千景万色たゆたう惑星達   作:蟹アンテナ

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密林惑星

生命に満ち溢れる惑星、それを聞いただけならば美しい自然の広がる星と地球型惑星の知的生命体は想像するだろう。

だが、その星はあらゆる場所、陸地はもちろんの事、海底や海面などありとあらゆる場所が1種類の植物に覆われていた。

砂漠は存在せず、乾燥地帯の気候をものともせず、惑星全体を支配する超巨大樹木が海から、湖から、ありとあらゆる場所から吸い上げた水を循環させていた。

海に根を張る巨木は、大量に吸い上げた海水をろ過して真水にし、真っ白になる程に高濃度の塩分を蓄えた樹皮が老廃物として剥がれ落ちて行く。

勿論惑星全体を覆う超巨大樹木以外の植物も生息しているが、その殆どが、超巨大樹木の表面に寄生するように生える植物であり、動物も超巨大樹木に依存した生態を持っていた。

水分を補給するのも巨木の道管から、ミネラルを補給するのも白色化した樹皮から得ており、1種の生命体と言うよりも、その星の機構その物を担う装置と化していた。

その様な特異な生態系を持つ惑星だが、それでも原始的ながら知的生命体が発生しており、部族によって文化は若干異なるが、超巨大樹木を利用した生活を送っている。

 

「おまえ、なにもの?物の怪か?」

 

意思を持つ形のない存在は、何気なくその星の住民の1個体に干渉した。

昆虫の様な甲殻類の様な外殻を持った赤く揺らめく単眼の生物である彼は、獣の牙から削り出した槍を構えて辺りを見回す。

 

「体が無い?物の怪ちがう?森の精霊か?」

 

甲殻が擦れる音を立てながら、槍の石突を足場にしている樹皮に突き立てると、居住まいを正して語り掛ける。

 

「森の精霊、ちがう?ならば何ものか?なに、自分も知らない?面妖な。」

 

無機質な頭部を傾けると、触覚をしばしうねらせた後、木のこぶに腰掛ける。

 

「ならば、おまえ、ただの精霊、我、勝手にそう呼ぶ。」

 

「この場所、くり抜き族の縄張り近く、警戒する。」

 

まるで腹の底に煮えたぎる怒りを示すかの様に、赤く揺らめいていた単眼がより紅く煌めき、触覚の動きがより激しくうねる。

 

「あいつら、生きた森、くり抜く、不届き者。」

 

「我ら、枯れた木しか穴をあけない、生きている木、傷つける、いけない。」

 

「あいつら、我らを枯れ木族と呼ぶ、無礼極まれり、我ら、木霊族なり。」

 

槍を握っていないもう片方の手を握りしめる。

 

「あいつら、恵み族呼ぶ、我ら、断じてそう呼ばない。」

 

吐き捨てるように、呟くと、握り拳を腰かけていた木のこぶに振り下ろし、音が響き渡る。

 

「おまえ、どこから来た?奴らの仲間?え?空のキラキラ来た?」

 

疑惑の目で何もない様に見える宙を睨みつけるも、星の海を渡って来たという事を聞かされて、無機質な顔でも驚いていると分かる動作をした。

 

「それ、驚き、キラキラ、誰かいるのか?」

 

昆虫や甲殻類の様に全身が外殻で覆われているため表情を浮かべることが出来ないから、身振り手振りで若干オーバーリアクション気味に表現する知的生命体。

しかし、その動作から大いに好奇心に満ち溢れている事がわかる。

 

「砂しかない星ある?水しかない星もある?信じられない!」

 

「喋る魚、いるのか?山の様に大きい猿、火を噴く蜥蜴、そんなの居る?馬鹿な。」

 

両手を広げ、触覚をうねらせ、カチカチと両顎を打ち鳴らし、感情を表現する。

形無き存在は、そんな好奇心に満ち溢れるこの星の知的生命体に親近感を持っていた。

 

「キラキラ、空飛べる?凄い部族いる。」

 

無限の空間を旅しながら、無数の惑星を見て来た存在は、星の海を渡る星間国家の事や、宇宙生物などをその個体に伝え、談笑する。

 

「ならば、お前、星の精霊、我、勝手にそう呼ぶ。」

 

「星の精霊、空の彼方の部族、話、聞かせてほしい。」

 

まだ原始的な文明である彼らだが、後に形無き存在と交流したその個体が、近隣の部族をまとめ上げ、国家の原形となる物を築き上げた。

星の海を渡るという未知の部族がそうした様に、一つにまとまる事で更に文明を発展させる、時に過ちを犯し、自らの主義を曲げる事になっても、進む事を選択した。

昆虫型・甲殻類型の知的生命体が、超巨大樹木と共生した形態の科学文明を発達させたのはそれから数万年後の事であった。

 

そして今も、宇宙にたゆたう星々を眺めながら、形無き存在は無数の生命のきらめきを見守るのであった。

 

 

密林惑星

 

1種類の超巨大植物がその星を支配しており、陸地から海底・海面まで覆う。

時に、火山や熱を帯びた溶岩地帯にさえその根を伸ばすが、流石にマントルまでには到達していない。

起源は不明だが、ある種の宇宙生物である可能性があり、遺伝的な近縁種が他の惑星にも生息している。

原始生命が発生した直後の時期に宇宙の何処からか飛来し、この星に定着した可能性があり、生態系もこの種に依存した形態で進化していった事が示唆されている。

この星を支配するもう一つの生命は、昆虫や甲殻類から進化したと思われる知的生命体であり、複眼では無く鉱物質の赤く光る単眼を持つ二足歩行の姿をしている。

外殻に覆われているため、衣服を必要としていないが、高度な文明を発達させて以来は、体表を覆う樹皮のラバースーツを身に着け、生命維持装置と接続している。

森の化身である超巨大樹木を森の精霊として崇めているが、原初の指導者に英知を齎したという星の精霊を2番目に崇め信仰している。

 

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