ボク、ピーマンが好きなんだよね   作:灯火011

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さて、最近ピーマンの露地栽培も終わりかぁ、きついなぁと思っていたのですが

なぜかピーマンについて語っていましたら

なぜか近所からピーマンをやたらと差し入れされており、嬉しい悲鳴をあげております。

 ということで、いざピーマンクッキング。へたを最低限取って、ワタはそのまま。
 焼いてめんつゆ素揚げにめんつゆ、生にオリーブとシラス、生にマヨネーズと醤油、生でそのまま、肉詰めにしたり、肉に埋めたり。かと思えばピザもまた良い感じと来て幸せな日々でございます。

 さて、とはいえここ数日は変わり種ともいえるメニューしか食べておりませんので、本日の夕食は「チンジャオロース」などでいかがでしょうか。ごはんが間違いなく進みます。

 あとは忘れてはいけない主食、ナポリタン。あまーいトマトソースにちょっと苦いピーマンが良いアクセントを加えてくれます。


※ワクチンの副反応が終わりました。長い闘いでした。皆様も2日間ぐらいは熱が続くかもしれませんので、ピーマンをしっかり用意しておきましょう。


それぞれの冬

 ついに鉢植えのピーマンが霜にやられて枯れてしまった。実に冬を感じる日々である。鉢植えのピーマンが霜にやられた当日は、さすがに練習のやる気が無くなってしまって厩舎に閉じこもってしまった。ブラシをかけられたり、ピーマンを差し出されたりしたが、どうにもこうにもやる気が出なかったのである。

 我ながらこの精神の弱さは反省せねばいけないと思う。更に瞑想をしっかりと行おうと心に決意した日であった。

 さて、それはさておき。そんな凹んだ日から数日後、私はいつものように朝ピーマン食を頂いていた。ピーマンを食い、牧草を食い、野菜をまた食べて、水を飲む。三角食いというやつである。ただ最近では、時期的なモノもあってかニガウリが無くなってしまったのが少し口寂しい。で、ここ最近、少しばかり気がかりがあるのだ。

 

 それは、最近私の厩舎にやたらとカメラがやってくるのである。

 

 現に今もマイクとカメラ…ビデオカメラをこちらに向けられているわけである。いや、そうマイクを向けられても何も答えられないんだがなぁと、とりあえず鼻息を荒くはしてみるものの、特に意思の疎通が取れる訳でもない。

 ただ、鼻息を出したり、ピーマンを食っていると、マイクを持っている人間達がやたら笑顔になったり驚いてはいるので、ちょっと面白いなとは思い始めている。

 

 まー、普通に考えれば三冠馬の取材であろう。私の厩舎の前に立って、元上に乗っていた彼、今の彼というと語弊がありそうだが。まぁ、つまり騎手の2人も私の厩舎の前でインタビューを受けていることが最近多い。同じようにオーナーや、いつも世話をしてくれる人間も私の厩舎の前でインタビューを受けている光景がよく見られている。

 もちろんその際のサービスというか立ち振る舞いは忘れない。おそらく新聞かテレビかの取材であろうから、いくら三冠馬であったとしても写真やテレビ映りが悪くてはいけないのだ。見栄えよくしっかり彼らが撮ってくれてこそ、今後の私の生活の安定につながるというものであると信じている。

 

 そういえばその時に、私の全身の姿を、彼らのモニターで見ることが出来た。私自身、全身が黒かと思っていたのだが、客観的に見るとどうやら足の先だけ黒かったらしい。どちらかというと茶色いので、鹿毛、という身体である。

 あとは、額に白いラインが入っていることと、脚も左前足を除いて、白いクツシタの様になっていることが特徴である。

 うーん…私自身の姿、どこかで見たお馬さんではあるのだが…。額の流星も、足先だけ白いクツシタ、というお馬さんもなかなか多い。ただ、確実に一つ判ったことは、私はミスターシービーではないらしいということだ。確かミスターシービーは、額に白いラインがなかったはず…とはいえ、この記憶ももうだいぶ薄れてきているものなので、正しいかどうかは正直判らない。

