あんまり上手く行った気がしてませんが、お手柔らかにお読みください。
この話は、かつてのコクダンがアローラ地方に勤務していた、今から大体四年前頃のことである。
その中のポニ島の勤務だったのだが、今も昔も変わらず、発展度合いは異様なほど遅く、交番すらない。他に職員がいないこともあり、しまクイーンのハプゥに家を借りて、事務所兼住宅として利用していた。
他に職員がいない理由としては、ポニ島がまだまだ未開の地ということだろう。その頃はまだ人の手が奥地へと及んで居ないがために、人が原因である生態系の破壊につながるような出来事が起きておらず、人を多く配置しなくてもよいのである。
スカル団などに悩まされることはあれど、特に大きな生態系の破壊も無く、相棒のチェルノボグを連れて自転車を漕ぎながら見回るのが日課となっていた。言うほどなにかやることもなく、ナマコブシを投げたりとのほほんと暮らしている島民達を他所に、腕が鈍ってはいけないと一人エンドケイヴへと足を運び、野生のポケモン相手に取っ組み合いを繰り返して日々を過ごしたり、ハプゥと手合わせをしたり、畑の手伝いをしたりと意外と充実した日々を満喫していた。
ある朝、寝ぼけ眼で朝食のマサラダを齧っていたところ、家のドアが轟音とともに吹っ飛び、ついでにコクダンご飯と眠気が吹っ飛んだ。
「コクダン!寝てる場合じゃないのじゃ!」
ドアをバンバドロが蹴り飛ばし、ハプウが家の中に飛び込んできた。
「…わっつはぷん?」
寝癖が爆発しているコクダンをチェルノボグが海の民の村へと連行すると、まだ夢を見ているのかと思うほどの光景がコクダンの眼前へと広がった。
何もかもが唐竹割りにされているのである。ポケモンセンターも、レストランのあるホエルオー船も、村の中心の巨木も、皆一様に真っ二つにされていた。
それも奇妙なことに、大型のポケモンが爪や牙で切り裂いたにしては断面がまるで刀に真っ二つにされたように整いすぎていたのである。
しかもその斬撃の跡からして相当な切れ味を持つ刃物でもなければこう綺麗には行かないはずだという妙なものなのだ。
犯人の姿を探して辺りを走り回っている間にさらに事件は起こった。今度は島の奥にある岩山の一部が切り飛ばされたのである。
「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「おれは山めがけて走っていたはずだが、その目の前でその山が切り裂かれた」
な… 何を言っているのか わからねーと思うが
おれも 何をされたのか わからなかった…」
そしてまたしばらく走り回り、海へ出る。島の周りを一望できる場所まで来ると、コクダンはその光景に思わず言葉を失った。
ナッシーアイランドが、ナッシーもろとも縦横無尽に切り裂かれていたのである。
それだけではない。
島全体が巨大な刃物によって切り裂かれたかのように、縦にも横にも真っ二つになっていたのだ。
もはやこれは事件ではなく災害だ。
そう思ったコクダンはすぐさま現場の指揮を取るべく動き出した。
まずは被害状況の確認である。
幸いなことに死者こそ出なかったものの、怪我人は多数出た。
兎にも角にも手がかりを求め、ハプウと共に最も被害の大きいナッシーアイランドに向かうことにした。何故にハプウが一緒かと問われれば、彼女は非常に責任感が強かったからである。まだカプ・レヒレに認められていないとはいえ、暫定的なしまクイーンとしての彼女は日々島民のために一生懸命になって努力しているのだ。
そんな彼女が、このような大惨事を見て自分がどうにかしなくてはいけない、外部の人間のコクダンに任せっぱなしではいけないと思ったために、コクダンと共にコイキング丸に乗り、ナッシーアイランドへと向かったのである。だがしかし、そこで見たものはあまりにも衝撃的なものであった。
何しろそこには誰もいなかったからだ。
ただただ無残に引き裂かれて転がっているポケモン達の死骸があるだけだった。それも不気味なことに血だけが吸い取られ、ミイラのようになったものが大半を占めていた。
ハプウもコクダンもそのあまりの出来事に立ち尽くしたその時であった。
ひらり、ひらり。
空から一枚の紙が舞い降りてくる。強風にでも吹き上げられたものだろうか、と首を傾げていると、段々とその紙の詳細が掴めてくる。
あれは、折り紙だ。
熨斗のような、折り紙だ。
そこまで認識した瞬間、コクダンはチェルノボグに折り紙に向かって炎のパンチを叩き込むように指示した。そばで見ていたハプウは突然のことに驚き、問いただそうとしたところ、ギィィィィンとまるで抜き身の刃物同士を打ち合わせたような音がチェルノボグの拳と折り紙から鳴り響く。
コクダンはようやく事件の犯人を特定するに至った。
あれは、ウルトラビースト。
