誤字脱字報告ありがとうございます。
今回のランク戦の終盤です。
「横島隊長、トラッパーのトリガー、スイッチボックスのトリオン修復セットを利用し、ガラクタから砲身を作成。グラスホッパー2枚による反発力を利用しトリオン爆弾を発射し、まさかの砲撃です。諏訪隊はあえなく全員を爆発に巻き込まれベイルアウト」
実況の三上歌歩は再度、諏訪隊が全員撃破された過程を簡単に説明する。
「やばいな横島の奴、そこらへんのガラクタとグラスホッパーとスイッチボックスで簡易砲台を作りやがった。どんな発想してやがるんだ?しかも発射位置が分かりにくい代物だ。荒船隊はまだ横島の位置を把握できていないだろう」
乾いた笑みを浮かべながらこう説明する冬島の目は真剣そのものだった。
「確かにそうですが、横島隊長も荒船隊の位置を正確には把握していないはずです」
嵐山は冬島の説明を捕捉する。
「そうだ。今はな、だが荒船隊は位置がばれるぞ。あいつ、諏訪隊に砲撃する前に、四方八方に砲撃していただろう。しかも爆発を起こしていない。俺の予想ではマイン(地雷)だ」
冬島は含みのある顔でそう言った。
オペレーターの迅は横島に砲撃の成果を報告する。
「横島、諏訪隊は全員ベイルアウトだ」
「二回の砲撃修正で当たったか、ラッキー。命中精度は流石に低いしな、もうちょっと改良が必要だな」
「ここまでは上出来だ。だが、荒船隊は全員バックワームを起動したままだ。しかも、今のお前の砲撃で大幅に移動をするだろう。相手の位置が掴みにくいな。何れにしろ相手はスナイパー編成だし接近戦は避けるだろうが、一応接近戦にも気をつけてくれ。荒船は元アタッカー上位で弧月の使い手だ」
「でも、さっきまで上の方陣取ってたんだろ?しかも諏訪っち先輩達を射撃してたし凡その位置はわかる。それにもう罠も仕掛けた」
迅と横島が通信で話していた所、上方で爆発音が四方八方で鳴り響く。
「くふふふふふっ、そんじゃ、狩りを始めるか!」
横島は相変わらず悪い顔で笑っていた。
荒船隊は現在の位置が横島にバレている可能性があるとして、移動を開始していたのだが……。
遠方から爆発音が鳴り響く。
「加賀美!今の爆発はなんだ!?」
「半崎君の近くで爆発が!この反応マイン系の地雷かトリオン爆弾よ。でも本人に直撃していないわ」
「なっ?横島がそっちに行ったのか?あり得ない、諏訪隊と位置は全くの正反対だぞ?また、爆発音か!?」
「今度は穂刈君の近くで爆発が!?今度も直撃じゃないわ。ノーダメージよ」
「どういうことだ?……ぐっ、俺の方でも直撃じゃない。10mは離れてる……どういうことだ?」
荒船隊は混乱していた。
諏訪隊がどのように全滅させられたかもわからない状況で、周りで次々と起こる爆発に爆発音が混乱に拍車がかかる。
この様子を見ていた実況席では、冬島が説明を始める。
「横島の奴は、マイン系の地雷を荒船隊が諏訪隊を射撃している間に、既に荒船隊の凡その位置を把握していたのだろう。諏訪隊を攻撃する前に周りに、先ほどのグラスホッパーを使った砲撃で地雷をまき散らしていた。しかも地雷の感度を最大限に設定して凡そ10m近づくだけでも反応するようにな。目的は殺傷じゃない。荒船隊の現在地を知るためだ。トラッパーは自身が設置したトラップが発動の有無を感知できる。爆発位置で荒船隊の位置を捉えるつもりだ。あいつは地雷をソナー替わりにしやがった。荒船隊の連中、こりゃ、捉えられるぞ」
「横島隊長のグラスホッパー砲が半崎隊員を捉えました。爆発に巻き込まれベイルアウト。やはり、地雷はソナーの代りだったようです」
冬島の説明が終わると同時に、荒船隊の半崎が横島のトリオン爆弾砲撃でベイルアウトした事を三上歌歩はコールする。
