ちょっと黒いこの世界で。   作:ばリオンズ

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第6話

手に入れたカードキーを鉄扉の横のスキャナーに通して解錠したが、明らかに目の前に監視カメラがある。じっ、とそちらを見つめてみると警報が鳴り出し、鉄扉が音を立てて閉まってしまった。

 

「そこまでのセキュリティ、そんなすぐに用意できないと思うが、つまりここは元からロケット団のアジトであるな?」

 

「ヘイ、フラガラック。リーフブレードで扉の周囲の岩盤切ってくださいなー。」

 

指パッチンとともに斬撃が岩肌を切り飛ばし、ついでに鉄扉も真っ二つにしていった。カミツルギであるフラガラックに鉄程度切れないわけがないのだ。

 

「最初っからこうすりゃ良かったな、うん。とりあえずお邪魔するか。」

 

げしっ、と崩れかけの鉄扉と岩を蹴り飛ばし、奥へと足を進める。眼前に鎮座するはエレベーター。どこから持ってきた、というかいつ付けた。ボタンを押すと駆動音とともに登ってくるそれ。中には誰も入っておらず、警報がなったのが聞こえていないのだろうか、と思いつつ乗り込む。

 

幸いにもカゴ室を吊るすロープを切断されることなく無事に下まで降りることができた。

 

エレベーターの戸が開くと、そこにはロケット団とトレーナーの集団がざっと20人程度待ち構えていた。

「ほんじゃまー、いつもどおりに、お仕事をしようか。」

 

ボールからポケモンを出す素振りもなく、眼前の一人のロケット団を殴り、地面に叩きつける。意識はあるだろうそれの首根っこを掴んだまま次の相手に襲いかかる。手に掴んだ人の形の鈍器は叩きつけるには多少は重いが、気にせずに次の相手に叩きつける。

 

ポケモンに命じて攻撃させようとするトレーナーもいるだろうが、鈍器であり、盾であり、人質であるそれを携えられて、コクダンに対する攻撃を躊躇うポケモンにそれを容赦なく振り回し、叩きつける。ゴルバットが叩き落され、エースバーンが人質を叩きつけられ、リザードンの顔面が殴りつけられる。

トレーナーはトレーナーで喧嘩が強いわけではない。

 

「怖いよなぁ?殺す覚悟も、殺す勇気もない人間も、ポケモンも。純粋な暴力の前じゃあただの雑魚キャラだわな。」

 

「まぁ、所詮は平和ボケした転生者集団ですもんねぇ。」

 

この世界で、厳選という行為を行う存在は転生者のみである。

『つよい ポケモン

よわい ポケモン

そんなの ひとの かって

ほんとうに つよい トレーナーなら

すきな ポケモンで

かてるように がんばるべき』

 

という言葉があるように、この世界ではポケモンの種類による強さは考慮されても、個々の個体の能力値まではあまり問われず、興味を持たれない。

 

ただ、転生者は違う。最高の個体値を持つ厨ポケを、ゲームで遊んでいた頃のように求めてしまうのだ。育て屋ばかりに集まるのもそういったことが大きく関係しているだろう。彼らにとって、卵を得る手段は育て屋か預かり屋しかないのだ。自分の家や、近くの人からもらう、というのもあるかもしれないが、ゲーム基準でしか考えられなくなった彼らは大量の卵を得る手段をそこに求めるしか無かった。

 

ボロボロになったロケット団員を投げ捨てると、ようやくボールを取り出し相手の顔めがけて投げつける。そのままボールが開き、中からはスピアーが飛び出す。

 

「全員峰打ち!ターゲットはトレーナー限定!」

 

そう叫びつつ次の相手めがけて飛び蹴りを食らわせ、新たな鈍器を調達する。もはや正常な判断が誰からもできなくなった状況下では厨ポケだろうがなんだろうが、暴力の前には無力なのである。成人男性一人が80kgだとするなら、だいたいヨーギラス一匹分に該当する。それのすてみタックル並みの威力が無反動で暴れまわっているわけだから、当たったが最後倒れるまで叩きつけられて瀕死になるのも当然だ。

