ボク、ピーマンが好きなんだよね   作:灯火011

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皆様の人生にピーマンが光り輝きますように!


※炭火でじっくりピーマンを焼きましょう。
 そこに、生醤油をかけるのです。

 焼きおにぎりならぬ、炭火焼きピーマン。感想で頂いたレシピですが、めっちゃ美味しいのです。最近はやりのキャンプなどでぜひお試しいただければ幸いでございます。


ピーマン・イズ・ワンダフル

 トレセン学園。そこでは、G1級のウマ娘からデビュー前のウマ娘までが多数在籍し、日々切磋琢磨、お互いにお互いを高めている場所である。

 

「はああああああああ!」

「やあああああああああ!」

 

 そのメインの練習場では、2人のウマ娘の練習を多くの人々が見守っていた。

 

 一人はトウカイテイオー。世界を股にかけて活躍し、この冬からウインタードリームトロフィーで走る名ウマ娘だ。

 そして、もう一人はメジロマックイーン。天皇賞春秋制覇を成し遂げ、その後もほぼ2着3着に、しかもレコードタイムで並ぶ強者である。

 

 既にその練習も10本目。トレセン学園のターフを駆け抜ける彼女らに、トレーナーもウマ娘も見惚れるままである。

 

 先に仕掛けたのはトウカイテイオー。いざメジロマックイーンを引き離そうと足元が爆ぜ、姿勢が一気に前傾に、そして自慢の柔らかい関節を活かして一気に歩幅を広げた。

 負けじと反応したメジロマックイーンはと言えば、これまた姿勢を一気に前傾に、ただ、テイオーほど関節が柔らかくない彼女は歩幅を変えずに、歩数を稼ぐスタンスだ。

 

 お互いに一歩も譲らない。そして最終直線、一気に伸びを見せたトウカイテイオーがメジロマックイーンを下していた。

 

「ったあああああ!やっと勝ったあああああ!」

「あああああ!もう少しでしたのにー!」

 

 両者とも笑顔を浮かべて、ターフに大の字になる。すると、そこに飲み物をもって近づく影が一つ。

 

「お疲れ様だ、テイオー、マック。ほら、水分補給」

「ありがとう!トレーナー!」

「ありがとうございます。トレーナー」

 

 トレーナーから飲み物を受け取った2人は、それを勢いよく飲み干していた。

 

「っと、さーってと。これで賭けはボクの勝ちだねー」

「…ううう、せっかくのスイーツがぁ」

「なんだお前ら。またくだらない勝負でもやってたのか?」

 

 トレーナーがあきれ顔でそう言うと、メジロマックイーンは耳を伏せ、トレーナーを睨みつけていた。

 

「くだらない、とは失礼な!10回走って10回わたくしが勝てば!テイオーから羊羹を頂く予定だったのですよ!?」

「ですよと言われても。やっぱりくだらないじゃないか」

「わたくしにとっては重大な案件だったのです!」

 

「あははは!まぁ、マックイーン。それでもキミはボクに9回も勝ったんだし。今日の放課後、スイーツを奢ってあげるから、落ち着いて落ち着いて」

 

「スイーツ! 本当ですの!?」

「うん!それにドリームに向けていい練習にもなったしね!」

 

 そう言ってテイオーは快活に笑っていた。

 

「ドリームですか。ま、仕上がりは問題ないようですわね」

「うん。もっちろん。あと半年の間、もっともっと仕上げる予定だよ」

「ほーう。気合が入っているなテイオー。じゃ、ついでだ。2人に新しいメニューも渡しておくぞ」

「わ!ありがとうトレーナー!…ってこれ、基礎練習じゃん。いつもやってるよー?」

「よく見てみろ」

 

 ぶーたれるテイオーに、トレーナーはそう一言釘を刺す。まじまじとトレーニングメニューを見直したテイオーは、あっと何かに気づいたように声を漏らしていた。

 

「体幹が多くなってる?」

「そうだ。これからお前は以前ほど本番のレースで走ることが出来ない。となると、どうしても衰える部分も多くなるだろう。そんな時に頼りになるのはやっぱり体幹さ。バランスをとるにも、痛めにくい体になるためにも、より一層ここを強化していくぞ。ドリーム入りが近いマックイーンもな」

「かしこまりました」

「判ったよ、トレーナー!」

 

