ボク、ピーマンが好きなんだよね   作:灯火011

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総てが焼きピーマン。炭火でじっくり。


①ピーマンを半分に切ります。種とヘタはそのままです。

②魚焼きグリル、ないし網に乗っけて直火にかけます。炭火が起こせれば炭火が良いです。

③少し焦げるぐらいまで焼きます。

④塩、もしくは醤油、ないしソースなどをかけて食います。そのままでもOK。

シンプルにピーマンを楽しめます。




【番外編】テイオーINピーマンのお話―③

「カイッチョー!」

 

 元気よく声を張り、生徒会室の扉を勢いよく開け放つ。いつものボクのスタイルだ。

 

「…トウカイテイオーか。全く、いつもいつもノックをしろと言っているだろうが、たわけ」

「ごめーんエアグルーヴ。でも、カイチョーに大切な話があってさぁ!」

 

 ボクはそう言って、しかめっつらのエアグルーヴを尻目に、カイチョーに視線を向けた。すると、そこには笑顔を浮かべたカイチョーが、生徒会室の椅子に座っていた。

 

「私に大切な話?なんだい、テイオー。ああ、人払いは大丈夫か?」

「大丈夫だよ、みんなも後で知る事だしさ」

 

 ボクがそういうと、少しだけ生徒会室の空気が変わっていた。

 

「…ん?」

 

 カイチョーは首を傾げ。

 

「ほう?」

 

 今まで沈黙を守っていたナリタブライアンもこちらに顔を向け。

 

「トウカイテイオー貴様、何を言う気だ?」

 

 エアグルーヴに至っては怪訝な視線を此方に向けていた。

 

「ふふふ。ちょっとねー」

 

 軽く笑みを浮かべながら、軽い足取りでカイチョーの机の前に立った。そして、満面の笑みを浮かべ。

 

「ボク、カイチョーには並ばない。無敗の三冠ウマ娘にはならない」

 

 そう告げた。

 

「…テイオー?すまない。もう一度、いいかな?」

「うん。何度でも」

 

 カイチョーは困惑しているようだ。ちらりと視線を回してみれば、エアグルーヴとブライアンも目が点になっている。うん。やっぱりこのセリフを言うとみんなこうなるよねぇ? だって、ボクの夢だったんだからさ。でも、戸惑わない。今のボクは何度でも言える。

 

「ボク、カイチョーには並ばない。無敗の三冠ウマ娘にはならないからさ」

 

 ボクの言葉を正確に理解したのか、シンボリルドルフがため息を吐いて、こう言葉を続けた。

 

「すまない、ブライアン、エアグルーヴ。少々席を外してくれないだろうか」

「かしこまりました、会長」

「…おう。納得するまで話せよ、皇帝」

「ありがとう」

 

 そうやってブライアンとエアグルーヴは生徒会室を後にして、ドアを閉めた。会長の顔を見る。うん、すっごい怖い顔!さて、じゃあ、ここからはボクと会長の差の勝負といこうか!

 

 それにね。ボクは知ってるよ。会長。キミが、凱旋門にかける想いの大きさってやつをさ。

 

 

 トウカイテイオーとシンボリルドルフ。その2人は、誰も居なくなった生徒会室で、ソファーに座り向かい合っていた。

 

「…さて、テイオー。今の言葉、その真意を問いたい」

「その言葉のままだよ。カイチョーには並ばない。無敗の三冠ウマ娘も目指さない」

 

 シンボリルドルフの言葉に、何もブレずに同じ答えを返すトウカイテイオー。そこで初めて、シンボリルドルフはその言葉が本気である、と気づいたようだ。頭に手を当てて、ようやく言葉を紡いでいた。

 

「…テイオー。何があった?実はな、君の走りをここから見ていたんだ。そこで気づいたんだ。君は、昨日までの君じゃあない。まるで別人のようだ、とね」

 

 勘が良い。そう、トウカイテイオーは思っていた。何せ、私とボクが混じり合った存在になったのは、まさに今日である。ただ、そんなことは正直に話しても仕方が無いという事は良く判っている。四つ足の馬の話なんて、通用するわけもない。

