ボク、ピーマンが好きなんだよね   作:灯火011

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おかわりのピーマンも佳境です。

①ピーマンを半分に切ります。ワタ、ヘタはそのままです。

②小麦粉を薄く解いた衣を付けます。

③180度の油で1分揚げます。

④油を良く切り、盛り付けて塩を振ります。

ピーマンの天ぷらでございます。シンプルですがめっちゃ旨いのです。ワタもめっちゃ旨いのです。ピーマンイズワンダフル!


【番外編】テイオーINピーマンのお話―⑤

『無敗の凱旋門ウマ娘』

『無敗のBCクラシックウマ娘』

『無敗無敵のウマ娘』

『無敗の帝王』

 

 ボクはこれらの肩書を手に、日本の地を再び踏んだ。うん、民間の旅客機で普通に移動できるって素敵である。箱に入れられるのはやっぱりナンセンス…って、そりゃ動物じゃあ仕方ないじゃん?ふふ。二足歩行って素晴らしい。機内食、美味しかったなぁ。

 

「テイオー、お前、本当にやってくれたんだなぁ…」

 

 ボクについてきてくれたトレーナーは、未だに現実感が無いのか、遠くを見ている感じである。いやー、飛行機の中でずーっと同じことを言ってて、ちょっと面白かった。飛行機を降りてから、到着ロビーにたどり着くまでの道中も同じ有様だったりする。

 

「もー、何度同じことをつぶやくのさー。ボクは本当に凱旋門も獲ったし、BCクラシックも勝ったの!トレーナーは、凱旋門と、BCクラシックを勝ったウマ娘のトレーナーだよ!」

「…そう、なんだよなぁ…いやぁ、現実的じゃなくってな?だってお前、無敗の三冠ウマ娘、だけでも現実的じゃないってのに」

「あははは!もう。ほら、シャキッとして。そろそろ、ロビーについちゃうよ。きっと、記者達が出待ちしてるからさ」

「お、おう!」

 

 ボクの言葉にはっとしたトレーナーは、ロビー手前で立ち止まり、そして慌てた様子で襟元を正していた。うん。それでいい。

 

「さ、じゃあ行こう。堂々と。凱旋だよ!」

「ああ!行こうかテイオー」

 

 2人で到着ロビーへの扉を通る。すると、予想通りにカメラの光に取り囲まれる。ボクは満面の笑みを浮かべて、Vサインをしてみせた。

 

 そして、数日後。ボクは学園へと戻り、皇帝の目の前に立っていた。

 

「さて、テイオー。私は結果は知っている。だが、君から、君の口から伝えてほしい事があるのだがね?」

「あはは。確かにボクからカイチョーに伝えることはあるけど…でも、今日じゃないと思うんだよね」

 

 そう。今日じゃない。お互いにまだ、まだ気持ちの整理は出来ていないと思うんだ。ボクだって、今すぐに走り出したい。でも、それじゃあダメ。

 

 尖らせて、尖らせて。尖らせた上で、競わないとね。だから、カイチョーへの宣言はきっと、きっと今じゃない。

 

「そうか。では、そうだな。―ジャパンカップの日。特別ルームに君を招待しよう。そこで、君の言葉を待っている」

「うん。判ったよ。カイチョー。その日、必ず伝えに行くから」

 

 

『さあ、やってきましたジャパンカップ!今年はとんでもない豪華な面子が揃っております!』

 

『凱旋門賞二着のウマ娘、BCクラシック二着ウマ娘、それに他の国のダービーウマ娘などなど多数のウマ娘が揃っていますねぇ。まさにジャパンカップに相応しい面々です。おそらく、我々はトウカイテイオーにやられっぱなしではない、という意思表示もあるのでしょう』

 

『なるほど!だがしかし、日本勢はトウカイテイオーは出場しません。シンボリルドルフも同様です。さぁ、各ウマ娘ぞくぞくとゲートインを行っております!そして、今ゲートインしております、海外の強豪を迎え撃つのは、メジロマックイーン!』

 

『天皇賞秋、シンボリルドルフに敗れこそしましたが、その実力は本物であります。どこまで通用するのか、見事勝利を収められるのか、見どころですねぇ』

 

『しかし期待十分だと思われます!!メジロマックイーンはインタビューでこう答えておりました!

