ボク、ピーマンが好きなんだよね   作:灯火011

72 / 74
ピーマンイズワンダフル。


【番外編】テイオーINピーマンのお話―④

 

トウカイテイオー、圧倒的実力差で日本ダービーを勝利するも無敗の三冠目指さず!

トウカイテイオー、皇帝超えを宣言!三冠目は、凱旋門!

ターフもダートも私の庭!?大胆不敵!凱旋門、BCクラシック制覇宣言!

注目!皇帝シンボリルドルフ、再始動!

暮の中山、皇帝VS帝王の予感!?

菊花賞の勝者予想!トウカイテイオー不在の中、クラシックの王者は誰になるのか!

 

 新聞や雑誌、広告を見ればそんな見出しばかりが溢れていた。遡れば一か月前。トウカイテイオーの二冠達成後のインタビューが原因である。

 

「おめでとうございます。トウカイテイオーさん!無敗の三冠、あのシンボリルドルフさんに並ぶ偉業まであと一歩ですね!」

 

 そう記者が笑顔で問うた時、トウカイテイオーは首を横に振った。

 

「ありがとうございます。ただ、申し訳ありません。私、無敗の三冠は目指さない予定なのです」

「え!?それはどういう!?」

「あはは、実は秘密にしていたのですが。―フランスに飛ぼうかと

 

 記者たちがざわついた。フランス。その言葉の意味するものは、一つしかないのだから。

 

「トウカイテイオーさん、まさか!?」

「はい。改めて宣言させて頂きます。私は、三冠目を凱旋門賞、四冠目をブリーダーズカップクラシック、そして五冠目を日本の有()記念で飾りたいと思っています」

 

 凱旋門。その言葉に、記者たちの筆が走る。そして、狂気が支配した。

 

「それは!?本気ですか!?日本のウマ娘で誰も達したことのない頂ですよ!?しかも凱旋門だけじゃなく、BCクラシック!?ターフではなく、ダート!?」

「はい。私は最強のウマ娘を目指します。ターフも、ダートも。私の庭ですから」

 

 そう宣言したトウカイテイオーの目は、自信に満ち満ちていた。

 

 さらにその会見の数日後。

 

「お集まり頂き感謝いたします。さて、私シンボリルドルフ。今年の暮れの中山、有マ記念に出走することをここに宣言いたします」

 

 URAの会見ブースには、皇帝シンボリルドルフの姿があった。そして。

 

「おお…!?と、いうことは、あの凱旋門、BCクラシックを制覇宣言をしたトウカイテイオーと走ると言うことになりますが…!?」

「間違いありません。私はトウカイテイオーと競い合うために走ります。まず、その前哨戦として天皇賞秋を、目指します」

 

 宣戦布告。そう言っても良い宣言に、記者たちは興奮のるつぼと化した。

 

 

 練習の合間に、シャクッとピーマンを齧る。うん、実に生のピーマンという奴はボク好みだ。

 

「テイオー、あんた化け物?」

「ひっどいなぁネイチャったら。普通のウマ娘だよ?」

 

 ボクはピーマンをシャクシャクやりながら、そう言ってナイスネイチャに視線を向けた。そこに居たのは、ボクに坂路を付き合わされて、汗だくになっているナイスネイチャであった。…というか、夢の馬娘でもみていたが、ナイスネイチャってかなり私の好みのビジュアルである。しかもこのちょっと偏屈な感じもまたドストライク。って違う違う。

 あー、ただ、馬の時はナイスネイチャと親戚だったんだよねぇ。なんだろう。すごい親近感あるなぁ。

 

「普通のウマ娘が坂路を6本も走って息切れしてないってどーいうことよ!おかしいでしょう!私結構限界だよ!?」

 

 ボクがとりとめもなく、くだらない事を考えていたら思いっきり文句を言われてしまった。おかしい。君も私と一緒に坂路やってた…ってそれはサラブレッドの時の記憶じゃん。混じってるなぁ。とりあえずはとぼけておこう。

 

「そうだっけ?」

「そうなの!」

「でもさー。ナイスネイチャも滅茶苦茶やるじゃん。息絶え絶えだけど、ボクについてくるなんてさ?」

 

