真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんおはこんばんにちわ。生配信と動画と大忙しの作者です。

今回はタイトルも伏せられています。何があったのか見届けていただけたら嬉しいです。

では!


□□の救済

ゴポゴポ・・・

 

深淵に沈んでいく。

 

すぐそこにあるはずの手足さえ見えない。

 

「・・・ッ」

 

その手足を動かそうとしてもピクリとも動かない。

 

ゴポゴポ・・・

 

不思議と息苦しさは感じない。

 

ただ・・・

 

「寒い・・・な」

 

口にして驚いた。声が出たからだ。

 

それまで口を開く気にもなれなかっただけだが、まさか手も足も機能しないここで口だけが動くとは。

 

ゴポゴポと揺蕩う。寒さ以外は何も感じないことから、自分は死んだのだと動かぬ頭が理解する。

 

「・・・。」

 

寒い。ただひたすらに。

 

びゅびゅうと風が吹いているわけでもないのに、まるで冷たい風に晒されているようだ。

 

「あ・・・」

 

しかし、次第に淡い光のようなものが見えた。

 

「少し、温かい」

 

その光に縋りたくて、あるかどうかもわからない手を伸ばす。

 

ゴポゴポと揺蕩う。でも、淡いぬくもりを得たくてもがく。

 

どのくらいそうしていたか。いつの間にか光は目の前にあって。

 

ザパァ!と派手に地上に降り立つ感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

ええーん!ええーん!

 

衛宮邸ではもう珍しくもなくなった赤子の泣く元気な声が聞こえてくる。

 

「おしめか?乳か?」

 

不思議そうに、読んでいた本から顔を上げた史文恭がわが子を揺りかごになっている幼児ベッドから抱き上げる。

 

「もう史文恭さんまだわからないんですか?お乳ですよねー」

 

清楚がぷにぷにと頬をつついて言う清楚。

 

「どれどれ・・・本当に乳のようだな」

 

刀也を乳房に近づけると、ちゅうちゅうと吸い付いてきたのでほっとしながら乳を与える史文恭。

 

刀也と奏という士郎の息子と娘が生まれてからしばらく。

 

史文恭は慣れぬ子育てに四苦八苦していた。

 

「よくわかるな」

 

史文恭がピタリと言い当てた清楚に言う。

 

清楚はというと、

 

「そうかなぁ、結構泣き声が違うと思うんだけど」

 

こてん、と首をかしげて言う清楚。

 

「あとは日常のサイクルかな。昨日も今ぐらいに泣いてたし」

 

「そうか。・・・ん、もういいようだな」

 

服を着なおして刀也を抱えて背中をトントンと優しく叩く。ほどなくして、げっぷをしてまたウトウトとし始めた。

 

「また寝るのか?もう少し昼間起きていて欲しいものだな」

 

「あはは、しょうがないよー。もう少ししたら日中も元気に起きてるようになるよ」

 

苦笑する史文恭に軽く笑って清楚はそのように告げた。

 

「それにしても士郎君の作った揺り籠、効果てきめんだね!」

 

「ああ。ただ寝かせると烈火のごとく泣き出してしまっていたからな。言ってみるものだ」

 

一切の誇張なく、史文恭か士郎が抱っこしていないと泣き出していたいたため、士郎が頭を捻って作り出したのがこの揺り籠ベッドだ。

 

これのおかげで今は史文恭も読書しながら様子を見ることができる。

 

ただ・・・

 

「日中眠っているから夜も遠慮なく泣くのが大変なところだな」

 

「それが赤ちゃんのお仕事だもん。私たちも協力するから、頑張ろうね!」

 

「ああ。よろしく頼む」

 

そう言って史文恭は優しく微笑んで息子の頭を撫でた。

 

清楚も満足そうに微笑んだ。そこに、

 

トントン

 

『史文恭、清楚。今大丈夫か?』

 

「今寝静まったところだ。静かにな」

 

史文恭が揺り籠をユラユラと揺らしながら許可を出す。

 

すると、するりと音もたてず士郎が入ってきた。

 

「二人とも、昼飯だ。今日はみんなのところに来なかったろ?」

 

「読書していて気付かなかったな・・・何せ両手が塞がっている」

 

「ああー・・・私もお昼ごはん忘れちゃってたよ。刀也君見てたらすっかり忘れちゃってた」

 

二人の反応に苦笑して、

 

「大体そんなところだろうと思ったよ。刀也は俺が見てるから今のうちに食べてくれ」

 

