可愛いけれど、増えると困る。
そんなものは、ペットもポケモンも同じものである。
最後まで責任持って飼えないのなら、最初から増やすな、という話である。
そんなことを冒頭に言う羽目になったのは、今回の対象が可愛いポケモンであるからだ。
それの名前はバチンウニ。
ウニポケモンであるが、これが大量発生すると、付近の水草やら海藻やら植物性のものを片っ端から食べてしまう為、要注意ポケモンの一種に認定されている。
が、実はこのバチンウニ、大量発生の常連客なのである。
可愛いその見た目はまるでもっちりとしたお餅のごとし。故に同様にお餅に見えるナマコブシ、ユキハミと一纏めにして【お餅組】と呼ばれるのだが、他の二匹はそれほど危惧されていない。
その理由として、単純に強さの問題がある。ナマコブシはほとんど攻撃に使える技がないし、ユキハミは進化前であるため、大量発生しても捕食者に食べられてしまうだけである。ただしこのウニは違う。以前海中では電気が霧散するため電気技威力が下がると以前書いた。しかしこのポケモンの特性のエレキフィールドにより、海中でも電気技を霧散させることなく遠慮なくぶっ放してくるとんでもないウニなのだ。
そのため、天敵になりうるポケモンが撃退されることが多く、群れを為すとじわじわ増えていくウニなのだ。じわじわと海藻、藻を食い尽くすため、養殖漁業の目の敵にされがちなポケモンである。
「可愛いのはわかるよ、俺も一匹家で飼ってるし…。」
とコクダンはぼやく。
コクダンのペットのバチンウニはキャベツをとにかく食べたいそうで、帰ってくるたびに頭の上によじ登り、ぴょんこぴょんこ飛び跳ねてキャベツを要求してくるかわいいやつである。
「でもさ、捕まえすぎたからって逃していいもんじゃないのよ。この子たち、割とどこにでも住み着くんだから…。」
コクダンが叱っているのは、なんとウバメのもりにバチンウニを捨てていった少女たちである。
「あのな、トレーナーになるって、ポケモンの命を預かることなのよ。ポケモンを捕まえるときは最後まで面倒見るつもりでいなきゃいけんのよ。免許もらったときにちゃんと試験で出たよね。」
このバチンウニ、かわいいからたくさん囲まれて過ごしたい、という人が多いのだが、意外と食べる量が多いのだ。カレー一皿は普通に食べるので、数が多いほどエンゲル係数が増加してしまう。その為手放してしまうトレーナーが多い。
しかしながら、生き物を飼育するなら家族一人増えるくらいの計算でお金を工面するのにそれを想定してない彼女たちに首を傾げる人もいるのではないだろうか。
その原因として、この世界の成人が早すぎることにある。普通、未成年の女子が動物を飼うのならば親に相談の一つもすることだろう。
しかしこのポケモンがいる世界、10歳が成人だ。この世界には「小学校卒業みんなが大人法」という法律がある。ポケモンの世界の義務教育の小学校は10歳までで、中学校は行きたい人が行くという制度なのだが、10歳過ぎれば結婚も飲酒も就職も、親の同意なしにできてしまうのだ。
そんな世界なので、倫理観が育ち切る前に成人してしまうため、可愛いからと言ってたくさん捕まえ、飼えなくなると逃してしまう、そんなトレーナーが後を立たない。
十代で一人暮らしして十分な知識もなくペットとしてポケモンを飼育することもこの世界ではごく普通だ。
成人年齢が低いというのは、こんな弊害を引き起こすのだ。
おまけにこのウニ、水際なら場所と水質を選ばずに住み着くようで、シンオウ地方の海辺から、一時期ベトベターまみれのタマムシシティの池まで生息していたことが確認された。
そして、このウニは処理にとても困る存在でもある。
可愛いために、食用にしようものならバッシングの雨でいっぱいになる。発電所のサポートにも向かないし、初心者のはじめの一匹にするには足が遅すぎて困る。
どうしろと…。
と珍しくコクダンが頭を抱えてしまった。電気タイプのこの子たち、殺す気には全くなれないので困ってしまった。
自分のペットの顔を思い出してしまうため、ちょっと今回は自分の手には負えない、とウバメの森で網で引き上げたウニたちをとりあえずクーラーボックスの中に水と一緒に突っ込んで事務所に帰ることになった。
捕まえること自体は異様なほどに簡単なのもまた困るところである。網で掬っても暴れることなく、命の危機がなければボケっとしている。そんなのんきなポケモンだからこそ、なかなかにためらいが生まれてしまう。
その後のことはコクダンは知りたくないことだろう。だから伝えないであげることにして、この報告書の読者には教えて差し上げることにしよう。
バッシングが来るならば、それをねじ伏せられるようなところに渡してしまえばいい、と所長は考えた。例えばそう、裏社会経由で流してしまえばこの山のように積み上がったウニたちの有効活用がし放題だろう。
実はこいつ食品としても、素材としてもかなり旨味の多い存在である。
キャベツなどを食べる個体は、味がより良くなり、お寿司やパスタ、スープなど幅広い調理に使われる。見た目の可愛さからくる背徳感と、口の中でパチパチと弾ける軽い電気とウニの旨味が多くの人を釘付けにするのだ。
それとは別に、モバイルバッテリーとして飼う会社員も多く、キャベツでその分電気代が浮くなら楽かもしれないだろう。可愛さと便利さに惚れ込んで買いに来る人もちらほらいる。
と、言うようにコクダンが知りたがらなかっただけで、使い道なら山のようにある。
今回のウニたちは養殖業者の手によって引き取られ、毎日新鮮なキャベツを与えられることになった。キャベツを食べるバチンウニは味が良くなるようで、養殖水槽のある建物の隣に水耕栽培のキャベツ工場があるほどである。美味しいキャベツでお腹を満たせて喜ぶウニと、美味しいウニが食べれて嬉しい人。WIN-WINの関係だから、何も問題はないだろう。
実は一匹、コクダンに持ち帰られて飼われていることを所長以外は誰も知らない。
なんか色が濃い気もするが、コクダンは気に止めていないようだ。今日も彼らはキャベツを美味しく頂いていることだろう。取り合いの喧嘩もするかもしれないが、仲良く分け合って食べてほしいものだ。
用語解説
「小学校卒業みんなが大人法」:アニポケ小説版で判明した設定。結婚も自由なのでロリコン大歓喜しそうで怖いなぁ…。ただし税金はちゃんと払わされる模様。
免許:モンスターボールを持つのには免許がいります。小学校卒業時にポケ免を取得できます。
これから書いてほしい話を募集します。
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カミツルギ捕獲作戦
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