 そう。ナイスネイチャの根性、実はかなりすごい。息を切らしながらも、汗を吹き出しながらも、ボクについてきているのだから。

 

「…そりゃあ、ダービーであんだけ離されたらね。私にだって意地があるじゃん?」

「ん?何かいったー?」

「なんでもー。でも、なんで併走相手が私なの?テイオーだったら、凱旋門目指すって宣言してるんだし、あの会長さんとかが付き合ってくれそうじゃない?」

「…あー。いや、それが」

 

 ボクはナイスネイチャに、会長とのやり取りを話していた。つまりは、宣戦布告したんだ、と。

 

「ってことで、宣戦布告しちゃった相手に併走は頼めないかなぁって。それにさ」

 

 ボクはナイスネイチャを見る。そして、笑顔でこう、彼女に告げた。

 

「ナイスネイチャだったらボクと肩を並べられるもん」

「なにそれ。―ずっるいなぁ…」

「ん?何かいったー?さっきから変だよネイチャー」

「あ、んんっ!何でもないって!でも、そういう事ならネイチャさんも頑張っちゃおうかな。さ!テイオー、もう一本行こうか!」

「うぇっ!?ネイチャもう限界だったんじゃ!?」

「気のせい気のせい!さ、まだまだ行くよ!」

 

 そして、その後にミホノブルボン、リオナタールも交えて坂路とプールの練習を繰り返す日々が続いていった。なお、今回の彼女らとの交流で、ピーマン同志を作れなかったことをここに記しておこうと思う。

 

 ピーマン、美味しいのになぁ。

 

 

 そして至る10月。フランス、Longchamp。そこで人々は刮目した。

 

 絶対的王者。否―。帝王の誕生を。

 

『フォルスストレートを抜けて各ウマ娘がラストスパートに入りました!残り500メートル!栄光を手にするのは一体どのウマ娘なのか!注目のトウカイテイオー…!?なっ!?大外からとんでもない加速をかけてきたのはトウカイテイオー!?先頭を追い抜いて一気に先頭に立った!だがまだゴールまで距離があるぞ!?掛かってしまったのか!?後続も必死に追いすがる!スワーヴダンサーがトウカイテイオーの影を捉え…捉えられない!?さらに加速した!?なんというウマ娘、なんというウマ娘だ!

 

 突き放した突き放したトウカイテイオー!残り200メートル!一人旅!後ろからは何も来ない!後ろからは何も来ない!後ろからは何も、何も来ない!その距離、10バ身以上!

 

 トウカイテイオー!トウカイテイオー!トウカイテイオー!今、一着でロンシャンの地を駆け抜けたー!』

 

『…信じられない物を見てしまいました。あ、いや。ここは世界最強が集う場所なのです。そこで、そこでこんな…』

『ええ、本当にそう思います。おーっと! ここで、ここで! トウカイテイオーが3本指を掲げてみせた! シンボリルドルフ超えと言わんばかりに、掲げてみせた! 無敗の三冠目は、見事! 凱旋門の栄光で飾ったぞトウカイテイオー!』

 

 

『さあやってきました菊花賞。注目はトウカイテイオー不在の中、誰がセンターの栄誉を手にするのか!!

 

 一番人気はダービーで2着に入ったリオナタール!

 

 二番人気は小倉記念、京都新聞杯と重賞を勝ち進んでいるナイスネイチャ!

 

 さあ、各バゲートイン完了!クラシック最終戦、最もつよいウマ娘が勝つと言われる菊花賞!今!スタートです!』

 

 テイオーが走っていたら、なんて声もあった。でも、そんなことは言わせない。だって、私の方が、私達の方が。

 

 テイオーより上なんだから!

