この世界において、Bキャンセルとは2つの意味を持つ。
一つはある特定の人間にとっての、進化キャンセル、という意味。
もう一つは、その特定の人間、つまり厳選厨の蔑称である。Bキャン野郎、とよく呼ばれるが、これは彼らが引き起こした奇形進化が原因である。
ゲームでならBキャンセルがあるのに!と騒ぎ喚く彼らの態度から、なんのことかはわからないがあまり良くない言葉なのだろう、ということで蔑称となったようだ。
それはさておき、奇形進化とは、正規の方法で進化をキャンセルせず、殴ったり叩いたりしたことによって、従来の形と異なるようになってしまったもののことをいう。
進化の際の光りに包まれている状態は、いわばサナギの中身のようなもので、非常に弱く、柔らかい。
そのため、進化キャンセルはあまりよろしいことではなく、やるとしても正規の手段のみで行うことが推奨されている。
その正規の手段とは、モンスターボールに戻すというシンプルなことである。非常に弱い、ということはほんのちょっとした刺激でも進化を止める理由になる。そのため、ボールに戻すための光線を当てることでポケモンを傷つけることなく止めることが可能なのだ。
ちなみにこの情報はトレーナーズスクールなどの学習施設において何度も何度も繰り返し教育するような重要事項であり、普通のトレーナーならば、至極当然に理解していて当たり前なのだ。
が、それを知らない、習っても忘れる大馬鹿共がいる。それが厳選厨を含む転生者である。なまじ知識があるぶん、トレーナーズスクールなぞ行かずにポケモン保有資格試験、通称ポケ検を受け、合格してしまうことになる。
その必要な知識を持たずに、相棒が進化するのを止めようとして、叩いてしまったことで起こるのが、進化不良、もしくは奇形進化、である。
一例を上げてみると、イーブイからニンフィアに進化する際に起こるものが最近では多い。
フェアリー技を覚えた状態かつ、なついている状態でレベルアップ、という進化条件はかなりあっさりと達成されてしまうため、他の進化にしたいトレーナーに大慌てで止められる。
しかし、方法を間違った上で阻害したために奇形進化してしまったニンフィアはというと、色とリボンがおかしくなってしまうケースが多い。色はイーブイの頃のままの茶色と白の2色で、リボンはほとんど伸びず、イーブイのころの首周りのもふもふが残ったまま、となんとも奇妙な姿である。おまけに、これはただの一例に過ぎず、もっと奇妙な形になってしまうこともあるため、正しい手段で行わなければならない。
一応これにも治療方法はあるとはいえ、気味悪がって逃してしまうトレーナーが多い。先程の例のように、明らかに奇妙な形になってしまうため、逃されても元の群れには戻れない。群れから迫害され、追い出され、最終的には自暴自棄になって暴れまわることになる。
そして一般的には知られていないこととして、奇形進化した個体は強いのだ。それも、野生でいるときのみ異常なほどに強い。
一説には進化の際に使われるはずのエネルギーが不完全な進化により、体内にとどまり、攻撃に使われるようになった、とのことらしいが、本当なのかどうかは定かではない。
さらには自暴自棄であるがゆえに生命力を削って異常な火力を出し続けているため、常時いのちのたまを持っているのと変わらない破壊力を持つ。
そんな奇形進化個体が、今回のコクダンの相手である。
しかもかの悪名高きボーマンダなのだから、なお厄介だ。600族、メガシンカ持ち、という性質に加え、獰猛な性格のため、要注意ポケモンに種族まとめて指定されている。今回の事例では、逃したBキャン野郎が殺されたために、人間の味を覚えているのではないか、という懸念の元に早急な対処と、死体回収が求められているが、何故かボーマンダはその場所から動いていないようである。
「絶対痛いやつだ、噛まれるのは嫌だぞ、割とマジで嫌だ。」
そんな我らの主人公、めっちゃ嫌そうな顔をしつつ、相棒のヨノワールのチェルノボグに持ち上げられて運ばれる情けなさを見せている。
「噛まれるどころで済む気がしないよ…。なんだこの地獄絵図。」
地面はひび割れ、火の海に包まれ、そして中心には、従来と異なるボーマンダが一匹、怒りのままに荒れ狂う。
そのボーマンダには、翼が無い。
進化を阻害され、翼を失った怒りを己のトレーナーに叩きつけ命を奪い、今もその激情を収めようとはしない、狂った竜である。
以前、ドラゴンタイプはプライドが高いといったが、中でもボーマンダは頭抜けてそのプライドが高い。大本の性格からして凶暴かつ傲慢なドラゴンであり、タツベイの頃から空を飛ぶことに憧れているポケモンだ。
そのポケモンが、空への夢を奪われたのなら、怒りのあまり、我を失うのは当然だ。
「…これ捕獲するの?本気で言ってる?俺死にたくないんだけど。」
保護が目的とはいえ、常時超高火力の技を乱射してくる存在をどう倒せと…、と悩みつつも、チェルノボグを突撃させる。ただ、それだけでは流石にいくら相棒とはいえどもやられるため、ドラゴン技を受けるための盾として、ミミッキュのミミたんがチェルノボグの頭の上に鎮座している。
「しっかたないなぁ…。瀕死にしても捕獲はできるから情け容赦なくやるよ!ミミたんは呪ったあとはドラゴン技の壁になって!チェルノは両手冷凍パンチでラッシュ!」
