ボク、ピーマンが好きなんだよね   作:灯火011

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ついに家のピーマンが霜でやられてショックです。

ショックが大きすぎて仕方ないのでハウス栽培のピーマンを食べます!


集いし英傑、ピーマンを添えて

 

 パリパリと小気味よい音を立てながら食べれば、ピーマンは実にその旨味を私の舌に伝えてくれる。うむ。やはりピーマンは素晴らしい。

 

 さて、とはいえだ。帰国から結構時間が過ぎて、落葉の時期も過ぎて気づけば年末の空気感である。あの地獄の生え変わりの時期も過ぎて、今では我ながら見事な冬毛のお馬さんである。

 

 ちなみにであるが、国内の芝のコースでの練習も再開されて、いよいよ私の体は本調子である。ただ、やはり国内の芝は固い。いうなれば、はねっ返りが強いのだ。その影響たるや、凱旋門の時の様に、あの深い芝の時の様に力目いっぱい加速しようとすると、7割程度の力で骨がきしんでしまう。これでは練習も何もあったもんじゃない。

 

 仕方ないので、どうにかこうにか骨への負担が減らせないものか、と悩んでいた時に、ふと思い立った。

 

 筋トレして筋肉量を増やせばいいのでは? と。そう。よく考えれば、私は中に人が居るのである。わざわざトレーニング任せにして体を動かすだけではなく、人でいうところの自重トレーニングを取り入れたらいいのではないかとピンと来たのだ。

 

 しかし、かといって腕立てが出来る訳でもない。いやまてよ、そう言えば、足腰の筋肉に負担がかかるポーズを少し前にしていた事を思い出した。

 そう、後ろ足で立ったあのポーズである。あのポーズは、後ろ足にかなりの負荷がかかる。特に足腰周りの筋肉などはプルプルと震える始末なのだ。

 

 そう、あのポーズを取ると、足腰の筋肉がプルプルと震えるのである。

 

 つまり、人でいうところの、プランクみたいな筋トレが出来るはずと思い立ったのが帰国後一カ月ちょっと経った時である。そして、その日から夜の日課に、プランクが追加されたのだ。

 

 最初のうち、前足を上げて、立ったポーズで60秒数える事。そして、前足を付いて、ケツを上げるようにバランスを取る事…こちらは難しいのでまずは10秒を目標として筋トレを開始したわけだが、これがなかなか辛いもので、最初は後ろ足に関しては30秒程度、前足については5秒程度しか持たせることが出来なかったのである。これはなかなか我ながらショックが大きかった。馬として結構速く走れているのにも関わらず、このような筋トレ程度で音を上げるなどなかなか貧弱であるな…と。

 その日からは意地になって筋トレを続けて、そして今に至るわけだ。

 

 流石、馬の体というだけあって、筋肉も付きやすい。今では後ろ足で120秒、前足で30秒程度キープすることが出来るようになっている。気持ち、体幹も鍛えられた感じである。ちなみに筋トレ中、人間からものすごく首を傾げられた。まぁ、なんだ。変なことをしている自覚はあるわけなので、見逃してほしい。

 

 ただ、この筋トレの甲斐があってか、7割程度の力までしか出せなかった芝のスパートが、8割程度までの力を出しても骨がきしむことが無くなっていた。筋肉はやはり素晴らしいものである。そして、筋トレをしてからのピーマンがこれまた旨いのだ。なぜだろうか。筋トレする前のピーマンと比べると、5割増しぐらいの旨味を感じるのである。こう、体が喜んでいるというか。不思議な感じである。

 

 そして、そんなこんなで鍛錬の日々を続けていた頃、ついに私の目の前に、例の運搬車が鎮座することとなる。季節は年末。となれば、もうあのレースしかあるまい。

 

 暮の中山、有馬記念である。ま、もしかしたらダートの可能性もあるが…まぁ、なんにしても日本に帰ってきてからの初レース。見事に勝利を収めたいものだと覚悟を改めた。

 

 暮の中山。有マ記念の前日。そこには、多くの記者と、3人のウマ娘が集っていた。

 

 トウカイテイオー、リオナタール、そしてナイスネイチャ。3人は並んでカメラの前で思い思いにポーズを取る。テイオーは腰に手を当てて、ナイスネイチャは左手を腰に当て、右手をカメラに向けて。リオナタールは自然体といった感じだ。

