ボク、ピーマンが好きなんだよね   作:灯火011

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『あいつが出ていなければ、お前が勝てた』

そんな言葉、絶対に言わせない。言わせてなるものか。

※主人公のブルボンさんの記憶を治しております。


1992.12.27-15:20 中山競馬場-第9競技/トゥインクルシリーズ総決算 有マ(馬)記念

 パドックを周りながら、ほう、と少し感心していた。 

 

 というのも、エーピーインディが居るからか、有馬記念の掲示板の表示が、日本語と英語で交互に表示されていた。これは見たことがない感じである。

 

 ということで、早速、英語のレース名を確認する。Arima Kinen (The Grand Prix)と出ている。なるほど、やはり有馬記念である。まぁ、この観客の数といい、同志や仮面のお馬さん、あとメジロのマックイーンが出ている時点でそれであろう。逆に有馬じゃなかったら何のレースなんだ、となるぐらいの面子である。

 

 ええと、とりあえずエーピーインディが本物かどうか…ええと、18番…A.P. Indy。ふむ。やはりエーピーインディである。いや本当になんで暮の中山に?あとは他のお馬さん達の名前も見てみよう。

 

 1番の仮面のお馬さん。Nice Nature。ナイスネイチャである。オッケー、予想通り。いやはや、本当にG1を獲ったのだなぁ…。

 

 2番は、White Stone。葦毛のお馬さんである。日本語読みだとホワイトストーン。確か重賞連続出場が結構すごいお馬さんだった記憶がある。

 

 3番は…Mejiro Palmer。メジロパーマー。お、メジロパーマーも走っているのか。宝塚記念と有馬記念の逃げ勝利は凄かった記憶がある。

 

 ん!?あれ!?ちょっとまて。メジロパーマー!?いやな予感がする。もしかして…と思い、他のお馬さんの名前を見てみると。

 

 居た!8番!ダイタクヘリオス!

 

 ああ、そうか!1992有馬記念!ダイタクヘリオス!!メジロパーマー!!!このメンツが揃っていたらもうこれは確定であろう。メジロパーマー大逃げ勝利の有馬記念である。2年連続で人気薄の馬が勝ったので非常に印象に残っている。うーむ…ただ、この時、実際トウカイテイオーも走ってはいて、非常に調子が悪かったらしく凡走。ただ、現在の私は調子が非常に良いので、まぁ、その部分は参考にはならないであろう。

 

 あと気になるのは、この1992の有馬記念にあの葦毛のお馬さん、メジロマックイーンは居なかったはずなのだが、11番にしっかりと名前が載っていた。更にである。1992年のクラシック戦線のお馬さんの名前も見ることが出来たのだが…首を傾げてしまった。

 17番。Mihono Bourbon。そう。あのサイボーグと呼ばれた逃げ馬、ミホノブルボンも走っているのである。おかしい。確かブルボンは有馬を走る前に怪我をしてしまったお馬さんのはずである。記憶が正しければ、今は確か復帰を目指して頑張っているハズなのだが…。そう思って17番を付けたお馬さんは一体、誰なのかと確認したところ、なんと、坂路で私の後ろを付いてきていたあのお馬さんであった。まじかー!

 

 速いとは思っていたけれども、そうか、お前はミホノブルボンかぁ。いや、ということは…16番に居た、Rice Shower。ライスシャワーである。ミホノブルボンの三冠を防いだり、メジロマックイーンの天皇賞春の三連覇を防いだりと、どこかヒール的なお馬さんでもある。のだが、そういえば、天皇賞春はメジロマックイーンが連覇出来なかったし、ブルボンの前年、つまり去年は私が三冠を獲っていたりと、案外その風当たりは小さくなっているのかもしれない。

 

 ま、少し話が逸れてしまったが、この1992有馬記念、私の知る有馬記念とはずいぶん様相が様変わりしているようだ。実際、今名前を出した連中だけでも有名なお馬さん達ばかり。

 

 ちょっとレースの妄想をしてみようか。

 

 有馬記念、スタートしたらまちがいなくブルボンとパーマー、ヘリオスが爆逃げである。それを追っかけるようにメジロマックイーンとエーピーインディあたりが行くであろう。ライスシャワーは…誰をマークするのであろうか?史実では私であったが、このメンツであったらメジロマックイーンやエーピーインディかもしれない。更に後ろを見てみれば、間違いなくレオダーバン同志とナイスネイチャもいるであろう。他にもヒシマサルやレガシーワールドなんかの有名なお馬さんもいることであろう。