「それにしても、これだけのトリオン爆弾を生成できるとは、横島隊長のトリオン量も凄いですね。下手をすると出水隊員に匹敵するのではないでしょうか?」
嵐山はこの光景に自分の隊だったらどう対応するかを考えながらも、こんな質問を冬島にする。
「それは分からん。トリオン爆弾やマイン(地雷)はトリオンを圧縮させ、メテオラに比べトリオン量が少なく爆発威力が高くなっている。出水が一撃で50発のメテオラを発射させるよりも威力の高いトリオン爆弾をそれ以上の数を余裕で作れる。確かにトラッパーのスイッチボックスはその性質上トリオン量を多く持っていかれるが、その代わり一つ一つのトラップに割くトリオン量はかなり小さい。まあ、そもそもトラッパーは専用トリガースイッチボックスを使うためにトリオン量が多い人間ではないと務まらないがな。というか三上、グラスホッパー砲って名前センスあるな。それに付け加えて、グラスホッパー迫撃砲とでも呼ぶとするか」
冬島は嵐山の質問に答えながらも、三上が簡易的に横島の砲撃に付けた名前に乗っかり、正式に命名する。
「次に、穂刈隊員、グラスホッパー迫撃砲による絨毯爆撃の様な砲撃にあえなくベイルアウト、荒船隊長はその間に横島隊長のソナー地雷源を抜けたようです」
「荒船隊長は地雷原を抜けましたね。しかも横島隊長の位置に真っすぐ進んでいます。荒船隊長は元アタッカー上位、接近戦もこなせるスナイパーです。接近戦に移行するでしょうか?」
「まあ、こんだけ派手に砲撃すれば、位置もバレるだろう。だが、位置が判明するのが随分と遅れたのも、トリオン爆弾の半透明の特性と、山なりの砲撃、グラスホッパーによる射出で音が無いからだろうな。この状況では接近戦しかない。接近に成功したら荒船が一矢報いる事ができるだろうが、今までの横島の行動を見るに相当狡猾な奴だからな……何か仕掛けているだろう」
「なんでしょうか?横島隊長が陣取る家の庭に巨大な砲身が見えます。砲台でしょうか?」
荒船が迫る中、横島は先ほどまでの打ち上げ花火の様な筒を全て片付け、何やら巨大な砲身を家の中から取り出していた。
「こ、これは、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じぇねーか。完成度たけーな、おい」
横島が高笑いをしながら掲げる巨大な砲身を見ながら、目を見開き、その砲身の姿に感嘆の声を上げる冬島。
人間の二倍はあるだろうシンプルな作り砲身の根元には、これまた巨大な玉が左右に一つずつ付いていた。見る人が見れば、卑猥なオブジェにも見えるだろう。
「冬島隊長、それは何でしょうか?大砲の一種でしょうか?」
「ん、んん。失礼、いや、流石にあのサイズの物を簡易で作って動かせないだろう。しかもグラスホッパーを射出に使っている以上、あのサイズは意味がない。さらに言うと、あのデカい砲身のせいで自分の位置をばらす様なものだ。」
冬島は咳ばらいをしてから、こう説明する。
「荒船隊長、一直線に横島隊長が陣取る家へ向かい、家の屋根に飛び移る。横島隊長はまだ気が付いていない様子」
三上は荒船が迫る様を実況する。
だが、横島の口元はにやりと歪んでいた。
荒船は横島が陣取る隣の家の屋根に飛び移った瞬間に姿を消す。
そして、トリオン供給基幹損傷でベイルアウト。
横島はこの位置に落とし穴トラップを仕掛け、荒船が見事に落とし穴に嵌ったのだ。
「荒船隊長、ベイルアウト?横島隊長、ここにもトラップを仕掛けていました」
三上歌歩は荒船が横島に倒された事を実況する。
横島がネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を手に、勝利の高笑いをする様が映し出され、その姿に観客席ではざわめきが起こる。
