五帝?ああ、ルフィを入れた四皇の呼び方ですね……え?違う?? 作:九十九夜
「此処はどこですか?」
「ですか、なんて遠慮するんじゃない。君と私は兄弟になるのだから。」
「兄弟?」
まるで高級なグランドピアノの蓋の様に黒く頑丈そうなテーブル。
その上で軽く手を組んだ美丈夫……ノクタルが優しく微笑む。
好青年というより肉親に浮かべる様な裏表のないそれに毒気を抜かれていると「そう。兄弟。」と薄い唇が動いた。
「だって君、カンピオーネだろう?」
「え、だって僕。まだ倒してない。」
何をと言われたら、正直に神を、だ。
残念ながらビスキュイはカンピオーネはライトですらない流し見勢だったがそれでもどんな役割かはわかる。というより足りない所は知識として何故か自動的に更新()されていくようなのだが、時折自分は聖杯か何かにでも繋がっているのではないかといい加減気味が悪くなってきた。もちろんワンピースもライト勢だったので、その点では割と役に立ってはいるのだが。
くふっとたまらないと言わんばかりの表情で笑うノクタル。
朱い瞳が爛々と輝いた。
「そうそれだよ。俗に言う原作……いやこの場合は世界が違う訳だから作品知識といった方がいいかな?それがあるという時点で君はあの羽虫……と失礼。転生者とは違う。なんせそれはこれが関係しているからね。」
カツリと指でテーブルを突くと瞬く間にテーブルの中央が崩れ、ソレが貌を出した。
「簒奪の円環。我らが母が遺し古の神具。この世界は少し特殊だから、こうして私が管理しているわけだが。そして、これをこうする。」
途端に輝きだしたソレにノクタルが息を吹きかける。
と、それはすぐにビスキュイの胸元に吸い込まれるように溶け、消えていった。
「はい。これで君の転生の儀式が完了したよ。……まあ、見てもらった通りこの世界は特殊で母はおらず、何より確固たる神話が無い。しかし荒ぶる神は時折出現するんだ。だからこそ、この世界のカンピオーネにはまず転生の儀式とともに私が力を授けることになっている。……ぶっちゃけると義母無きこの世界での私は君たちカンピオーネの義兄なんだ。」
これからよろしく、弟よ。と頭を撫でられる。
ビスキュイとしてはそれはむしろ義父では?とか結局さっき貰った権能は何だったのかとかいろいろ聞きたいことはあったが何故か同時に何処か夢見心地である。
なんというかあの光が浸透してからというもの、全能感の様なものが湧き上がってくるようで、少しむず痒い。
「簒奪の円環と私達は……なんでもアニメで例えるのはどうかと思うが、聖杯を奪い合う争いを描いた作品の聖杯とサーヴァントの関係に似ている。初期の肉体の形成と知識の供給はコレの仕事だし、最初の儀式こそ私からのギフトの様なものだが、その後はオートで発動するからね。」
ふうん?とビスキュイが首を傾げる。
いまいち実感がないところに説明されても全然入ってこない。
しかし、わかっているのかいないのかニコニコと上機嫌な男はそれ以上何も言わないしどうしたものかといったところである。
と、いつの間にか置かれていた紅茶の様な液体の入ったカップが目に入った。
黒を基調とした暗い部屋の中で何故か紅茶の様だと色の判別が出来るそれ……それは、ゴポゴポと沸騰した鍋の様に泡立っている。
いやいやいや放置するなよ!明らかにヤバいだろ!なんて誰かが言うより先に、それは空中へと飛び、そしてテーブルの中央に降り注ぐ。
私は一人きりの異端者です。
長い長い時を経て、それでも何も見つけられません。
わたしが仲間外れだからでしょうか。
わたしが罪人だからでしょうか。
私はトリになりました、けれども上にはいけません。
私はヒトになりました、けれども下にはいけません。
何度重ねてもわたしは変われませんでした。
私はムシになりました。