士郎がそう言って抱き上げると、いつの間に起きたのか。

 

うーうーと不思議そうに士郎の頬を触った。

 

「あはは、くすぐったい」

 

士郎が笑うとキャー!と刀也も喜んだ。

 

「不思議だねぇ、まるで士郎君が喜んでるのわかるみたい!」

 

「これでも血の繋がった親子だ。親の機微には敏いのだろう」

 

ずず・・・と汁物をすすりながら言う史文恭。

 

そうして二人が昼食を済ませ、士郎は仕事へと戻ろうとしたとき、

 

「・・・。」

 

「『鳴った』な」

 

そう。音こそ鳴らないが外敵感知の警報が鳴ったのだ。

 

「・・・誰だか知らんが我が子がいるこの家を襲撃しようとは・・・」

 

「清楚落ち着け。それに一応『我が子』とは私が使う言葉だからな」

 

はぁ、とため息を吐いて、

 

「お前にはセイバーの加護があるだろうが、一応言うぞ。生きて帰れ。お前はもう、一人の身の上ではないのだからな」

 

「もちろんだ。魔力も気も満ちてる。負けやしないさ」

 

そっと刀也をベッドに戻し、愛しそうに頭をなでて、

 

「行ってくる」

 

「ああ」

 

その顔は戦士のものだった。

 

 

 

――――Interlude――――

 

そこは見たこともない地だった。

 

「・・・僕は・・・?」

 

右を見る。女子高生が笑いながら通り過ぎた。

 

左を見る。老夫婦が談笑しながら通り過ぎた。

 

先ほどまでの異様な寒さはない。ただ、そこは今まで見たことのない景色だった。

 

「・・・ッ」

 

慌てて手足を確認する。ちゃんとある。やはり先ほどまでの場所とは異なるようだ。

 

「お兄さんどうかしたの?」

 

「え?いや・・・」

 

声を掛けられて戸惑う。自分は一体どうなってしまったのか。

 

最後に見たのは・・・そう、

 

『ああ・・・安心した』

 

輝くような顔で自分の夢を継ぐと言った□□の――――

 

「うっ・・・」

 

ズキン、と頭が痛む今のは・・・

 

「ちょっと大丈夫!?今救急車を――――」

 

「い、いえ、偏頭痛持ちで・・・それより聞きたいことがありまして・・・」

 

咄嗟に嘘をついて誤魔化し、彼は洗脳の基礎魔術を使ってここがどこなのか自分が一体どういう状況に置かれているのかを確認した。そんな中で、

 

「あの、貴方はどこ出身の方ですか?」

 

「!?」

 

洗脳の魔術を使っているのに相手が問いかけてきた。それは魔術が完全にかかっていないことを意味する。

 

(魔術に抵抗力がある?まさか――――)

 

これは完全に運が無かっただけだが、彼が洗脳をかけた人物は川神学園の生徒だったのだ。

 

それも士郎の固有結界に入ったことのある女子生徒で、持ち前の気と、魔術のわずかな違和感の既視感から自力で洗脳から解かれようとしている。

 

(潮時か。まさか魔術に耐性のある子だったなんて・・・)

 

「僕は・・・『衛宮』といいます。それでは・・・」

 

最低限の情報を与えて去ろうとしたとき。

 

「ああ!衛宮君のご親戚ですか!?」

 

(衛宮君・・・?まさか!?)

 

同姓同名の可能性はある。衛宮なんてありふれた名前だ。その可能性は低い。

 

(でも・・・)

 

「は、はい。息子は『士郎』っていうんですがね・・・」

 

パキン

 

「まぁ!やっぱり衛宮君のご親戚だったんですね!士郎君にはいつも依頼でお世話になってます!」

 

「あ、ああ・・・依頼・・・依頼ね・・・息子が貴女の役に立てて嬉しいですよ」

 

女子生徒は感極まったように、

 

「いえいえ!衛宮君のお父さんがこんな渋い・・・いや、恵子、落ち着きなさい。いくら何でも年の差が・・・」

 

「?」

 

最後の方はぼそぼそとしゃべっていて聞こえなかったが、

 

(いる・・・!士郎が・・・あの子がこの不思議な世界にいる!)

 

自分は恐らくあの子に呼ばれたのだ。

 

なぜ冬木ではなく、この全く知らない川神という場所なのかはわからないが間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あった」

 

その後別な人物に洗脳をかけて衛宮邸への道を聞き出し、(相当な有名人になっているらしく、すぐに聞けた)

 

「懐かしいなぁ・・・僕があの屋敷に掛けた網だ」

 

呪いに蝕まれてほとんど魔術が使えなかった自分がかけた精一杯の魔術。

 

「どれ完成度のほどは・・・」

 

そういってスウッと瞳を閉じて戦闘用に切り替える。すると、

 

ガランガラン!

