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『トウカイテイオー、圧倒的実力差で日本ダービーを勝利するも無敗の三冠目指さず!』
『トウカイテイオー、皇帝超えを宣言!三冠目は、凱旋門!』
『ターフもダートも私の庭!?大胆不敵!凱旋門、BCクラシック制覇宣言!』
『注目!皇帝シンボリルドルフ、再始動!』
『暮の中山、皇帝VS帝王の予感!?』
『菊花賞の勝者予想!トウカイテイオー不在の中、クラシックの王者は誰になるのか!』
新聞や雑誌、広告を見ればそんな見出しばかりが溢れていた。遡れば一か月前。トウカイテイオーの二冠達成後のインタビューが原因である。
「おめでとうございます。トウカイテイオーさん!無敗の三冠、あのシンボリルドルフさんに並ぶ偉業まであと一歩ですね!」
そう記者が笑顔で問うた時、トウカイテイオーは首を横に振った。
「ありがとうございます。ただ、申し訳ありません。私、無敗の三冠は目指さない予定なのです」
「え!?それはどういう!?」
「あはは、実は秘密にしていたのですが。―フランスに飛ぼうかと」
記者たちがざわついた。フランス。その言葉の意味するものは、一つしかないのだから。
「トウカイテイオーさん、まさか!?」
「はい。改めて宣言させて頂きます。私は、三冠目を凱旋門賞、四冠目をブリーダーズカップクラシック、そして五冠目を日本の有
凱旋門。その言葉に、記者たちの筆が走る。そして、狂気が支配した。
「それは!?本気ですか!?日本のウマ娘で誰も達したことのない頂ですよ!?しかも凱旋門だけじゃなく、BCクラシック!?ターフではなく、ダート!?」
「はい。私は最強のウマ娘を目指します。ターフも、ダートも。私の庭ですから」
そう宣言したトウカイテイオーの目は、自信に満ち満ちていた。
さらにその会見の数日後。
「お集まり頂き感謝いたします。さて、私シンボリルドルフ。今年の暮れの中山、有マ記念に出走することをここに宣言いたします」
URAの会見ブースには、皇帝シンボリルドルフの姿があった。そして。
「おお…!?と、いうことは、あの凱旋門、BCクラシックを制覇宣言をしたトウカイテイオーと走ると言うことになりますが…!?」
「間違いありません。私はトウカイテイオーと競い合うために走ります。まず、その前哨戦として天皇賞秋を、目指します」
宣戦布告。そう言っても良い宣言に、記者たちは興奮のるつぼと化した。
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練習の合間に、シャクッとピーマンを齧る。うん、実に生のピーマンという奴はボク好みだ。
「テイオー、あんた化け物?」
「ひっどいなぁネイチャったら。普通のウマ娘だよ?」
ボクはピーマンをシャクシャクやりながら、そう言ってナイスネイチャに視線を向けた。そこに居たのは、ボクに坂路を付き合わされて、汗だくになっているナイスネイチャであった。…というか、夢の馬娘でもみていたが、ナイスネイチャってかなり私の好みのビジュアルである。しかもこのちょっと偏屈な感じもまたドストライク。って違う違う。
あー、ただ、馬の時はナイスネイチャと親戚だったんだよねぇ。なんだろう。すごい親近感あるなぁ。
「普通のウマ娘が坂路を6本も走って息切れしてないってどーいうことよ!おかしいでしょう!私結構限界だよ!?」
ボクがとりとめもなく、くだらない事を考えていたら思いっきり文句を言われてしまった。おかしい。君も私と一緒に坂路やってた…ってそれはサラブレッドの時の記憶じゃん。混じってるなぁ。とりあえずはとぼけておこう。
「そうだっけ?」
「そうなの!」
