ボク、ピーマンが好きなんだよね   作:灯火011

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ピーマンはやはり最高の食べ物です。

niceピーマン!ピーマンイズワンダフル!

ちなみに味噌を塗って焼いた味噌ピー(マン)も案外美味でありました。味噌とピーマンも実に美味しゅうございます。

あとはやはりピーマンのきんぴら。ニンジンと一緒にピーマンを炒め、ゴマかちりめんを和えれば完成です。ニンジンの甘さとピーマンの苦旨さが合わさってこれまた旨いです。


※9~10日は投稿しないといったな。あれは嘘である。パプリカである。


年始のあれこれ

 あけましておめでとうございます。そう言うべき日が来たようである。

 

 鏡餅と神棚の前で、よく見る顔の人間達が大人数で手を合わせて何かお祈りをしているようであった。間違いなく、年初めの儀であろう。

 ちなみに厩舎の、しかし私達馬の口が届かない場所には、盛り塩と日本酒がまかれていた。俗にいうお清めである。なんというか、こういう事を間近で見ると改めて身が引き締まる思いだ。

 なお、本日は人間も馬もお休みメインという感じであり、本日私はブラッシングを受けてから、すぐに厩舎に戻った次第だ。ただ、この正月という日であっても、寝床の掃除や餌の世話を完ぺきに行ってくれる人間には感謝しかない。

 そしてよくよく厩舎の棚なんかを見てみれば、鍛錬の時に付ける私のゼッケンが、かなり変化していた。この牧場に来てからは黒字に白のゼッケンだったのだが、今は文字が金色である。しかも、その隣には★が3つも付いている。おそらくこの3つの★は、クラシック三冠の皐月賞、ダービー、菊花賞の意味であろう。あと、金色になったのも、グレード1を勝ったからと考えるのが普通であろうか。

 いや、こう考えると去年一年はよく頑張ったと我ながら思う。ケガをしないようにと気を付けつつも、しっかりと三冠馬になったのである。これは誇っていいはずだ。有馬記念に負けたと言っても僅差であったわけであるし。

 

 さて、では人間に倣って、私も今年の抱負を。

 

―勝っても負けても怪我なく走り切る!ただし、凱旋門賞に出れるならば、全力で!―

 

 ちょっと変な抱負であるが、正直な気持ちである。さぁて。それでは今年一発目のピーマンを頂こう。正月とだけあって、バケツ3杯分も用意されている。ふふふ。これは涎が止まらないというものだ。

 

 では、いただきます。

 

 

 正月の三が日が過ぎた頃。私の今年初の鍛錬が行われた。何をやるのかなーと思いきや、ダートコースでの併せ馬である。いや、今までが木のチップの坂路や芝のコースでの併せ馬が多かったので、かなり驚いた。

 ダートかぁと思いつつコースに足を進めてみれば、やはり芝やウッドチップとはかなり足元が違う。乾いている砂は足元が凄い沈む。軽く走ってみれば、なかなかこれは足を取られそうになる。というか芝と違って力が逃げる感覚が大きくある。例えるなら、芝の場合は、体育館や陸上競技のトラックやアスファルトなどの硬い床で走っている感じ。走った足に反発力があり、次の一歩へと繋げられるような感じである。

 しかしこのダートコースは、例えるなら海辺の砂浜、神社の砂利と言った具合だ。歩く分にはああ、沈むなーぐらいであるが、いざ走ろうと思うと足が沈んで全然前に進めないだけではなく、大量のスタミナを使ってしまう感じである。

 

 いやはや、年始一発目からダートとは。なかなか刺激的な鍛錬を用意してくれるものだ。

 

 ということで、初日のダートの併せ馬にぶっちぎりで置いていかれてしまった。芝と同じように走ってはなかなかダメなようである。ただ、何本か走るうちにコツはつかめてきた。芝の様にしなやかに飛ぶように、ではなく、足腰の筋肉をしっかり使って地面を蹴るようにしていくと、少しは追いつけたので少しずつ慣らしていければと思う。

 それにしてもこう芝とダートを経験すると良くわかるが、芝が得意なお馬さん、ダートが得意なお馬さんに分かれるというのも納得である。中身が元人の私でもこれだけ困惑するのだ。ただの、と言っては失礼ではあるが、馬では対応は難しいだろう。

 まぁ、何事にも例外はいるのではあるが。アグネスデジタルとか。

 

 厩舎に帰ってからはピーマンを食いつつ、脚の動かし方をイメージトレーニングすることにした。今まで走る事は本能、当たり前のことであったが、こうもダートで足を取られるとは思わなかったからだ。という事で、いつものルーティーンに一つ日課が加わったわけである。ピーマン食って、イメトレして、瞑想して、寝る。

