オイッス!オレ、カラス!
オレは小人のお譲ちゃんと人間の坊っちゃんが屋敷を出ていった後のある日、オレはニーヤの住む古い屋敷の上空を飛び回っていた。
朝から少し暑くは感じられたが、それでも心地は良かった。
そんな時、ふと下を見渡すと、ニーヤがノコノコと歩きながら姿を現した。
(おお、今日も出てきたな。それじゃ早速いつものことをやってやるか。)
オレはそう思うと、高度を下げ、ニーヤの背中に着地した。
そしていつもどおりに(?)くちばしで背中をツンツンしてやった。
で、ニーヤが反撃してくるところを素早くかわしてって…、アレ?今日は反撃してこないぞ。おかしいな?
「おい、どうした?」(注:人間には「カア」としか聞こえていません。)
オレは不思議に思い、ニーヤに聞いてみた。
「何だよ?」(注:人間には「ニャー?」としか聞こえていません。)
「ニーヤ、お前今日は何か変だぞ。どうしたんだよ?」
「どうしたって、何が?」
「何かかなり落ち込んでいるようだが。」
「…まあ、その可能性は否定出来ないが。」
「そうか。あの小人のお譲ちゃんが引っ越していったせいで…。」
「なっ!?」
「ほら、やっぱりな。」
「うるせえ!!」
次の瞬間、怒ったニーヤは素早い動きでオレにカウンターパンチ(前足だからカウンターキック?)をお見舞いしてきた。
ビシッ!
オレはうまくかわしたつもりだったのだが、足に攻撃を受けてしまった。
「イテッ!」
「よし、今日は当たった!」
「いつになく気が立ってんな、お前。」
「当たり前だ!オレは寂しいんだ!一人ぼっちになってしまったんだよ!」
「屋敷にはオバハン2人がいるのに?」
「あの2人では寂しさは埋まらねえんだよ!」
「そうか。かわいそうに。」
「うるせえ!」
オレはニーヤに少し同情しながらも、いつもどおりに(?)からかっていた。
「なあおい、お前よお、いきなりこんなことを聞くのもなんだが、アリエッティがどこに引っ越していったのか知っているか?」
「アリエッティ?」
「名前知らんのか!例の小人の少女だ。」
「ああ、あの娘か。んーーー、知らんこともないがな。」
「何、本当か?」
ニーヤはビクッと反応して立ち上がり、オレに問いかけてきた。
「お、おう。あの日の朝、ヤカンに乗って川を下っていくところを見ていたからな。」
「マジ?お前、見ていたのか!!」
ニーヤは興奮しながらオレにそう言ってきた。よほどうれしかったのだろう。
「ああ、見てた。お前が叫びながら後ろを走っていたところもな(笑)。」
「……!!」
オレがそう言うと、ニーヤは途端に顔を赤らめ、起こったような顔でにらみつけてきた。
どうやら図星だったようだ。
「いやー、あのシーンは見応えあったなあ。お前があんなにお譲ちゃんのことを気にかけていたなんて(笑)。」
「てめえ!!」
ニーヤはカンカンに怒って、またカウンターパンチ(キック?)を仕掛けてきた。
だが、今度はヒラリとうまくかわした。
「まあ、そんなに怒るなって。お譲ちゃんの居場所くらいなら教えてやるからよお。」
「……!!」
ニーヤは怒った顔のまま、すぐ上を飛んでいるオレを黙ってにらみつけていた。どうやら言葉が見つからないようだ。
「どうした?お譲ちゃんがどこに行ったのか知りたいんだろ?」
「……!!」
相変わらずニーヤは返答出来ずにいた。だが、顔を見れば答えははっきりしていた。
「まあ、落ち着けって。教えてやるからよお。」
「マジでか??」
「ああ、オレは嘘つかねえ。何なら今からでも案内するぜ。」
「……。」
ニーヤは返答に困ったのか、見上げていた顔を下げて考え込んでしまった。だが、内心では明らかに「案内してくれ。」と言っていた。
何で分かったのかって?オレたちゃ悪友だからな。
相手の考えていることくらいは分かるもんさ。
「とにかく、オレは今からお譲ちゃんが新たに移り住んでいった場所にいく。居場所を知りたけりゃ、ついてきな。」
「……。」
「チャンスは一度しかやらねえぞ!この機会を見逃したらもうあのお譲ちゃんには会えなくなるが、それでいいのか?」
「嫌に決まってるだろ!」
「OK。じゃあ話は早い。ついてきな。」
「…分かった。てめえに指図されるのは性に合わんが、今回ばかりは見逃してやる!」
ニーヤは納得がいかない表情をしながらも、とりあえずはオレの意見を聞き入れたようだった。
それからオレは少し空を飛んでは地面に着地する動作を繰り返しながらニーヤを案内していった。
途中、川原沿いの道に差し掛かった時には、ニーヤが叫びながら全力疾走したシーンを思い出して思わず噴き出しそうになったが、そこは我慢した。
やがて、オレたちゃ小人の坊っちゃんがヤカンを岸に固定し、お譲ちゃん達が上陸したところまでやってきた。
この時点でヤカンはすでになくなっていた。
一見すると本当に小人がここまで来たのかと言いたくなるような状態だった。
だが、そこは小人だ。人間にその存在を知られないように、跡を残さなかったということだろう。
次に、オレたちゃお譲ちゃん達が通っていった未舗装の道を進んでいった。
途中、ヘビのいた形跡を見つけたが、それは無視していくことにした。
ニーヤに説明したところで、得になることでもないし。
さらに道を進んでいくと、その先には一軒の家らしい建物(実際は倉庫)が見えてきた。
「ニーヤ、あれだぜ。」
「おおっ、あれか!」
ニーヤは目を大きく見開き、その建物を見つめた。
恐らく、あそこにお譲ちゃんがいるのか!とでも思っているんだろう。
「さあ、会いに行けよ。感動の再会が待っているぜ。」
「あのさ、もう一度聞くが、本っっ当にあの建物の中にアリエッティは住んでいるんだろうな!?」
「本っっ当だぜ!嘘ついたらオレが針千本飲んでやるよ。」
「分かった。じゃあ、俺はこの辺りの物陰に隠れてアリエッティがいることを確かめる。」
「なんだそりゃ。堂々と行けばいいのに。」
「だってさあ…、会いに行ったところで何話せばいいのか分からんし、彼女に『何しに来たのよ!』なんて言われたら嫌だからな。」
「んなこと言って、本当は恥ずかしいだけじゃねえのか?」
「そんなことはない!ただ、今回は…、その…、ここにいるということを確かめたかっただけだからな。」
「ふうん。まあいいわ。オレは自分の役割を果たしたんだから、これで失礼するわ。」
「おう。勝手に失礼しろ。」
ニーヤは皮肉たっぷりにそう言うと、近くの茂みの中に入っていった。
どうやら本気でお譲ちゃんが姿を見せるのを待つつもりのようだった。
オレはその様子を見届けた後、「ほなさいなら。」と言ってその場を飛び去っていった。
…というのは嘘で、実際は飛び去っていくふりをして少し離れた木の枝から一部始終を見ていた(笑)。
ニーヤのやつ、その後、本当にお譲ちゃんが姿を現すまで、約30分の間茂みで待ち続けた。
で、姿を見たらそれで安心したのか、お譲ちゃんに会いに行こうともせずに来た道を引き返して帰っていったんだよ。
勿体ねえなあ。せっかくオレが感動の再会の場面をお膳立てしてやったのに…。