千景万色たゆたう惑星達   作:蟹アンテナ

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廃墟惑星

知的生命体が発生し、順調に発展を遂げたとある小さな惑星で世界的な疫病が発生した。

それはさながら無慈悲な天災の如く猛威を振るい、そして過ぎ去った嵐のごとく自然と収束へと向かった。

 

最初は潜伏期間の長いウィルスが人々に知られず広がって行き、自覚症状もなく病状が進行して行き、ある日突然に病魔が牙をむく凶悪な代物であった。

悲劇はある時唐突に起こった。

ある小さな家庭の突然死から始まった最初の症例から、一気に世界中の国という国で同様の病状が確認され、あらゆる医療機関がパンクし機能不全に陥った。

あまりにも早く拡散するウィルスに人類は絶滅を覚悟したが、風前の灯であった人類を救ったのもまたウィルスであった。

 

猛威を振るっていたウィルスの突然変異株は、弱毒化する事で宿主が全滅しないように生存戦略を変えたのか、次々と元のウィルスを駆逐して最終的に置き換わった。

少しばかり重めの風邪程度の症状に収まり、元のウィルスと違って完治も可能になった変異株はワクチン製造にも貢献し、多くの人々を救うきっかけとなった。

 

だが、世界的なパンデミックの爪痕は生き残った人類に暗い影を落とし、激減した人口ではその文明を維持するのが困難となっていった。

 

一部のシェルター都市では復興の為に技術者を集めているが、それ以外の者たちはシェルターの外で生活をしていた。

人口が激減し整備する者が居なくなった都市は、ボロボロに老朽化して次第に瓦礫へと帰ろうとしていた。

 

「ここが元々首都だったなんて信じられないなぁ」

 

手入れされているが古びた服を着込んだ少年がリヤカーを引きながら廃墟都市を彷徨う。

 

「道と道がぶつかる所に必ず立っているあの柱は一体なんだろう?」

 

かつて無数の車が行き交っていた交差点は、その機能を失った錆びた信号機が立っており、在りし日の賑わいをそれから連想することは不可能であった。

 

「大昔のご先祖さんが残した日記には息をするのも大変なくらい沢山の人が歩いていたって書いてあったけど、今じゃ人とすれ違うのなんて1日に何回かあれば良い程度だしなぁ」

 

「さてと、日が暮れない内に動物を仕留めないと、村で父ちゃん母ちゃんが腹空かせて待っているはずだし」

 

「・・・・?誰かいるのか?」

 

「えっ?何を言っているんだ?いや、音が聞こえていわけじゃない・・・なにこれ?」

 

人気のない廃墟を歩く少年に形のない意思だけの存在が興味を示し、語りかける。

 

「よく分からないけど、俺は食い物になりそうな物を探しているんだ、石畳の隙間に生える草を目当てにそこそこ大きな動物が現れるからそいつを狙っているんだが、今日は運がないみたいだ」

 

「なに?食い物なら腐るほどある?どういう事だ?」

 

少年は脳内に響く謎の声に導かれるまま、倒壊した廃墟の中に入り、地下へと潜ってゆく。

 

「なんだ、ここなら結構前にも来たぞ?使い道の分からないガラクタばっかりで虫一匹見かけない埃臭い場所だよ」

 

「え?瓦礫をどかして扉を開けって?なにもないと思うけどなぁ」

 

少年は倒れた戸棚やコンクリート片などを横にずらし、古びた扉を蹴破ると沢山の円柱形の金属が山積みにされた部屋を見つけた。

 

「何だこりゃ?魚の絵が書かれた箱?」

 

「え?この箱の中に魚が入っているって?見るからに古そうな奴なのにそんなもん食ったら腹壊して死んじまうだろうに」

 

「えぇっ!?中の魚はこの箱を開くまで腐らないのか?じゃぁ食えるってことなのか」

 

謎の声に従って、教えられた手順通り箱の取手を引っ張ると骨が取り除かれた様な魚の切り身らしきものが入っていた。

 