 

それだけに飽き足らず、壁が外から粉砕され、中からシザリガーが現れる。剣の舞を3度舞い終わったシザリガーの適応力クラブハンマーは岸壁を海から叩き壊し、大穴を作り上げた。先程サイクリングロードの上で呼び出したシザリガーをそのまま海に送り込むことで、応援を呼びやすくしつつ、なおかつ戦況を混乱に陥らせようと目論んでいたのである。

 

てんやわんやで命令系統が混乱している最中、スピアーが一人、また一人とトレーナーめがけて針を振るい気絶させる。自分のトレーナーがやられて戸惑うポケモンはコクダンになぎ倒されるという有様で、10分もしないうちに死屍累々の有様である。

 

「ポケモントレーナーなら、トレーナーらしく、ポケモンバトルをしろよ…。卑怯者…。」とおそらく幹部であろう存在が地面に倒れたままそうぼやく。

 

「いや、集団で袋叩きにするほうが卑怯じゃね?馬鹿じゃねぇの?」

とコクダンは返し、そこらに転がっている全員ロープで数珠つなぎにした。

 

ポケモントレーナーの集団相手に最もやるべき行為は、バトルをさせないことなのだ。多対一を強要される状況下でバトルするより、バトルできない状況に持ち込むことで相手との有利不利を減らすことが可能になる。

 

そもそもポケモンバトルで勝ったから逮捕されない、犯罪行為を行ってもいい、という免罪符にはなりはしない。犯罪者相手にバカ正直にバトルをするほうが馬鹿である。相手の得意な土俵に乗るほど馬鹿らしいことはないのだ。

 

更に全身ぐるぐる巻きにした上でアジトの奥深くへと足を進める。隠れていたであろうトレーナーが時折出てくるものの、顔面パンチや金的でポケモンを出す前に沈めてゆく。

 

ひときわ重厚なドアを蹴り倒すとそこは、悲惨としか言いようのない状況であった。メタモンとポケモンが区切られたケースに詰められており、卵がケースに空いた穴から定期的に排出され、自動的にボックスに押し込まれているのである。

 

ケースが茶色に染まっているのは…。それ以上は言わない事にしておこう。

何も言わずにコクダンはケースをスコップで叩き壊すと背中に背負ったリュックから鍵のかかったケースを取り出す。ケースの中から出てきたのは一見普通のモンスターボールの仕舞われたケース。指紋認証センサーでそのケースを開け、その中身のモンスターボールを悲惨なケースの中身のポケモンに当てる。厳選厨のポケモンであったはずのメタモンやポケモンたちはボールに吸い込まれ、3度揺れるとカチッ、と音を立てて捕獲された。

 

このボールはスナッチボール。

オーレ地方にてダークポケモンを相手から奪い取るために生み出された禁断のボールである。スナッチマシンと呼ばれる機械でモンスターボールを改造することで簒奪可能になるが、元来ダークポケモンにのみしか使用できない設定にされていた。

 

今回使用されたボールはシルフカンパニーの協力のもと製造された保護用ボールとして作り出された新生スナッチボールである。厳重なロックがかかっており、指紋認証登録や上級ポケモンレンジャー資格などが必要となるほどに取り扱いが必要となる代物で、こういった緊急時やトレーナーによるポケモンの虐待などのみで使用が許可される。

 

すべてのケースからポケモンを回収した後、ジュンサーさんを呼んでコクダンは撤収することとなった。帰ってまた報告書を書く必要があること、そして保護ポケモンの今後の対応を考え、思わず地面に座り込んだコクダンであった。

これから書いてほしい話を募集します。

  • カミツルギ捕獲作戦
  • コクダンの日常
  • Harvesterの他メンバーの話
  • コクダンvsタクト
  • コクダンの設定
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