UB04 SLASH ことばっとうポケモンのカミツルギである。この世界の常識では考えられない攻撃速度と攻撃力を誇る危険な存在であり、鉄塔ですら切り裂く鋭利な切れ味を持つポケモンである。
強大な力を持ち、アローラ地方を脅かすものとして現地で噂になっている謎の存在を、総称してウルトラビーストと呼ぶ。
ポケモンであるともエイリアンであるとも、あるいは別の存在であるとも一時期噂されていたが、ウルトラホールから繋がる異世界「ウルトラスペース」に棲む特殊なポケモンの一種である事が判明している。
異なる特徴を持つ複数の種類が存在し、国際警察からはそれぞれコードネームで呼ばれている。
ウルトラビーストの持つ危険性は従来のポケモンにおいても上位に位置し、個々の戦闘力も伝説ポケモンに匹敵する程となる。
そのため国際警察は彼らを第一級の危険生物と見なし、場合によっては殲滅もやむなしと言う判断を下している。
「ねぇ、ハプウ。俺あいつ捕まえられる気しないけど、どうすればいいと思う…?」
「どうもこうも言ってる暇ないじゃろ。捕まえなくてもいいから、瀕死にして然るべきところに引き渡せばよい。」
「あー……まぁそうなんだけどさ……」
ウルトラビーストの問題点として、とにかく捕獲しにくいことが挙げられる。モンスターボールがウルトラビーストをポケモンとなかなか認識してくれないらしく、捕獲成功率が通常の10分の1にまで低下されてしまうので捕獲しにくいのだ。
モンスターボールの捕獲システムの一つに、対象をポケモンかどうかを識別するものが存在している。ボールスイッチ付近と内部にセンサーが存在しており、接触した対象がポケモンでない場合はそもそも捕獲の動作を行えない。
しかしながら、誤作動が起きることもあり、その場合に内部のセンサーで感知してすぐに放出するシステムが備わっている。そのため、人間に向けてモンスターボールを使用しても捕獲できないようになっている。
またこのセンサーは瀕死のポケモンを捕獲しないように出来ている。無生物や死骸を捕獲することのないように、生命活動の兆候を確認できた場合のみ他の捕獲システムを動作させるようにできている。
この内部センサーはウルトラビースト対応ができるようにアップデートされていないために、大概の場合誤作動として検知され排出される。ただし弱っている状態であるとポケモンとして読み込まれて捕獲できることもやや増える。
「ここまで荒れてるなら、ちょっと今より酷くなっても怒らん?」
そう言いつつ、ボールからヘルガーのラガイを出す。ハプウからの返事を待たずにあたりに火炎放射を放つようラガイに指示をする。
先程やたらカミツルギを強いように言ったが、どんなものにも欠点があるように、カミツルギにも無論欠点がある。
特殊防御が見た目通り、紙耐久なのだ。紙の剣だからカミツルギ、文字通り火には弱く、物理攻撃ならまだまともに耐えれるが、特殊攻撃に至っては、同レベルのアチャモの火の粉ですら一撃で瀕死になるくらいだ。
そのため、あたりを炎の海にすることで行動を封じ、なおかつ体力を減らそうと目論んだのである。
「うわ、あっつ!熱すぎじゃろ!」
「ちょっと今から手加減できなくなるから、コイキング丸に避難しといてくれる?…多分結構俺も怪我すると思うから。」
コクダンの言葉にハプウは顔を青ざめさせる。
「な、何をするつもりじゃ!?」
「いいから待っててくれる?割と危ないから。」
そう言うと、コクダンはカミツルギに向かって走り出す。
「ちょ、待て、待つんじゃ!死ぬぞ!!」
ハプウの静止の声を振り切り、コクダンはカミツルギにビビリ玉を投げつける。
すぐさま飛んでくるそれを切り裂くも、爆竹と何ら変わらぬそれはカミツルギの前で爆音を出して弾け飛ぶ。
一瞬困惑して止まったカミツルギめがけ、ラガイの火炎放射とヨノワールの炎のパンチが同時に放たれる。カミツルギは咄嵯に避けようとするも、コクダンのビビリ玉によって混乱していたせいか反応が遅れ、直撃してしまう。
「モンスターボール全然持ってないけど、どうにかなるかなぁ…?」
コクダンの手持ちにあるボールはダークボールとダイブボールそれぞれ5個ずつ。そんなことを悩んでいるうちにも、カミツルギは今度はコクダンのみをめがけ、しんくうはを放って真っ二つにしようとしてきた。なんとか大きく飛び退いて交わしたものの、頬をかすめたそれは大きな切り傷を作ってゆく。
ハプウがコイキング丸から飛び出して止めに戻ろうとするのを船長が必死に止めるさなか、カミツルギ目掛けてダークボールを投げつける。無論当たる前に真っ二つに切り捨てられたが、その隙が仇となる。ヘルガーの口から放たれたオーバーヒートがカミツルギを背後から貫き、その見た目からは想像もつかない絶叫をあげた。
