影する有様である。

 

当然ながら、閉鎖環境下で進化し続けた生物兵器は乗り込んだ者を襲撃し、被害を出すも奇跡的に死傷者は出なかった。

時代の変化は星間文明の武装も進化させていたからである。

 

所詮は旧世代の未熟な時代の産物、そんな舐め腐った認識で諸悪の根源となった学術都市の末裔の一派は追い酒の如く追加で生物兵器のカプセルを叩き込み、星間軍は危険生物駆除と新兵器のテストなどの名目で軍事演習を行い、酔狂な好事家は内部の様子を配信するドローンを多数投入する。

 

どうせ消滅する宇宙ステーションの汚染区画、自分たちの直接的な害になる事がない人工天体の有効活用、乱痴気騒ぎ会場と化した汚染区画は格好のエンタメへと進化したのだ。

完全制御できるようになった生物兵器のアピールとして旧世代の生物兵器と戦う新世代生物兵器のワイルドな戦闘に血肉が踊り、コンパクト化されながらも重武装なバトルマシンの砲撃に熱狂し、配信機材を自前で持ち込み武装して突入するお調子者に投げ銭を叩き込む。

 

たまに完全制御を謳った新型生物兵器が暴走して新たな脅威になったり、電子回路が壊れた軍用ドローンが同士討ちしたりトラブルが発生するが、それすらも視聴者たちにとっては酒の肴であった。

それに、なんだかんだ再生資源施設の名残か、レアメタルなどの貴重な資源も発掘されることも有るのだ。もしくは生物兵器の外殻に蓄積され新素材として注目されることすらあった。

 

そして高密度均一コンクリートに覆われた人工天体はこう呼ばれるようになる。

 

ダンジョンと・・・・・。

 

閉鎖環境下での食物連鎖が起こり宇宙ステーションが単一の宇宙怪獣へと進化する事は無く、自力での推進力を持たないため、やがて恒星に焼かれる運命にあるダンジョン。

表向きは民間人の立ち入りが禁止された危険地帯であるが、違法なアミューズメント施設として利用されており、旧世界でかつて存在した組合組織を模してギルドと呼ばれる軍部とは無関係な民間武装集団が結成され狩りの様子を配信していた。

 

「はぁ、またプラントの群れかよ」

 

「怪物化した街路樹の子孫らしいけど、元の植物の面影全然ねーのな」

 

結成されてからそれほど経過していない駆け出しギルド、スペーススコルピオンは星間軍の砲撃に炙られて追い立てられてきた怪物の群れにゲンナリしながら応戦する。

 

「軍に見つかるなよ、表向きは民間人の立ち入りは禁止されているんだから」

 

「そうは言っても、あっちも見て見ぬふりしてるだろ?休暇のときにギルドの配信を見ている奴も居るくらいだし」

 

「見かけた以上は保護して注意する義務は有るし、砲撃に巻き込むと責任が問われるから面倒くさくても確保しなくちゃいけないわけよ、連中も」

 

「はん、よく言うよ、俺たちの武器も元は意図的にばらまいた軍の横流し品だってのに」

 

「しかもご丁寧にこの星から出た瞬間に撃てなくなる仕様、本当にふざけているよね」

 

「この星を出入りする時に武器自体が戦闘データを送信してメーカーの開発部にデータが利用されるんだとか、うまい具合に利用されているわ」

 

「ま、誰でも扱えるのが売りらしいからな、これのお陰で新製品が開発されているんだ、文句は言えないな」

 

「っと、学術都市の連中の化け物が現れたぞ、うっかり攻撃を当てるな、敵対されたら目も当てられんぞ!」

 

6つの脚と4つの目を持つ鹿に似た姿の生物兵器が、植物系の生物兵器に歪な形状の角を押し当てて潰し、倒した先から死骸を捕食する。

 

「見た感じ家畜がベースっぽいが、草食生物なんだろうな?いや、触手を振り回す化け物植物が野菜なわけないんだが」

 

「刺激するなよ、学術都市の連中なんて信用できないしなんのアテにもなりやしない」

 

「あぁ、こんなところさっさとずらか・・・お、おわああああああぁ!?」

 

突如地面が割れると、無数の触手が隊員の一人を絡め取り、悲鳴を上げながら地の底へと引き込まれていった。

 

「相棒おおおぉぉっ!?」

 

仲間の悲痛な叫び声が響き渡るが、浮遊感とともに地の底に引き込まれた討伐隊員は無力にも地下空洞へと連れ去られてしまう。

 

「くそ、この化け物め!」

 

落下の途中、パルスマシンガンを乱射して足首をつかんでいた触手を焼切ると、ワイヤーフックを射出して落下の勢いを殺す。

重力の弱い宇宙ステーションとは言え、あの勢いのまま床に叩きつけられては一溜まりもなく、なんとか一命をとりとめた討伐隊員はゆっくりとワイヤーを伸ばしながら下降していった。

 

「ったく、随分と落ちたな、あいつと合流できるか?」

 

そう愚痴を零しながら床に着地してライトを点灯させると、顔を強張らせ絶句する。

 