「でもさー。ナイスネイチャも滅茶苦茶やるじゃん。息絶え絶えだけど、ボクについてくるなんてさ?」
そう。ナイスネイチャの根性、実はかなりすごい。息を切らしながらも、汗を吹き出しながらも、ボクについてきているのだから。
「…そりゃあ、ダービーであんだけ離されたらね。私にだって意地があるじゃん?」
「ん?何かいったー?」
「なんでもー。でも、なんで併走相手が私なの?テイオーだったら、凱旋門目指すって宣言してるんだし、あの会長さんとかが付き合ってくれそうじゃない?」
「…あー。いや、それが」
ボクはナイスネイチャに、会長とのやり取りを話していた。つまりは、宣戦布告したんだ、と。
「ってことで、宣戦布告しちゃった相手に併走は頼めないかなぁって。それにさ」
ボクはナイスネイチャを見る。そして、笑顔でこう、彼女に告げた。
「ナイスネイチャだったらボクと肩を並べられるもん」
「なにそれ。―ずっるいなぁ…」
「ん?何かいったー?さっきから変だよネイチャー」
「あ、んんっ!何でもないって!でも、そういう事ならネイチャさんも頑張っちゃおうかな。さ!テイオー、もう一本行こうか!」
「うぇっ!?ネイチャもう限界だったんじゃ!?」
「気のせい気のせい!さ、まだまだ行くよ!」
そして、その後にミホノブルボン、リオナタールも交えて坂路とプールの練習を繰り返す日々が続いていった。なお、今回の彼女らとの交流で、ピーマン同志を作れなかったことをここに記しておこうと思う。
ピーマン、美味しいのになぁ。
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そして至る10月。フランス、Longchamp。そこで人々は刮目した。
絶対的王者。否―。帝王の誕生を。
『フォルスストレートを抜けて各ウマ娘がラストスパートに入りました!残り500メートル!栄光を手にするのは一体どのウマ娘なのか!注目のトウカイテイオー…!?なっ!?大外からとんでもない加速をかけてきたのはトウカイテイオー!?先頭を追い抜いて一気に先頭に立った!だがまだゴールまで距離があるぞ!?掛かってしまったのか!?後続も必死に追いすがる!スワーヴダンサーがトウカイテイオーの影を捉え…捉えられない!?さらに加速した!?なんというウマ娘、なんというウマ娘だ!
突き放した突き放したトウカイテイオー!残り200メートル!一人旅!後ろからは何も来ない!後ろからは何も来ない!後ろからは何も、何も来ない!その距離、10バ身以上!
トウカイテイオー!トウカイテイオー!トウカイテイオー!今、一着でロンシャンの地を駆け抜けたー!』
『…信じられない物を見てしまいました。あ、いや。ここは世界最強が集う場所なのです。そこで、そこでこんな…』
『ええ、本当にそう思います。おーっと! ここで、ここで! トウカイテイオーが3本指を掲げてみせた! シンボリルドルフ超えと言わんばかりに、掲げてみせた! 無敗の三冠目は、見事! 凱旋門の栄光で飾ったぞトウカイテイオー!』
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『さあやってきました菊花賞。注目はトウカイテイオー不在の中、誰がセンターの栄誉を手にするのか!!
一番人気はダービーで2着に入ったリオナタール!
二番人気は小倉記念、京都新聞杯と重賞を勝ち進んでいるナイスネイチャ!
さあ、各バゲートイン完了!クラシック最終戦、最もつよいウマ娘が勝つと言われる菊花賞!今!スタートです!』
テイオーが走っていたら、なんて声もあった。でも、そんなことは言わせない。だって、私の方が、私達の方が。
テイオーより上なんだから!