 

 そして、トウカイテイオー、つまり私はどうする?我ながら、逃げもいける。先行もイケる。差し込みもイケる。追い込みだって問題は無い。予想がつかん。彼に手綱を任せるのみである。

 

 ただ、最終直線。誰が前に来るのかは全く予想がつかない。レオダーバン同志が差し切る可能性もある。マックイーンがレースを支配している可能性もある。インディがぶち抜く可能性もある。ライスシャワーが先頭の可能性だって十二分にある。

 

 正直、この有馬記念は私も見たいぞ。ただ、悲しいかな私は出場する側なのである。ま、ひとまずは後悔の無いように走り切るしかあるまい。

 

 などと考えていたら、止まれの合図が聞こえて来た。大人しく脚を止めて彼を待つ。

 

 

「おはようございます。ついに来ましたね。有馬記念」

「おはよう。ああ。大一番だよ」

「テイオーの調子はどうでした?」

「昨日の追い切りじゃあ最高だったね。今朝も会いに行ったけど、気合十分だったかな」

「そうですか!じゃあ、今日は期待が持てますね!」

「うん。ただ、面子が豪華でなかなか難しいと思っているよ。それに、どう走らせるかをまだ決めかねているんだ」

「と、いうと?」

 

「2500メートルなら間違いなくレコードタイムで逃げ切る事も出来る。前目について最後加速することも出来る。後ろ目について差し切る事も出来る。殿について直線一気も出来る。万能の馬だからこその悩み、といった所だね」

 

「ああ、なるほど。確かにどうやっても走りますもんね」

「ただ、気になるのは馬場状態だね。テイオーが得意としている深い、パワーが必要なそれじゃあないから、いつもの追い込みの位置だと、加速しきれないかもしれないって思っていてね」

「あー…去年の有馬もそんな感じでしたよね」

「うん。ああ、そうだな。君なら、どうする?」

 

「私ですか?うーん…ま、そうですね。どうやっても走る馬なので、信じて走るだけ、といった所です。負けたら負けたで仕方がないかなと」

 

「信じて、か。うん。そうだね。確かにテイオーはそういう馬だ。ありがとう。覚悟が決まったよ」

「あまり良い事言えずに申し訳ありません。じゃあ、私は観客席で見ています。ご武運を!」

「ありがとう。―――さて、テイオー。一緒に、度肝を抜こうじゃないか」

 

 

 今日は彼は静かに私に跨った。なんというか、いつもと雰囲気が違う。はて?と思ったが、その目は馬の私から見ても、ぎらぎらと輝いていた。うん。これは期待十分である。

 

 本馬場に入り、脚のストレッチをしていると、なぜか歓声が沸き起こった。ストレッチを止めると、歓声が止む。そして、ストレッチを行うと歓声が沸き起こる。…ん?もしかして、これは私のストレッチで歓声が沸き起こっているということか?思わず足を止めて観客席を見てしまった。

 

 …ああ!そうか!トウカイテイオーってあれだ、こう、跳ねるように歩く姿が特徴的だった。そうか、我ながらこのストレッチはジャンプしているような形になるわけで、テイオーステップに近いわけなのだ!つまり、これを見れたから、観客は歓声を上げていたわけか。なるほど、合致した。それならばもうちょっとサービスでストレッチをしていこ…っと、手綱を扱かれてしまった。仕方ない、ファンサービスはレース後に行うとしようじゃないか。

 

 今は目の前のレースである。気持ちを切り替えて、ウォーミングアップがてら芝のコースを軽く駆ける。芝の状態は実に良い。つまり、硬い。うーむ。これではラストスパートが苦労しそうである。加速は出来るが骨が軋むことになるわけなのだ。彼もきっと考えてはくれているだろうが、どうしたものか。

 

 ま、とはいっても私に今出来る事は、しっかり筋肉をほぐして、彼の手綱に従えるように気持ちを整えるだけである。

 

 そしてファンファーレを遠くに聞きながら、静かにゲートイン。去年の有馬の様に、ゲートインを嫌がるお馬さんもおらず、スムーズに準備は進む。

 

『―――――!――――――!』

 

 遠くから、アナウンスの様な声が聞こえる。同時に、人間が、旗を振った。

 

 