 

 や、しかし、こう自分の姿を客観的に見ると、なかなかしなやかでいい馬じゃないかと我ながら思う。それに、この鬣のセットも結構お気に入りである。いつも世話をしていただいてる人間に感謝感激だ。

 

 さて、それはそうとして朝飯も終わったのでそろそろ鍛錬に…って、君たちも付いてくるのか取材陣。まぁ、そうであろうね。どんなふうに鍛錬しているのかは気になるであろう所であろう。よいよい。私は無敗の三冠馬。とくと見ていくがいい――。

 などと少し天狗になっても、今は問題は無いと思う。

 

 

 今日も今日とてすっ飛ばして坂路を駆けあがって降りてと繰り返していた所、途中からなんと葦毛のお馬さんが坂路にやってきていた。しかも結構体が大きいお馬さんである。

 大柄で葦毛のお馬さん…何か記憶の片隅に引っかかるものがあるが、とりあえずは走りを見てみようと思いつつ、私自身も坂路走行を続けていたわけなのだが、驚くことにこの葦毛のお馬さん、私よりも結構速い。もちろん私自身、本気でもないし、全力でもないわけであるが、それはあちらさんでも同じであろう。なかなか気合を入れ直させてくれる相手である。

 

 ちなみに、途中で本気を出して葦毛のお馬さんを抜こうとしたのだが、馬体こそ並ぶものの、これがなかなか抜けなかった。やはり、なかなかのやり手である。

 

 それから暫くの間、登坂に行くとあの葦毛の馬が居たので、少し意識して走っていた。つまりは今までよりも足に少し負担がかかるように本気で走って鍛錬を続けていたわけである。そのかいもあってか、今では葦毛のお馬さんと坂路で抜きつ抜かれつの大接戦の鍛錬を組めるようになっている。

 

 ちなみに、途中から

 

『やるな若造』

 

 とニュアンスが伝わってきたので。

 

『お背中をお借りします!』

 

 と元気に答えておいた。苦笑するようなニュアンスが伝わってきたので、まぁ、よしとしよう。できればピーマン同志になってほしいなぁ…とは思ったが、多分菊花賞のあのお馬さんが特殊だったのだろうと思い直した。今までの馬の様に、流石に目の前でピーマンを「ぺっ」とされてしまっては、少し悲しくなるというものである。

 

 そういえばあの『18』番のお馬さん。今頃どうしているだろうか。彼も鍛錬を積んで大きくなっているのだろうか。怪我などしていなければいいなと切に願うものである。

 

 

 今日も今日とて鍛錬と取材である。気持ち取材陣が増えてきたような気もするが、まぁ気のせい…ではないな。明らかに増えている。

 同時にオーナーがこちらに来る頻度も増えてきていて、なるほどこれは次のレースが近いのだな、となんとなくではあるが肌で感じられた。

 

 とはいえ、私のやる事は一緒である。ピーマン食って、鍛錬して、瞑想して、寝る。すべてはここに集約されるのだ。

 

 ただ、取材陣はそんな私を飽きずに撮影しているようで、なかなか根性があるなぁと思う次第である。別に毎日同じことであるから、別に見どころは少ないと思うのだ。さて、それはさておき今日はプール訓練である。潜水は4分で頭打ちとなっているものの、今度はそれをインターバルを空けつつ何度も出来るように訓練中である。というのも、菊花賞で全力を出した結果、予想よりもひどく息を切らしてしまったのだ。まだまだ心肺機能は鍛えて、伸ばしておいて損は無いと思うのである。

 それに肩回りと尻回りの筋肉もよーくほぐして柔らかく使えるようにしておかなければならない。本気と全力の歩幅をもっと広げられて、なおかつ足への衝撃を少なくできるように分厚く、更に柔軟な筋肉を付けなければ今後レースで勝っていくことは難しいであろうと個人的に思っている。