 

『さて、トウカイテイオーさん、リオナタールさん、ナイスネイチャさんの紹介を、改めてさせていただきましょう』

 

 司会の声が響くと共に、一斉にフラッシュが焚かれ始めた。

 

『まずご紹介するのはナイスネイチャさんです!先のジャパンカップ。今まででも前例のない最強の外国ウマ娘達を抑えて、見事にセンターの座を射止めてくれました!』

 

 ナイスネイチャに一斉にカメラのフラッシュが向いた。ナイスネイチャはといえば、慣れたように笑顔を浮かべ、顔の横に右手の一本指を立てる。

 

『そして次にご紹介しますは、リオナタール!フォワ賞での重賞制覇、そして日本のウマ娘として初のオーストラリアのメルボルンカップ勝利!大偉業と言っても過言ではないでしょう!』

 

 今度はリオナタールにカメラのレンズが一斉に向いた。そのリオナタールといえば、これまた普段のいでたちで、左手で小さく顔の横にピースを作っていた。

 

『最後に紹介いたしますは、今年の主役と言っても過言ではないトウカイテイオー!日本のウマ娘として初の、あの夢の舞台凱旋門を一着で潜り抜け、そしてダートの頂のBCクラシックを見事に駆け上ったあの最終直線!ウマ娘ならずとも、大興奮のレースを見せてくれました!』

 

 最後にそう紹介されたテイオーに、一斉に視線が集まる。テイオーといえば、左手を腰に当てると、右手で一本指を作り、勢いよく掲げて見せた。

 

 テイオーのポーズに、わっと沸く会見会場。そして、その騒ぎが落ち着くころ合いで、司会者が言葉を発した。

 

『さて。ご存じの通りではありますが、今年はこの世代最強の3人に対して、Uma-musume Racing Associationから特別表彰を行います!』

 

 拍手が巻き起こる。

 

『年度代表ウマ娘。今年は特例中の特例です。通常は一人と定められておりますが…3人の偉業に敬意を表し、今年の年度代表ウマ娘は。トウカイテイオー。リオナタール。ナイスネイチャ。この3人が選ばれることとなりました!』

 

 拍手だけではなく、歓声が巻き起こる。賞を受けたトウカイテイオー、リオナタール、ナイスネイチャの3人は堂々と笑みを湛え、お辞儀を行っていた。

 

『さて、ではトロフィーの授与となるのですが…。通常であればこのままURA役員からの授与となるのですが、今年は特別ゲストに来ていただきました!』

 

 ここで初めて3人は顔を見合わせた。会見を開くとは聞いていた。表彰を受けるとも聞いていた。だが、この特別ゲストという事は聞いていなかったのである。

 

『生ける伝説!彼女が走っていた当時、獲得可能なGI級レースをすべて勝ち、日本ウマ娘史上初、初めて「五冠ウマ娘」の称号を与えられたウマ娘であり、長らくの間『彼女を超えろ!』とURAは日々邁進していました。「鉈の切れ味」と呼ばれたあの末脚は、未だに人々の脳裏に鮮烈に残っております!

 

 登場いただきましょう!どうぞ!』

 

 そう司会者が締めると同時に、一人のウマ娘が会見場の前へと歩み出た。

 

 鹿毛の髪を揺らし、どこかトウカイテイオーに似た、一房の白い毛を額に湛えて。

 

 その服は、おそらく勝負服であろうか。和装に近い、しかし走る事には邪魔にはならない、そんな優雅な勝負服。

 

 カツン。と蹄鉄を床に打ち付けて、その一人のウマ娘は記者たちへと顔を向けた。

 

『ご紹介に預りました。私の名前はシンザン。本日はこのような目出度い場所にお招きいただき、感謝申し上げます』

 

 一礼。それだけで、空気が引き締まるようだ。

 

『では…早速。まずはナイスネイチャ。君は見事、国外の強豪を避けてみせた。最後の直線、見事だった』

 

 そう言ってシンザンはトロフィーをナイスネイチャに渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 緊張している声が、返ってきた。

 

『リオナタール。君は見事、国外へ挑戦し、その末脚でメルボルンカップを見事に獲ってみせた。凱旋門もトウカイテイオーと共に制してみせた。見事だ』

 

 そう言って、シンザンはトロフィーをリオナタールへと渡した。

 

 「ありがとうございます」

 