 

「別人。確かにそうかもね」

 

 トウカイテイオーは目を瞑った。そしてしばしの沈黙が、2人を覆う。だが、その沈黙を破ったのはルドルフの方であった。

 

「言い方を変えよう。トウカイテイオー」

 

 ルドルフは、テイオーの目を見る。そして、その真意を問うた。

 

「…君は、何を目指している?」

 

 テイオーはと言えば、この部屋に入ってきてから一貫、笑顔を浮かべたままである。と、そのテイオーがようやく表情を変え、指を一本立てた。

 

「カイチョーってさ。どこを目指していたの?」

 

 疑問。その顔には、そんな表情が浮かんでいた。

 

「…んん?」

「だって、カイチョ―ってアメリカにも遠征したんでしょ?」

「…ああ。あぁ、懐かしい思い出だ。…私は芝の王者を目指していたよ。尤も、怪我で道半ばで終わってしまったがね」

 

 そう言いながらなるほど、とルドルフは納得していた。私の夢。それを聞くということは。そして、私に並ばないという事は。

 

「ボクはさ。三冠目に、その夢の門を叩きに行こうかと思っているんだ」

 

 そら、来た。ルドルフはそう思うと同時に、思わず感嘆の声を漏らしていた。

 

「…ほう、なるほど、それで、無敗の三冠ウマ娘を目指さないと言ったのか」

 

 凱旋門を目指すということは私を超えるということに他ならない。なるほど、とルドルフは納得していた。そこを目指すのであれば、私には並ばないと言えるだろう。だが、何かが引っ掛かった。それであれば、わざわざ彼女は私にこんな伝え方をしてくるだろうか。と。

 

「うん。でも、それだけじゃないんだ」

「それだけじゃ、ない?」

 

 何だ?とルドルフは疑問を浮かべていた。それだけじゃない。凱旋門を叩いて、その後、一体何を?その答えは、次のテイオーの言葉で解決することとなる。

 

「それでね。その冠を携えて。―暮の中山。芝、2500。最高の条件で、最強のウマ娘と競い合いたい」

「…なるほど、なるほど。つまり君はこう言いたいわけか。君が凱旋門を勝ち、その君と私が、暮の中山で競い合う、と?」

 

 ルドルフの言葉が見事、答えだったのだろう。トウカイテイオーの顔が、歓喜に染まる。

 

「そーいうこと。カイチョーに並ぶ、じゃなくて、カイチョーを超えたいなぁって」

「なるほど、なるほど。だが、それは並大抵のことではないぞ?それに、私は今の所暮の中山を走る予定はない」

 

 ルドルフは冷静に言葉を返していた。言葉は嬉しい。しかし、それは現実的ではないという自らの考えがあるからだ。

 

「えー!?カイチョー!ボクの言う事信じてないのー!?」

 

 テイオーはブーたれる。だが、それでもルドルフはその態度を変えることはない。視線を下げ、指で机を軽く叩きつつ、彼女はテイオーにこう告げた。

 

「いや、そう言うわけでは無いよ。でも、君の言っていることは現実的じゃあない。確かに今日の走りを見る限りはよもや、と思う所もある。だが、海外の壁が厚い事も事実だ。今の君では、まだまだだと言わざるを得ない」

 

 ルドルフはそう言ってから、テイオーの顔を見た。すると、先ほどまでの嬉々とした笑顔は全て消え失せ、そこに居たのは、自信満々の微笑みを浮かべたテイオーであった。

 

「じゃあ。ボク、証明するよ」

「何をだい?」

 

 ルドルフも微笑みを浮かべる。

 

「ボクの実力。カイチョーが挑めなかった凱旋門を勝つって言う、その証明」

「…ほう?」

 

 テイオーは少しだけ目を閉じた。一呼吸おくと、ルドルフにこう、告げた。

 

「ボク、今度のダービーでラスト1ハロンまでは追い込みをかけない。最後の200メートル。そこから追い込んで、ぶっちぎって勝ってみせるからさ」

 

 そして、微笑みを消すと、ルドルフの目を真っすぐに見て、こう言った。

 

「そうしたら、会長も本気になってくれるよね?」

 

