続きです。
この日、三雲修と空閑遊真と雨取千佳はアフトクラトルの捕虜ヒュースの入隊許可を得るためにヒュース本人を連れ、ボーダー本部上層部に交渉に向かっていた。
その頃、横島は……
ランキング戦も無いのにボーダー本部に向かう。
しかも、鼻歌交じりのスキップを踏みながら。
今日の朝、横島の元にボーダー隊員専用の情報端末にあるメールが届いたのだ。
内容はこうだ。
(横島先輩へ、話したい事があるから一人でここに来てください。 細井真織)
デレデレの顔でボーダー本部の通路をスキップする横島。
時々立ち止まって雄叫びを上げる。
「ふふん、ふふん、真織ちゃんか~、どんな子なんだろう!きっと奥ゆかしい子なんだろう。わざわざ一人でって!や、やっぱり告白か!!つつつ遂に!人生初のモテ期到来か!?ふはははははっ!!長かった!!人類にとって小さな一歩だが、この横島の大いなる一歩となるだろう!!ほんと生きててよかったっ!!」
今の横島にモテ期なんてものはないだろう。
この瞬間も、横島を見かけたボーダー女性隊員は駆け足で逃げていく。
横島の歩く半径20m以内に女性の影すら見えない。
そう、横島が先日のガロプラのネイバーウェン・ソーとの戦いで、口から出まかせで語った触れた女性のスリーサイズが正確にわかるという最低なサイドエフェクトを所持しているという噂が、実しやかにボーダー中隅々まで広がっているのだ。
横島の女性好感度はただでさえ最底辺なのに、もはやマイナス値に振り切れていた。
そんな事もお構いなしに、メールの主が指定したボーダーのとある隊の作戦室に向かう。
部屋の前まで到着すると入口の自動扉が開かれる。
「真織ちゃーーん、横島が来たよーーー!!」
横島は勢いよく、作戦室の中に入る。
「生駒隊のオペレーター細井真織です。横島さん、来てくれてありがとう」
そこにはボーダーのオペレータ―服を着たツンツンしたショートヘアの元気良さそうな少女が待ち構えていて関西弁で自己紹介をする。
「真織ちゃん!!前世から好きでした!!」
横島は真織に詰め寄り、両手を差し出して握手をしようとするが……
「そんなんええから、さっそくやけどこっちの席に座ってくれへん?」
真織はそんな横島の行動をあっさりスルーして、隣のブースの椅子に座る様に促す。
細井真織(17歳)現在B級3位生駒隊のオペレーターにして兵庫県出身の関西弁女子。
関西人だけあって、横島のこの激しいノリも難なくかわす事が出来るようだ。
まあ、癖が強すぎる生駒隊を導くにはこれぐらい出来ないとやっていけないのだろう。
横島は真織に促され、隣のブースにある手前の椅子に座るが……
「あれ?……」
そこには4人の男共が大きなテーブルを挟んで座り、横島に注目する。
「よう来たな。生駒隊隊長の生駒達人や」
生駒隊隊長、生駒達人(19歳)京都出身のアタッカー、弧月のオプショントリガーで攻撃時に瞬間的に刀身を伸ばす『旋空』の使い手、旋空は通常15m程度伸ばし使用するが、彼は40mの射程を可能とし、その能力から生駒旋空とも呼ばれていた。
見た目は硬派な堅物のイメージだが、関西人のノリのマイペースな性格をしている。
「水上や、同じ関西人同士よろしく」
生駒隊隊員、水上敏志(18歳)大阪出身のシューター、マイペースの生駒に代わって司令塔の役割をし、さらに生駒のボケに対しての突っ込み役でもある。もさもさ頭の三白眼高校生。
「隠岐孝二です。よろしく」
生駒隊隊員、隠岐孝二(17歳)大阪出身のスナイパー、もっさり髪のイケメンスナイパー。
スナイパーで唯一のグラスホッパー使い。機動型狙撃手の名は伊達ではない。
「横島先輩、ちーっす」
生駒隊隊員、南沢海(16歳)生駒隊唯一の三門市出身のアタッカー、お調子者の金髪少年。
関西出身のアクの強いメンバーに負けず劣らずノリがいい。
南沢海だけは、横島と面識があるようだ。
「……どういうことでせう?」
横島はてっきり、今から真織とイチャコラできるものだと思っていたのだが、目の前には横島を待ち構えていた男共4人。
そこに真織が海の横の席に座り……
「ほな、始めよか」