 自然体な、しかし、誇らしい声が、返ってきた。

 

『トウカイテイオー。君は、素晴らしい。凱旋門賞、BCクラシック。片方だけでも偉業だと言うのに、両方を獲るという大偉業を成し遂げた。凱旋門賞、あの最後の直線。私も見ていた。ああ、君は、私を熱くしてくれた。ありがとう』

 

 そう言って、シンザンはトロフィーをトウカイテイオーへと渡し、そして、耳元でささやいた。

 

『来年には仕上がる。年藤の奴も、赤飯の奴も、三人娘も仕上げにかかっている。我らは、君を待っているからな』

 

 笑顔を見せながらそう囁いたシンザンに、テイオーは一瞬驚く。が、しかし。

 

「ありがとうございます。でも、ボクが最強ですから」

 

 自信満々の、頼もしい声が、返ってきた。

 

 

 予想通り、運搬車に乗せられて東京の中山競馬場に着いた私は、例の如く厩舎で体を休めていた。まぁ、もちろん、もっしゃもっしゃとピーマンを食べる…わけなのだが。

 

『もっしゃもしゃもっしゃもっしゃ』

 

 この音は、暮の中山の厩舎に響く咀嚼音である。私ではない。私以外のお馬さん達だ。

 

 同志レオダーバン、ナイスネイチャ、坂路のお馬さん、小柄な黒いお馬さん、加えて数頭。

 そして、なぜおまえが居るのか?エーピーインディ。いや、最初は見間違いかと思ったけれどもだ。

 

『お久しぶり。草走りにくい。これ旨い。お前好き』

 

 このニュアンスでこいつ、やっぱりエーピーインディだと納得できた。ピーマン食いながら私の事を好きとか言って来る奴は、世界広しと言えどエーピーインディしか知らない。いや、本当、なんで暮の中山にお前が居るんだ?私の知る限り、あのBCクラシックで引退しているはずだろう。なんだ、私に負けたBCクラシックのリベンジでも決めるつもりなのか?お前速いから嫌なんだよなぁ…。

 

 ううむ…そして、現実逃避にちらりと周りを覗いてみれば、ピーマンを食ってない馬の皆さまのバケツにすらも、ピーマンがご用意されている始末。どういうことなのであろうか。あ、メジロマックイーンはピーマンじゃなく果物である。ちょっとホッとした。

 

 いやしかしだ。レオダーバンといいナイスネイチャといい、確かに私がピーマンを勧めたが…こうも暮の中山に集まるもんかね。というか、なんだ。ピーマン食ってる馬は速い!とか人間に勘違いされていそうである。実際有馬記念出場馬の半数がピーマン食ってる実力馬であるなんて、実際、なかなかの事態ではなかろうか?

 

 ま深く考えても仕方ないか。私も彼らに交ざりピーマンを食らうとしよう。とはいえだ。君らもピーマンが好きなんだろうが、何を隠そう、私が一番ピーマン好きなのである。こればっかりは絶対に譲れないのだ。

 

 

 

 

『さぁ、改めまして。本日、有マ記念に出走のウマ娘達をご紹介していきましょう。

 

 一枠一番、3番人気ナイスネイチャ。

 前走ジャパンカップでは海外勢を抑えて見事にセンターの栄誉を手に入れました。

 トウカイテイオー、リオナタールに並びシニア級最強ウマ娘と言われております。

 この有マ記念でも好走を期待したいウマ娘です。

 

 一枠二番、9番人気ヴァイスストーン。前走は福島記念で9着。

 センターこそ少ないウマ娘ですが、重賞レースの常連のウマ娘です。展開によっては勝利の可能性は十分にあります。

 

 二枠三番、18番人気メジロパーマー。

 前回のグランプリ、宝塚記念を逃げ切ったグランプリウマ娘です。

 前走の天皇賞秋では17着と撃沈しましたが、そんなものは関係ないと今回も爆逃げ宣言。逃げ切れるかどうか、注目のウマ娘です。

 

 二枠四番、1番人気リオナタール。

 凱旋門では入着、前走メルボルンカップでは日本のウマ娘として初勝利を上げております。

 天皇賞春ではメジロマックイーン、トウカイテイオーを抑えての見事センターの座を射止めました。

 今、まさに乗っているウマ娘です。自慢の末脚は炸裂するのか。注目のウマ娘です。

 

