※pixivでも別名義で投稿しています。
俺のトレーナー室には家具が多い。散らかっている訳では無いが、ハンモックやらこたつやらリクライニングチェアやらヒトを駄目にするソファやら。基本的に俺が寝るときに使う物が多い。
この前スズカに怒られたので流石にこたつはしまったが。よく昼寝をする俺にとっては寝る場所の選択肢が多いと楽しいものだ。
最初はそんな俺を見て呆れていたスズカだったが、最近はトレーナー室に行くとすやすや寝ているスズカに遭遇することが多くなった。異性と二人きりの空間で寝るのは度胸が必要そうだが、スズカも慣れてきたのか。それとも俺の生活がうつってしまったのか。こんな生活に慣れてしまうなんて将来が心配になるが。
そんなスズカだがこの前気づいた事がある。スズカの寝相が可愛らしいのだ。スズカが寝る時は大抵ソファで寝ているのだが、横になって丸まって寝るのだ。161cmという身長で丸まるとより小さく見えるのだ。3人ぐらいが座れるソファなため、寝ようと思えば俺も寝れそうな隙間が出来るのだ。流石にやりはしないが。
にしてもこうやって寝ている顔をまじまじと見ると可愛らしいものだ。高等部とはいえどもまだまだ子どもなんだなぁと実感しつつスズカの頭をわしわし撫でてみる。そうするとスズカが少し喜ぶように微笑んだ。癒やされたし仕事に戻るとするか。
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私のトレーナーさんはよく寝る方です。授業が終わってトレーナー室に向かうと大抵寝ていますし、これだとよく寝れるからなんて言って家具を買って持ってくるし、私が怒っても「スズカも寝てみたら」なんておちゃらけて言ってきます。
そんなトレーナーさんでもトレーナー室でそんなずぼらな所はみませんし、練習の時は的確な指示で私を導いてくれます。そんなトレーナーさんを見てからか学園内ではスズカのトレーナーが格好いいとか完璧だとか話しているのを良く聞きます。本当のトレーナーさんはそんなこと無いのに。
そんな気持ちになったある日の放課後、トレーナー室を訪れると珍しくトレーナーさんは寝ておらず誰も居ませんでした。ふとスマホを確認するとトレーナーさんから『会議が長引きそうだから先にグラウンドに行って自主練しといてくれ』との連絡が入っていました。
連絡を見て部屋を去ろうとするとトレーナー室のソファが目に留まりました。トレーナーさんが毎日「今日はこの位置が丁度良くてな...」と言いながら移動させているソファ。トレーナーさんが来るまでの間なら少しぐらい良いかしら。
試しにと座ってみると雲みたいに柔らかいソファでした。座るというより沈むような感覚と日光で丁度良い温かさで自然とリラックスでき、思わず息が漏れました。窓から流れてくるそよ風も心地よく気が付けばまぶたを閉じていました。この感覚...まるで草原の中にいるみたい...
結局あの後寝ているところをトレーナーさんに見つかってしまい、微笑ましい目で見られてしまいました。気づいたのなら起こしてくれれば良いのに...。
そんな一悶着があった次の日、私はいつもより早めにトレーナー室に向かっていました。あの寮のベッドではできない心地の良い眠りをまたしたくなったからです。
いつも通りに行ったらトレーナーさんが使ってでしょうし、使ってないにしても、今まで散々断ってきたのに今更になってトレーナーさんの前で寝るのも少し恥ずかしいですし。
そんな事を思いつつドアを開けると既にトレーナーさんがソファを占拠していました。残念がりながら近づくとソファが大きいからか1人分入れる程度残っていました。
きっとあそこに入って寝たらきっとまたぐっすり寝れる...けどトレーナーさんとあんなにくっついていたら緊張で寝れないかもしれない...でも...
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ここ最近動物を抱き締める夢を見るのが多くなったような気がする。種類は犬だったり猫だったりと様々だが俺が寝ているところに動物がやってきて、その動物を抱きしめると不思議と本当にいるような温かさを感じ、その温かさを堪能していると気がつけば起きているのだ。
可愛らしい夢を見るものだな、と片付けてもいいのだが、確かに抱きしめている感覚があるのだ。まるでそこにいるようにだ。最初は不思議な夢を見るなぁなんて呑気に思っていたが、何回も起きるので次第に怪しむようになった。それから毎日昼寝する前に何か変わったことは無いかと確認し始めると、どうやらスズカがいないときだけこの夢を見るようだった。
…だから何だ?
「なぁスズカ」
「?どうしましたかトレーナーさん?」
結局あれ以外の変化は見つからなかったのでスズカに聞いてみることにした。
「俺が寝ている間にスズカ何かしてないか?」
「えっ」
俺が何気なく尋ねてみるとスズカは急に身体が固まり尻尾も耳もピンと張ったまま止まった。まるで彫刻のように固まってしまったスズカに面食らっているとスズカの頬が徐々に赤く染まっていった。
「お、お先に失礼しますっ!」
「スズカ待っt…」
いきなり動きだして走り去ってしまったスズカは瞬く間に見えなくなってしまった。
スズカが何かしら俺にしているのだろう。こうなっては仕方ないので明日にでも寝るふりをして張り込んでみるか。問題は俺がその前に寝てしまわないか心配だがまぁ大丈夫だろう。
○○○
昨日の今日だったのでもしかしたらトレーナーさんが私がやっていることを見破ろうとしているのかと思いましたが、静かにドアを開けるとトレーナーさんは小さくいびきをかいて寝ていました。
誰かに見られてしまわないように鍵を閉め、トレーナーさんが寝ているソファへ近づきます。…もしかしたら起きてるかもしれないし念のため。
「トレーナーさん、大好きですよ」
顔が熱くなるのを感じながらトレーナーさんにだけ聞こえる声で囁きます。...寝ているトレーナーさんに言ってこんな状態なら実際に言えるようになるのは相当先かしら。
そんな告白まがいな物を言ってもトレーナーさんの反応が無いのでどうやら本当に寝ているみたいです。
安心してソファの残った隙間に丸まるようにして寝っ転がります。そうやってトレーナーさんにくっつくと…
「んぁ…」
トレーナーさんは私を優しく包むように抱きしめてくれます。普段のトレーナーさんは頼んでもこんなことしてくれないので少し不思議な気分です。
「ふふっ...」
トレーナーさんの腕を自分でさらに引き寄せ、ぎゅうっと締め付けるように抱きしめてもらいます。
そうやってトレーナーさんの香り、温かさを感じながら眠る時間が、私は大好きです
スズカ…ちっちゃく丸まって寝てくれ…。
それはそうと最近ディスコードのウマ娘作家サーバーに入ったのですが、とても楽しいです。自分よりも凄い作家さんがいっぱいいて良い刺激になりますね。
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