「……ま、まさか美人局(つつもたせ)!?モテたのと思ったのに!!モテたと思ったのにーーーっ!!!!こんなこったと思ったぁ!!!!」
横島は血の涙をまき散らし喚き散らす。
美人局とは、男女が共謀して、女がターゲットの男を誘惑して、引き連れておきながら、男が待ち構えて「誰の女に手を出してんねん」と因縁をつけて、ターゲットの男から金品を巻き上げたりする事である。
この状況でこんな発想するのは、横島らしいと言えば横島らしい。
「おもろい奴やな」
「いこさん(生駒)と同類って奴やね」
「そうですね」
「でしょでしょ?」
生駒、水上、隠岐、南沢はそんな横島の様子を見て、呆れるどころか、好感をもった様だ。
「はぁ?美人局?何言ってんの?ありえへんし、そんな事よりも、横島さんに聞きたいことあるんよ」
真織は横島に冷静に突っ込んだ後、こう切り出した。
「シクシクシク……モテたと思ったのに!!」
今の横島に真織の声は届いていなかった。
「……はぁ、ありえへん。まあええわ。次の対戦相手三雲隊やから、知ってる事洗いざらい話してもらおうかと……まあ、敵に仲間売るなんてありえへんけど、いこさんが珍しく自分から敵の情報を知りたい言うから……」
どうやら玉狛支部に出入りしている横島から、三雲隊について情報を得ようという魂胆だったようだ。
「うん?俺、そんな事言うた?」
生駒は真顔で首を傾げる。
「はぁ?昨日言うてた!」
真織は呆れ気味に半ギレ。
確かに昨日、生駒は真織に横島から情報を聞きたいから呼び出してくれと頼んだのだが……
「そんな事よりも、横島お前のサイドエフェクト最高や。男のロマンが詰まってる!」
生駒は真織の抗議をスルーし、曇りない真剣な表情で横島の両肩をガシッと掴みこんな事を言い出した。
残りの男連中はその言葉にうんうんと頷いていた。
どうやら生駒は横島のサイドエフェクトに興味があって、真織に横島を呼び出すよう言ったようだ。生駒は何時も言葉足らずのため、真織は勝手に生駒の言葉を察し、次のランク戦で戦う三雲隊の情報を得るために横島を呼ぶと勘違いしたのだ。
因みに横島のサイドエフェクトとは勿論、触れた女性のスリーサイズが分かるという代物だ。
但し、横島はギャグのつもりだったのだが、今じゃそれが真実かのようにボーダー中に広がっていた。
(何言ってるん?こいつらアホちゃうか?)
真織は冷めた目で男連中を見据え、心の中で毒づいていた。
「はいはーい!横島先輩!俺、国近先輩のスリーサイズが知りたいです!」
「ストレートやな海、だがその選択悪くない」
南沢海は水上敏志が言う通りどストレートな質問を恥ずかしげもなく横島にする。
他の面々はそんな海の質問に大きく頷いていた。
今迄、ショックでモテたと思ったにと繰り返すだけの横島だったが、その話に耳が動く。
「じゃあ、いこさんは誰のが知りたい?」
南沢は調子よく今度は生駒に質問をする。
だが……生駒は
「疑問に思ったんやけど、スリーサイズってなんで胸腰尻なん?」
真面目顔でこんな疑問を口に出す。
「いこさん、何言ってんのか意味がわからんのやけど」
水上のいつもの突っ込みがはいる。
「女の子の好きな部分って普通、胸や尻やろ?腰が好きって奴いる?自分らは女の子の身体のどこが好きなん?」
「俺は断然尻派っすね」
「はい、はーい!やっぱりおっぱいがいいでーす!」
生駒は訳が分からない講釈を垂れだし、それに水上と南沢が答える。
「隠岐はどうないなん?」
「俺ですか?うーん、どうやろ、胸も尻もええですけど、太もももええですわ」
「やろ?腰は入ってへん、イケメンの隠岐が言うんや、間違いない。胸や尻は大きい方がええけど、腰は細い方がええとか仲間はずれやんかそれ。そやったら、太もももむっちり太い方がええから、スリーサイズは胸尻太ももでええやん」
生駒は隠岐に質問し、最終的にこんなとんでもない答えを導き出してきた。
「そう言われるとそんな気が……」
「うーん」
「確かに」
水上、南沢、隠岐の三人は生駒の結論に何故か納得しかけていた。
それを黙って聞いていた真織は心の中で……
(男ってどいつもこいつもアホやろ。それに女の私もここにおるのに、何の話をしとんねん。もしかして私を女扱いしてないんかい!)