 

警報が鳴った。

 

――――Interlude out――――

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

「では行ってくる」

 

「・・・なぁ、やっぱり俺も行ったほうが・・・」

 

士郎が、一人前線へと向かう清楚に心配げに弓を携えて言う。

 

「何言ってるの!後衛に貴方がいれば必勝なんだから四の五のいわない!」

 

凜が腕を組んで叫ぶ様に言う。

 

桜も、

 

「今の先輩に前線をはるのは・・・おとなしく、不届きものにここから必殺の一撃を叩き込んでくださいね」

 

ニッコリと笑う桜だが、目が完全に笑っていない。

 

「そういうことなら私が行きましょう。清楚なら何も心配はいらないでしょうが、第二の鉾として気配を殺してついていきます」

 

「・・・レオニダスがいないからしょうがないか・・・」

 

本当なら霊体化できるレオニダスがいれば適任なのだろうが、今は九鬼の調練に行っていて不在だ。ランサーはというと、

 

「ここで子供の護衛をします」

 

と、いつになく張りきった様子で言っていた

 

まぁ、家に英霊含め手練れがこれだけいれば家は安泰だろう。

 

(九鬼から連絡はない。ということは奏と揚羽は無事なはず。刀也を何としても守りぬく!)

 

そう思いをたぎらせ士郎は弓を構えたが、

 

「!?」

 

ポロリと矢を取り落とした。

 

「そんな・・・だって・・・!」

 

様々な想いが去来する。誰も身内のいなかった自分を引き取ると言ったまるでじいさんみたいな人。

 

いつもいつも家を空けがちで晩年までほとんど接することができなかった父親代わりの人。

 

自分に魔術の基礎を教えた人そして・・・自分に全てを託して安心した表情で逝った人。

 

地を蹴る。まさか化けて出てきたんじゃないかと心配になって。そして・・・淡い不確かな真実を知りたくて。士郎は走った

 

 

 

 

 

しばらく歩いた先にいたのは黒のコートを身にまとった異様な男だった。

 

(なんだこいつは・・・気を全く感じない)

 

清楚は首を傾げた。気は誰にでも宿るもの。ほんの僅かしかなかったとしても確実にあるものだ。

 

「おや。てっきり士郎が来るのかと思っていたけれど・・・こんなにかわいいお嬢さんとは」

 

「・・・士郎を知っているだと?貴様何者だ」

 

正体不明の存在に警戒心をグンと上げる清楚。

 

「何者・・・か。すまない。僕自身が自分が何者かわからないんだ。でも僕の養子である士郎がこの先にいるのはわかる。士郎に・・・会わせてくれないかな」

 

「戯言を・・・!貴様は忌々しい九鬼にでも提出する!」

 

ドン!と地を蹴り飛び上がる清楚。そのスピードにわずかに驚いた男だがすぐに、

 

―――――固有時制御(Time alter)

 

「――――二重加速(double accel)・・・・!!」

 

男の体がありえないような加速をし、清楚の攻撃を躱したばかりか、お返しにと軸足に足を引っかけた。

 

その異変に清楚が気付いたのは、すべてのことが終わった後だった

 

「ぬあ!?」

 

着地の不安定な状態で軸足を取られていた清楚は見事に尻もちをついた。

 

「今のは・・・」

 

「転ばせて済まない。でもこうでもしないと君は僕を外敵として排除しようとするだろう?僕に敵対の意思はない。ただ士郎に会いたいだけなんだ」

 

(今のはもしかして魔術・・・?でもこの世界に魔術師は――――)

 

「切嗣!!!」

 

「!セイバーじゃないか!君もこの不思議な街に呼ばれたのかい?」

 

「・・・呼ばれたというのは当たらずも遠からずですが。単刀直入に聞きます。貴方は本物ですか?」

 

「・・・。」

 

切嗣。そう呼ばれた男は正直わからなかった。自分が本物の衛宮切嗣で死人ではなく、生きた人間としてあるのか。

 

「わからない。気づいたらこの街に立っていたんだ。でも僕は・・・第四次聖杯戦争で呪いの泥を浴びて・・・セイバー。君に聖杯の破壊を命じた。そのあとは――――」

 