 という事で、何度目かの潜水を終えてインターバルタイムだ。息を整えて、もう一度の潜水に向かって準備をする。ちらりと取材陣を見てみると、手にはストップウォッチを以て何やらカメラに向かって何か言っているようであった。

 

 うーん、わざわざ私を取材しなくても、プールで潜水しているお馬さんなんてそこらへんにいるだろうに。ご苦労な事である。

 

 さて、息も整ったので再度潜水といこう。流石に連続で4分は苦しくなってきたので、目指せ潜水3分ということで。せーの。

 

 

 鍛錬を終えて厩舎に戻り、飯の時間である。相も変わらずピーマンを食っているのであるが、流石に夕方、ほぼ夜であるが、という事もあって、取材陣は帰られたようだ。ようやくひと息つけるというものである。

 もっしゃもっしゃと苦味と青臭さを堪能していると、何やら今日はまた知らない人間が私の厩舎をのぞき込んで来ていた。ただ、隣にはいつも私を世話している人間がいるので、まぁ、お知り合いということなのであろう。

 その知らない人間は、ピーマンを一個私に差し出して来た。まぁ毒が入っているわけでもなさそうなので、手ずからピーマンを頂く。もっしゃもっしゃとしていると、その人間は大層驚いたように、横にいるいつも世話をしてくれている人間に話しかけていた。ま、なんだ。言葉は判らないけれども言ってることは判る。

 

―本当にこの馬ピーマンめっちゃ食ってますね!?―

 

 君はそう言っているのだろう?だって私とピーマン一杯入ったバケツを交互に指差しているわけであるし、一目瞭然もいいところだ。

 まぁ、確かに、ピーマンをやたらと食う馬というのは、私が知る限りは私と菊花賞の『18』しか居ない。他の馬は、隣の厩舎の馬含めて誰も食おうとしないのだ。ピーマンとはこんなに美味しいものなのに。全く、味の判るお馬さんが少なくて残念である。

 

 そう考えながらピーマンを食っている横でも、更にヒートアップする人間達。

 

 うーん、私の厩舎の前でやる分には構わないのだが、隣のお馬さんとか結構音にうるさいタイプだけども大丈夫であろうか。まぁいいか。判ってやっている事だろう。ふと気づけばピーマン、野菜、牧草はぺろりと平らげていた。口の中の物をごくりと呑み込み、水を飲む。うん、今日も良いピーマンだった。満足満足。

 

 さて、飯の後は瞑想である。メンタルは常に鍛え、何があっても平常心を大切にせねばならないと、鉢植えの件で痛感している。さて、では。腰を落として、前足はそのまま。目を閉じて耳もそのまま…。って少々君達うるさいよ、と腰を上げて未だ論議を続ける人間達の下へ行き、鼻で軽く小突いた。

 

 驚いた顔でこちらを見ていた2人の人間であったが、明らかに、『悪い悪い』と首を叩かれ、ピーマンを一つ差し出されてしまった。まぁ、別に怒っていたわけではないので、大人しくピーマンを口に入れてもっしゃもっしゃと味わう。すると、気づけばピーマンを味わっているその間に、人間達はどこかに行ってしまった。

 

 ま、判ってくれたのならばいいだろう。では改めて瞑想をしようじゃないか。

 

 

「いやぁ、相変わらず取材が凄いですね」

「だな。オグリの件で変な取材が行われていないってのが唯一の救いだ」

「ああー、ありましたね。いやな事件でしたよ」

「本当にな。まったく。マスコミが自重を覚えてくれて本当に良かったと思う」

「それにしてもやっぱり人気ですよね。あいつ」

「まぁ、そりゃあ三冠馬だしな。それに取材してみたら常識も通用しないってんで、かなり特集が組まれるらしい」

「あー…改めて考えてみれば、登坂じゃあ信じられない数こなしてますし、プールでは馬が絶対しないって言われていた潜水を毎回やりますし…馬が食わないって言われたピーマンを馬鹿みたいに食うし…」

