ちょっと黒いこの世界で。   作:ばリオンズ

5 / 15
第5話

 駆除チームの職員が大捕物に付き合われることは多々あることである。以前も言ったが実戦経験が他のトレーナーよりも桁違いであるがため、多対一が必要な場面であるときなど、一部の職員は常々呼び出される。コクダンは時々呼ばれる。

 そもそも年がら年中駆除の依頼があるわけではないので、駆除チームはある意味便利屋としての側面も持っているのである。

 ジムリーダーだって駆り出されることがあるように、強いポケモントレーナーというものは、得てしてそうなりやすい傾向にある。

 今回はコクダンが呼ばれることとなった。前回の厳選厨による大量発生事件の真相が判明し、取り押さえる必要が出てきたからである。

 

 こういった厳選厨という犯罪行為は基本的に単独犯で行われるものが多く、一人で黙々と自転車を漕ぎ卵を孵化させるが、今回はまた異例の事態が起きていたのである。複数人が卵を持ち寄り交換しているどころでは無く、組織ぐるみでの犯行であるのだ。それも元ロケット団の一派が関与している疑いがあり、強行突破が可能なコクダンが呼ばれたわけである。

 

 単独犯の場合は他の職員、例えば所長の使うバンギラスにより手持ち全部を叩きのめして確保する、なんてことがあるが、組織ぐるみでの犯行の場合、多対一が当たり前のことが多い。コクダンはトレーナー相手に自ら殴りに行きながら、手持ちに指示を飛ばせるのでこういった機会では重宝される。

 

厳選グループの本拠地なのだが、カントー地方のサイクリングロードの下という予想を遥かに超える位置にあったのだ。きっかけとしてはコガネシティの育て屋が封鎖されたことにより、卵を得る手段を失ったことと、廃人ロードと呼ばれる孵化に丁度いい立地が近場ではそこにしかなかったから、ということだったらしい。

 

 なぜわかったかといえば、これまた単純だ。サイクリングロードのタマムシシティ側入り口の岩壁に大きな穴があったからだ。せめて隠せ。ただまぁ、硬い鉄扉とオートロックシステムの前ではズカズカ入っていくわけにも行かないのだが。

一応もう一つ理由があり、サイクリングロードの監視所から入口付近の草むらに通常見ないポケモンが大量発生している、との噂が立っていたのである。ツメが甘いを通り越して、馬鹿なんじゃないだろうか。

 

さて、普通こういったアジトにどう侵入するか、というのは色々悩むものであると思う。HGSSの主人公なんかはロケット団に変装したが、コクダンはというと…。

 

 引退した族のヘッドを連れてくることにしたのである。計算高い男であったそいつはコクダンの同僚として現在働いているものの、過去の経歴を隠して働いている、というこれまた闇の深ーい人物である。コクダンにバトルでボコボコにされたせいでぜんぶ所内に知られてしまっているが別に気にされてはいない。使えりゃいいんだ、こんな仕事ならな。というありがたい所長のお言葉である。

 

 数名の暴走族から得た情報によると深夜に強いトレーナーが複数人黙々と走り続けている、ということらしい。何人かが喧嘩を売ったが手持ちのブーバーンやウルガモスに倒されたらしく、何人かは火傷を負ってしまっているらしい。火傷を意地張って隠してたメンバーは病院へとドナドナされた。

 

たしかに深夜であれば普通のトレーナーの目に付かず、ぶつかりにくく邪魔にもならない。悪事を働くには闇夜の中が適しているのはいつものことだろう。

 

じゃあ、そいつらを襲うことにしようか。ということになり、二人がかりで計画を練ることになった。が、彼ら二人は殺さないバトルが苦手である。いわば手加減を知らないブロリーの如く、秒殺瞬殺撲殺が当たり前なので困ってしまった。トレーナーは彼らの仕事で、処分してしまってもいいが、使われているポケモンには罪がないのだ。

 

 が、彼らはふと気がついた。サイクリングロードにロープを張って道を遮断すれば良い、と。それも自転車のタイヤの当たる低い位置に。

 

割とシャレにならないイタズラに見えるが、彼らにはデッド・オア・アライブの懸賞金がこっそりかけられるくらいなので、転んで骨を折ったところで問題はない。瀕死になってくれればバトルもしないで済むしなお良いことだろう。

 

