ちょっと黒いこの世界で。   作:ばリオンズ

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お久しぶりです。


第14話

喧嘩っ早いコクダンにも、苦手なことは多々ある。

どこから見られているかわからない視線。

毎日毎日ポストにある「手紙」。

たまに会社のデスクの上にある「食物」。

監視カメラに映る見知らぬ女。

 

その目が、悍ましい。

情欲やら支配欲やら執着心やらが透けて見えるほどにドロリとした目が、監視カメラ越しにこちらを見ていたときなんか思わず変な声が出たくらいである。

 

ヨノワールを壁越しに突撃させたら煙玉投げて逃げられたほど、やたら手の混んだストーカーに現在進行系でコクダンは頭を抱えていた。

 

なにせ殴ろうにも逃げられる上に、一応被害には何もあっていないのだ。

 

何も知らずに食べたクッキーも、普通にそこらの手作りと変わらない。一応その後に届いたのを調べてもらったが、成分的には今のところ何も問題はない、と思っていたが数日前からやたら鉄の味がする。でも食えないことはない。正直感染症とか気になるから食うのを控えているが、誰がおいたのかはよくわからない。

 

手紙なんかはとにかく怖い。

どこが好きだとかどこが好みだとか性的に見ているだとかの長文が書き連ねてあるならまだいいほうだ。

一度真っ赤な紙が届いたときはどうしようかと思った。よくよく見れば細い字で好き好き好き好き好き好き好き好き好き…

好きの文字で白い空白を埋め尽くした赤い紙。

しかも鉄の香り付き。

 

それだけではない。ある日受け取った白い紙には、彼のことを知りすぎているような言葉が紙に刻まれていた。手紙の文字は不気味だった。暗い色で書かれていて、形も不正確で不自然だった。これが誰からのものなのかも明らかではなかった。そこには、彼がこれまで隠していた秘密ではない。日々の業務の惨劇のすべてが書かれていた。そして、手紙の終わりには、「私もあなたのその口で咀嚼されたい」という言葉が書かれていた。

さすがのコクダンもこれは吐いた。

 

理由のわからない好意を、彼は好むことがない。

一方的な好意というものは受ける側にとってはナイフと変わりがない。猛毒を塗ったようなそれは、彼の胃袋を焼き焦がして殺しかねない。だから恐怖するのだ。

死んでいるならヨノワールも仕事ができようものだが、よりによって相手は生身の人間である。

 

コクダンも業務以外での暴行を基本的には許可されておらず、正当防衛も過剰防衛になりかねない。まぁそれでもやるときはやるのだが。

 

「人間がやった、ってことじゃなきゃいいんじゃないか…?」

「手持ちのポケモンがやる、だとまずいから…」

「あんまり好きじゃあないんだが、あれで処分するしかないかな。2週間くらい有給取らなきゃいけないし、決行は様子見て行うか。」

 

 

話は変わるが、コクダンは以前行ったマスキッパやフワンテの駆除で出た死体をどうしていると思うだろうか。

 

埋葬?

焼却処分?

素材として有効活用?

 

一番下がかなり近いとも言えるだろう。

 

彼の所属している組織では、ポケモンの死骸を粉砕機にかけることが多い。

 

魂の抜けた骸を弔うのは正直キリがない。数百を超える死骸の山を埋めては弔ってを繰り返していては土地と金がいくらあっても足りないというものだ。なので粉砕する。原型を留めぬほどに粉砕されたそれは様々な分野で活用される。

 

養殖ポケモンの餌に混ぜ込んだり、コンポスターからできた肥やしに混ぜて肥やしとしての効果を上げたり、海や森に撒いて栄養源として環境改善のために用いられることも多々ある。特定の種のポケモンであればプラスパワーなどの戦闘時に使える道具の原料ともなることがある。

 

一部例外として活用不能で埋めることしかできないものもあるが、まぁそれはほんのごく僅かなものである。ベトベターとか、ベトベトンとか、ヤブクロンとか…。

 

ポケモンは害獣になることもあれば、こうした資源ともなり得る。ポケモンと人間の奇妙な関係の一つではあるが、どっちかといえば一方的な搾取ではある。

生存競争の一貫ゆえ、仕方ないといえば仕方ないのだが。

 

 