「おい、なんだよ・・・こいつは・・・」

 

割れた床から引きずり落とされた先は、地下庭園の一種だったであろう場所であった。

そして、その中央部に鎮座する巨大な影の正体を理解すると銃を構えながら後ずさりをする。

 

「プラント共の親玉ってか!?ついてないぜ!」

 

それはラフレシアに似た、しかし巨大な花であり、本来花弁があるべき場所には人間の肋骨にもに似た捕食器があり、刺激臭のする液体を迸らせる突起の付いた触手をガチガチと鳴らしていた。

 

「畜生!パルスマシンガンでなんとかなる相手じゃないぞ、なんとかして逃げ・・・なんだっ!?」

 

ギルドの討伐隊員は何者かの声を聞いた気がした。

 

「誰だ!何処から通信している!?・・・いや、まて通信がオフラインだと?」

 

(おかしい、通信機が壊れているわけでも無いが・・・いや、音で聞こえていない、これは・・・脳内!?)

 

「どんなカラクリか知らんが今は取り込み中だ!おしゃべりは後にしろ!」

 

パルスマシンガンで迫りくる触手を撃ち落としながら後退する討伐隊員。

 

(あぁん!?左奥の大門を抜けて真っ直ぐだって?どこに誘導しようってんだ?)

 

「くっぬおおおぉぉ!」

 

牽制射撃をしながら大型のゲートを起動してゆっくり開く門に体をねじ込むようにして退避する。

だが、移動能力が有るのか巨大な肉食植物はジリジリと討伐隊員に迫ってくる。

 

「は、はああああっ!?前からバトルマシンが・・・それも暴走してやがる!?だましやがったなぁ!!」

 

カメラセンサーがあらぬ方向をグルグルと回っており、本体から火花がほとばしっており明らかに正常ではない大型軍用ドローンが奥の扉から突如として現れプラズマ火球を乱射する。

 

大型軍用ドローンと巨大肉食植物が互いを敵として認識して衝突し、まるで怪獣映画の様な光景になる。

 

「やっべぇぇ!!こんな所さっさとおさらばだぜ!」

 

背後で繰り広げられる激闘を後目に、その場を立ち去ろうと走るが、今度は天井がぶち抜かれて、先程の6つ脚で4つ目の化け物が降ってくる。

 

「うわああああああ!!」

 

討伐隊員を無視するかのように頭上を飛び越えて、大型軍用ドローンと巨大肉食植物の戦いに乱入し、状況はさらに混乱する。

 

「おおっ!相棒、生きていたのか!」

 

「たす・・・助けてくれ!早くずらかろう!」

 

「ワイヤーで繋いである、しっかり捕まってろ!」

 

落下してきた竪穴の上に差し込んだアンカーに繋がれたワイヤーを巻取り、二人の討伐隊員はその場から脱出することに成功する。

通信可能な領域まで後退すると、ヘルメットのカメラに映されていたそのスリリングな映像が送信され、迫力満点な怪獣同士の衝突と誰かの指示によって逃げたことで九死に一生を得た救出劇に、駆け出しギルド・スペーススコルピオンの動画は高い視聴率を叩き出しバズるのであった。

 

(そういや、あの脳内に響くような通信は誰からのだったんだろう?)

 

(通信ログにも何も残っていないし、幻聴かなにかだったんだろうか?)

 

一躍有名人となった討伐隊員は、ギルド内で相応の立場を手にし、新人たちに身を守る術を教えるようになるのであった。

 

通信機に一切関係なく、声を伝えた者の正体、それは宇宙に漂う意思だけの存在であった。

なんだかんだ、彼の者もまたこのスリリングなエンターテイメントに興味津々だったのである。

様々なスケールで俯瞰する事のできるかの存在は、良い感じに近くに大型目標が居る事を確認すると、うまい具合に鉢合わせるように逃走ルートを誘導したのである。

 

結果的に人命を助け、危険な存在を同士討ちさせる事に成功させた事に、大きく満足するのであった。

 

 

 

 

 

ゴミ処理宇宙ステーション汚染区画・・・・ダンジョン

 

元はバイオハザードが発生したゴミ処理宇宙ステーションの一区画であったが、切り離され宇宙を漂っている所、高密度均一コンクリートで覆われ封印され、恒星突入ルートに軌道変更された人工天体である。

しかし、時代とともに忘れ去られ、封印が破られた後も燃え尽きる運命だったのでその脅威度は高くなかったのであった。

武装も時代とともに進化していたことで、良い感じに理性のタガが外れて高慢になった星間文明の実験施設兼ねエンタメに利用され、燃え尽きるその日まで大いに民衆を楽しませた。

なお、大本となった本体の宇宙ステーションはよりセキュリティが強化されて再建されており、自動化が進み職員の退避後の遠隔操作と緊急時のマニュアル操作が可能となった。

また、大型スタラスターによって恒星に突入する自滅シークエンス機能も搭載された。

 

 

 




スーパーファミコンって結構凝ったSF設定があったりしますよね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。