俺は夢を見た。これは、恐らく薪の王の過去なんだろう。聖杯戦争をする前に臓硯が言っていた聖杯戦争の説明で一応知識として教えられていた。マスターはサーヴァントの過去や願い等を見る事があると。
その旅路は過酷なんて言葉では言い表せない。俺だったら確実に途中で心が折れて道半ばで諦めてしまう、それどころか大英雄と呼ばれる者でも心が折れてしまうかもしれない。そんな救いのない世界だった。
だが、俺はいつも最後まで夢を見れなかった。旅の終わりの時になるとまるで、誰かがこの先を見せないように、子どもの目を閉じるように周りが暗くなって次の夢になる。夢では何度も発狂しそうになっている薪の王がいた。
それでも薪の王は、あいつは進み続けた。終わりのない、無限に続く苦しみの中で足を止めなかった。俺は何度も止めた、声を張り上げて叫んだ。でもあいつに俺の声は届かなくて何処までも進み続けてしまう。誰かあいつに救いを与えて欲しい、誰かあいつを休ませてやって欲しいそんな祈りにも近い感情を持ってもどこにも行けない、行き着く場所が無い。気付けばあいつが、捩れた剣が刺さっている篝火に特徴的な目隠しをつけた銀に近い白色の髪をした女性と一緒に立っていた。
また、終わるのか。また、お前は進んで行くのか。もう休めよ、誰もお前を責めない、もし責める奴がいたら俺がそいつに文句を言ってやるから、もう、休んでくれ。
体を揺すられて目が覚める。目の前には俺が昨日契約した薪の王がいた。昨日と変わらない様子で俺を兜越しに見ていた。どうしたのかと思っていると薪の王が喋り始めた。
「雁夜、大丈夫か雁夜?酷くうなされていたぞ。何か、悪い夢を見たのか?大丈夫だ、桜嬢の体は昨夜完治した。貴公の体に潜んでいた虫も既に焼いた。もう何も心配は無いぞ。」
昨夜抱いた怒りが再び燃え始めた。何故この男は自分を蔑ろにして人の心配ばかりしているのか理解出来なかった。お前はもっと報われて良いんだ。誰かに頼っても良い筈だ。俺は我慢出来ず声を上げてしまった。
「どうしてお前は自分を大事にしないんだ!もっと他の奴に頼れよ!お前はもう充分頑張って来ただろ!確かに感謝してる、桜ちゃんを助けてくれた事も!俺の体を治してくれた事も!臓硯も倒してくれた。それでもお前は、」
途中で声が途切れてしまった。言いたい事が多過ぎて言葉に出来ない俺に薪の王は静かに語り始また。
「やはり、そうか。私の過去を見たのか。良いんだ雁夜、私は満足しているのだ。あの様な結果でも、どんなに救いが無くとも、私にはあれで良いのだ。それに、私の過去を見たのなら貴公も分かっているだろう?私は誰も救えなかったのだ。何も変えられなかった。だから、私はこれで良いんだ。」
「それでも俺は!」
「雁夜、分かっている。貴公が私を心配してくれている事も、私の過去に絶望を覚えた事も、しかし、既に終わった事だ。貴公が気にする事はないのだ。」
その言葉は俺に何も言えなくさせた。気付いてしまった。当事者じゃない俺が、薪の王の過去に文句を言う資格も無いし、むしろそれは薪の王を侮辱する事と変わらないんじゃないかと。冷静になった俺は薪の王に謝ろうと思った。しかし、それは以外な人物によって遮られた。
「どうしたんですか?大きな声が聞こえましたけど、あれ?雁夜おじさんと、えっと確か、昨日の夜私を運んでくれた、バーサーカーだったよね?」
少し開いた扉の隙間から桜ちゃんが顔を覗かせていた。そこまで大きな声を出していたとは思わず俺は謝ろうとして近寄った。
「ごめんよ、桜ちゃん。ちょっと俺が動揺してただけだから。ああ!後少ししたらご飯を作るから下で待っていてね。」
「うん、分かった。じゃあ下で待ってるね。バーサーカーも後でお話しようね。」
「ああ、桜嬢が楽しめる話を用意しておこう。では下でな。」
桜ちゃんが一階に行くのを見送ってから薪の王に向き直って再び話始めた。
「さっきはすまん。大声を出してしまって悪かった。俺はお前にもっと休んでも良いと言うつもりだったのに、つい感情的になってしまった。許して欲しい。」
「許すも何も貴公は私を心配してくれたのだろう?私が感謝をすれど貴公に謝られる事はないだろう。やはり、昨日も思ったが私のマスター運は良いようだ。」
俺は気を取り直して桜ちゃんと薪の王に朝食を作るために薪の王と一階に降りていった。
口調が難しいんじゃあ。早めに出せて良かったという思いでいっぱいであります。
聖杯問答について セイバーへの薪の王の反応
-
激怒
-
優しく諭す