駆除チームである彼らにも、稀に捕獲依頼が舞い込むことがある。別に変なことでもない。例えばポケモンレンジャーの人手不足とか、レベル不足とか。実戦経験は駆除チームのほうが遥かに多いわけで、時々呼ばれることがある。
今回は34番道路に大量に発見された、ヒトカゲ、サルノリ、ケロマツの三種の捕獲依頼である。そもそもこれら三種はいわゆる御三家と呼ばれる初心者向きポケモンであるが、それはそれぞれの地方に限った話である。
ジョウト地方ではあまり初心者に対してこれらを渡すことはないのである。タイプ相性的にはどの地方でもじゃんけんのようにそれぞれに有利不利があるように選ばれている。
各地方で御三家ポケモンが異なる理由として、気候や自然事情に合わせて適応するようにポケモンとしての進化ではなく、生物としての進化を遂げた結果ではないか、と一説にはされている。その中で相性を整えたところ、都合が良かったのが各地方の御三家となったのではないだろうか。
博士ではないコクダンにはそれ以上のことはわからないが、現にシンオウ地方の御三家は雪降る大地に適応しているように見えるのだから、あながち間違いではないだろう。こらそこ、ドダイドスが氷4倍とか言わないの。
ならばなぜ、渡されることのないであろうその三種がその場にいるのだろうか。
原因は、その道路に存在する育て屋にあった。厳密に言えばその利用者である。いわゆるゲームで言うところの個体値厳選を行っている輩がいるのである。
この三種は厨ポケと言われる部類に入っており、隠れ特性が強力な上に、それにまして強力な技を習得する傾向にあり、とにかく強いのだ。少なくともゲームの中では、だ。
では厳選とは何か。
ゲーム内のポケモンには個体値というものがあり、ポケモンごとにステータスの成長率が異なるのである。ただし、すべての成長率が最高なら良い、というわけではない。すばやさは最低であればトリックルームなどの戦術において有用なのである。そういった理想の個体値を追い求めるために、無数の卵を孵化させ、逃しを繰り返すのだ。
しかし、それはただのゲームの知識に過ぎない。この現実世界でのlv100がそれ以上成長しないと思い込むなかれ。レベルやステータスというものに現れていないだけであり、経験を積み重ねることでそれぞれの技の精度を上げることが可能なのだ。
いわゆる、避けろ!躱せ!アクアジェットしながら冷凍ビーム!などというトレーナーからの無茶振りにも思える命令に瞬時に従うことが技や戦闘の練度を積み上げていくことで可能になるのである。これはコンテストの参加ポケモンによく見られることである。トレーナーのアイデアをポケモンがその技巧を持ってして形に仕上げるバトルをする。それには、ただのレベル上げと毛艶上げだけでは到底不可能な話である。
そういったことを置き去りにして、厳選厨と呼ばれる彼らは、ただひたすらに良個体を追い求めるのである。その結果、無数に生まれ、捨てられる幼い命のことなぞどうでも良いのだろう。
厳選という、ポケモンの命を顧みない行為はこの世界ではれっきとした犯罪行為であり、遺棄した数によっては死刑にもなりうるのだ。
今回の依頼は、そういった原因も含めて対処してほしい、とのことであるのだ。
また、生まれたばかりで逃された幼いポケモンたちは人間不信に陥っていることが多いのだ。いわば物心ついた瞬間に親に捨てられるようなものだ、それはもう酷い。
殆どのポケモンが人を見るだけで逃げ出す有様である。稀に勇敢な性格の子が攻撃するものの、それでも攻撃を放った瞬間に逃げ出すので大概攻撃対象に当たることはない。
ただ、あたりの枯れ草、民家などに火がつくだけではなく生態系が現在進行系で大幅に狂っているために、今回コクダンはポケモンレンジャーのサポート、という形で参加することになった。
こういった一斉捕獲業務、というものはポケモンレンジャーでは主に入りたての初心者に研修としてやらせる傾向にある。怯えるポケモンにどう対処し、どうやって打ち解けさせるか、というものもあるが、希少種を乱獲から防ぐために素早く捕獲するコツを自ら掴む必要がある。