 ただ、イメージトレーニングをしながら足を床にカツカツと当てていたら、人間がすっ飛んできて滅茶苦茶心配された。言葉は判らないが、足腰を触られながら撫でられて、言葉にするならば「どうした、どうした!?」と言った具合である。いや、別にどうでもないですよと鼻息を荒くしたところ、思いっきり首を傾げられてしまった。

 その後はなぜかピーマンをバケツ一杯追加されてしまった。これは、よほど心配させてしまった感じがある。なので明日以降、ちょっとイメージトレーニングはやり方を変えることにしようと思う。

 

 

 今日も今日とて鍛錬である。プール、坂路、ダート、プール、坂路、芝の日々である。そして毎日ピーマン食って、イメージトレーニングをしてから瞑想である。

 

 芝とダートを交互に繰り返しながら追い切りを行っているわけであるが、これが慣れてくるとなかなか面白いもので、ダートで学んだことを芝に生かせ、そして芝でまた気づき、ダートへとまた生かせるといういいループが出来ているのだ。

 例えばダートのつもりで芝を走ってみると、これが足への負担が大きいのである。当然だ、反発する地面に対して、力を入れて蹴り足を使っているのだから。ただ、今までは負荷を減らす方向でフォームを考えていたため、これはこれで新たな発見があった。  

 蹴り足の力の入れ具合によるのだが、加速と速度のてっぺんが一つ伸びた感じがするのだ。特に蹴る瞬間に力を今までより込めると、ぐんぐんと、体が前に進むことは非常に新鮮な体験であった。

 かと思ってダートに戻り、芝のような走り方をしてみると、無駄な力が抜けて案外と速度を維持しやすくなっていた。加速には力が必要なのだが、速度の維持は力まず、蹴る瞬間の力の調整でなんとかなるという事に気づいたのである。おかげで併せ馬は置いていかれることは無くなっている。とは言えだ。2つの地面を走るというのは実に不思議な感じである。

 

 ただ、今の所ダートのスパートの感じがいまいち掴めないでいる。芝の方はダートのおかげで良い感じに力を抜いた、しかし速いスパートが出来ているのだが、ダートの方は力いっぱい砂を蹴っても芝の様にぐんぐんとは体が加速してくれない。砂が後ろに逃げることで、私の力を逃がしてしまうのだ。

 …まてよ、ちょっと考え方を変えよう。力を入れて、関節を大きく使って、つまり一歩一歩の歩幅を大きくしているのが今の私のスパート、全力である。芝ではこれが速いわけだが、ダートではこれが遅いわけだ。つまり、一歩一歩のパワーが砂に食われている、という感じに考えられる。で、あればだ。

 

 歩幅を細かくして歩数を多くすればいいのでは?

 

 今までのスパートではパワーが大きすぎる。であれば、歩幅を広げる、パワーを出すスパートから、パワーはそのままで脚の回転を上げるスパートにすればいいんじゃないか?

 

 ふむ。確か次のダート鍛錬が明後日であったはずだから…イメージトレーニングの時間はあるな。柔らかい関節を生かして、歩幅を広げるのではなく、回転を上げるようなイメージで…難しいが、出来ないわけじゃない。

 前足は振り上げすぎないようにして動きはコンパクトに、しかし筋肉のしなりを利用して後方に思いっきり蹴る。後ろ足は…蹴りすぎないようにして戻りを早くするのだが、蹴らなければ蹴らないで進まないのでどうするか。あ、そうか、背中から腰の筋肉、体幹をうまく使えば蹴り足を大きくせずにパワーを出しながら走れる、のか?

 

 そうそう、今まで意識していなかったが、毎日坂路やプールの鍛錬を繰り返しているおかげか、尻や肩周りのほかにも、我ながら体の各部分の筋肉が分厚くなっているようなのだ。これを利用しない手は無いだろう。とりあえずはイメトレを続けて、あとは現地で試しながらスパートを考えていこうじゃないか。

 

 …まてよ、ダートでこれならば、芝でも体の使い方次第ではもっと速度とかパワーが伸びるかもしれない。今までは足を振り上げて、脚の力で地面を蹴って、なるべく歩幅を広げて加速していたが、あくまでそれは足回りの筋肉を意識していたにすぎない。これがもし、鍛えられた体幹、つまり背中の筋肉や腹回りの筋肉を改めて意識すれば…もしかしてもっと楽に速度が出せるのでは?