「うぉ、こりゃ美味ぇ!昔の人はこんな美味い物食っていたのか?」

 

「これだけ沢山有るなら暫く食料には困らなそうだな、どこの誰だか知らないが教えてくれてありがとよ!」

 

「しかし、箱に詰めるだけじゃなくて絵まで描くなんてどれだけ手が込んでいたんだか」

 

「さて、運べるだけ持ち運ぼう、村の皆が待っている」

 

文明が崩壊し、自然へと還ろうとしている廃墟都市にひっそりと暮らす小さな集落は慢性的な食料不足であったが、一人の少年が腐らない食料を見つけたことで持ち直し、今まで見落としていた腐らない食料・・・・缶詰を回収し、それが半ば通貨的な価値を持つようになっていった。

 

それから時が流れ、集落の人口が増えてきた頃、頑丈な防壁で覆われていたシェルター都市の門が開き、やせ細った老人たちが車椅子の様な物に乗って外の世界に接触してきたのであった。

 

流行病を恐れてシェルターに閉じこもり、世代交代を続ける内に近親交配が進んだ事、生活の大部分が自動化した事、様々な要因でシェルター都市の人間たちは肉体が脆弱化していた。

最後の新生児が生まれてから既に30年が経過し、子孫を残すこともままらなくなってしまったシェルター都市の人間達は、協議を何度も続けシェルター外の人々に託すことにした。

 

シェルターの外は既に文明が失われ、生き残った人類はごく僅か、その筈であったのだが、思いの外生存している人間は多くウィルスにも耐性を持っていた。

それから暫くして、シェルター都市最後の若者と村の娘が結ばれた事で協定が結ばれ、物資や技術支援が行われ文明の復興が加速的に進んでいった。

 

しかし、シェルター都市との交流中にシェルターの人々を困惑させたのは、缶詰や缶詰容器の蓋が通貨として使われていることであった。

飢餓の危機を救った奇跡の食べ物、それを崇め讃え、革紐で通して携帯しているのである。

シェルター外の集落の教育が進むまで、なかなか缶詰の蓋を通貨として使う文化は抜けきらなかったが、その名残りか新たに発行された硬貨の絵には魚の絵が描かれていた。

 

形のない意思だけの存在は、飢饉に襲われ滅亡するはずだった集落を救うきっかけを与え、それが後の都市部の人間との交流に繋がり人類の再起までの道を開いた。

ほんの僅かな気まぐれ、廃墟都市を歩く少年を手助けしたことで、その世界の運命を大きく変えたのだ。

 

彼の者は、思いの外事が大きく動いたことに驚きつつも、手助けできて良かったと心が暖かくなるのであった。

 

 

 

 

 

廃墟惑星

 

世界的なパンデミックで人口が激減し、文明が崩壊した地球型惑星。

しかし、問題となった病原ウィルスの突然変異とそれに伴う自滅によって病魔はこの惑星から駆逐され、その爪痕だけが残った。

最初のうちは、ごく僅かに生き残った人類が施設を維持しようと奮闘していたが、全体の維持は不可能と判断し、研究所や工場などを中心に保全し外部から病原菌が持ち込まれないように防壁で覆い外界との接触を絶った。

だが、シェルター外に残って事態を打開しようとしていた医師らによって変異株から作り出されたワクチンが効果を発揮し、幾つかの集落は存続した。

病魔が猛威を振るっていた時代に閉鎖されたシェルターは奇跡的にウィルスからの影響を逃れていたが、まさか外の世界でパンデミックが収まっていたと夢にも思わず閉鎖的な環境のまま世代交代を続けた。

出生数が激減し、最後の新生児が生まれてから30年が経とうとしていた頃に外部との交流が始まり、近親交配による遺伝子の劣化は回避することが出来た。

この小さな都市からこの惑星は文明を再出発させてゆく事になる。

 

 

 




うーん、ちょっとごちゃついて何を表現したかったのか迷子になった感がありますね。
思いつき短編にせよ、もう少し見栄え良く成形したいものです。
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