そういった意味では、コクダンは一番参考にならない人物である。真っ黒な作業服に真っ黒な帽子。完全に不審者じゃないか、と思われがちであるが、背中にはどでかくモンスターボールのアップリケ。あんまり似合ってないらしいが、それはさておき常時威嚇を放っていそうな雰囲気であるが故に、ポケモンから怯えられることのほうが多い。
そんな彼がどう捕獲するのか。
答えは割と普通である。クイックボールを当てる、ただこれに尽きるのである。
経費はレンジャー持ちなのでよしとするが、相手が見えなければ投げられないだろう、と思われるだろう。
そんなときは彼の手持ちのアイドル担当のお出ましである。ミミたんというニックネームの付けられた駆除チームの癒やし枠のミミッキュが、ラブラブボールから飛び出してきた。が、大きい。普通のミミッキュより二回りほど大きな体格の持ち主であるが、出てくるなりコクダンの方に飛び乗る。結構重そうではあるが、何も気にしていないコクダン。
彼の扱うミミッキュはアローラで捕獲したぬしポケモンと呼ばれる個体である。同種の個体より比較的大きめであり、野生での戦闘では全能力値が高くなる。捕まえてしまえばHPとサイズが大きいだけのポケモンになるが、ヌシとしての経験を積んでいるため、信頼を得てさえいれば強力な味方になり得るのだ。
「ミミたん、トリックルームでサーチよろしく頼める?」
キュ!と可愛い声で応じると、道路一帯を包み込む規模のトリックルームが作り出される。別に不思議なことではない。ダイマックス相手にも使えるのだから大きさなんて自由自在なのだ。
主たるポケモンに共通する特徴としては縄張り意識が非常に強いことだ。自分のテリトリーに住む存在と侵入者を見極められる程にそれは強く、彼の持つミミッキュにもそれは言える。
つまり、トリックルームを張るという行為はぬしにとって、あたりを強制的に自分のテリトリーに塗り替える、という技になるのだ。
肩に乗るミミたんが一匹一匹の位置を特定し、スマホロトムに伝えてゆく。座標さえわかればこちらのものだ、とはまだ言い切れない。目視していないからだ。
そこで使うのがフォーカスレンズ。ポケモン用に作られているものではあるが、よく考えてみてほしい。どのポケモンでも特性ぶきよう以外ならば、命中率を上げることができるのだ。
つまり、同じ生き物である人間でもそれなりに命中率を上げるのに使えるのではないか、と試したところボールの投擲の命中率が上がった。
今回はこれを2個用意し、メガネにレンズを埋め込んだ。視界がやや狭まるとはいえ、特定の座標に投げ当てる程度ならば子供時代から既にできていたから問題はない。
そしてレンジャーが唖然とするほどの捕獲撃が始まる。座標めがけて投げ、手持ちポケモンが回収。投げ、回収。雨あられとクイックボールが降り注ぎ、逃げようとする御三家はヨノワールのくろいまなざしとレンジャーのソーナンスの影踏みで動きを封じられ、あれよあれよといううちに中身の入ったクイックボールの山が出来上がったが、コクダンは脱臼して病院へと運ばれていくこととなった。
それはそうだ、数百ものボールを投げれば肩を痛めるのは当たり前。しばらく休まされることとなる。
因縁の厳選厨との戦いは、また別の依頼となってしまった。
また、育て屋の老夫婦に預けられていた他のすべてのポケモンは持ち主に返され、指示処分をくだされることとなった。改善が見られない場合、育て屋としての許可を取り消されることも十二分にありえることである。
これから書いてほしい話を募集します。
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カミツルギ捕獲作戦
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