 

 ―残念ながらわたくし、トウカイテイオーのライバルなんです。天皇賞秋ではシンボリルドルフさんに後れを取りましたが、今後わたくしが負けるとしても、トウカイテイオーだけと心に決めておりますので―

 

 と述べておりました!実に気合十分といったところでありましょう!さあ、どうなるジャパンカップ!各ウマ娘、ゲートイン完了!いよいよ、スタートです!』

 

 

「マックイーンはやはり強いな」

「うん。ボクもそう思うよ」

 

 トウカイテイオーとシンボリルドルフは、特別室でジャパンカップの行く末を見守っていた。第三コーナーまで進むバ群。メジロマックイーンは2番手。レース場全体を上から見ていると、見事にレースペースをコントロールしている様が窺い知れる。

 

「先頭にはペースを握らせず、しかし、後続の脚を消耗させるペースで走る。流石メジロマックイーン。私も先の天皇賞では苦しんだよ」

「えー?最後、あんなに簡単に突き放したのに?」

「はは、そう見えるか。であれば、少しは格好がつくかな」

 

 雑談をしながら、レースを見守る2人。そしてついに、メジロマックイーンが勝負を仕掛けた。

 

「お、出たな。これはほぼ決まりだろう」

「だねー。こうなったらマックイーンの独壇場だよ」

「ふふ、それは同じチームだからこその意見かな?」

「うん。ああなったらボクでも止めらんないかなぁ」

 

 そう言って、トウカイテイオーはあははと笑う。だが、シンボリルドルフは特に表情を変えていなかった。

 

「止めらんない、か。―全く、心にも無い事を言うんじゃあない」

 

 ルドルフの言葉に、テイオーは苦笑を浮かべた。

 

「…ま、中距離ならボクが勝つよ。長距離はボクが負けるけどね」

 

 そう言っているテイオーに、ふと、ルドルフは疑問を投げる。

 

「そう言えばテイオー。君は長距離を走らないな?」

「うん。苦手だからね」

「天皇賞春。そこに君を、という声もあるが」

「うーん、走らないかな」

 

 あっけらかんと、迷いもなく答えるトウカイテイオー。その言葉に、シンボリルドルフはなぜか納得もしていた。トウカイテイオーは、きっと、長距離を走る事は無いと。

 

「そうか」

「そーだよ。最長でボクは2500かなー」

 

 更にあっけらかんとそう言い切るトウカイテイオー。なぜ、そこまで言い切れるのか。ルドルフはそのまま、疑問を口に出していた。

 

「なぜ、そう思う?」

「そうだ、としか言えないかな」

「走ろうとは」

「全然思わない。長距離はマックイーンが強いもん。あとダイサンゲン」

「…ダイサンゲン?」

「うん。彼女、今回の有マは出ないけど、来年の天皇賞は出るーって言ってたから、マックイーンの天皇賞春連覇はならないかなぁ」

 

 シンボリルドルフは更に疑問を浮かべていた。ダイサンゲン。既にトゥインクルから身を引いたオグリキャップやスーパークリークの同期であり、そこそこの実力のウマ娘であることは記憶していた。だが、その彼女が天皇賞春で勝てるかと言えば、疑問が残るのだ。だが、それを知ってか知らずか、テイオーは『ダイサンゲン』が勝つと言ってのけた。

 

 何の確証があるのか。しかし、嘘を言っているようにも思えない。ルドルフは少し悩む。

 

「…やはり、君は以前のテイオーとは別人だな」

「まーね。だって、ボクはカイチョーを超えるし。今までのままじゃあ、超えられないし」

 

 何でもない風に、テイオーはそう言葉を続けていた。ルドルフは苦笑を浮かべると、テイオーに言葉を投げる。

 

「はは、そこまで面と向かって私に、『超える』と宣言するウマ娘はなかなか居ないぞ?」

「そう?カイチョーぐらい強いウマ娘だったら、色々な娘からそういう宣言受けてるんじゃないのー?」

「それがそうでもないんだ。本当に、テイオー、君ぐらいなものだよ」

 

 ルドルフがそう言いながら苦笑を浮かべると、テイオーは困ったような顔で、こう言葉を続けた。

 

「もしかして、迷惑だった?」

「いいや。むしろ、好ましいとも思っている。私にもライバルは居た。だがな?何せ―」

 

 ルドルフは一息、間を置いた。そして、口角を上げながら告げる。

 