まぁ、見て止まれればよいが、ここカントーのサイクリングロードはタマムシシティから下り坂になっているので、車は急に止まれない、というように引っかかってしまうことが大半だ。

 

 

いよいよあたりが静まり返り、人がいなくなったサイクリングロードに、トレーナーが一人、二人、三人、四人。かなり多いが罠に掛かれば対処は容易いだろう。

 

暗視ゴーグルを付け、じっと見ていると四人は一斉に走り出す。下り坂ということもあり、ペダルに足をつけていないが、それが命取りになることを彼らはまだ知らない。

 

ガシャンガシャンゴシャ、と立て続けに自転車が横転する音が響く。痛みで絶叫する声も響いてきたので、手持ちのボールからポケモンを出し、18番道路側入り口から音を立てずに彼らへ近付いていく。

 

ひどい有様である。

一人は頭から血を流してピクリとも動かず、二人は足や腕が通常曲がらない方向に曲がり苦痛にうめいている。最後の一人は転んだだけで大きな外傷はないものの、腰を抜かして怯えきっている。

 

「こんばんは、犯罪者諸君。仕事なんで容赦はしませんがご了承ください。」

「パイセン、まともに動けそうなの一人だけっすよ。俺バトルしたくないんで任せるっす。」

「え、まじ?俺もしたくないんだけど。」

 

 他の三人を捕まえ、引きずってセキチクシティに回収していく後輩に文句の一つも言いたいところだが、それはさておき目の前のトレーナーである。

 

 まだ若い、下手すれば駆け出しくらいの少女であろうか。ただ、なんというか見覚えがあるのだ。いや、これ本人ではなく、おそらく前世のゲームの記憶の…。ああ、リーフグリーンの女主人公みたいであるな、とジロジロと見つめていると、とっさに掴んだボールを投げつけてきた。中から出てきたのはジョウトやカントー、アローラでも全く確認されていないセキタンザンと呼ばれるポケモンであった。

 

 重量級ボディのポケモンで、特性蒸気機関というものが非常に珍しいポケモンであるものの、卵を孵化させるにはもう一つの特性炎の体である必要があり、目の前のその個体は炎の体も相まってさほど強くないように見える。

 セキタンザンは突然呼び出されたとはいえ、主人を守るために目の前の人間に火炎放射を浴びせようとしたところ、眼前に飛んだのはビビリだま。ビリリダマと呼び間違えそうだが、アローラ発祥の道具であり野生ポケモンのダブルバトルにおいて用いると仲間を呼びやすくなる、というアイテムである。普通のバトルに使うと威嚇の効果を発揮する、爆竹的なアイテムである。

 

目の前で破裂したそれに思わず動きを止めたセキタンザンを真横から吹き飛ばしたのは先程コクダンがボールから出したシザリガーである。ちなみにニックネームが一時期非常食にされた悲しきポケモンである。

 

 適応力と命の珠により強化されたアクアジェットによる体当たりはセキタンザンを軽々とサイクリングロードから吹き飛ばし、海へと突き落とした。耐久力の高い岩ポケモンでも砂嵐下になければ4倍弱点というものは普通にきついのである。

 かろうじて岩場に流れ着いたことで一命をとりとめたものの、もう主人を守るために戦う余力はない。そもそもサイクリングロードまで登ってこれないだろう。

 

「で、それでおしまいですか?」

まるで三日月のように口が笑みを浮かべ、怯える少女を見下ろす。嗜虐心と悪意のこもったその笑みに見つめられ、肩に担がれたシャベルを振り上げられた瞬間、少女の精神は限界に達し、気を失ってしまった。先程の横転で投げ出されたカバンに目をやると、なかからカードがこぼれ落ちていた。

「おや、これがカードキーですかね?ありがたく頂いていきますよ。」

 

後輩に少女の回収を任せると、コクダンはシャベルを片手にアジトの鉄扉へと足を進めるのであった。

 

あまりの恐怖に、少女の精神がずたずたになっていないことを祈るばかりである。少女のあたりに水溜りがあったかどうかまで、コクダンは知る由もない。




コクダン手持ち

ヨノワール
ミミッキュ
カミツルギ
ヘルガー
シザリガー
スピアー

コクダンの手持ち平均レベルはおおよそ87

これから書いてほしい話を募集します。

  • カミツルギ捕獲作戦
  • コクダンの日常
  • Harvesterの他メンバーの話
  • コクダンvsタクト
  • コクダンの設定
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。