飛び散ったソレは少し歪な詩編のような文章を作り出した。
意味が分からずにいるビスキュイにノクタルは「よく覚えておくように」と優しい声で忠告する。
「文字が震えている。これは……もう一遍変成するぞ。」
言われた通りその文字たちは、磁石に引き寄せられる砂鉄の様にスルスルと形を変えていく。
続いて現れた文章は更に崩れていたが、それでもビスキュイには見覚えがあったし、それこそ理解できた。
許 よ、 よ を許されよ
自由を愛する を守った 。あなた達の でしょう
沢山の 積み上げて 、 遠に
でもどうぞいつまでも忘れずに
世界が なるほどに根 、誰も知らないままこの通り
取るに足らない の一咬みで崩 のです
許 よ、我 罪を よ
知恵者は
すべては、永遠に落ち続ける。
「ふむ、ビスキュイ。君に変質した権能から更なるヒントだ……ついでに、前世で印象深い事柄やらがある場合はそちらに片寄るから、まあ、参考までに悩みなさい。」
「……はい。」
ひきつった笑顔でなんとか返事を返す。
ヒントも何もこのとんでもな文章の世界観は
そうしてその前の鳥にも人にもなれるがどこにも行けない、虫。
すぐにそれが何かは分かった。
なんせ、恐らくだが前のビスキュイ()はそのゲームをよく知っていたので。
それからついでに元ネタの妖精のこともいろいろ調べていたのですぐに答えに辿り着く。
それは剣も魔法もあるのに救いは無い国の、妖精たちの物語。
その中の被害者でありながら加害者になった知恵者。
どこぞの流行と娯楽の町のゲームマスターだ。
翅の氏族の長、ムリアンである。
「しかし、詩編が2つ。余程これは君に使ってほしかったのかな?ビスキュイ。」
尚嬉しそうな義兄を余所にどうやって使えと言うのか、というか何故自分が選ばれてしまったのかと内心で頭を抱える。ビスキュイは己が世界の狭さをいやというほど知っているし、頭がいいわけでも機転が利くわけでも無い。
宝の持ち腐れに他ならないのだ。なのに何故単純に何らかの破壊行為が出来るとか、身体能力をフィードバックできるなんてものではないのか不思議でたまらない。
―――いったい、これを使ってどうしろというのか。
いつだったかどこかで聞いたあははははと笑い声が聞こえた気がした。
*****
きゅるるとお腹が鳴って巻物から小窓へと視線を遣ると、そこには既に夕闇が広がっていた。
どうやらかなり時間が経過していたようで朝どころか昼を過ぎて夜が目近らしい。
カチャリと音がして襖に取り付けられた差し出し口から食事が差し込まれる。
それに一瞥くれてやってから放置することに決めてビスキュイは再び巻物……忍術の指南書に視線を戻した。
「―――様。た―――ださい。」
「お―――す。」
そうして、いつも通り
「お願いです。お願いですから食べてください。環愚郎様。」
「もう膳に手を付けなくなってから3ヶ月です。御館様も皆様も心配しておられます。」
「お願いします。一口でいいので食べてください。」
2,3日前から始まったコレ。
運んでくるのは下っ端なのでどう言い含められているかもわからないがいい加減面倒になってきたな。と、ビスキュイは溜息を吐く。
「僕は大丈夫だから君か、他の子たちと分けてよ。」
「そっそんなっ」
「僕の心配してくれてるの?あはははは!それなら安心して優しいお兄ちゃんが毎日おいしいお菓子を持ってきてくれるから!」
事実、あの転生の儀式()から兄様(と呼べと言われた、お兄ちゃんと選べと言われたので即決だった)になったノクタルはそれこそ甲斐甲斐しいくらい世話を焼いてくれている。アレだ、全力でお兄ちゃんを遂行している。
この小窓と配膳口しかないほぼ密室な座敷牢()も何のその。
毎日の様に会いに来てはお茶会を開いて他愛ない話をしては去っていく。