「本気で私に挑む者など、超えようとする者など、君が初めてだからな。全く、血沸き肉躍るとは、こういうことかと心の奥底から感じているよ」

「ならよかったー。ふふふ。有()記念、楽しみだよー」

「ああ、私もだ」

 

 そして、雑談をする彼女らを尻目に、2人の言葉の通り、メジロマックイーンは見事先頭でジャパンカップのターフを駆け抜けた。史上最高と言われたメンツから、見事、彼女は勝利を勝ち取ってみせたのだ。

 

「さて、この後は勝利者インタビューか。テイオー、メジロマックイーンは何を言うと思う?」

「んー…マックイーンの事だし、勝利の感謝と、有()記念への意気込みかなぁ」

 

 そう言って、2人は暫くウイナーズサークルで手を振るマックイーンを見つめていた。

 

 

 画面越しで、トウカイテイオーとシンボリルドルフは、勝者メジロマックイーンのインタビューを静かに見守っていた。

 

『おめでとうございます。メジロマックイーンさん!見事!見事海外勢を抑えてのセンター!お見事でした!』

『ありがとうございます。応援していただいた皆様のお陰です』

『こうなると年末の有マ記念にも推されると思いますが、ご存じの通り強豪ぞろいの有マ記念です。非常に盛り上がると思いますが、もちろん参戦はなさるのですよね!?』

 

 息まく記者に、メジロマックイーンは微笑みを浮かべて、静かにこう告げる。

 

『…いえ、有マ記念はわたくし、参加は致しません』

 

 どよめく記者たちに対して、マックイーンは更に言葉を続けていた。

 

『今回の有マ記念、私は「見たい」と思いましたので。観客席から応援させて頂こうかと思いまして』

『!ああ!なるほど!そういうことならば…非常に残念ではありますが、確かに判ります。ただ、私は貴女があのレースで勝つところを、見たい!』

『ふふ。記者様も物好きですね。ですがご安心を。今回の有マ記念は走りませんが、来年の天皇賞春。より万全に鍛錬を積み、わたくしは連覇を目指して走りますので』

 

 間を置き、メジロマックイーンは再び、口を開き、言葉を告げた。

 

今回の有マ記念はお二人の『帝』にお譲りいたします

 

 そう言って、メジロマックイーンは微笑みを浮かべていた。

 

「…これは、お膳立てされたって奴だね。カイチョー」

「ああ。全くだ。名優とはよく言ったものだな」

 

 2人はそう言って、少しだけ笑った。そして、ついに、()()()()()()

 

「じゃあ、改めて宣言するよ。シンボリルドルフ」

 

 トウカイテイオーはそう言うと、シンボリルドルフに体を向けた。シンボリルドルフもそれに合わせて、テイオーの顔を見る。そして、トウカイテイオーはいつもの、しかし、全くぶれる事が無い、自信満々の微笑みを浮かべた。

 そして、その口からは、油断など一切ない、しかし、傲慢に満ち溢れた言葉が告げられる。

 

さあ存分に挑みたまえ皇帝―凱旋門の冠は世界最強の冠はこの帝王が持ってきたぞ

 

 トウカイテイオーから発せられた、上から目線の傲慢な言葉は、皇帝の奥深くに眠る何かを確かに揺さぶった。数秒、ルドルフは目を瞑る。が、目を見開くと同時に、

 

ならば帝王その驕り高ぶった鼻っ面はこの私皇帝シンボリルドルフが見事叩き折ろう

 

 シンボリルドルフも、自信満々の微笑みを浮かべ、そう言い切った。

 

「ふふ」

「はは」

 

 二人は、少しだけ笑い合う。そして、硬くその手を握り合った。

 

「楽しみにしてるからね。カイチョー!」

「私もだよ。テイオー」

 

 中山 芝 2500。決戦の時は、近い。




 うーん…トウカイテイオーにはついぞ逃げられてしまったか。あの速さの秘密を調べたかったのだがねぇ…。しかし、ある時期を境に彼女のフォームは変わりすぎている。力強いフォームから、滑らかな、しかし負荷の少ないフォームに変わっている。

 ああ、付け焼刃とも言って良いだろう。

 そして、もしも、もしもだ。付け焼刃では敵わない相手が居た場合。付け焼刃のフォームを投げ捨てて、ただでさえ速い、彼女が本当の全力を出した場合。

 その脚は、果たして持つものかねぇ?

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