続くかは番外編なので正直不明です。
二足歩行、そしてサラブレッドの四つ足歩行。大往生の人生と馬生を謳歌した私であるが、神様とやらはまだ私で遊ぶつもりであるらしい。さて、とはいえ今回の生まれ変わりはどうやらまた毛色が違うモノであるようであった。
つまりそれは、物心ついたときには、ウマ娘であったということだ。
はたと自分の何かに気づいたときには、既に母親から離れ、トレセン学園で飯を食おうとしていた時のことだ。
「そういえばピーマン料理がメニューにないなぁ?ボク、ピーマンが好きなんだよね」
はて、なぜピーマン?そうやって首を傾げたときに、どうやら私は3度目の生を受けたらしいと気が付いた。ただ、それまでも、そして今現在も、一切合切ウマ娘としての生活に違和感など覚えていないあたり、もう私は完全にウマ娘である、と言って良いだろう。
幸いにして、記憶はどうやら引き継いでいるらしい。とはいえ今この瞬間、『ボク』と『私』がまじりあい、結構とんでもない事になっている。思考は非常にクリアである。だが、口から出る言葉は非常にヤカマシイ。
「うぇー!?ニンジンしかないじゃーん!?」
「テイオー?何を言っているのですか?」
隣にいる美少女、メジロマックイーンを横目にそうやって大声を上げてしまったあたり、相当なものだと我ながら思う。まぁ、ピーマン好きは前前前世からなので勘弁してほしい。とはいえニンジン料理しかないのは頂けない。緑のあんちくしょうが無ければなかなか落ち着かないのである。
「いやー…ニンジンばかりじゃあ飽きるなーって」
「…飽きる?ニンジンに?変なテイオーですわね」
怪訝な顔をするマックイーンを横目に、なんとかメニューの端っこにチンジャオロースの文字を見つけて、それを注文し事なきを得た。
「今日のテイオーは本当に奇妙ですわね?ピーマン、お嫌いでしたよね?」
「あー、えっとね?これからクラシックに挑むからね!ボクも少しずつ進化しようかなーって」
それっぽい事を言って誤魔化すものの、頭の中は結構な大混乱だ。
『ボク』はまだ皐月賞しか走っていない。これからどういうレースを走るのか。シンボリルドルフさんに並ぶ無敗の三冠ウマ娘になれるのか不安だ。いや、でも、なるんだという決意がある。
しかし、『私』はターフを十二分に走り切った。無敗の三冠サラブレッド。ダートも走り切った。凱旋門、BCクラシック、有馬記念を走り切った。
つまりどうやら、私は今世も『トウカイテイオー』になってしまったらしい。うーん、トウカイテイオーINトウカイテイオーということである。しかもどちらかというと、私は不純物的なトウカイテイオーだと我ながら思うのだ。で、記憶を辿るとこのウマ娘のトウカイテイオーは、どちらかというと史実よりであるらしかった。
私が『夢で見ていた私の戦績を辿るウマ娘のトウカイテイオー』とはまた違う存在の『本来の二冠、奇跡の名馬、ウマ娘トウカイテイオー』ということでもあるらしい。
…さて、さて。どうしたものか。『ボク』と『私』。ボクは三冠を獲りたかった。でも、私が獲った。しかも、どうやら『ボク』はこのままいくと無敗の二冠ウマ娘止まりであるらしい。『私』の知識がそう訴えて来る。『ボク、は、奇跡の名馬のトウカイテイオー』、『私、は、世界最強のサラブレッド』。頭の中がショートする。
「ねえマックイーン」
「どうされたのですか?」
何を言おうか。キミとボクは一度しか戦えないと言う?怪我に気を付けないと、と言う?いや、それはまた違う。私の様にピーマンを上げる?でも、相手はウマ娘だ。嫌いなピーマンを食べるだろうか?
「ピーマン食べない?」
「遠慮しておきます」
「えー?美味しいのになー」
ちぇー、などと口にしながらも頭は未だ混乱中である。…それにしても、我ながらおっさん臭い思考になったものだ。ボク?私?俺?んん?わかんなくなってきた。まぁいいか。大切なのはそこじゃあない。
「ねーマックイーン」
「…今日はどうされました?落ち着きがないようですが」
おっと、食事中にあまりにも話しかけたものでめっちゃ警戒されている感じ。ま、とはいえ聞くことは決まった。
「うん。実はちょっとね。ねーマックイーン。ボクがさぁ、無敗の三冠を目指さない、って言ったら驚いちゃう?」
「…………もう一度よろしいですか?」
「ボク、無敗の三冠を目指さないって言ったら…」
そこまで言った時だ。マックイーンが思わず机を叩いていた。
「テイオー!?あなた何を言って!?無敗の三冠を目指さない!?貴女の夢では!?ええっ!?正気ですの!?」
目は見開かれていて、マックイーンらしからぬ大声。あはは。マックイーンでもこういう顔するんだね。
「あはは、うん。正気正気。っていうか、マックイーンって驚くとそんな顔するんだねぇ」
「茶化さないでくださいまし!?え!?本気ですの!?何があったのですかテイオー!」
何、私とボクが混じったトウカイテイオーになっただけ。だったらさ。無敗の三冠、なんて目指すわけがないじゃん?
「んー、ちょっと考えてたんだけどさ」
「何をですの!?」
マックイーンは完全に箸をおいちゃって、ボクに食って掛かる勢いだ。うん、でも、私はこのぐらいじゃあ怯まない。堂々と、満面の笑みを湛えてボクは彼女にこう伝えたんだ。
「無敗で日本の菊の花を受け取るよりもさ、もっと上を目指そうかと」
「もっと上…ですか…?……………まさか!?テイオー貴女!」
ボクの言葉を正確に受け取った彼女の顔といったら。すごく、面白い顔をしていたよ。あっけにとられる彼女を尻目に、ボクはこう、付け加えたんだ。
「―花の都で、
トウカイテイオーinピーマン【ただのチート野郎】
馬場/芝A、ダA
距離/短距離A、マイルA、中距離S、長距離E(※有マ記念のみS)
脚質/逃げA、先行A、差しA、追い込みS
レースセンス◎、頑丈◎、海外◎、重馬場◎
スキル:究極無敵のテイオーステップ
→最終コーナーを抜けると爆発的に加速する。ラスト1ハロンで体力が残っている場合、更に速度が上がる。
史実のトウカイテイオーの弱い部分を綺麗にピーマンが補完してしまった化け物。また、ピーマン氏が弱かった部分もテイオー氏が補完した形。ただし長距離は苦手になったので天皇賞【春】は天敵。有馬記念のみ例外である。
なお、転生特典は全て失っているが、ピーマンを食べると絶好調を維持できるのは筋金入りのピーマン好きだからである。ピーマン好きだから、である!