千景万色たゆたう惑星達   作:蟹アンテナ

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超巨大移民船

無限大にも思える広大な宇宙、その途方もない巨大な空間にまるで流木の様にさまよう小さな光があった。

その光は生命エネルギーを放ちながら彗星のごとく尾を引きながら宇宙空間を突き進み、虚無の空間を明るく照らしていた。

それは大陸と見まごうばかりの超巨大な移民船であり、その中にはその巨体に見合った人口の移民がひしめき合っていた。

 

だが、驚くべきことにその大陸級の移民船は木造であったのだ。

大陸級木造移民船ユグドラシル号・・・・それがその船の名であった。

文字通り宇宙を漂流する流木、その中で移民たちは生活し、そして時にその生涯を終えていた。

 

「うがーーーーっ、徹夜明けのせいか頭がくらくらするー!」

 

「・・・・・うん?いや、本当にどうしちゃったんだろうアタシ?変な声が聞こえる様な?」

 

金髪で笹の葉の様な長い耳と整った姿をしているが、どことなく不良娘を思わせる目つきの鋭い少女が、頭を搔きながら周囲をきょろきょろと見渡す。

 

「え?気のせいじゃなくて本当に何かが語り掛けてきてる?え?情報生命体?そんな馬鹿な。」

 

「うーん、どうしたものかねぇ、唯でさえ母星があんな事になっちゃって悩みを抱えているというのに未知の生命体からのコンタクトだなんて・・・。」

 

「あぁん?何よ、この船が気になるの?見ての通り木造のでっかい宇宙船よ、何か文句あるの?」

 

「・・・・・いいわ、移民候補の惑星も見つからないし暇つぶしに付き合ってあげる。」

 

不機嫌そうな表情で、ゴーレム式フォークリフトの座席に座って煙草に火をつける。

 

「アタシ達の母星は、地脈が狂って人が住める環境では無くなってしまったの、だからアタシ達は世界樹をこの巨大な宇宙船に改造して空を飛び立ったのよ。」

 

「見ての通りアタシ達はエルフよ、今は宇宙をさまよっているから宇宙エルフかな?母星では人間も居たけど彼らは慌てて同じように宇宙船を作っていたわね。」

 

「ま、アタシ達からしたらどうでも良いけどね。正直連中のやらかした事を今も恨んでいるんだから。」

 

「え?人間たちが何をやらかしたって?アタシ達が宇宙をさまよう原因を作った事よ。」

 

タバコをくゆらせながらフォークリフトのハンドルに足を乗せる少女

 

「アタシ達の母星は世界樹によって地脈が制御されていてね、エルフはその世界樹と共生するように発展していったんだけど、別の大陸から現れた人間たちが世界樹の地下に膨大な資源を発見して採掘の許可を求めてアタシ達と接触を図ってきたの。」

 

「最初の内は近場を掘らせてあげて、暫くお互いに発展していったんだけど向こうの人間の国の本土の資源が枯渇しちゃったみたいでさ、世界樹の地下資源を目当てに強引に迫って来たんだ。」

 

「次第に人間の要求はエスカレートしてきて、遂に世界樹を切り倒してその地下資源を頂こうと軍拡し初めてさ、一触即発の事態になっていたんだけど、見事に大爆発よ。」

 

つまらなそうな表情で、紫煙を吐き出すエルフの少女。

 

「宣戦布告と同時に、馬鹿みたいな高出力のレーザー砲が世界樹に直撃して根元から両断されちゃって数億人のエルフは犠牲になるわ、地脈が狂って溶岩が噴き出すわ散々な目に遭ったのよ。」

 

「人間どもと応戦する傍ら、世界樹の様子を見ていたんだけど切り倒されてもなおまだ生きていてね、新天地に根付かせるために世界樹をサイボーグ化させて共に宇宙に飛び立ったという訳。」

 

「え?そのやり方はちょっと罰当たりだって?大丈夫、人間と交流があった時に世界樹の生態を調べた事があったんだけど、どうにも宇宙から飛来した植物らしいから、新天地を目指して宇宙を飛ぶのも本来の生態なんだ。」

 

「種子が隕石としてその星に降り注ぎ、根付いて地脈と直結すると、その星のエネルギーを無駄なく分配して、根付いた星の寿命を何十倍にも伸ばす力を持つんだけど、世界樹を取り除くと地脈が暴走して星が崩壊しちゃう事にも繋がるんだ。」

 

「アタシ達エルフと人間に分岐する前の類人猿だった時代に世界樹の種子が降って来たみたいなんだけど、世界樹と共生するように進化した種がアタシ達エルフで、平地で生きる事で類人猿から進化したのが人間なのよ、つまり遠い親戚であるのね。」

 

「アタシ達の科学文明も元は人間の物だったんだけど、交流する事で魔術と科学が共存する文明になって、人間は科学に極端に偏った文明になったみたいね。」

 

「昔から人間たちに、古いものと新しいものを上手く共存させて、どちらかに依存しないように助言していたんだけど、結局過ちを犯したわね。」

 

