千景万色たゆたう惑星達   作:蟹アンテナ

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開拓途中惑星

その星は分厚い氷に覆われた惑星であった。

海を作るのに充分な水があったその星は、ある星間文明が目をつけて適当な小惑星帯から小惑星を牽引し高速で衝突させることでそのエネルギーを熱エネルギーに変換させ氷を蒸発させつつ質量増加を狙い、特殊なテラフォーミング装置で分子操作を行い人工的に地球型惑星に近い環境に整形した。

 

完全に自動化されたナノマシン生産プラントを海底に撃ち込み、非常に遠大な気の遠くなる様な時間をかけて少しずつ着実に惑星改造を進めていった。

彼らの母星の生物の遺伝子情報を記録したナノマシンは、互いに連結して原始的なナノマシン生命体へとフォームチェンジを行い、人工的なバイオームを形成した。

惑星改造計画を立てた種族は元から長命種族であったが、それでも何世代もかけた一大計画であった。

 

そして、惑星改造が始まってから数万年後、宇宙の彼方から半ば漂流するような形で大陸と見紛う巨大な移民船が開発中の惑星に漂着した。

その種族はワープドライブ技術を持たない文明で、何度も交代でコールドスリープをしながら数千年も居住可能惑星を探していたのだ。

彼らの母星は、天変地異で壊滅して周辺宙域に展開していたスペースコロニーが寄り集まって新たな母星を探して金属資源の豊富な小惑星を移民船に改造して宇宙の闇へと旅立ったのであった。

 

降り立った惑星は理想的な環境であり、十分な酸素と資源となり得る動植物も生息しており、何千年も居住可能惑星を発見できなかった彼らの希望の星であった。

彼らが開拓拠点を築き初めた頃、ナノマシン生産プラントに備え付けられていた通信装置が惑星開発計画を立てた文明に不法侵入者の存在を通報し、艦隊が派遣されることになった。

 

漂流した種族は昆虫から進化した人型生命体であり、小柄な体格なため岩の隙間や洞窟などの探索が得意な種族であるが、ある開拓団が窪地の奥の洞窟に奇妙な人工物を見つけ先住民の存在を確認した時、突如人工物から警報が鳴り響き、異形の物体が彼らを襲った。

昆虫型知的生命体は大混乱に陥っていた。

開拓拠点の彼方此方が自爆型の飛行生物の襲撃にあったのだ。

 

それは、不法侵入者を排除するための自爆型ナノマシン生命体であり、ある種の有機ドローンと言えるものであった。

昆虫種族は恐怖した。凶暴な異星人が襲いかかってきたのだと。

それから暫くナノマシン生命体との攻防戦が続くが、突如空が歪んだと思えば無数の巨大船が遠く霞む空の先に出現したのだ。

ワープドライブを持つ文明と持たない文明の格差は歴然としていた。

 

一方開発中の惑星に仕込んでいた装置の通報を受けて急行した文明は困惑していた。

テラフォーミング中の惑星を不法占拠する宇宙海賊の類かと思いきや、どのデータバンクにも乗っていない未知の種族であったのだ。

 

「一体何処の惑星の連中だ?」

「分からん、昆虫型の種族など広い宇宙でも数えるほどしか存在しないが、それでも見たことがない種族だ」

「まったく、もう暫く開発に時間がかかるというのに下手に弄られたくないのだが」

「取り敢えず奴らを排除した後に素性を洗って…なんだ?」

突如声のようなものが聞こえたと感じると、艦隊全体にテレパシーの様なものが伝わる。

意思だけの形のない存在が、彼らに干渉したのである。

「何だこれは?一体何処からの通信だ?」

「なに、肉体が存在しない?まさか情報生命体だとでも言うのか?」

艦隊の搭乗員たちは困惑する。

「なんと、ワープドライブすら持たない宇宙難民だと?」

「コールドスリープだけで良くも探し当てたものだ」

「とにかく、勝手に開発中の惑星に住み込まれるのは困る。しかし、宇宙海賊ではないのならば交渉の余地はありそうだ」

(しかし、情報生命体など本当に存在するとは、一体何者なのだ?)

 

不法占拠する未知の種族が居る惑星に降下するのは危険を伴っていたが、意思だけの形のない存在は地表に居る彼らにも干渉していた。

 

「自爆生物の襲撃が止んだ?」

「い、一体何だったんだ?」

「うっ、触覚が…なんだこの感覚は?声が聞こえる?」

「なに?この惑星を作った異星人が降りてくるだと!?」

「早く迎え撃たなくては、しかし我らの母船と同規模の軍艦を何隻も持つ文明が相手となると勝ち目があるのか」

「…何?交渉しに来るだと、対話が通じるというのか?」

(脳に直接意思を伝えるとは、一体どんな宇宙人なんだ?)