 三枠五番、4番人気トウカイテイオー。

 ご存じ無敗の三冠ウマ娘。凱旋門賞、BCクラシックを勝利し、堂々の凱旋に選んだのは暮の中山有マ記念です。

 更に、逃げ、先行、差し、追い込みとすべてに対応できる変幻自在の脚の持ち主であります。

 走り出すまではどう動くかが全く予想が出来ない点、未だクラシック以外の国内G1レースでセンターを獲れていない点など懸念が多いせいか、人気は4番と低めです。

 今回、見事実力を発揮し、国内でのシニア級で初のセンターの栄光なるか。

 

 三枠六番、8番人気レリックアース。

 昨年から怪我に悩まされていたウマ娘ですが、今年の夏前から本格化。セントライト記念ではライスシャワーに先着。

 菊花賞は見送り、世代最強を決める舞台と定めたのは暮の中山、有マ記念。前走ジャパンカップでの入着の実績をひっさげて、堂々の出走です。

 

 四枠七番、13番人気レッツゴーターキン。

 先の天皇賞秋では見事に一着。同期メジロマックイーンの不在の中、見事その実力を示すレースとなりました。

 しかし前走ジャパンカップでは残念ながら着外の八着。今回の有マ記念であの輝きを取り戻せるのか。期待のウマ娘です。

 

 四枠八番、11番人気ダイタクヘリオス。

 前走スプリンターズステークスでは4位入着、その前のマイルチャンピオンシップでは見事センターの座を射止めました。

 そして記憶に新しいのは、メジロパーマーとの宝塚の大逃げ大波乱のレース。今回の有マ記念でも大波乱を見せるのか。楽しみです。

 

 五枠九番、15番人気オースミロッチ。

 前走はトパーズステークスにて見事センター。他に京都大賞典など重賞を勝利しています。

 しかし今までの勝ちがすべて京都レース場と極端なウマ娘です。この有マ記念、初の京都レース場以外の勝利をつかめるのでしょうか。

 

 五枠一〇番、12番人気ケーツースイサン。

 同期ブレスオウンダンス、シガーブレイドから打倒トウカイテイオーの想いを託されたウマ娘です。

 お前を超えるんだと意気込んだ会見は気迫あふれるものでした。

 前走ディセンバーステークスでは見事センターの座を射止めておりますが、脚の怪我が再発したこともあり、少々不安な点も。

 無事に走り切って欲しい所です。

 

 六枠十一番、2番人気メジロマックイーン。

 怪我から回復後、初の復帰レースに選んだのは得意距離のグランプリ有マ記念。

 前走は天皇賞春。リオナタールに次ぐ2着でしたが、着差なしのレコードタイムは流石の実力といえるでしょう。

 今までの実績、そして得意距離の2500メートルを踏まえてか、2番人気に推されています。

 

 六枠十二番、14番人気ムービースター。

 前走はマイルCSでの8着と最近は良い結果に恵まれてはおりません。

 ですが、過去にレコードを出して勝利したその実力は本物です。有マ記念で実力が発揮できるのか。期待が持てるウマ娘です。

 

 七枠一三番、16番人気サンエイサンキュー。

 前走は京都のローズステークスでレコードタイムを出しての一着です。

 そして今回、札幌記念の借りは返すぞトウカイテイオーと意気込んで、トレーナー契約を変更して挑む有マ記念です。

 気合の入れようは、出走予定だったエリザベス女王杯を蹴り、この有マ記念にピークを合わせて来たという話も聞き及んでおります。

 その決断は実を結ぶのか。期待が持てます。

 

 七枠一四番、10番人気ヒシマサル。

 前走はジャパンカップ。最高のメンバーと言われた海外ウマ娘入乱れる中で、見事に掲示板入りする実力の持ち主です。

 そして、このレースを最後にアメリカに旅立ちます。驚くことに、なんとあのセクレタリアトのトレーナーとして!最後に錦を飾れるのか!気合十分です。

 

 七枠一五番、17番人気ヤマニングローバル。

 鮮烈なデビュー戦3連勝以来、怪我で調子が出せていませんでしたが、天皇賞秋での3着など。最近は上がり調子です。

 怪我さえなければ、かのアイネスフウジンらとダービーを競い合えたと言われたウマ娘でもあります。今回の有マ記念、その実力を出すことが出来るのか。前走はジャパンカップで12着。