「人間たちは切り倒した世界樹とアタシ達エルフには気にもせず、戦利品の地下資源をむしり取っていたんだけど、アタシ達が宇宙に飛び立つ直前に慌て始めていたわね。いい気味だわ。」

 

「もう随分と遠くまで来てしまったけど、アタシ達の母星は罅が割れて彼方此方カルデラだらけの不毛な星に成り果ててしまったみたいね。あの故郷の姿を見るのは今も心に堪えるものがあるわ。」

 

「ま、そんな感じかな?どうだった?情報生命体クン?良い暇つぶしになったかしら?」

 

たばこの吸い殻をポイ捨てし、仰向けになりながら宙に視線を漂わせてにやける少女。

 

「え?宇宙に飛び立ったのは宇宙エルフだけって?いや、どうだか、知らないよ。」

 

「それじゃ、ユグドラシル号を追尾する船団は何かって・・・それは・・・え?船団?」

 

次の瞬間、船の側面に眩い閃光が通り過ぎ、遠方で大爆発が起きる。

 

「な、なんじゃありゃぁ!?って、あれ母星の人間たちの船だわ!?何で攻撃してくるのっ!?」

 

警報に包まれる船に、強力な電波で通信が割り込んで来る。

 

『おのれエルフ共め!何を細工した!?たかだか大木を切り倒したくらいで母星を破壊するなど、何たる暴挙!宇宙の塵へと還してくれるわ!!!』

 

「は・・・はああああぁぁぁ!?なんちゅー逆恨みじゃぁ!!」

 

『緊急事態発生!緊急事態発生!敵船団による攻撃を受けている、各ブロックに被害発生、これより緊急離脱を開始する!』

 

「あぁ、ヤバいよ、ヤバいよね?と・・・兎に角、セーフルームに避難しないと!」

 

『時空リング形成、緊急ワープを開始する!総員何か身近な物に捕まり体を固定せよ!』

 

「ちょ、ま!!無理いいいいいぃぃっ!!!」

 

木造移民船ユグドラシル号は、高出力レーザー砲の雨を浴びながら、緊急ワープでワープアウトしてその宙域を離脱するのだが、ワープ中にトラブルが発生して別次元の宇宙へと転移してしまうのであった。

 

そして、そのワープ先の進行ルートに偶々世界樹の定着に適した青き星、所謂地球型惑星に不時着してしまうのはまた別の話。

 

何気なく接触を図った宇宙を漂う箱舟の短い出来事に、なかなか興味深いものが見れたと満足気分の意志だけの存在であった。

 

 

 

 

 

 

大陸級木造移民船ユグドラシル号

 

かつて宇宙から飛来し、何億年も定着した星と共存してきた超巨大宇宙植物を宇宙船に改造した生ける箱舟。

元からエルフたちが住居に利用していた木のうろを機械化し、世界樹の生体に無理なくサイボーグ処置を施しており、星中から集めた地脈エネルギーを生体エネルギーに変換して保存しており、そのエネルギーを推進用エンジンに送り出して宇宙空間を突き進む。

大陸級の名は伊達では無く、文字通り大陸と見まごうばかりの生体器官で構成されており、植物らしく二酸化炭素から酸素を光合成で生産する事が出来るので、宇宙空間でも母星の様に呼吸が可能である。

実はワープアウト機能も元から世界樹の持つ生体器官であるが、それを効率的に運用し制御する技術を持つエルフは、候補となる星系への移動に利用していた。

しかし、住めそうな惑星も近隣の恒星が爆発寸前だったり、星そのものの寿命が尽きかけたりしたので中々候補地が発見できなかった。

宇宙を漂流中に追撃してきた人間たちの攻撃でワープアウト中にトラブルが発生し別次元の宇宙に飛ばされ、若く生命に満ち溢れた地球型惑星に墜落したのは不幸中の幸いだったのかもしれない。

 

 

 

 

世界樹

 

ある種の宇宙植物であり、遺伝的な近縁種が生息宙域に幾つも確認されており、宇宙でもそれなりに繁栄した種でもある。

大地の浅い層に広がり資源を星中に巡らせる種類の存在が確認されているが、本種はどちらかと言うと一点に根を伸ばし、マントルを穿ち、生体エネルギー器官を惑星の核と同化させて、そのエネルギーを効率的に惑星中に巡らせて星そのものの寿命を何十倍にも伸ばす力を持つ。

しかし、惑星と同化するが故に世界樹のダメージは惑星その物に伝わり、世界樹の死はその星の死と同義である。

人間とエルフの戦争で切り倒され、致命的なダメージを負った世界樹だが蓄えられた膨大なエネルギーの流失が組織の炭化で防がれた事と、エルフたちの応急処置で生き長らえ、彼らと共に宇宙の旅を再開する事が成功したレアなケースである。

多くの同種や近縁種は、子孫を宇宙空間に射出した後、その星と運命を共にするが、再び宇宙の旅に出るのは滅多な事では起きない。

種子の状態で度々ワープアウトの能力を行使するが、成長した後でも使用可能だった様だ。

 

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