『第三コーナー周って最初に飛び出して来たのはなんとナイスネイチャ!ぴったりと張り付くようにリオナタールが外目を突いてやってきている!なんと、なんと最終直線は完全にこの二人の叩き合いだ!さあナイスネイチャ!リオナタール!どちらが菊の栄冠を手にすることが出来るのかー!』
だから首を洗って待っていろ。帝王。暮の中山であんたの首を獲ってやる。
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『さあシンボリルドルフの復帰戦となったのはなんとG1、天皇賞秋!2000メートルの栄光の先に何が待っているのでしょうか!注目のカードはやはりメジロマックイーン!一番人気!春秋制覇なるか!しかし、皇帝シンボリルドルフが走るこの天皇賞、容易ではないと言えるでしょう!皇帝は二番人気に付けております。さあ各バゲートイン完了。
復帰のシンボリルドルフか、それとも、制覇を目指すメジロマックイーンか!それとも、また別のウマ娘が栄光を掴むのでしょうか!天皇賞秋、今、スタートです!』
―悪いな、メジロマックイーン。私はこの刹那の時、我が儘にならせて貰うぞ。
『最終コーナーを周って早くもメジロマックイーンが来た!しかし、その外から被せるように皇帝もやってきている!そして最後の坂を駆け上って2人のマッチレースとなりました!残り3ハロンを切りまして完全に横一線、さあどちらが勝ってもおかしくはない!
さあ追い比べだ!内メジロマックイーン!外シンボリルドルフ!お互いに譲らないままラスト1ハロン!だがここでメジロマックイーンが後退した!ゴールまで後わずか!シンボリルドルフ先頭だ!シンボリルドルフ先頭!突き放した突き放した!シンボリルドルフ先頭でゴールイン!』
『いやぁ!久しぶりの皇帝の走り!流石と言わざるを得ないでしょう!メジロマックイーンも非常に惜しかったですが、やはり、地力では皇帝が一枚上手だったようですね』
『ええ。そして、シンボリルドルフとメジロマックイーンがお互いに握手をしております。讃え合っているようです。そして!?おっと!ここで皇帝が一本指を立てた!これは、あのトウカイテイオーの三本指に対する答えでしょうか!?』
さあ、トウカイテイオー。見ているか?こちらの準備は万全だ。凱旋門は見届けた。―あとは砂塵の頂を持ってこい。私は
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『さあやってまいりました、ブリーダーズカップクラシック。アメリカの大地に立ったトウカイテイオー。ここまで無敗でありますが、初のダート戦。どこまでやれるか非常に注目のレースです』
『芝では絶対的な強さを誇りますが、ダートは果たしてどうなのでしょう、という声もありますね。しかし、同時にもしかして、と思わせてくれるウマ娘でもあります』
『ええ、本当にそう思います。大胆不敵な三冠を目指さないという宣言。かなりのバッシングもありましたが、蓋を開けてみれば実力で批判をすべてねじ伏せ、世界の頂点に立ってみせてくれました。今となっては日本の英雄とも言えるでしょう』
『英雄。いい言葉ですね。そしてテイオー不在の菊花賞もコースレコード、天皇賞秋もシンボリルドルフが制覇と、国内のレースも盛り上がっておりますからね。もし、今回このBCクラシックでトウカイテイオーが勝利した場合、年末の有マ記念は過去類を見ない盛り上がりになる事でしょう』
『さあ、最後、トウカイテイオーがゲートに収まりまして各バ態勢完了。ブリーダーズカップクラシック、スタートしました!トウカイテイオーは最後尾につく形ですがおっと、これはマークが辛そうだぞ』
―然れど、この脚に不可能は無し
『さあトウカイテイオーは厳しいレース展開。完全に囲まれています。最終コーナーを抜けたがまだマークが続いている!だが、その間に先頭集団はラストスパート!これは厳しいか!?いや!?バ群のわずかな隙間をこじ開けた!?トウカイテイオーが遂にラストスパート!ラチ沿いをとんでもない勢いで加速していく!1人抜いた!2人抜いた!先頭集団に並ばない!速度が違う!パワーが違う!あっという間に先頭だトウカイテイオー!後続も必死に追いすがるが!
トウカイテイオー!ここに!圧倒的ウマ娘の王者が誕生ーッッ!』
歓声を受けながら、4本目の指を掲げるトウカイテイオー。その顔に笑顔はない。只、挑む者の顔があるのみだ。
―さあ、2つの冠は手に入れた。あとは、
ボク。私。判ってるよ。だってボクは、夢を駆ける馬なんだから。