苦し紛れとばかりに辺り一帯にしんくうはや、スマートホーン、シザークロスなどを盲滅法に放ちまくり、必死で避けるコクダンの全身に一つ、また一つと大きな傷が増えてゆく。奇妙なことに地面にこぼれ落ちた血はどこかへ吸い込まれるように消えていった。
「チェルノボグ、重力で地面に叩きつけたあと、抵抗できなくなるまでほのおのパンチを乱打してくれ。」
一発、また一発と殴りつけられるたびに、カミツルギの反応は少しずつ弱々しくなってゆく。
だが最後の力を振り絞るように、カミツルギがコクダンの心臓めがけてかまいたちを飛ばす。
「あっ、これ無理なやつだ」
慌ててコクダンはその一撃を避けるものの、僅かに反応が遅れ、右腕を大きく切られてしまった。
「…くらっくらするなぁ。ちょっと朝飯抜きすぎたかなぁ。」
体中に刻まれた傷と、先程の大きな傷による出血多量でふらつく足を抑え、ダイブボールを構える。
「もう、これ以上は本当に死んでしまうぞ!」
「…」
「あの頃みたいに、死にそうで死にそうで…、生きてるって思えるなぁ。」
「殺し合おう、カミツルギ。」
「君と俺たちとの殺し合いだ。とても、とても、死ぬほど楽しい時間になりそうだぜ!」
ハプウの言葉など、もう耳に入らない。ギラギラと血走った目をし、ニィ、と唇を歪め高らかに笑う。あたりの空気がきしむようなほどにプレッシャーを放ち、咆哮にも似た大声を上げて高笑いする。そんな目の前の怪物に怯んだカミツルギをボールスイッチで殴りつける。
カミツルギがダイブボールに当たると同時にボールの中に吸い込まれていく。
クイッ。
クイッ。
クイッ。
三度揺れた。
バカン!
ボールを粉々に切り刻み、中からカミツルギが飛び出した。
ボールが割れる音と同時に、ラガイがカミツルギの真横から噛み付く。炎をまとった牙で噛みつくと、そのままカミツルギの大半を口に含んでしまう。
「良い子だラガイ!お前の耐えられる限り炎を絶やすな!焼き尽くせ!」
口の中で暴れようとするも、あまりにも狭い口内で身動きがとれない上に蓄えられた炎がじわり、じわりとカミツルギの命を奪い続ける。
そのうちに火が燃え移り、炭化し始めたところでヘルガーの口から吐き出された。
「2回目は、もう許さないぜ?」
しっかりとダイブボールを掴み、カミツルギの中心を殴りつける。捕獲できずともボールの中から意地でも出さないぞ、と握りつぶす勢いでカミツルギの入ったボールを握る。
そのボールは、コクダンの手の中で一度弱々しく揺れると、カチッと小気味いい音を立てた。
「ヒャハハ、カミツルギ、ゲットだぜ!」
カミツルギを捕まえたボールを掲げながら、そのまま地面に昏倒した。出血多量もあって、気絶したらしい。チェルノボグが慌ててうろうろし始めてしまった。
「お主、大丈夫か!?しっかりするんじゃ!おい、誰か早く手当てをするんじゃ!急げ!!」
ハプウの叫び声に、ようやく他の面々が気づき、慌てて駆け寄ってくる。
コクダンが目を覚ましたのは、それから一週間も後のことである。
「……ん?あれ?ここどこ?」
「やっと起きたのか。ここはメレメレ島にある病院じゃ。」
「あー、そういやカミツルギ捕まえてぶっ倒れたんだっけ。」
「そうじゃ。全く、あんな無茶をして……。」
「あーい、次は気をつけまーす。」
「もう少し真面目に反省せい!」
ハプウの拳骨を受けてもヘラヘラと笑うコクダンだが、泣き腫らしたあとのある彼女の顔を見て、申し訳ないことをしたなぁ、と珍しく反省をした。
これがカミツルギとの出会いであったが、このあとウルトラビーストの所有権の申請を出しに行ったところ、エーテル財団と国際警察にしつこく絡まれて、コクダンが上に配置転換の希望を出すことになった話は、また別のことである。
コクダンのカミツルギ
lv90
特性:妖刀
相手にダメージを与えると、与えたダメージの1/10だけ回復する。相手を倒すと一番高い能力値が一段階上昇する。
NARUTOの首切り包丁を見ていたときに思いついたものです。
このカミツルギは折り目がうっすら赤く、血中の鉄分を吸収して回復します。
アンケートにお答えいただきありがとうございます。
これから書いてほしい話を募集します。
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カミツルギ捕獲作戦
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コクダンの日常
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Harvesterの他メンバーの話
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コクダンvsタクト
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コクダンの設定