 

「彼方は順調か。トレーナー、上りタイムはどうだろうか」

「34秒。ただ、2500のタイムは2分31秒まで縮められている。冬までにはテイオーを超せるだろう」

「そうですか。…ただ、テイオーはきっと予想を超えてくると思います。目標タイムは2分28秒台としたいのですが」

 

 対して、トレセンのまた別コースでは、シンボリルドルフとそのトレーナーがストップウォッチと睨めっこをしながら、今後の方針を話し合っていた。

 

「…そう言うと思って作ってあるわ。強化メニューよ。体幹とトモを鍛えぬきながら、故障しないギリギリのラインを攻めているわ。だから約束して頂戴。少しでも違和感、痛みがあったら報告する事」

「承知しました」

「それと、痛みがない、違和感がない、もっと行けるという時も報告をしっかりと頼むわ。隠さないでね? 毎日、少しずつ調整するから。頼んだわよ。ルドルフ」

 

 トレーナーはそう言いながら、笑顔を浮かべていた。

 

「勿論です。ああ、冬が待ち遠しい」

「貴女はまず夏でしょう?リオナタールも仕上がっているという話も聞いているわよ?」

「ええ、聞き及んでいます。しかし、油断はしていませんよ。ここでリオナタールには勝てないウマ娘であれば、冬でテイオーに勝つなど夢のまた夢ですから」

 

 そう言ったルドルフの顔は、清々しい笑みが浮かんでいた。

 

「良い気合ね。…では、もう一本坂路追加よ。その後はストレッチ!しっかりこなせ!皇帝!」

「無論!はああああああ!」

 

 そして、ルドルフの練習を見る影が2つ。

 

「おー、やってるやってる。ルドルフも本気だねー」

「本当本当!いやー!久しぶりに学園に挨拶に来た甲斐があったよ。良いものが見れた見れた」

 

 そうやって高みの見物を決めこむのは、三冠ウマ娘のミスターシービー、そして、伝説の一人、トウショウボーイである。

 

「トウショウボーイ先輩はこの後どうするんですか?」

「ん?地元に戻って練習を再開しようかなー。あんな熱い走りを魅せられたらうずうずが止まらなくってさ。シービーは?またこっちで練習するー?」

 

 笑顔を浮かべているトウショウボーイ。それを見ながらも、ミスターシービーは飄々とこう答えていた。

 

「私はルドルフの練習に付き合おうかなー。あんだけ熱いルドルフ、見るの久しぶりだからさ」

「ん、判ったよ。じゃあ、ここでひとまずはお別れだね」

「はい」

「じゃあ、また。本番で」

「はい。また本番で会いましょう。熱いレース、期待してますから。諸先輩方にもよろしくお伝えください」

 

 シービーは真剣な眼差しで、トウショウボーイを見た。

 

「ん、判った判った。じゃ、シービー。まったねー」

 

 そう言って、踵を返してトレセン学園を後にするトウショウボーイ。それを見送ったシービーは、ギラギラと目を輝かせて、ルドルフを視界に捉えた。

 

「さって、じゃあ私も頑張りますか。トウカイテイオー。待っててね。末脚なら君に負けない自信があるからさ」

 

 

「ハアアアアアアアアアアアア!」

「ッハッハアアアアアアア!遅いぞイージーゴアー!」

「コナクソォガアアアア!」

「甘い、甘い!まだまだ甘いぞはっはああああああ!」

 

 亜米利加のとあるトレーニング施設で、叫びを上げながら競い合うウマ娘が2人。伝説のセクレタリアトと、イージーゴアその人である。イージーゴアの渾身のスパートを、軽くいなしたセクレタリアトは、その勢いのまま用意されていたゴールラインを勢いよく駆け抜けた。

 

「はい、ゴール!」

「っしゃああ!まだまだ若い奴には負けんぞ!」

「クッソ!冗談だろお前!ビッグレッド!お前!引退してしばらく経つだろうが!なんでこんなに速いんだよ!」

「ハッ!私が速い!?お前が遅いだけだろうが!」

 

 顔を突き合わせ、一触即発の雰囲気を醸し出す2人。だが、そこに手を叩きながら一人のウマ娘が割り込んだ。

 