こんな叫びをあげていた。
ここで
「ちがーーーーーう!何を言ってる貴様ら!確かに乳尻太ももは三種の神器に違いない!だがスリーサイズは乳腰尻でこそ意味がある!」
今迄、落ち込んでいた横島が復活し、雄叫びを上げだす。
「腰が真ん中にあるから乳と尻が引き立てられるのだ!引き締まった腰が無ければ乳も尻の良さも半減以下、いやほぼ無いと言っていいだろう!!もし、乳と尻がでかくても腰が乳と尻よりも大きい添(北添尋)の様にドラえもん体型だったらどうする!!」
横島はこんなくだらない事を目を充血させながら力説していた。
「さ、流石になえるな」
「……なるほど」
「えーー、添さんの様な女の子?」
水上、隠岐、南沢は横島の力説に押される。
だが生駒だけは……
「添が女の子に?うーん、かわいいやん」
こんな事を言い出す。
「いこさんは女の子だったら誰でもかわいい言うし」
水上は苦笑気味に突っ込みを入れる。
それを聞いていた真織は……
(私は言われた事ないんやけど)
と心の中で突っ込む。
「いこさん、まりお(真織のあだ名)が私はかわいい言われた事ないって顔してますよ」
何故か隠岐は、真織の心を読んだかのようにこんな事を言い出す。
「まりおちゃんもかわいいで!」
「まりおかわいいな」
「まりお先輩かわいいっす」
それを聞いた生駒、水上、南沢が真織にかわいいと連呼しだす。
「うわっ、きもっ!!きっっもっ!!」
真織は照れ隠しなのだろう顔を真っ赤にして皆にそう叫ぶ。
ここでさらに力説を解く横島!
「そう、真織ちゃんはかわいい!!それは当然の事!!バスト83のCカップ、ウエスト61、ヒップ80!!理想的な体をしているからだ!!それを引き立てているのは間違いなくウエスト61!!これが太いのは勿論、細すぎてもダメだ!!ウエストが程よく引き締まってるのが重要なのだ!!ラーメンで言う乳と尻は麺とチャーシュー、ウエストはスープだ!ドラゴンボールで言う乳と尻が悟空とベジータなら、ウエストはクリリン。クリリンのような引き立て役が居なければ、悟空とベジータがどれだけ強いのかもわからないだろう!!」
「なるほど、流石は俺が見込んだ男、横島や」
「わかってくれたか」
生駒は横島とがっしり握手を交わす。どうやらこの横島の変態理論に納得したようだ。
「さすがは横島、俺達では出来ない事をサラッと言ってのける!」
「凄いサイドエフェクトだ。なるほど、まりおは83・61・80と」
「横島先輩!いや、師匠って呼んでいいい!?」
水上、隠岐、南沢も横島を絶賛する始末。
「こらーーー!!横島―――――っ!!何、人のプライバシーさらしとんねん!!!」
顔を真っ赤にして横島にそこにあった座布団を投げつける。
まあ、勝手に女子のスリーサイズを本人の前で男子に語るのは思春期男女間ルール違反もいい所だ。
横島は、顔を真っ赤にし涙目の真織にそこら中の物を投げつけられながら、生駒隊の作戦室から追い出される。
当然の結果である。
横島はこの後も、太刀川隊の出水や三輪隊の米谷に捕まったりと、男連中に引っ張りだことなる。
勿論横島のでっち上げのとんでもサイドエフェクトの事である。
女性陣にはゴキブリの様に嫌われるが、男連中には人気者に。
横島としては全く嬉しくない事なのだが、これも元の世界でもこの平行世界でも同じであった。
その頃、三雲修達はボーダー上層部との交渉を終わらせ帰路に付いていた。
条件付きではあったが何とかヒュースを隊に入れる了承を取り付けたのだった。
えっと、次はランク戦は第6戦だったかな?
そういえば第三期が始まりますね。