頑張って早めに出したかった作者です。
第十一話にてGジェネラーさん、赤頭巾さん。誤字報告ありがとうございます。
今回薪の王がメチャメチャ喋ります。過去一喋ります。なのでご注意下さい。
日も落ちてきて時間が経ちライダー、征服王の言っていた集合時間に近づいてきた。
「それじゃあ、そろそろ行くか?」
「そうだな。時間的にも丁度いい頃合いだろう。」
桜ちゃんには今日は夜出掛ける事について話をしておいたので恐らく問題は無い筈だ。
アインツベルンについては名前くらいしか俺は分からないが有名な魔術師という話は聞いているので罠があるかと思っていたのだが。
「なあ、これって、ライダーの乗ってた戦車でやったのか?」
「そのようだな。罠どころか木々も轢き潰して行ったらしい。」
そこには城の正面に向かって一本の道が出来ていた。
木々は倒され、正直これは不味いんじゃないかと思うような酷い有様になっていた。
城に入ろうとすればこれまたライダーがぶち開けたであろう城の入口。
しかしそこにはライダー達の姿は無く、辺りを探しても瓦礫ばかりで何も見つからない。
「雁夜、こちらのようだ。」
薪の王に着いて行くような形で俺は人生で初めて城に入って行った。
「おお、来たか!んん?・・・何だ、お前さんらだけか?」
「ああ、そうだ。私達だけだが、他に誰を呼んだのだ?征服王よ。」
「そりゃああの金ピカも呼んだわい。あいつも堂々と最古の王を名乗っておったしなぁ。呼ばん訳にはいくまい。」
「ほお!英雄王も呼んでいたのか。それは良いな。
ああそうだ。セイバー、今回は共に語り会おう。貴公とは戦場でばかり会っていたからな、こうして落ち着いて話をすることが楽しみだったのだ。」
「ええ。私も貴方とはちゃんと話をしたかったので此度は共に語りましょう。まあ、ライダーには言いたい事がいくつかありますが。」
「ハハハ、そうだな。だがセイバーよ。征服王がいなければこうして一度に集まる事も無かっただろう。」
「確かにそうなのですが、やはり、少し強引過ぎる気がしてならないのです。」
三者三様に話を始めつつ俺はこの場に居るライダーのマスターと白髪の女性に声を掛けた。
「えぇと、こうして顔を合わせて話?をすることになった訳だし少し俺達も話さないか?」
「まあ、そうだな。僕もアイツと話すのは疲れてきたし、少し休憩する。」
「そうね。私もお話したいわ。ねえ、バーサーカー、薪の王ってどんな人?」
「え、シンの事か?といってもなあ、面倒見が良くて、何でも出来て、その上強くてイケメンでって、アイツ言葉にすると凄いハイスペックだな。」
「何だよそれぇホントにバーサーカーなのかよ、アイツ。」
「それについては俺も良く分からない。」
「凄いのね。でも、セイバーだって負けてないわよ?」
いつの間にか良い雰囲気になって話をしていると唐突にその空気を変える男が現れた。
「ふん。この我を呼び出す割には随分と見窄らしいな。それに、貴様が持って来ているその酒も安酒であろう?全く、何もなっておらんな。この我が貴様らに教えてやろう。本当の「王」というものを。」
そう英雄王が言うと後ろの波紋から酒と器が出て来て、それが投げ渡される。何故か薪の王にだけは普通に渡している。
「おお!こいつはなんとも、まさしく極上の酒と呼べるな。こりゃあ神代のモンか?」
「ほお。これはとても美味いな。今まで口にしてきた物でも格別だ。流石は英雄王。」
確かに凄え美味い。けどこれ、俺が飲んでも大丈夫なのか?
「フハハハハ!そうであろう!この我の酒だぞ?そこらの雑種共が飲む酒などとは比べる事さえ烏滸がましいものだ。」
「ふむ。征服王が人を呼び、セイバーが場を設け、英雄王が酒と器を用意した。となれば私も何かしなければな。」
薪の王が一言そう言い指を鳴らすと周りが美しい城に変わった。
「良し。場を整える程度しか出来んが、どうだろうか?ここは私が見て来た中で美しいと思った場所の一つなのだ。アノールロンドと言う。」
周りを見渡せば美しい装飾は勿論、巨大な像が後ろには立っていてとても荘厳な雰囲気になっている。
「少々変えてはいるが、どうやら良いようだな。」
征服王はこりゃ凄いとはしゃいでいるし、セイバーは忙しなく辺りを見回している。英雄王はゆっくりと、笑みを浮かべながら周りを見ている。
「これは一体、」
「ほほぉ。薪の王、これがお前さんが見た城か。なんともまあ素晴らしいな。あの像は何と言うのだ?」
「あれは大王グウィンだ。今となっては随分と久しいが、何度も会ったものだ。」
「ほお?あれがグウィンか。・・・なるほどな。」
「さて、そろそろ始めるべきではないか?征服王よ。」
「お、そうであったな。では、始めるか。聖杯問答を。」
どうしてこうなったんだ?