「まぁまぁ。そこまでそこまで。えーと、2500メートルのタイム…うっへぇ!?セクレタリアトが2分28秒!?バケモン!?」

「よせやいよせやい。そんなに褒めちゃ照れるぜヒシマサル」

 

 割り込んだウマ娘、その名はヒシマサル。アメリカに渡った彼女は、そのままセクレタリアトのトレーナーとして彼女の脚を磨き上げていた。そして、その隣には。

 

「でもイージーゴアさんも半端ないですよ。2分31秒。日本のウマ娘のトップクラスに匹敵しますよこのタイム!」

 

 サンエイサンキューがヒシマサルと同じように、ストップウォッチをもってイージーゴアにそう話しかけていた。

 

「…嬉しいんだが、嬉しくねぇな。ま、ありがとな、サンエイサンキュー」

 

 照れるイージーゴア。そんな彼女を見て、セクレタリアトはにやりと笑う。

 

「お前も仕上がってきたなぁ!さーって、じゃあイージーゴア。軽くクールダウンに行くか。今日はここまでだ」

「了解だセクレタリアト。全く、現役の時以上に、これは良い鍛錬だよ」

「ははは!そりゃあ良かった」

 

 そう言って、コースを再び走り出す2人。その背中を見て、ヒシマサルとサンエイサンキューはため息を吐いていた。

 

「…すごいね、アメリカの伝説達」

「うん。本当にすごい。そういえば最新のテイオーのタイム、知ってる?」

「2500で2分30秒だっけ。それをセクレタリアトは軽く超えてみせた。すごいウマ娘だなぁ…」

「でもさ、テイオーもとんでもないウマ娘だよ。誰だって無理だって思った事を成し遂げたんだもん。私達、あの有マで見たじゃない」

「…うん。きっと、テイオーさんなら。トウカイテイオーならこのセクレタリアトを超えるかもしれない。熱いレースを見れるかもしれない」

 

 ああ、と2人は納得した。セクレタリアトほどのウマ娘が、トウカイテイオーの情報を知らないはずは無い。しかし、彼女は一切練習の手は抜かない。それは、きっと。

 

―トウカイテイオーならこのセクレタリアトの予想を超えてくれるだろう。いや、それどころか、私に並び立つウマ娘なのかもしれない。いや、いや、それどころか!私が追いかける目標なのかもしれない…!ああ!追いかけるというのは、これほどまでに!―

 

 にやりと、セクレタリアトは口角を上げていた。

 

 

 

「たづな!ドリームトロフィーの件は順調か!?」

「はい、理事長。つつがなく進んでいます」

 

「違う、そうではない!」

 

「…ああ!はい。そちらも問題なく進んでいます」

「そうかそうか!それなら問題あるまい!しかし、伝説が集まる中山レース場か!警備計画は抜かりなく行わねばな!」

「はい。そちらはURAの方とも詳細を詰めております。警備ウマ娘も今までの2倍以上を確保する予定です。あとは、いつメンバーを発表するか、なのですが…夏のドリームトロフィーが終了後に発表しようとURAから打診があったのですが、如何いたしましょうか?」

 

「承知した!それで問題なかろう!既に18人、フルゲートの人数は揃っている!混乱を避けるためにも早めの発表がいいと私も思う!」

 

「では、そのままで話を進めさせていただきますね」

「うむ!頼んだぞ!たづな!」

 

 

 さーて、今日も種付け終了!いやはや、実に慣れたものだ。うむ。というか、こう見ると本当にお馬さんと言うのは一頭一頭特徴が違う。

 

 同じ黒い毛かと思ったら、毛並みや体の形が違うし、微妙に色も違う。伝わって来るニュアンスも、かなり違う。

 

 ある馬が『良かったよ』ならば、ある馬は『最高うう!』だの、ある馬は『うえー』と千差万別だ。…流石にうえーとニュアンスを伝えられた時は凹んだが。

 

 ま、それは置いておこう!種付けが終われば、楽しい楽しい放牧である。ということで、さあロマンリバー!私について来なさいな!

 

『まって!まって!おかしい!』

 

 はっはっは、何が可笑しいものか!というか、そう言いつつ君もよく喰らいついてくるじゃないか!