「しかも取材で俺達やオーナー、鞍上がインタビューしてるときはわざわざ馬房から顔を出して止まっていたからな。マイクとかカメラを認識しているんじゃないかって話もあるぐらいだ」

「いやぁ、相変わらずあいつ、化け物ですよね」

「そんなあいつをしっかり管理出来てるお前も化け物に見えて来たよ」

「ひどくないですか?」

「褒めてるんだよ。全く。すごい奴だよ、あいつもお前も」

 

「あ、そういえば聞いてください。今日来客があったんですよ」

「ほう?」

「それがレオダーバン陣営で。どうやってピーマンやってるのか教えてくれって。無下にも出来ず…」

「あー…確か、テイオーが勝手にレオダーバンにピーマン分けちまってたんだっけ?しかもそれで食ってたとか。聞いたときは本当に驚いたよ」

「ええ。入手ルートは前回教えたんですけどね。餌のやり方がわからないってことで」

「まぁ、別に秘密ってわけでもないし。教えたんだろ?」

「ええ、ただ。馬房の前に案内して、こんな感じでピーマンだけのバケツでやってますよ、って言ったら『信じらんない食うのこれでコイツ!?』って驚いてましたね。直後にバケツ一杯のピーマンを完食しているあいつを見て更に驚いていましたけど」

「そういやそうだな。あいつに慣れてしまっているが、馬は普通、ピーマンだけをバケツで食うわけなかったわ」

「ですよねぇ」

 

「それはそうとして、レオダーバン。メジロを抑えて、日本勢トップでジャパンカップ入着しましたよね。驚きましたよ」

「ああ、レオダーバンとナイスネイチャは、同じ歳という中であればあいつのライバルたりえるだろう。有馬記念、いよいよ役者が揃ってきた感じがするな」

 

 

「テイオーのお手製ピーマンの肉詰め…まったく、美味しいじゃない」

「やぁ、リオナタール。隣、失礼していいかな?」

「え…?誰です…ってシンボリルドルフ会長さん!?え?私の隣!?」

「ああ。駄目、かな?」

「いえいえいえ!とんでもありません!どうぞどうぞ!」

「ありがとう。お、それはピーマンの肉詰めじゃないか。迷惑じゃなければ一つ頂いても?」

「もちろんです!」

「ありがとう。…ほう、美味しいな。実は私は、最近までピーマンがダメでね」

「え?そうなんですか?でも、今おいしそうに食べてらっしゃいましたけど」

「ああ、最近ピーマン好きな娘に懐かれていてね。克服したんだ。最近、三冠を獲った娘さ」

「あー…シンボリルドルフ会長さんのお知り合いでしたか、あの娘」

「ああ。トウカイテイオーは私の最も注目するウマ娘の一人だ。だが、君もその一人なんだ。リオナタール」

「え…!?私が、ですか!?」

「ああ。先に行われたジャパンカップ。見事だったよ。メジロマックイーンを抑えての日本勢トップ入着。君の末脚は本物だ」

「あ、あはは、ありがとうございます。シンボリルドルフ会長さんに褒めていただけるなんて、夢みたいです」

「はは、硬いな。私の事はルドルフでいいよ」

「え?あ、いやいやそんな、私がそんな…」

 

 リオナタールが遠慮がちにそう言うと、シンボリルドルフの顔が見てわかるように沈んでしまった。それを見たリオナタールは慌てて笑顔を見せて口を開いた。

 

「う、えーっと…ルドルフ、さん」

 

 その声にルドルフに笑みが戻る。

 

「ああ。それのほうがよっぽど良い。…さて、これから君は、その三冠ウマ娘テイオーを含めた強豪と、暮の有馬で戦う事になるだろう。厳しい戦いになるとは思うが、全力を以て戦えるよう、祈っているよ」

「は、はい!ありがとうございます!ルドルフさん!」

 

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