「助かるはずのない子供でもみつけた・・・か?」

 

はっ!っと後悔に苛まれるように頭を垂れていた切嗣が顔を上げる。

 

「し、ろう・・・なのかい・・・?」

 

背も随分伸びて、銀髪ではあるがそこにいたのは、あの幼い少年だった。

 

「ああ、俺だよ。切嗣(じいさん)

 

「士郎!!!」

 

何度もこけそうになりながら衛宮切嗣は走った。

 

「士郎・・・」

 

涙を流し彼は士郎を抱きしめた。

 

「切嗣・・・痛いって」

 

「ああ、そうだね・・・こんなに立派になって・・・」

 

「なんなのだ?」

 

士郎の肩をパンパンと叩く姿にセイバーが複雑そうな顔で、

 

「『衛宮切嗣(えみやきりつぐ)』。士郎の・・・義父です」

 

終始納得のいかない顔でセイバーは告げた。

 

 

 

 

 

 

「しっかし、なんか切嗣(じいさん)若返ってないか?」

 

「そうかい?突然ここに立っていたからね。鏡すら見ていないんだ」

 

「そうか。でもなんで死んだはずの切嗣が・・・?こんな異世界に・・・」

 

「うん?異世界?」

 

などとぶっきらぼうながらも心を通わせた様子の二人。

 

その姿を見て覇王モードではなくなった清楚がセイバーに聞く。

 

「ねえセイバーちゃん。あの二人本当に親子なの?」

 

それに対しセイバーは、仏頂面で、

 

「詳しくは私にもわかりません。私は切嗣が参加した聖杯戦争に切嗣のサーヴァントとして呼ばれ、その10年後に養子の士郎の参加した聖杯戦争に士郎のサーヴァントとして呼ばれたのです」

 

「そっかぁ・・・セイバーちゃんには空白の時間があるんだね。でも親子そろってセイバーちゃんを呼び出せるなんて奇跡もいいところだよねっ」

 

「・・・。」

 

清楚は楽しげだが、それも複雑な事情があったことにセイバーはまた口を閉ざしてしまう。

 

「どうしたの?セイバーちゃん」

 

「いえ、ここではちょっと・・・」

 

どういったものだろう切嗣は常に理を取った正真正銘の外道で卑怯な行いの数々を自分は目にしてきたこと。

 

それがふたを開けてみればすべての人を救おうとする大それた信念の持ち主であり、あの卑怯な行いも最高、最短、最強の手を己の良心を削りながら行っていたとは。

 

(切嗣が聖杯を破壊しろと命じた時はアイリスフィールの命を無駄にし、私の願いまでも否定する外道と思っていましたが・・・彼は聖杯の泥を浴びたためにその本質を知ることになったのですね)

 

「切嗣」

 

「なんだいセイバー」

 

なんて穏やかな声その姿が怒りがはちきれそうになる。

 

「私たちの聖杯戦争後私たちが顕現させたのは小聖杯(・・・)だとわかっていたはずです。その本質を知った貴方が術式をそのままにするとは思えない。なぜあれほどの犠牲を払って大聖杯を破壊しなかったのですか?」

 

「・・・厳密には何もしなかったわけじゃない。僕は、二度と冬木で聖杯・・・呪いの聖杯を顕現させないように術式が跡形もなく吹き飛ぶ爆弾を仕掛けていたよ」

 

「それでは・・・」

 

「ところが、第四次聖杯戦争が予定外に中断されたため、60年周期に合わせていたのが10年後に早まったせいで不発したのよ」

 

入口まで来たところで凛がそう告げた。

 

「リン・・・では爆弾は確かに仕掛けてあったと?」

 

「そうだセイバー。俺もロードの一人と術式解体に行ったときにみた」

 

「60年周期・・・だから桜の時も――――」

 

「ん?桜ちゃん?」

 

「いえ。なんでもありません」

 

これ以上は語るまいとセイバーは口を閉じた。

 

 

 

 

事態が急変したことで諸々の調整が必要になり、揚羽が奏と護衛の李を連れて衛宮邸にやってきた。

 

「貴様が衛宮切嗣か」

 

「子連れのところ申し訳ないね。そうさ僕が衛宮切嗣だ」

 

大事に取っていた切嗣が向こうで愛用した羽織は置いてきてしまったので、新しく準備しそれに着替え、穏やかな瞳を携えた彼はゆったりとした印象を周囲に与えた。

 

だが・・・

 

 

「ふむ・・・よい。凛、桜。先にそちらの都合を終わらせよ」

 