大きなジンジャーブレッドマンは持ってきてくれるお菓子の中でも一際美味しくて、父の作ってくれたビスケットとはまた違った美味しさだ。
割ると中にジャムやドライフルーツなどが入っているのがこれまた懐かしくて美味しい。
一番最初の時は何故か驚いたような顔をしていたノクタルだったがすごく喜んでくれていたのも記憶に新しく、その時はビスキュイも困惑したが、気に入るかどうか不安だったのだろうと勝手に解釈した。
ついでにこのビスケットホーミーズみたいにまではいかないが時々動くのがいたりする。
それを使って虫籠……唯一もっているムリアンの権能の練習までさせてくれるのだからこの義兄の配慮、半端ない。
だからそう、今のビスキュイには家に帰れない事と忍術の稽古相手がいないこと以外特に不満はないのである。
(まあもっとも、誰も忍術らしい忍術が使えてないみたいだから、仕方がないのかなあ。)
ここの所独学で豪火球撃ったりチャクラ糸で巻物動かしたりしてると何処からともなく怯えやら蔑みやらの視線と声が聞こえてくる。
あんな化け物だとか、術の精度がどうとか。
会話やら小窓の外で時折見かける体術や忍術()の訓練の光景を見て察した。
―――どうやら変わり身と分身の術と独自の忍術を一つ持つ、というのがこの詠錠という家のエリートに当たるらしい。
因みに性質変化や形状変化は知らないらしく、皆使える者は無意識にやっていて原理は分かっていないようだ。
ついでに前提としてこの家男尊女卑も激しいが家の外の人間にもかなり扱いが酷い。
此処本当に母さんの実家?と疑いたくなるほどのクソ具合である。
上も一枚岩じゃないようでビスキュイの食事に毒やら異物やらが頻繁に混入しているところを見るにビスキュイ抹殺派と恐らくビスキュイの祖父()の擁するビスキュイを従順な戦力にという派閥は確実に存在しているだろう。
「……もったいない。」
それが正直な感想だった。
この座敷牢と書庫を兼用したような部屋につまった情報は何も基本の忍術だけではない。
塵遁などの血継淘汰や求道玉のような血継網羅のようなとんでも忍術すら書かれた最早禁書の宝庫である。
なぜこんな場所にビスキュイを幽閉しようと思ったのかは謎だが十中八九舐められているのではなかろうか?というのがビスキュイの答え()である。というより考えすぎて面倒になってきただけだったりする。
「うーん……でも血継淘汰はともかく求道玉はなあ……。」
そのあたりはマジもんの大元の血統のあるナルトや六道仙人やマダラしか使った描写が無いのでどのみち使えないと思っておいた方がいいかもしれない。
「……ようは皆強くなるのは諦めたってこと?」
要は此処、廃材置き場なのでは?
そんなことを考えているとコンコンコンというノックの後に
「やあビスキュイ。元気にしているかい?」
「兄様!」
広げていた巻物を戻して駆け寄る。
これから楽しいメリエンダの時間だ。
取り敢えず考えていた件は先送りになった。
性質変化や形状変化はNARUTO見てたときにナルトの修行シーンで純粋に思った
え?火遁とか水遁とか滅茶苦茶使ってるのにアカデミーで教えたりしないの?と
ナルトが元々落ちこぼれ扱いされてたとは言っても基礎の基礎なら覚えているのでは?
なのでじゃあ突き詰めて術の研究とかしないのなら習う人あんまりいなさそう
ボヤ―っと技の相性くらいで理解してる人の方が多いのかな?
みたいに思いながらこの話にちょっと詰めました。
権能の所本当はムリアン()との出会いが別にあって~とか
そいつに主人公が騙されて……みたいな展開を最初は書いてたんですがどうしてもそうするとR18G指定になるし、地雷地雷してる奴が完成してしまったので泣く泣くボツにしました。
もっともヤベー要素はちょいちょい入れてるんですがね。