「あの巨大な砲台は釣りか……。荒船に横島はまだ自分は砲撃の準備をして、荒船が接近している事に気が付いていないと思わせた。荒船は荒船でここしかチャンスが無いと思い、一気に迫ったのでしょう。トラップを設置しているかもしれないという頭も荒船にきっとあったはずだ。だが横島はあの巨大な砲台を見せる事で荒船の心理をうまく誘導した」
冬島は冷静に判断しこう結論づける。
「横島隊完勝。撃破6点、生存点2点の合計8ポイントで勝利です」
三上歌歩はここで横島の勝利を宣言する。
「横島のトラッパーの新戦法は凄まじい。トラッパーからも積極的に攻撃に参加できることが示された。他の隊もトラッパー対策を密に取る必要性が出て来た」
「冬島隊長もグラスホッパー迫撃砲を使いますか?」
「余裕があればだ。本来トラッパーの役割は隊員の補助と敵の妨害だ。それは今後も変わらないだろう。横島隊は1人だからこれを実行せざるを得なかったともいえる。それにこれには最大の欠点がある。素材集めからそれらを加工するためにスイッチボックスで作成という作業時間が必要だという事だ。横島は自分が不利な転送位置をうまく利用し、安全な場所と十分な時間を捻出した。いや……元々この位置に移動し、この作戦を実行しようとしたのかもしれない。このマップで上から狙い撃ちされるのにわざわざ下方に行くような奴はいないからな。そのためのこのマップ選択だったのかもしれない」
冬島は唸る様に説明する。
「ですが、トラッパーを放置できないと示された事になりますね」
「ふう、そうだな。だが、真っ先に狙われるとか、勘弁してくれ」
冬島は自分自身に置き換えて率直な言葉をため息交じりに出す。
「嵐山隊長はこの試合について何かありますか?」
「横島隊長は強い。この一言に尽きます。新戦術に目が行きがちですが、作戦遂行能力から心理戦に至るまでセンスを感じます。A級でもここまで出来る人がいるかはわかりません。何れ戦うことになるので対策を練る必要がありますね」
嵐山は木虎藍の「横島先輩は普通じゃない」という言葉と横島の強さを画面越しではあるがその肌で十分感じ取っていた。
「これでB級中位ランク戦第6回夜の部が終了いたします。次回の対戦相手が出ました。勝利した横島隊は、B級中位那須隊、香取隊、柿崎隊との対戦となります。同じくB級中位荒船隊、諏訪隊は鈴鳴第一との対戦です」
こうして本日のランク戦が終了する。
「はぁ、圧勝かよ。後で諏訪さんに突っかかられそうだなこれは」
迅は作戦室で帰還した横島に呆れたように声を掛ける。
「というか、次の試合、那須隊と柿崎隊とって、玲ちゃんとくまちゃんと、そんであの真面目お嬢様かわいい照屋ちゃんと戦わないといけないってこと?女の子を爆破とか!?悪役もいい所だぞ!!次休んでいい!?」
横島は何故か次の試合について、迅に迫る。
「大丈夫だ。横島、これ以上お前の好感度が下がったとしても、―100が―101になるだけだ」
「俺ってそんな悪評が!?某国の陰謀じゃよ~~」
横島は周りの女子からの評価を分かっていなかったようだ。
なんか、酸っぱい顔をして迅に縋りつく。
「トリオン体が爆破されるだけで、本人はピンピンしてるから気にするような事じゃないだろ?」
「いやいやいや、それでも玲ちゃんとか照屋ちゃんを爆破とかできないぞ!!あっそうだ!チチ、シリ、フトももを揉んだらベイルアウトとかいうルールに変えない!?」
「横島、何言ってるんだ?お前が永遠にボーダーからベイルアウトされるだろ」
相変わらず緊張感が無い2人であった。
次はいよいよ、横島の本領発揮のランク戦かな?