「各馬ゲートイン完了。…第37回有馬記念。スタートしました。各馬綺麗にスタート。先頭争いはやはり行ったミホノブルボン、メジロパーマー、ダイタクヘリオス。3頭がハナを主張し合いながらコーナーへと向かいます。1番人気レオダーバンは下げて後方2番手、2番人気メジロマックイーン、6番人気エーピーインディは前目に付けて、その後ろにライスシャワーが付けています。注目の各馬、位置取り激しくコーナーを抜けて参ります。凱旋門賞馬トウカイテイオーは最後尾、殿につけての競馬。今日は追い込み態勢か。

 

 正面スタンド前に各馬入りまして、聞こえますでしょうが!大歓声!大歓声であります!拍手と歓声が降り注ぐ!さあ改めて順位を見ていきましょう!

 

 先頭はミホノブルボン! その後ろすぐにメジロパーマーとダイタク! そして5馬身空けてメジロマックイーンと外にエーピーインディが並び、その内レガシーワールド、ライスシャワーが続きます。更に3馬身を空けてナイスネイチャ、レッツゴーターキン、オースミロッチ、フジヤマケンザン、ホワイトストーン、ムービースター、ヤマニングローバルが集団を形成しています。そこから少し開いて錦を飾れるかヒシマサル、サンエイサンキュー、1番人気、そして今回のレースで種牡馬入りを表明しているレオダーバンはここに居た! 外目に振って前を狙っているか!? そして更に4馬身。我関せずと進むのは凱旋門賞馬トウカイテイオー! 殿で堂々の凱旋であります! 先頭から殿まで20馬身以上開いている! さあ、どうなる有馬記念!』

 

 

 これは見事に予想通りの展開と言えよう。ゲートを飛び出て一気に前に出たのはパーマーとブルボン、そしてヘリオスである。そして私はと言えば、彼の手綱に従って最後方、殿からの競馬である。うーむ、この92年の有馬記念、展開を知っている私からすると、出来れば前についておきたかったのだが…とはいえ彼を信じるしかあるまい。

 

 あっという間に先頭との距離が開いて正面スタンド前である。わあ、と大音量の歓声と、大きな拍手が私たちに降りかかった。ちらっと見てみれば、超満員も良い所。ぎゅうぎゅう詰めのスタンドだ。人がごみの様だ!と一度は言ってみたい台詞を頭の中で唱えておく。

 

 それにしてもペースが速い。殿とは言え結構本気で走らなければ置いていかれそうな感じである。少し間を空けて前を走る同志からは。

 

『速い。疲れる』

 

 と簡単なニュアンスが伝わってきた。まぁ、うん。私もそう思う。ただ、このペースに食らいつかないと多分パーマーやブルボンに追いつけないのだ。うーむ、それにしても彼はどう考えているのだろう?もし、最終直線で鞭が入った場合は、先頭をとらえきれないと思うのだが…。

 

 などと考えていたら第一コーナーである。先頭はミホノブルボンとパーマーが競り合っている感じ。あとは順当にメジロマックイーンとインディが前に付けている感じである。ネイチャとレオダーバン同志は私の見える位置に居る。ま、まだ焦る時間ではない…と思いたい。

 

 ふと、コーナーを周っているさなか。手綱が緩んだ。どころか、少し扱かれた。

 

―少しずつ前に行け―

 

 ということである。考える前に少し足に力を入れて、加速を始めた。第二コーナーを抜ける頃には、レオダーバンの尻にぴったりと付いて観客席とは逆側のストレッチへと入る。が、手綱は緩んだまま。

 

―もっと外を行け―

 

 そう言うように、左の手綱を引っ張られ、そして手綱を緩められた。…ほおう?判ってきたぞ。君の考えていることが。なるほど。このメンツに対してそうか。

 

 ならば行こうじゃないか。思うや否や、脚のギアを入れ替えて、歩幅を動かし、全力を出し始める。そう。彼の考えている事。それは。

 

 

 向こう正面からのロングもロング。ロングスパートである。

 

 

 私の考えは合っていたようで、加速し始めた私を止めることもしない。まあ確かに、私のスピードを活かすにはこれしかないかもしれない。最後に一気にトップスピードに持って行くと足に負担がかかる。それならば、じわりじわりとスピードを上げてトップスピードに乗せればいい。

 そういうことだろう?あと1500メートルを、私のスタミナが持つと信じてくれたのであろう?