 

 八枠一六番、7番人気ライスシャワー。

 今年のクラシックを盛り上げてくれたウマ娘の一人。その美しい黒鹿毛から、漆黒のステイヤーと呼ばれております。

 前走、菊花賞での見事な追い込みはまさに鬼の末脚と言える素晴らしいものでした。

 そして、菊の冠を引っ提げて殴り込むは史上最高メンバーとも言える有マ記念であります。ミホノブルボンとの対決も期待です

 

 八枠一七番、5番人気ミホノブルボン。

 ライスシャワーと並び、今年のクラシックを盛り上げてくれたウマ娘の一人。

 前走は菊花賞2着。今年、三冠ウマ娘にもっとも近かったウマ娘です。ライスシャワーに菊の冠を取られましたが、その逃げ足は本物です。

 しかし、2500メートルという長距離でリベンジを決められるのか。そしてトウカイテイオーとは新旧ダービーウマ娘対決。注目です。

 

 九枠一八番、大外に付きましたのは、6番人気エーピーインディ。

 今回はURA特例枠としての出場。有マ記念、初の外国ウマ娘の参戦です。前走はブリーダーズカップクラシックの2着。

 そして、今回のこのレースをもって、エーピーインディはアメリカのドリームトロフィーシリーズへと進みます。

 今回初の日本芝のコースですが、本人曰く、クレイと同じだという力強いコメントを頂いております。期待十分です。

 

 さて、どうでしょうか。今回の有マ記念、注目すべき点などはありますか?』

 

 

『正直に言ってしまいますと、今回、注目するところが多く、予想するのは非常に難しいレースとなっております。昨年のダイサンゲンの件もありますので、人気薄のウマ娘が勝利する可能性も十二分にあります。

 特にメジロパーマー。人気が最も薄いのですが、ダイタクヘリオスとの宝塚記念の大逃げコンビ復活という事で、もしかしたらがあるかもしれません。

 加えて今年のダービーウマ娘、ミホノブルボンも逃げに加わる事でしょう。そうなると大逃げトリオとなりまして、相当ハイペースなレースであることが予想されます。

 

 そして更に今年、日本のウマ娘を盛り上げた功労者の三人、トウカイテイオー、リオナタール、ナイスネイチャのシニア同期組、それに挑むサンエイサンキューなどのウマ娘もおります。

 更に更に、休養明けのメジロマックイーン、現役アメリカウマ娘界最強のエーピーインディも走るわけです。

 

 レース展開としては、もちろん、ダイタク、ブルボン、パーマーが逃げ、リオナタール、ナイスネイチャあたりは間違いなく最終直線で追い込んでくるはずです。

 エーピーインディ、メジロマックイーン、レリックアースあたりは前目のレースと予想が付きます。

 

 しかし、トウカイテイオーだけは一切予想が付きません。

 

 2500だからスタミナが持つと踏んで大逃げに混ざるのか、それともマックイーンやエーピーインディをマークして前に付くのか、はたまたリオナタールあたりと一緒に後方からのレースをするのか、それとも我関せずとばかりに殿から追い込みをかけるのか…これによっても、レース展開はまた随分と変わってくるはずです。

 

 ただ、間違いなくこう言えます。正直誰がセンターに立っても、文句なしのレースになることでしょう』

 

『まさに、英傑集いし暮の中山と言ったところですね。

 さて、有マ記念、芝2500メートルの頂点に立つのは、一体誰なのでしょうか。出走時間が近づいてきております。いよいよ本バ場入場です』

 

 

「どうでしたか?テイオーは」

「ん?ああ、ルドルフか。いい娘じゃないか。いやはや、少々吹っ掛けてみたんだが、物怖じせずに返されたよ。ボクが最強ですから、だとさ」

「相手が貴方でも、ですか。はは、テイオーらしいですね」

「久しぶりに骨のあるウマ娘だと思ったよ。いやぁ、心底、ドリームトロフィーが楽しみで仕方がない。お前が此方に上がってきた時以来の高揚感だ。お前ももちろん楽しみなのだろう?」

「ええ。もちろんです。ですが、彼女に土を付けるのは、私が最初ですよ?」

「はははは。好きにするがいいさ。――只、私は大外を突き抜けるのみ、さね」




次回。暮の中山、有馬記念。

2500メートル先のゴールを駆け抜けるのは、果たして。

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