何も問わずいきなりそう言った。

 

「『凛』・・・遠坂家のご息女だったかな。そちら『桜』ちゃんは間桐の家に引き取られた・・・・」

 

「―――――ッ!!!」

 

「―――――ッ!!!」

 

パパァン!!!と鋭い張り手が切嗣の頬を打った。

 

「ええ、衛宮切嗣・・・!いつか会うことがあるならギタギタにしてやろうと何度思ったことか・・・!!!」

 

「姉さんに同じです!貴方のせいで先輩は・・・!」

 

フーッ!フーッ!っと煮えたぎる怒りを僅かでも逃がそうとする二人にいきなり張り飛ばされた切嗣は困惑気味に、

 

「ま、待ってくれ君たちは何に怒っているんだい?確かに僕は罪深いことをしてきた。許されようなんて思わない。でも、君たちは何か決まったことに怒りを抱いてる。そうなんだね?」

 

怒りを露わにしながら、二人ともツーっと涙を流していることが切嗣には見て取れた。

 

「まずは魔術鍛錬」

 

「貴方、士郎に間違った魔術鍛錬を教え込んだわね!?」

 

「・・・ああ。確かに僕は意図的に魔術師にとって中途半端な鍛錬法を教えた。成果が出なければいずれあきらめると・・・」

 

すかさずバチン!!!という音が響き渡った。

 

「あんな無駄で命がけのことを何千、何万回とさせるくらいなら初めから魔術なんて教えるな!!!この馬鹿はね、貴方が死んだ後もずっと・・・!!!」

 

そこまで聞いて切嗣はまさかと思った目で士郎を見た。

 

「まさか士郎・・・あの鍛錬を僕が死んでもなお続けていたのかい・・・?」

 

士郎はバツが悪そうに頭を掻き、

 

「そうだよ。俺は第五次聖杯戦争で遠坂に仲間だって認められるまであの鍛錬をやり続けた」

 

「そ、そんな・・・」

 

愕然とする切嗣。

 

「凛。具体的にその間違った鍛錬法とはどういうものなのだ?」

 

史文恭が覚悟を決めた顔で問う。

 

「通常、魔術師が最初に行う儀式として『魔術回路の生成』があるの」

 

ギチリと歯を食いしばって言った。

 

「この体内に魔術回路の生成するのは魔術師としては外せない儀式なの。でもこれは命がけの行為でね。多大なる苦痛と、コンマ1センチでもずれたら体の内側をたちまち破壊してしまう。それを通り抜けて魔術回路の芯を作るの」

 

「必須ということは何も間違ってはいないのではないか?まぁ生死の可能性は置いておくにしても・・・」

 

「問題はその後なんです・・・」

 

桜もきつくにらみつけて、

 

「魔術回路の生成は最初の一回でいい(・・・・・)んです。生成されれば自分の限界値まで生成されます。その後は回路を開き(・・)魔術を使い、必要のないときは閉じて(・・・)工程を終了させる。これだけでいいんです。でも・・・」

 

「魔術回路の生成しか教えられなかった士郎は・・・馬鹿正直にこの魔術回路の生成を毎日欠かさずやっていたわけ。そこの男が死んだ後もずっとね」

 

「・・・。」

 

自殺行為という他なかった。この男としては魔術を教えたくない。あきらめてほしいからこその行いだったのだろうが、士郎が諦めず続けるなど夢にも思わなかっただろう。

 

「士郎は毎日欠かさず土蔵でこの作業に勤しんでいたらしいわ。この自殺行為をね」

 

「先輩は体力も気力もこの鍛錬に使い尽くしてよく土蔵で朝まで眠っていたのですが、私は先輩が今度こそ死んでしまったんじゃないかって起こしに行くのが怖かったです・・・」

 

「その・・・繰り返せば限界値を突破したりは・・・」

 

最後の希望をもって清楚が問うが答えは冷ややかなものだった。

 

「するわけないでしょう。魔術回路は個人によって本数が決まってるの。何度も生成したとしても同じ道を辿るだけで全くの無意味よ」

 

「「「・・・。」」」

 

閉口するしかなかった。そんなことになるなら初めから教えないか、せめてこれは一回だけでいいと教えればよかったものを。

 

「・・・すまなかった。こんなことなら初めから――――」

 

「それは言いっこなし。現に俺はこうして生きているしお陰でセイバーとも縁を結べた。結果オーライさ」

 

そう言って士郎は様々な意味を携えてほほ笑んだ。

 

 

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