ライダーと英雄王が王について語り終わったからセイバーの番になってブリテンの滅びを変えるって言ったら英雄王は爆笑してるし、ライダーはなんか痛ましいものを見るような目でセイバーに確認している。
さっきまでの良い雰囲気が台無しだ。そこでさっきから黙っている薪の王が気になって目線をずらすと、薪の王はどこか懐かしいものを見るような、しかし同時に悲しいものを見るような、そんな目を向けていた。
「何故だ、何故そう訝る!何故笑う!」
「いやな、セイバーよ、」
「ハハハハハハッ!傑作だ!セイバー、貴様が道化であったら褒美を取らす所であったぞ?」
セイバーの顔がどんどん沈んで行く。
しかし、次の瞬間にはこの場に全ての者が口を閉じた。
その理由は簡単だった。
周りの風景が変わったのだ。辺りは荒れ果てた街、いや滅びた国に変わった。
「セイバー。」
薪の王が口を開いた。
「貴公は過去を変えると言ったのだな。それはダメだ。してはならない。その行いは呪いとなる。赤子の赤子、ずっと先の赤子まで続く。
セイバー。奥に見える男が分かるか?」
そう言われて全員がその方向を見る。そこには装飾が施された騎士鎧を身に纏う男が居た。彼は国の中を彷徨い続けていたのだろう。膝を付いて体を震わせている。泣いているのだろうか。
薪の王が優しく、語り始める。
「アレがこの国の王だ。アレは民を救い続けた。その先に希望があると、輝かしい未来が民にあると信じてな。その行いは幾度に渡りやり直され、続けられた。
次こそは、もっと救える筈だと。次こそはもっと良くなると。
だが、どうだ。何度も、何十度も、何百度と繰り返しても、滅びは変わらなかった。何をしても無駄だった。
アレは気づけなかったのだ。己の行いの度し難さを。己の罪深さを。
セイバー。過去を変えるとは即ち、その時代を生きていた者たちを否定する事と同じだ。民の日々を、民の軌跡を、貴公は否定すると言うのか?他ならぬ王である貴公が。民の生きた証を捨て去ると言うのか。」
「だが、それでも私は、」
「それだけでは無い。貴公を信じ、共に歩んだ臣下すらも否定するのか?貴公の願いは停滞だ。人は歩み、進まなければならない。停滞は腐敗を生む。
国は民と共に生きているのだ。生あるものには必ず死が訪れる。それは民と共に生きる国も同じなのだ。」
薪の王の言うことは王ではない俺には全部は解らない。それでもある程度は解る。言葉は現実を突きつけている様に聞こえるが、実際は違う。
薪の王はずっと穏やかに話をしている。声を荒げず、強い非難もしていない。
周りを見ればライダーは意外そうに見つめ、英雄王はどこか面白そうにセイバーと薪の王を見ている。けれど二人とも薪の王の話をしっかりと聞いてはいる。
「セイバー。」
アイリスフィールさんが声を掛けている。
「私の願いは・・・間違いだと言うのか。」
その言葉に真っ先に返したのは薪の王だった。
「それは違う。」
力強い言葉だった。
「その願いは良きものだ。亡くしたものを悼むのは本来生者の特権だ。だが、既に死した私達が再びその想いを持てるのは紛う事なき奇跡なのだ。故にその想いは大切にしなければならない。
人とは確かに罪深い者だ。だが、その罪に向き合えるのもまた人だ。強き者がいれば弱き者もいる。人は未来への可能性を持っている。
セイバー、貴公がすべきなのは万能の奇跡を起こす事ではなく。前を向き、明日へと歩み出すことだ。」
場に沈黙が降りる。
「今答えを出す必要は無い。だが、聖杯を前にした時、貴公の迷いを晴らす太陽があらんことを。」
内心ウッキウキな英雄王。書いてて楽しいですね。
読んで頂きありがとうございます!
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聖杯問答について セイバーへの薪の王の反応
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激怒
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優しく諭す