さて、なぜ長々とこんな話をしているかといえば、コクダンの現在地が粉砕機の前、というとんでもない場所だからだ。つい最近駆除したクズモーの群れが入った巨大なケースを機械に接続し、あとは待つだけである。

 

いつもの視線が、そこにある。

コクダンは頭を抱えるふりをして、ニンマリと笑った。

おもむろに椅子から立ち上がり、機械の影に向かって歩き出す。

 

「地獄行きの切符が発見されたから、是非とも受け取ってもらわないと、なっ!」

 

影に向かってシャベルが振り下ろされる。

慌てて出てきたゲンガーと、よくいるオカルトマニア。

弁明や煙玉を出して投げようとする間もなく、彼らはケースの中に転移していた。

 

「私は無慈悲な方だ。」

 

機械のレバーをがっちゃんこ。

ケースから徐々に機械に吸い込まれて木端微塵になる死体の中で懸命にケースを叩いて叫んで逃げ出そうとするオカルトマニア。相棒のゲンガーもシャドーダイブで逃げようとするもどうにもうまくいかない。

 

とうとうその刃が彼女に迫ろうとした瞬間、

機械が停止した。

 

当たり前である。

人間なんか入ってたら一大事なのだから。

そういう施設のそういう機械はそういったアクシデントに対しては他の施設のミンチ製造機とかに比べて批判がでかいのだ。そのため傷一つ付けぬよう、死んだもの以外は粉砕できないようにセンサーが無数に取り付けられている。

 

失神して泡を吹いた女性とゲンカーはいつの間にやらケースの外に移され、ズリズリとどこかに引きずっていかれた。

 

 

 

「はぁい、どうも。いい悪夢は見れたかな?」

医務室のようなところのベッドで彼女が目覚めると、そこにはあの憧れが。恐怖と悪意を振りまく(彼女視点からの偏見です)悪のカリスマ(だから偏見です)が。

 

しどろもどろになって弁解しようとする彼女を、目の前の悪は笑う。

「良かったね、私で。所長なら砂漠の中に埋め込んでるし、後輩は後輩でアッチ系の方につてがあるから、君みたいな娘は色々と高く売れたかもね。」

 

「私は優しいからね。君を助けてあげた、ってわけさ。あの機械が君をミンチにするわけがないのも、じゅうじゅう知ってたし。」

 

 

「で、だ。一つ取引をしようじゃないか。うちの組織は優秀な人材を求めてる。バトルに強いゴーストタイプ使いは大歓迎ってわけなんだ。警察署にぶち込まれるのと、無休無給で働くの、選んでくれるかな?」

 

赤い半月がケタケタと笑う。

彼女は考えた。う~んとうーんと考えて、一つの自分の欲望を満たしてから、にしようとした。

 

「即断即決できないやつは私の部下にいらない。」

眼の前に迫る手のひらが彼女の首を掴み上げた。欲望の一端が満たされて恍惚とした表情を浮かべた彼女だったが、段々と首になにか手とは違うものが食い込み、切り裂いて流血させてゆく。

 

「冥途の土産に持って行っていいから、もう二度と私の前に顔を見せないでくれ。」

 

片手から開放された彼女の目が最後に見たものは、

ミンチ製造機と寸分変わらぬ形をした薄ピンクの刃の群れであった。

 

 

『あ、どもども、ラムダのおっさん。いい場所かしてくれてあざっした。要件すんだんで埋め立てて上になにか建ててもらっていいっすよ。また今度そっちの要件手伝うんで、ほんじゃ。』

 

 

夜道を一人サクサクと歩いて帰る彼の後ろ姿に、ぼんやりと白い影がついていこうとしたが、彼の影に隠れていたヨノワールに捕まって腹の中に仕舞われた。

 

「ま、いくらあいつが即決したとしても断ってたけどな。だって…、人間の肉ほど一番まずいもの(経験値がないもの)はないからな。」

 

 

「んじゃこのあとはみんなでラーメン食いに行こっか。」

 




コクダンの手持ちにサイコカッターを使えるポケモンはいません。金縛りも、念力も、サイコキネシスも。

これから書いてほしい話を募集します。

  • カミツルギ捕獲作戦
  • コクダンの日常
  • Harvesterの他メンバーの話
  • コクダンvsタクト
  • コクダンの設定
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