横島は迅に説得と言う名の口車に乗せられ、次回の近界遠征に参加するためにランク戦に参加することを決める。
だが、それには問題が多数あった。
先ずは何よりも、横島を入れてくれる隊が無い。
そもそも、早沼支部には隊が無い。
さらには『痴漢・変態・セクハラの横島』のマイナスイメージで名が通ってる横島をわざわざ隊に入れてくれるところなどない。
次に、横島はトリガーを殆ど使った事が無い。
入隊試験の際にちょろっと使った程度だ。
入隊試験はトリオン量測定で高レベルであったためあっさり合格した。
しかし、これでも横島は偽装して抑えてはいたのだが……
どうやら、トリオンと横島が霊能で使用する人体オーラ霊気は同質のエネルギーだったらしく、しかも横島の霊気量は通常の人間の保有している霊気量を遥かに凌駕していた。
雨取千佳に匹敵、または凌駕するかもしれない量なのだ。計測不能になる可能性が高かった。
更に横島は霊気(トリオン)をトリガー無しに自由自在に操り、トリオン体とならずとも、人間離れした身体能力に攻撃能力を有している。
(身体能力については、ギャグ体質のデフォの部分が大いに占めている)
迅はそんな横島のデフォルト能力を隠し玉として取っておくために、横島に他のボーダー隊員同様、トリオン体を形成しトリガーを使用してランク戦を行わせる事にしたのだ。
そう言うわけで、横島は改めてトリガーの選定から行わなくてはならなかった。
入隊先については迅が動いてくれていたが、先日玉狛支部で結成されていた。玉狛第2三雲隊に加入させるつもりはなかった。
なぜならば、三雲修、空閑遊真、雨取千佳の3人の成長にマイナスとなり得るからだ。
横島の変態的なという意味ではない。横島の実力がかなり高い上で、まったくセオリーから外れた戦い方をするためであった。
今期のB級ランク戦は、既に第1戦は終了し、早くても横島のデビューは第3戦からとなるだろう。
三雲隊の今の状況で途中の戦力増強は混乱を招くだけになるという思いもある。
横島のトリガーの選定は、迅は林藤支部長の許可を貰い、玉狛支部で行う事になった。
玉狛支部に入って早々……
「久しぶり、元気だった栞ちゃん!相変わらず眼鏡が似合う!今から近くの喫茶店でデートを!!」
「横島さん、今度セクハラしたらフライパンの刑じゃ済ませないですよ」
横島は一学年下のオペレーターの眼鏡美女、宇佐美栞(17歳)にへたくそなナンパを行いだす。
横島がリビングを通ると。
「げっ、横島!!何で帰ってきた!!とりあえず一発殴らせろ」
「なんでやねん。まだ何もしてないのにーーー!!」
横島をみかけた玉狛支部A級隊員の快活そうな少女小南桐絵(17歳)がいきなり殴りかかって来た。
「これからするんでしょ!あんたは!」
「小南にはなんもしないし、栞ちゃんにはふともも触らせてもらおうかと」
「何で私は何もしないのよ!!」
「何?小南も触ってほしいとか?なんか筋肉だらけで色っぽくないし」
「そんなわけあるかーーー!私だって色気ぐらいあるわよ!!学校ではお淑やかで通ってるのよ!!」
「ぶべしっ!!」
案の定横島は小南桐絵に鉄拳制裁を顔面に喰らい床に倒れる。
小南桐絵はボーダーではこんな感じだが、お嬢様学校に通っており、学校では淑女然と猫を被っており、澄ましていればお淑やかな美少女そのものなのだ。
さらに横島は小南に殴られ床に倒れた所を……。
「さわらせないよ。ふともも」
宇佐美栞は笑顔で倒れた横島の頭にフライパンを振り下ろし、止めを刺す。
「ぶはっ!?」
横島は容赦なく撃沈される。
この二人にセクハラなんて物は実際には行えないだろう。
命がいくつあっても足りない。
まあ、横島は直ぐに復活するが……。
「横島よ、相変わらずだな。俺と雷神丸は歓迎するぞ。また遊んでやってもいい」
カピパラの雷神丸に跨った幼児林藤陽太郎は倒れ込む横島に声を掛けるが、聞こえていないだろう。
どうやら陽太郎だけは横島を歓迎しているようだ。
気を取り直して、玉狛支部のリビングでは、横島、宇佐美栞、小南桐絵、ついでに陽太郎がソファーに座り話し合いが始まる。
