Lucky!~地球内生命体のせいで宇宙滅亡の危機~ 作:ばにらいむ
ゆっくり読んでいってね!
ヒーロー星から遠く離れた、廃墟星。
その空き家の隅で一人の少女が弟らしき少年を抱えてうずくまっている。
彼らは孤児のようだ。
不安げな彼らの目の前には男が立っている。
男は二人に話しかける。
「君たち、我々とともに宇宙を救うヒーローにならないかい?」
その男の目は、ブラッドムーンのように赤く、禍々しく輝いていた。
それから数時間後、巨大な鷹のような化け物に乗った女が廃墟星に舞い降りる。
鷹から降りた女はきょろきょろとあたりを見渡し、まるで落胆したかのようにため息
をついた。
「……ここも…もう駄目なのね」
~~~~~~
「しっしょぉ~!」
後からの大声に、日本一ついてない中学生…いや、高校生の追手内洋一はびくりと体を震わせ、振りかえる。
「な、なんだ、努力ちゃんかぁ…そんなに大声出さなくても聞こえてるから」
声の主は洋一のクラスメイト兼弟子の、杉田努力である。
常に柔道着に下駄、伸ばし放題の髪に太眉という風貌は、中学時代から変わらない。
「そうですか?それは失礼いたしました!」
謝罪をしつつ師匠の肩を思い切り叩く。パシッという何とも軽快な音が鳴った。
「いって!ついてね~…」
そんな洋一のうめき声に「おお、すみません」と返しつつ、ふとあることを思い出した努力は、「そういや師匠」と口を開いた。
「【ザリガニ党】って知ってます?」
「ざりがにとう?何だっけ、それ…」
「えー、師匠ニュース見てないんすか?」
「ちょっとは見てるよ!逆にお前はどうやってニュース見てるんだよ!」
「なんかクラスメイトの女子が噂してましたよ」
「それはニュースとは言わねぇよ!」
「え~?そうですか?」
「あれ…そうだっけ…?」
……話が横道にそれてしまった。慌てて洋一は話をその「蝲蛄党」に戻す。
「で、その党が何だってんだよ」
「なんか「宇宙人の自由」を目標に活動してるらしいっすよ」
「はぁ?そんなことしなくたって宇宙人は自由に暮らしてるだろ?俺とか努力とかさぁ…あと協会の奴らも時々来てるじゃん」
「そっすねぇ…何なんすかねぇ…あ!でも、女性には異様に人気ありましたよ!」
そう言いながら努力は壁に貼り付けてある、派手な選挙ポスターを指さす。
「蝲蛄党」とゴシック体で書かれた文字の下に、長髪の色男の写真が掲載されていた。
写真の男の目は赤色に輝いている。
身に着けた衣服の派手さは、クラスメイトの目立に見せたらおそらく白目をむいて悔しがるであろう代物だ。
「こいつが党首か…確かに女の子に人気ありそうな顔してるけど、なんかすごく胡散臭いなぁ」
洋一は選挙ポスターに背を向ける。もともと政治にあまり興味はないんだ。こんなものに構っていても仕方ない。
そういや部屋の机の上に作りかけの押し花がそのままだった。早く帰って仕上げなければ。
家に向かって歩き出す洋一。努力もなぜかそれに続く。
向こうから、最近はやりのパーカーのフードを被った少女が歩いてくる。どことなく挙動が不審だが、この時の洋一は気にも留めていなかった。
しかし少女は洋一たちとすれ違った瞬間、信じられない行動に出た。
なんと、洋一の通学かばんをひったくったのだ。
「?!」
そのまま鞄を抱え、物凄い速さでダッシュする少女。
「あっこら!待てっ!」
努力が少女の後を追う。あっという間に見えなくなる二人。
「はぁ~?!何でこんなことに!本当についてねぇ~!」
洋一も後を追う。
多分少女が向かった方角は……この市内の無人区域だ。
次回に続く