 私はキミを信じている。そして、私もキミからの信頼も感じている。いい。それでいい。

 そう思いながら、改めて手綱を食んで、首を下げた。そして、ぐっと足に力を込めて、ストライドを広げた。

 

 …やはり手綱は緩いまま。ならば行こう。

 

 ならば、度肝を抜いてやろう。行くぞ、最高のお馬さん達。

 

 この有馬記念、殿から、トウカイテイオーが度肝を抜くぞ!

 

 さあ行くぞ!Hi-yo Silver!!!

 

 

『向こう正面に入りまして先頭は相変わらずミホノブルボン!

 1000メートル通過タイムが57秒台!? ハイペースの大逃げだ! ぴったり付いて大逃げコンビのメジロパーマー、ダイタクヘリオス、その後ろに順位を上げて来たメジロマックイーンとエーピーインディがぴったりとくっついて逃げ集団を形成しているがスタミナが持つのかどうか!?

 少し間をあけてフジヤマケンザン、ホワイトストーン、ライスシャワーはまだこの位置、レガシーワールド、ここにジャパンカップ勝利馬ナイスネイチャ!

 

 おっと!?ここで殿、トウカイテイオーが動いた!外に振ってじわりじわりと上がってきている。まだ向こう正面だトウカイテイオー。これはどうした、掛かってしまったか!?そしてそれを見るようにレオダーバン、ヒシマサルあたりが付いて行って先頭が第三コーナーに差し掛かる!そしてトウカイテイオーだが鞍上が手綱を扱いている。これは…まさかロングスパートか!?』

 

 

 先頭のハイペースの逃げは、オーバーペースも良い所だと思う。リオナタールを見てみれば、もう顔が真っ赤で、汗を流している。

 

 ナイスネイチャも、息が上がっている。ヒシマサルもだ。全員が必死なんだ。

 

 でも、僕は加速をやめない。信じられないと言う顔でリオナタールがこちらを見た。ナイスネイチャも、此方に首を振った。

 

『テイオー、まさか掛かった…!?』

 

 ナイスネイチャがそう囁いた。だけど、そうじゃないんだ。

 

「大外。ボクの脚は最後まで持つよ?」

 

 ボクがそう呟いて加速していくと、何人かの目つきが変わった。必死な顔のリオナタールがボクの背中についた。目つきが厳しくなったナイスネイチャも外に振って追撃態勢。ヒシマサル、サンエイサンキューもだ。

 

 前を見れば、ゴールをめがけて加速し始めた逃げの集団が見える。 

 

 でもね。パーマー、ヘリオス、ブルボン、マックイーン、それにインディ。ボクだって強くなっているんだ。

 

 リオナタール、ナイスネイチャ。君達に負ける訳にもいかない。

 

 サンエイサンキューもボクに土を付けるとか言ってたよね。でも、まだ、まだまだ甘い!

 

 脚に力を込める。ギアをもう一つ上げる。

 

 さ、行くよ。…ま、せっかくならカッコつけていこうか?

 

 

 ――やあやあやあ!

 

 

   遠からんものは音に聞け!

 

   近くば寄って目にも見よ!

 

   我は最強無敵のウマ娘!

 

   東海帝王也!

 

   豪傑どもよ!

 

   最強に比類するウマ娘達よ!

 

   この有馬の最終直線!

 

   いざ尋常に勝負、勝負!―――

 

 

『第三コーナーを周って先頭は変わらずミホノブルボン!

 しかしじわりじわりと伸びて来たマックイーンとエーピーインディが横並び!パーマーも粘るがダイタクヘリオスはペースダウンで後方に下がる!その後ろからライスシャワーも来ている。

 ここで大外にロングスパートをかけて来たトウカイテイオーが姿を見せた!!その後ろにナイスネイチャとレオダーバン!第三コーナー抜けて第四コーナーに入ったところでレッツゴーターキンとサンエイサンキューも位置を上げて来た!各馬動きが激しくなってきている!

 

 さあ第四コーナーを抜けて直線を向いた!

 

 直線向いての先頭はミホノブルボン!しかしすぐ後ろ、最内にメジロマックイーン!続けてメジロパーマー!レオダーバンも外に振って差し切り態勢だ、しかしナイスネイチャが伸びて来た!外に振ったリベンジを決められるかサンエイサンキュー!各馬ゴールに向けて突っ込んでくる!