 

『第三コーナー周って最初に飛び出して来たのはなんとナイスネイチャ!ぴったりと張り付くようにリオナタールが外目を突いてやってきている!なんと、なんと最終直線は完全にこの二人の叩き合いだ!さあナイスネイチャ!リオナタール!どちらが菊の栄冠を手にすることが出来るのかー!』

 

 だから首を洗って待っていろ。帝王。暮の中山であんたの首を獲ってやる。

 

 

『さあシンボリルドルフの復帰戦となったのはなんとG1、天皇賞秋!2000メートルの栄光の先に何が待っているのでしょうか!注目のカードはやはりメジロマックイーン!一番人気!春秋制覇なるか!しかし、皇帝シンボリルドルフが走るこの天皇賞、容易ではないと言えるでしょう!皇帝は二番人気に付けております。さあ各バゲートイン完了。

 復帰のシンボリルドルフか、それとも、制覇を目指すメジロマックイーンか!それとも、また別のウマ娘が栄光を掴むのでしょうか!天皇賞秋、今、スタートです!』

 

―悪いな、メジロマックイーン。私はこの刹那の時我が儘にならせて貰うぞ

 

『最終コーナーを周って早くもメジロマックイーンが来た!しかし、その外から被せるように皇帝もやってきている!そして最後の坂を駆け上って2人のマッチレースとなりました!残り3ハロンを切りまして完全に横一線、さあどちらが勝ってもおかしくはない!

 さあ追い比べだ!内メジロマックイーン!外シンボリルドルフ!お互いに譲らないままラスト1ハロン!だがここでメジロマックイーンが後退した!ゴールまで後わずか!シンボリルドルフ先頭だ!シンボリルドルフ先頭!突き放した突き放した!シンボリルドルフ先頭でゴールイン!』

 

『いやぁ!久しぶりの皇帝の走り!流石と言わざるを得ないでしょう!メジロマックイーンも非常に惜しかったですが、やはり、地力では皇帝が一枚上手だったようですね』

 

『ええ。そして、シンボリルドルフとメジロマックイーンがお互いに握手をしております。讃え合っているようです。そして!?おっと!ここで皇帝が一本指を立てた!これは、あのトウカイテイオーの三本指に対する答えでしょうか!?』

 

 さあ、トウカイテイオー。見ているか?こちらの準備は万全だ。凱旋門は見届けた。―あとは砂塵の頂を持ってこい。私は()()の座で待っている。

 

 

『さあやってまいりました、ブリーダーズカップクラシック。アメリカの大地に立ったトウカイテイオー。ここまで無敗でありますが、初のダート戦。どこまでやれるか非常に注目のレースです』

『芝では絶対的な強さを誇りますが、ダートは果たしてどうなのでしょう、という声もありますね。しかし、同時にもしかして、と思わせてくれるウマ娘でもあります』

『ええ、本当にそう思います。大胆不敵な三冠を目指さないという宣言。かなりのバッシングもありましたが、蓋を開けてみれば実力で批判をすべてねじ伏せ、世界の頂点に立ってみせてくれました。今となっては日本の英雄とも言えるでしょう』

『英雄。いい言葉ですね。そしてテイオー不在の菊花賞もコースレコード、天皇賞秋もシンボリルドルフが制覇と、国内のレースも盛り上がっておりますからね。もし、今回このBCクラシックでトウカイテイオーが勝利した場合、年末の有マ記念は過去類を見ない盛り上がりになる事でしょう』

 

『さあ、最後、トウカイテイオーがゲートに収まりまして各バ態勢完了。ブリーダーズカップクラシック、スタートしました!トウカイテイオーは最後尾につく形ですがおっと、これはマークが辛そうだぞ』

 

―然れど、この脚に不可能は無し

 

『さあトウカイテイオーは厳しいレース展開。完全に囲まれています。最終コーナーを抜けたがまだマークが続いている!だが、その間に先頭集団はラストスパート!これは厳しいか!?いや!?バ群のわずかな隙間をこじ開けた!?トウカイテイオーが遂にラストスパート!ラチ沿いをとんでもない勢いで加速していく!1人抜いた!2人抜いた!先頭集団に並ばない!速度が違う!パワーが違う!あっという間に先頭だトウカイテイオー!後続も必死に追いすがるが!

 トウカイテイオー!ここに!圧倒的ウマ娘の王者が誕生ーッッ!』

 

 歓声を受けながら、4本目の指を掲げるトウカイテイオー。その顔に笑顔はない。只、挑む者の顔があるのみだ。

 

―さあ、2つの冠は手に入れた。あとは、シンボリルドルフと競うだけだ(親父の夢を叶えてやるだけだ)

 

 ボク。私。判ってるよ。だってボクは、夢を駆ける馬なんだから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。