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「横島さん、あなたは何者?」
藍は横島に疑いの目を向けていた。
横島はテロリストに扮した某大国だろう特殊部隊の兵士二人を不意打ちや即席罠を使ってあっさり倒したのだ。
普通の高校生が武装した屈強?な兵士を相手に武器も使わずにあっさり捕縛できるはずがないのだ。
普段から冷静に物事を取らえてきた藍だからこそ、今日会ったばかりの横島の今迄の行動とその成果に違和感を感じ、この言葉を発したのだ。
「藍ちゃん……」
「………え?」
玲は藍の言わんとすることは理解出来たが、既に関わり合いを持ち横島に対する好感度が何故か高い玲にとって、横島が何者でも大した問題では無い。
文香に至っては、あまり横島に対して違和感を感じていないようだ。凄腕のトラッパーだからこれぐらい出来るかも知れない程度に思っていた。
「木虎ちゃん、何を言ってるの?横島は横島よ?」
桐絵は藍が言っている意図すること全く理解せず、そのままの意味にとらえ、何言ってんだこいつみたいな顔で、返事をしていた。
「横島星からやって来たヨコシマン!!なんちって、あは、あははははっ……ダメ?」
横島は笑って誤魔化そうとするが、藍の視線は厳しくなるばかり。
「ボーダーの隊員だとしても、高校生がトリガー無しにこんな事が出来るはずがない。相手はどう見てもプロなのに。しかも銃や武器を持ってる相手にこんなにあっさりと……何者ですか?……ボーダーを監視するための国か自衛隊のスパイそれともこのテロリストとは別の組織の人間……私達をどうするつもり?」
やはり誤魔化しきれなかったようだ。
だが、藍がこういうのも仕方がないだろう。
今の現状を一番客観視していたのは最年少の藍だった。
玲は横島に対してはどうしても補正が入ってしまいがちになり、文香は実は大金持ちのかなりのお嬢さまだ。少し世間に疎い所がある。
小南に関しては言うまでもない。
だが……
『β21定時連絡はどうした?問題でも発生したか?』
最初に横島にのされた下衆兵士の無線から定時連絡の催促の声が聞こえて来た。
玲や文香はどうしようかと慌て、藍も流石に焦り、どうしようか悩む。
「やばっ!?横島どうする?」
桐絵も何かいい方法を思いつかず慌てて横島に聞く。
その横島は白目向いて縄でぐるぐる巻きにされてる下衆兵士の腰に掛かってる無線機を手に取り、
「こちらβ21、わーってますよ。ちょっと遅れただけじゃねえっすか。問題無しっすよ。ガキの監視なんて、ったく」
横島は見事な声真似で下衆兵士になり切って応対する。
『β21、これは遊びじゃない。連絡を密にしろ、いいな』
どうやら、相手は違和感など全く感じていないようだ。
そこで通信が終わる。
「ふっ、危なかった~」
横島もほっとした表情をする。
まあ、この程度のピンチを乗り切れなければ、美神令子除霊事務所のバイトなど務まらないだろう。
「ナイス横島!」
「横島さん、そっくりですね」
「すごい」
「………やっぱり、あなたは何者なんですか?」
藍はますます横島を疑いの目を向ける。
「何者って言われてもな~、う~ん、アレ?」
横島は真剣に悩んでる様だ。
迅や林藤支部長や忍田本部長などのボーダー上層部からは、異世界の人間だという事は強く口止めされている以上、霊能者だという事も名乗れない。
なら、霊能者やゴーストスイーパーという肩書が無い自分は一体何者なんだと、本気で悩みだしたのだ。
「今はそんなもんなんだっていいわよ。次どうするのよ?横島」
桐絵は木虎にどうでもよさげにそう言って、悩みだす横島に軽く背中を叩く。
「………それは」
藍はそれに何か言おうとするが、今はそんな問答をする時間もない事を理解しているため、ぐっと気持ちを抑える。
「っと、そうだ。他の生徒達は大講義室と体育館に押し込められてて、迅とは示し合わせて解放する作戦なんだけど、とりあえずは小南達の安全確保が先で、脱出は難しいから近くの音楽室に隠れて貰っていい?」
横島は桐絵に背中を叩かれ、悩みの沼に嵌りそうだった所を脱し、次の作戦について話しだす。
「私は横島について行くわよ。あんな奴ら何ともないんだから!」
桐絵は両腕を組んで自信満々にそう言い切る。
「小南は玲ちゃん達を守ってやってくれ。小南だったら出来るだろ?」
「仕方が無いわね。まあいいわ。だったらちゃんと皆を助けなさいよね」