 

 これはなかなかの可能性を秘めた話である。本来であれば誰かに相談できればいいが、人間には言葉は通じないし、馬にはあんまり相談できない話である。

 ということで、何はともあれイメージトレーニングだ。今までは肩の柔らかさを生かして本気のスパートを行っていたが…肩の筋肉につながっている背中の動きを意識して、今まで動かないようにしていた背中と腹回りの筋肉を意識して、こんな感じか?いや…これだとあんまり…うーん…前途多難であるが、実にやり甲斐がありそうだ。

 

 

「いや、申し訳ないね。預かってからの初戦でいきなり負けてしまって」

「いえいえ、気にしないでください。こいつも本気で走っていましたし」

「うーん、そうは言っても折り合いがつかない場面が多かった。私の課題だよ」

「あはは、こいつ、妙に頭いいですからね。自分で考えてしまうんですよ」

「君はどうやって折り合いを?」

「うーん、気づいたら、ですね。時間をかけて乗っていくしかないと思います」

「そうか、道は長そうだ」

「それにしても、ダイユウサクと一緒にレコードタイムを出すなんて…ダイユウサクが凄いというか、テイオーもすごいと言うか」

「本当にね。あとでレース映像を見返した時に、あっと驚くダイユウサク、と実況が言っていたが、本当にその通りだったと思うよ」

「ああ、そう言えば、次のレースですが、ダートになりそうですよ」

「えぇ?ダートかい?」

「ええ。調教師側から申し入れがあったようで」

「うーん…まぁ、決まったのなら走らせるだけだけどね」

「噂では、今秋に凱旋門賞を目指していて、重い洋芝の馬場を走れるのか、そういうパワーの確認という話も、聞こえます」

「へぇ…それは、面白い噂だね」

 

 

「あいつは相変わらずピーマン食ってるな」

「まぁ、あいつですからね。ただ、最近また妙な行動をし始めまして…」

「妙な?」

「ええ、あいつ、寝る前になんか1時間ぐらい座るじゃないですか」

「ああ、そうだな。あれだけでもかなり妙だが」

「その前に、なぜか4つ足を動かしてるんですよね…足踏みと言うか」

「なんだそれ」

「判れば苦労はしませんって。最初やられた時にはすっ飛んでいきましたよ。脚でもやっちまったのかって心配になって。でも、なんにも異常はなかったんですよね」

「…なんだそれ?」

「判りません。…っと、それはそうと、例のダートの件ですが」

「お、どうだ?」

「一回は反対されましたけど、天皇賞に影響ない範囲ってことで、グレード3、フェブラリーハンデキャップに出走することになりそうです」

「そうか」

「本気か?って言われましたけどね。ただ、あいつのパワーを一度確かめたいんですよって説得して、ようやく首を縦にふって貰いましたよ」

「前例は無いが…これであいつがダートで走れれば、パワーが有り余っているという証左の一つにはなるだろうな。凡走であれば、あいつが調教の成果を生かせない原因は、また別にあるという事になる」

「パワーじゃなければ走り方なのか、それとも鍛えすぎているのか…ですね」

「ま、幸いにして故障は無さそうだしな。それにクラシックを走っていた頃より追い切りのタイムは伸びている。調教の方向性は間違っていないと思うんだがなぁ…」

 

 

「やぁ。テイオー。有マ記念は残念だったな」

「あ、ルドルフさん!あはは、負けちゃいましたよ」

「ふむ…それにしては悔しくなさそうだが」

「いえ、ものすごく悔しいですよ。でも、悔しがってばかりじゃ次がありませんから」

「そうか。良い心構えだ、テイオー。ッと、それはそうとして、ピーマンの料理を作ってきたんだが、食べるかい?」

「え!?本当ですか!?もちろん頂きます!」

「それはよかった。では、これだ。たんとおあがり」

「おー!…って、これ、ニンジン入ってるじゃないですか!?」

「ふふ。ニンジンとピーマンのきんぴら。ちりめんじゃこ和えだよ」

「うぇー…ニンジンですかぁ…」

「ふふ、まぁ、そんな顔をせずに一口食べてみたまえよ。美味しいぞ?」

「じゃあ、頂きます…。うえー…ニンジンかぁ…。…って、あれ?結構おいしい…」

「だろう?そうだろう?」

「うん、これならボク、ニンジン食べれるよ!あ、ちりめんもおいしー」

「ふふふ、よかったよかった。せっかく食べてもらうなら、苦手を克服してもらおうかと思ってね。ああ、そうだ、テイオー。次のレースは何を走るか決まっているのかい?」

「あは!ありがとうございます。んー次走は…マックイーン、あ、ボクのライバルにメジロマックイーンってウマ娘がいるんですけど」

「知っている。トゥインクル・シリーズ、長距離現役最強と言われるあのメジロマックイーン、だろう?」

「はい。彼女が出る『天皇賞春』を次のレースと思って練習を始めています」

「そうか。彼女が勝てば天皇賞春の史上初の連覇がかかっているレースに、君が出るのか」

「はい!もちろん厳しいレースであることは判ってます。有マ記念でこそボクが先着しましたけど、マックイーン、最近調子あげてますから」

「だろうな。ああ、そうそう。実は今日、一つレースの提案をしに来たんだ」

「ルドルフさんが、ボクに?」

「ああ。天皇賞の前に一度、ダートを走ってみないか、とね」

 

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