 

光の尾を引きながら無数の小型艇が飛来し、昆虫型種族の拠点近くに着陸すると中から屈強な体格の人型生命体が現れる。

 

「な、は爬虫類型生命体?」

「俺達を襲った奴らは爬虫類族なのか…」

 

互いに全く未知の種族であり、当然ながら言語も違う。

最初は勇気ある昆虫型種族が武器を捨ててボディーランゲージを試みて、爬虫類型生命体もそれに応じた。

少なくとも宇宙に進出するほどの技術力を持つ種族なので、言語の翻訳も機械に任せることが出来、程なくして機械の通訳で会話が可能となっていた。

 

「そんな、我々は何千年も宇宙空間を彷徨ってやっと見つけた星なんだぞ!」

「それを言うならば我らは何万年もかけてこの星を居住可能惑星に改造したのだ!それも未だ開発途中である!」

「だが、こちらは母星となる故郷が天変地異で崩壊してしまったのだ、なんの過失もないのに突如故郷が消し飛んでしまう苦しみを理解できるのか!」

「それはそちらの事情だろう、確かにその不幸に哀悼の意を示すが、天文学的な予算と遠大な時間を要する一大計画なのだ。居住可能惑星を作り出す、それがどれだけのものか理解できるだろう?」

「しかし、ではどうすればいい!?この移民船の他にスペースコロニーにも残り少ない資源を消費しつつ新天地を待つ同胞が居るのだぞ!!」

 

その時、再び意思だけの存在の干渉を受ける。

言語ではなく主にニュアンスに近いものだったが要約すれば、喧嘩しないで共同開発しようよ。であるが…。

 

「仕方がない、土地の権利は譲ることは出来ないがこの惑星の居住は許そう」

「なんと、それは助かる」

「まだ開発中で活動には生命維持装置が必要な環境だが、諸君らは特に問題なく呼吸できるようだしな」

「ふむ、貴殿らに比べて小柄な体格なのもあるかもしれんな、必要酸素量が少なくて済むのかもしれない」

「だが、星間連合には登録してもらうぞ、その崩壊した母星とやらの座標も知りたい」

(やはり姿が見えん、もしや彼らの背後に情報生命体がついているというのか?)

(星間連合にはテレパシー能力を持つ種族が組み込まれているのだろうか?)

 

 

その日、昆虫型宇宙人と爬虫類型宇宙人は正式に国交を結び、数年かけて宇宙港を備えた開拓拠点を共同で建設した。

それから数十年後…。

 

「ついに故郷へ戻る日が来るのだな」

「コロニーの仲間たちが新天地を待っている」

「何千年もかけた航路を一瞬で通り抜けるとは不思議な気分だな」

 

移民船は爬虫類型種族の技術提供を受けてワープドライブを搭載した船にアップグレードされていた。

改造された移民船には星間連合の特使達を乗せており、各惑星の大型宇宙船も同行している。

 

「元は氷の惑星だった新天地もあの快適な環境に改造したんだ。もしかしたら、荒れ果てた故郷もなんとかなるかもしれない」

「あんな状態の母星がどの様に居住可能状態になるか想像もつかないが、もしそうならコロニー生活する同胞たちも故郷に帰れる」

「ワープドライブ起動!さぁ、同胞たちに新天地を伝えに行くぞ!!」

 

まばゆい光に包まれながら船団は宇宙の彼方へと飛び立った。

星間連合から提供された惑星開発装置を積んだ移民船は、新天地となる居住可能惑星の情報と、隕石の衝突でカルデラだらけになった母星を元の姿に戻す希望を持って故郷を目指した。

意識だけの形のない存在は、不幸な行き違いが寸前の所で回避できただけでなく、宇宙難民の故郷の復興の希望が生まれたことに心温かくなるのであった。

 

 

 

開拓途中惑星

元は氷の惑星であったが、海を作るほどの水分を持っている事にある文明が注目し、惑星開発計画が行われた。

まず、十分に加速した小惑星を衝突させその高熱で氷を溶かしテラーフォーミング装置で組成を整えられて数万年かけて環境を操作されていった。

ナノマシン人工生命体の合成や投入などで環境がある程度整ってきた頃に、宇宙の彼方から訪れた昆虫型知的生命体が移住し、開拓が開始された。

しかし、惑星開発を主導している爬虫類型知的生命体には開発中の惑星を横から掻っ攫われる形となってしまったので、不幸な衝突が起きた。

現在では意思だけの形のない存在の仲裁もあって、惑星開発は共同で行っているが、正式に星間連合に新種族として登録して銀河社会の一員として組み込まれる事となる。

ちなみに、現時点では爬虫類型知的生命体には酸素濃度が薄く生命維持装置なしでは高山病にかかってしまう環境だが、昆虫型知的生命体にはそこまで致命的な酸素濃度ではないので特に問題なく地表で活動ができる。

生命維持装置が特に必要ないので惑星環境を直接干渉できる作業員として重宝されており、一部は星間連合の企業に雇われて正社員として惑星開発に勤しんでいる。

 

 

崩壊惑星

 

元は緑に溢れた美しい惑星であったが、ある日宇宙の彼方から小惑星帯からはぐれた小天体が飛来し、空中分解しながら広範囲を蹂躙し無数の巨大なクレーターとカルデラを形成した。

この惑星を母星とする昆虫型知的生命体は既に無数のスペースコロニーを展開するほど宇宙開発をしていたが、彼らの努力と技術力を持ってしても虚しく小天体の軌道をずらすことが出来ずに衝突を許してしまった。

もはや居住はおろか生態系も崩壊してしまって、呼吸すら不可能なほど大気状態も悪化しているので廃星となっているが、ドローンやパワードスーツを使いスペースコロニーに必要な物資の採掘が細々と続けられている。

宇宙に放り出された彼らの利用可能資源が枯渇しつつある頃に、希望を託して送り出した何十世紀も前の移民船が久しぶりに帰還し、驚くべきことに異星文明の船団を引き連れて戻ってきたのであった。

特殊なテラーフォーミング装置が撃ち込まれて、カルデラだらけだった灼熱の惑星は徐々に落ち着きを取り戻し、酸素生成装置がある近辺のみ活動ができるようになり、星間連合の助力を得て少しずつ復興が進んでいる。

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