「まっかせなさい!この横島、女子高生を助け出す事に関しては世界一だ!!」
横島は自信満々にこう言い切る。
女子高生を助けるシチュエーションなんてものは滅多にないだろう。
何をもって世界一なのかが分からないが……
いや、助けた女子高生に罵られたり、無下に扱われたりすることに関しては世界一かもしれない。
この後、横島の先導の元、こっそりこのコンピュータ室を抜け出し、同じ階の奥側の音楽室へと進む。
途中、二か所にテロリスト達が監視カメラを配置していたが、横島はカメラに映らない様に、壁を背にカニ歩きや、しゃがみ歩きなどをしながら掻い潜る。
桐絵たちも横島の真似をしながら、何とかカメラに映らずに音楽室までたどり着く。
「横島、ちゃんと助けるのよ」
「横島さん気をつけて……」
「まっかせなさい!」
桐絵は相変わらずの上から目線で、玲は心配そうに横島に声をかける。
横島は桐絵達を楽器などが収納されてる音楽準備室に匿い、内側から鍵をかけさせる。
更に、外から文珠で結界を張った。
これでテロリスト達は音楽準備室に入る事も、銃器程度で攻撃したとしてもビクともしないだろう。
横島は迅と文珠による念話をしながら移動する。
(迅、小南達には音楽準備室に隠れて貰ってる。結界も張ってるから万が一テロリストにバレても小南達は安全だ)
(流石だな。こっちもレイジさんに来てもらってスナイパーの確保は出来た。体育館への狙撃準備ももうすぐで終わるだろう)
(俺はテロリストの司令室になってるだろう放送室の連中をノシてから、直ぐに大講義室へ向かう)
迅の方も女子生徒達の解放に向かって準備が整えつつあった。
横島が次の作戦に移ろうとしていた時、音楽準備室で桐絵達は……
「……先輩達気にならないんですか?横島先輩の事を」
藍が皆に横島の事を問いかけていた。
「木虎、あんた何にもわかってないわね。仲間を信じられないならボーダーやめちゃいなさい」
そんな藍を呼び捨てにし桐絵が厳しい視線と言葉を投げかける。
「小南先輩、お言葉ですがあの人を見てもですか?」
「だから、何にもわかってない甘ちゃんだって言ってるのよ。あの程度の事ならうちのボス(林藤支部長)やレイジさんだって出来るわよ。そりゃ声真似とか厳しいかもしれないけど、特殊部隊相手にだって素手で何とかするわ。あんた達は知らないだろうけど、今のボーダーの前はね。ベイルアウトもなきゃ、トリガーも今の様な高性能じゃなかったのよ。下手をすれば生身でトリオン兵を如何にかしないといけない事だってあった。それでも皆戦った。5年前の大規模侵攻の際は、皆街を守ろうと必死に戦って半数は亡くなったわ。それにボーダー設立した頃のメンバーは皆何かしら過去にあった人ばかりよ。だから横島にどんな過去があるのか見れば何となくわかるわ。普通じゃないって、でもいいじゃないそんな事。こうやって私たちのピンチに駆けつけてくれる仲間よ。それだけで十分なのよ。それにうちのボスや迅、レイジさんも信用してる。この私だって認めてる奴よ。なんか文句ある?」
桐絵は鋭い視線を向けながら、藍にこう語った。
桐絵は旧ボーダーの19人のメンバーの一人だった。
当時小学生だった桐絵はその頃から立派にボーダーの戦闘員を務めていたのだ。
その頃を知る桐絵にとって、今のボーダーの環境が如何に命の危険も少なく良好であるか、裏を返すと生ぬるい環境だという事を理解している。
桐絵は横島の過去を聞かされてはいなかったが、普段お茶らけた横島がたまに見せる雰囲気が、旧ボーダーのメンバーと重なって見えていたのだ。
「………それは」
藍は桐絵の話に返す言葉が見つからなかった。
「………」
「………」
玲や文香にも、桐絵の言葉が重くのしかかる。
音楽準備室では絶賛シリアスな展開中に……
「こんちは、ピザの宅配っす。あれ?扉を開けて、閉めて、開けて、閉めて、開けて閉めたら入れない!?」
新喜劇ギャグを入れながら、横島は放送室へと乗り込んでいた。
「だ、誰だ!?はっ?は、裸?」
「何でパンツ一丁なのだ!?うわーーーっ!!」
「なんだこの変態は、変態の癖に!!ぐぼっ!?」
「がはっ!?変態の癖に、強……い……」
放送室に居た4人のテロリストはあっという間に横島に縄でぐるぐる巻きのす巻きにされる。
……しかも、どうやら横島はまだパンツ一丁だったようだ。
もう一話でお嬢様学校編終わりです。