 

『もう一周!』

『んなあああああ!』

 

 叫ぶニュアンスが伝わって来る。けれど、彼女はその脚を緩めはしない。いいぞ、その根性!キミはきっと中央競馬で良いレースをしそうだ!このトウカイテイオーが保証しようじゃあないか!

 

 せっかくなので走り方も目の前で変えてみよう。今はストライドを開いているが、これを狭くして、脚の回転を上げる!さあ、真似できるかなロマンリバー!

 

『なにそれ!なにそれ!』

『走ってる途中に変えると速くなる!』

『わかった!』

 

 そうニュアンスを伝えて来たロマンリバー。横目で見てみれば、そのストライドが狭まり、私の様に歩数を稼ぐ走り方にチャレンジしているようだった。 

 

 ふふふ。よしよし、仕込みは順調だ。というか、スポンジのように君は吸収していくなぁ。教える私としてもどんどん楽しくなってきた。さあて、今度は何を仕込もうか。実際、このロマンリバーがいつまでここに居るのかは判らない。でも、出来うる限りの教えは叩き込んでおきたい。

 

 というか、これ、本当に暮の中山でもいい勝負の出来るお馬さんに仕上がるのじゃないだろうか?ふふふ。夏を越えて、秋を越えて。そして史実を超えて。君が中山で走るその姿、楽しみにしているぞ!

 

 

 トウカイテイオーがロマンリバーにつきっきりで走り方を教えるようになってから数か月。

 

 栗東トレセンの電話が、鳴った。

 

『お世話になっております。お電話で申し訳ありません。私、ロマンリバーのオーナーをやらせて頂いております――と申します』

「これはこれはご丁寧に。私、調教師の――と申します。ええと、ご用件は、そちらのサラブレッドを栗東で預かって欲しいということでしたが…」

 

『はい!はい!そうなんです!ぜひ、ぜひそちらで走らせて頂けないかと!』

 

「落ち着いてください。栗東トレセンでは調教師も多く在籍しておりますが、なぜ私に?」

 

『それは、あのトウカイテイオーを育て上げた方だからです』

「はあ。ですが、だからといって、わざわざご連絡を頂くほどでは…」

『いえ、いえ!ご存じないのですか!?』

 

「はい?」

『そちらが育て上げたトウカイテイオー!そのトウカイテイオーが、私のロマンリバーに色々教えているのですよ!お陰様でタイムは伸びるわ、馬格は大きくなるわ、走り方をダートと芝で替えて走れるようになるわ、すごい馬ですよ!トウカイテイオー!』

 

「…詳しく、伺っても?」

『ええ!もちろん!もちろんですとも!なんなら走っている姿を収めたビデオテープをお送りしますよ!』

「判りました。いや、いいえ。私がそちらに向かわせて頂いてもよろしいでしょうか?一度、あなたの馬を見せていただきたい」

『もちろんです!いつでもお待ちしております!』

 

 ガチャリと受話器を置いた、調教師。その背中に、男が声を掛けてきていた。

 

「お?なんの電話だったんだ?」

「…いえ、あの、申し訳ないのですが、明日、宇都宮に行ってきます」

「宇都宮?いきなりなんだ?もしかして、テイオーに何かあったのか?」

 

 疑問を投げる男性。調教師の男性は、にやりと笑顔を浮かべて、こう答えた。

 

「それが、テイオーが別の馬に走り方を教えているらしいんです。しかもすでに、トウカイテイオーの走り方を真似し始めているのだとか」

「…ほう?」

「その馬を、ここで調教できないか、とオーナーからの連絡です」

 

 その言葉に、男の表情が変わった。

 

「明日、なんてことを言ってないで今すぐ、大至急、行ってこい。こちらは何とかしておく。必要なら明日だけでなく、数日間様子を見てもいい。見極めて来いよ」

「もちろんです。では、行ってきます」

 

 そして、調教師を送り出した男は、ある男に一本の電話を入れた。

 

「…あ、お世話になっております。お久しぶりです。実は屋根をお願いしたい馬が出来そうなのです。予定は相当先ですが…」

 

 

 ―後に関係者は語る。

 

 あの日が、間違いなくターニングポイントであったと。

 

「僕とこの馬を引き合わせてくれたトウカイテイオーには、感謝しかありません。次、ですか?そうですね。暮の中山。期待していただいて良いと思います」

 

 1996.10.20-秋華賞 勝利者インタビューにて

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