 

 大外!大外から突っ込んできたトウカイテイオー!内からはメジロマックイーン!メジロパーマー!ブルボンはペースが上がらない!レオダーバンが伸びない!?ナイスネイチャとレガシーワールドが馬群を割って突っ込んでくる!

 

 各馬坂を駆けあがる!

 

 テイオーとマックイーンが並んだ!並んだ!

 

 並んだ!

 

 しかししかし、しかし!

 

 坂で突き放したトウカイテイオー!トウカイテイオー!!トウカイテイオー!今一着で、ゴールイン!

 

 強い!!!凱旋門賞馬はやはり強かった!この英傑揃う有馬記念でも堂々の競馬!大外から飛んできた素晴らしい競馬!堂々たる競馬でした!

 

 大逃げハイペースの競馬、ミホノブルボン、パーマーがよもやという展開でしたがやはり、やはりやはり強かったトウカイテイオー!

 

 そして古馬G1初勝利!見事!帝王の凱旋は暮の中山、有馬記念の最高の舞台!

 

 2着は惜しくもメジロマックイーン!しかし半馬身差の接戦であります。3着は最後の最後に伸びを見せたナイスネイチャ。2年連続有馬記念3着であります!

 

 惜しくも逃げに逃げたメジロパーマーは4着と大健闘!5着争いはミホノブルボンかライスシャワーかはたまたレガシーワールドかと言ったところか!そして、まさかまさか、今回限りで引退の一番人気、レオダーバンは着外!波乱の結果となりました有馬記念!

 

 しかし、しかし!誰も文句を言う者はいないでしょう!各馬、見事な競馬を見せてくれました!

 

 そして…勝ち時計は…なんと!?昨年のダイユウサクの2分30秒6を2秒近く縮めた2分28秒ジャストのレコードタイム!上がり3ハロンが31秒台に迫るかという驚異的なタイム!!これは…なんと!?芝2500メートルのワールドレコードを見事に更新している!!

 

 トウカイテイオー!帝王は、やはり、やはり強かった!』

 

 

 トウカイテイオーは、国内シニア級で初のセンターの栄誉を手に入れた。その正式タイムは2分28秒。上がり3ハロン31.9秒というまさに、規格外。2着のメジロマックイーンも2分28秒1というタイムであり、3着のナイスネイチャですらも2分29秒台のレコードタイム。史上最高の有マ記念は幕を閉じることとなった。

 

 そしてその夜。トウカイテイオー、メジロマックイーン、ナイスネイチャはウイニングライブの舞台に立っていた。降り注ぐ大歓声。色とりどりのライトに、一瞬目を細めるテイオーであったが、指を一本立て、右手を天に掲げた。

 

 何度も見た姿。何度も、見た姿である。しかし、その姿に観客は大歓声で答えた。そして。

 

『ボクがここまで来れたのも、みんなのお陰です。ありがとうございます』

 

 そう手短に言葉を伝えて、いざ曲が流れ始めた。

 

 有マ記念。それは、ただのレースではない。一年の総決算。その意味は、多くの意味を含む。

 

 今年は、トウカイテイオーの凱旋を、メジロマックイーンの復帰を、ナイスネイチャの健闘を祝う有マ記念となった。

 

 そして、同時に、この、競技の世界に希望を持って踏み入れようとしているウマ娘を歓迎し。

 

―すごい、テイオーさんはすごい!―

―マックイーンさんもすごい!―

―私たちも、いつかはここで、きっと走るんだ!―

 

 去るウマ娘達を、送るレースでもある。

 

―私だって走りたかった―

―怪我さえなければ、もっと―

―ああ、ターフも見納めか―

―ありがとう。私の青春―

 

 運。実力。縁。足りなかったウマ娘。そして、満足して去るウマ娘もいる。

 

 有マ記念は、そんな彼らを迎え、送る。歓送のレース。よくよく観客席を見てみれば、中央トレセンの制服ではない、そんなウマ娘の姿もある。付きそうトレーナーの姿もある。

 

『今日お送りする曲は、新曲です。聞いてください!』

 

 知ってか知らずか、トウカイテイオーの元気な声が暮の中山に響き渡る。そして、特徴的なファンファーレを意識したイントロが流れ始め…。

 

 『曲名は、ユメヲカケル!』

 

―キミと夢をかけるよ。何回だって、勝ち進め、勝利のその先へ!―

 

 全てのウマ娘。そして、人々の夢に、幸あらんことを。

 

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