 テイオーの視線。それに気おされたわけでは無い。どちらかというと、不快感が勝った。ルドルフは、少しだけ怒気を込め、言葉を返していた。

 

「…それは、キミ、何を言っているのか判っているのか?」

「うん。残り1ハロン。全部、そこで捲るから。証明するよ。絶対を」

「判っていない。キミは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()鹿()()()()()()に等しいんだぞ?」

 

 ルドルフの言葉は、その心のそのままだ。馬鹿にしているのか、と。他のウマ娘の力を下に見ているのか、と。だが、テイオーもブレることは無い。

 

「判ってないのは会長だよ。ボクは、―いや、私は()()()()()()()

 

 テイオーの物言いに、ルドルフは顔を顰めていた。だが、そんな彼女を尻目に、テイオーは更に言葉を続けていた。

 

「ボクは抜きんでていなきゃいけないんだ。ボクは、絶対に。()()()()()()()()。宣言しておくよ。ボクはキミの目の前に、2つの冠を持ってくる。一つは花の都の花束を。そして、一つは夢の大地の頂を。両方とも『キミ』が持ってこれなかったものを、だ」

 

 テイオーはそう言いながら、ルドルフの前に2本の指を立てていた。その意味するところは、一つは凱旋門、そして、もう一つはBCクラシックである。それを正確に受け取ったルドルフは、驚きのあまり目を見開いていた。

 

 そして、こうも思う。

 

―やはり、テイオーは、テイオーでは無くなった。だが、()()()()()()。さて、テイオー。君はその持ってきた冠を、どう使う?―

 

 そして続く言葉は、ルドルフの予想通りの言葉であった。

 

「それを懸けて今年の年末。本気でやり合おう。暮の中山で、ボクは待っている」

 

 テイオーの言葉を受けて、ルドルフは深く、更に深くソファーに座り込み、腕を組んで目を瞑った。シン、とする部屋。それから1分、5分、10分と無言のまま両者は静かに向き合っていた。そして、その沈黙が30分は続いたころである。ルドルフが目を開け、静かに、こう語り掛けた。

 

「2つの冠、か。魅力的だな。…ならば、まず、日本ダービーで絶対を証明してみせろ。トウカイテイオー。何者をも寄せ付けない。そんな強さを、だ」

 

「もちろん。だから、しっかりその目に焼き付けていてね?世界最強のウマ娘の船出の時を、さ」

 

 間髪入れずにテイオーが手を差し出し、それにルドルフが答える。固く握られた手が、そこには在った。

 

 

 そしてダービー当日。ルドルフの目の前で、1つの約束が果たされた。

 

『さあ最終コーナー!注目のトウカイテイオーは未だ最後尾!いつ出て来るのか!』

 

―残り1ハロン。全部、そこで捲るから。証明するよ。絶対を―

 

『残り1ハロン!先頭は…えっ!大外からすごい勢いでウマ娘が伸びて来た!?誰だ!?あの勝負服は………トウカイテイオーだ!ここで!?なんと、なんという末脚だ!先頭に並ばない並ばない!先頭がトウカイテイオーに変わる!?変わった!残り10メートル!更に5バ身突き放して今、トウカイテイオーが先頭でゴールイン!!!!なんというウマ娘だ!なんというウマ娘だ!最後、わずか1ハロン、200メートルですべてをひっくり返したトウカイテイオー!見事、見事無敗の二冠達成!シンボリルドルフに並ぶ三冠まで、あと一つまでやってきましたトウカイテイオー!』

 

 狂気、そして歓喜。会場はテイオーコールが巻き起こる。

 

 だが、それを尻目にテイオーの表情は冷静であった。そして、その視線はと言えば、ただの一人のウマ娘に向けられていた。

 

『皇帝、証明したぞ』

 

 その目は、そう彼女に訴えていた。ならば皇帝はどうする。絶対と謳われた皇帝は―

 

『…ならば2つの冠を獲ってこい。そして見事、私に献上してみせろ』

 

 視線がぶつかる。皇帝と帝王。2人の戦いは、真なる戦いは今、始まったばかりだ。


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