ミミたんが自らの体力を削り、呪いをかける。激怒の形相で龍の波動を口から放とうとするボーマンダの口を呪いのエネルギーが貫く。当然口の中で龍の波動が暴発し、ほんの僅かな間だけ、隙が生まれる。そこを、チェルノボグは見逃さない。冷気をまとった拳が、脳を揺らすために顎を殴りつけ、間髪入れずに乱打の雨がボーマンダの全身を打ち据える。
「…やけにボーマンダとしては効きにくいなと思えば、こいつひこうタイプ無いのでは?」
そう、奇形進化の特徴はもう一つある。中途半端な進化は本来得るタイプを喪失したり、進化することで喪失するタイプを喪失しなかったりと、従来のタイプと異なるために対処が難しいことが多い。
ボーマンダであれば、翼があるから飛行タイプがついているわけで、突然変異が起きず、翼が生えなければ当然ドラゴンタイプのみになる。
「どうしたもんかなぁ…。」
じわじわと体力を削っているとはいえ、これでは対処に困る。
「…やると怒られるけど仕方ないか、フラガラック!3回剣の舞したあと峰打ち連打!周囲の被害は気にしなくていい!」
ダイブボールから飛び出したカミツルギのフラガラックはひらりひらりと舞い踊る。端から見れば紙切れが宙を舞っているだけにも見える気もするが、立派に技を使っている。舞えば舞うほど切れ味は増し、空気を切り裂く音が段々と大きく強くなっていく。
「ミミたんとチェルノボグは力ずくで抑え込んで!」
峰打ちなどの体力を減らす技を当てる際に、ゲームであれば命中率がそのまま適応されるが、現実であれば避けるポケモンも数多い。
更に、剣の舞などで攻撃力を上げている場合は本能的な恐怖感から余計に逃げようとする。
そのため、こういう緊急事態ではゴーストタイプのポケモンに抑え込ませることで必ず当てて弱らせる、ということも必要となる。巻き込んでもゴーストタイプなのでノーマルタイプのみねうちがダメージを与えることはない。ただこの手法はポケモンハンターやロケット団などの犯罪組織もよく行う手口のため、一般的には褒められたことではないが、今回は緊急事態なので仕方ないことである。
怒りのままに二匹を振り払おうと暴れ狂うボーマンダ目掛け、絶大な威力を持つ峰打ちが雨霰と降り注ぐ。
最初は怒りの咆哮が口から放たれ、もがいて暴れているものの、5発、6発と当たるうちに、怒りの声からだんだんと苦痛の混じった悲鳴に変わり、もがく力も弱くなった。
「お疲れ様、みんな。」
全員をボールに戻すと、まだ弱々しくもがくボーマンダめがけてゴージャスボールを投げつける。
クイッ、クイッ、クイッ。
カチッ。
無事に一回で捕まえることができ、ホッとしたのも束の間、あたりの惨状に唖然とする。
元々焼け野原だったうえ、地割れが起こっていたその場所はところどころ凍り付き、さらに峰打ちの余波で粉々に切り刻まれた土地や木々がそこらかしこに見られる。死体らしきものがバラバラに粉砕され、回収するのも大変そうだ。
「ボーマンダのせいだ、俺は知らん。」
手の中のボールは、濡れ衣だ、とばかりに震えた。半分はお前のせいである。
ゴージャスボールで捕獲されたボーマンダはポケモンセンターへと運び込まれた。先程、奇形進化にも治療法があると言ったが、どの種のポケモンでもやることは概ね同じなのである。
それは不思議なアメを溶かしたものに、ポケモンのアメ、というものを溶かしたものを加え、いくつかの薬を混ぜたものを、飲ませるか、異常の起きた部位に塗りこむというのが現在確立されている治療方法である。
ポケモンのアメというのはある地方でのみ見つかる、ポケモンを連れ歩くともらえるアメで、与えるとポケモンを強くする効果がある。ポケモンごとにアメの種類が異なり、更にサイズ違いもあるため、まだまだ研究段階ではあるが、進化不良や奇形進化したポケモンに与えると外部からの刺激で狂ったDNAを修正する役割を持つ。ただ、それだけではすぐに進化が行われないので不思議なアメを混ぜて使われるのである。
ただし、ボーマンダなどのように一部のみに進化が起きていない場合は、塗り薬で処置することでその部位を正しく進化させることが可能になるのである。
今回の事例では、完治したから良いが、治らないこともある。
そういうときは、保護区に送られるか、安楽死かのどちらかをポケモン自身に選ばせるのだ。
くれぐれも、やってはいけないことだということを忘れてはいけない。
最低でもポケ検取り消しの犯罪のため、トレーナー諸君は肝に銘じてほしいものである。
これから書いてほしい話を募集します。
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カミツルギ捕獲作戦
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コクダンの日常
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Harvesterの他メンバーの話
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コクダンvsタクト
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