「迅さんから聞いてますよ横島さん。とりあえずランク戦用のノーマルトリガーの選定からっと」
「えー、あんたランク戦にでるの?聞いてないわよ。それに横島戦えんの?まあ、クローニンがスカウトしてきたくらいだから、トリオン量はそこそこあるのだろうけどさ」
栞は迅から横島にトリガーの選定をお願いされていたようだが、桐絵は何も聞いていなかったようだ。
そもそもこの二人は横島が平行世界から飛ばされて来た人間とは知らされていない上に、横島の実力も知らされていなかった。
知っているのは、ボーダー本部上層部と玉狛支部の迅と林藤支部長と林藤ゆり、クローニンと木崎レイジだけだ。
「俺だってやりたくないし。なんか迅に無理矢理出ろって言われて」
「もしかしてこんな奴を、修たちのチームに入れるつもり?」
「そうじゃないみたい」
「ならいいけど。ああっ、あんた千佳にセクハラしようとしたらただじゃ済ませないわよ!」
「え!?なに、新しい女の子!?どんな子!?」
横島は桐絵の形相など気にせずに、こんな事を嬉しそうに聞く。
「とってもかわいい子なの。13歳で小っちゃくて抱きしめたくなるの」
栞が頬を少々染め抱きしめる仕草しながら答えるが……
「…………」
横島は急に興味が無さそうにしらける。
この男にもポリシーの様なものがある。
高校生未満は基本的にはセクハラ対象外なのだ。
「なによ。千佳のトリオン量は凄いのよ。あんたなんか一瞬で蒸発よ!」
何故か横島のその反応に桐絵がプンスカしだす。
「話を戻そっか。横島さんはどうせ迅さんの口車に乗せられた口でしょ、迅さんが何を考えてるのか分からないのは何時もの事だし、とりあえずトリオンとトリオン体の説明からするね」
栞は話を進め横島にトリオン体の説明から行う。
トリオン体とはトリオンで作られた仮の肉体、戦闘体と呼ばれるもので、トリガー発動時に生成される。
ボーダー隊員は基本、このトリオン体で戦闘を行う。
トリオン体が傷ついたり、破壊されても生身の本体に影響がないため、戦闘行為による命の危険は無いと言っていいだろう。
さらにトリガーに対応した様々な武装が使えるようになるだけでなく、生身の身体で起きることや感触、体温などが忠実に再現され、生身の時よりも身体能力が強化されたりする。
身体能力の強化は、重火器や戦車の砲撃を防ぐ程である。
しかしトリガーによる武装攻撃に対してはダメージを受ける。
「へ~、やられても肉体は大丈夫なんだ。そんじゃ命の心配はないか……」
「そうだよ。まあ、トリガー切れで強制解除されれば、身体はボーダー本部にベイルアウト(強制脱出)される仕組みになってるから、ボーダー本部が襲われちゃったら意味がないんだけどね。この前の大規模侵攻で実際、ボーダー本部の職員さんが何人か犠牲になられたから」
「トリオンで元の身体を忠実に再現ってマジ?」
「そうだよ。生身の身体と感覚を同じように動かせるようにね、忠実に再現されてるの」
「ということは!!トリオンで裸の姉ちゃんを忠実に作れるってこと!!栞ちゃん!!是非、俺に沢村さんと加古の姉ちゃんと月見蓮さんのトリオン体を作ってくれーーー!!」
また、横島がろくでもない事を言いだした。
「はいはい、そういうのはいいから」
「ふざけるなーーー!!」
「ぐぼばっ!?」
栞のフライパンと桐絵の拳が横島の顔面に同時に突き刺さる。
この横島の扱い、手慣れたものだ。
「続き説明するね。次はトリガーとポジションについてなんだけど」
栞は何もなかったかのように、顔面血だらけの横島に説明を続ける。
こんな異常事態だが、玉狛支部に2カ月滞在していた際はこんな事が日常茶飯事だっため、この状況が横島が居る環境として通常運転であった。
トリガーとはトリオンを動力源とした近界の科学技術群である。
要するに魔力と魔法のような物だ。
武器だったり防具だったり、はたまた、建物や乗り物を形成したり、近界の国々では大規模の者となると太陽を形成したり国土そのものを形成することが出来る代物だ。
ボーダー隊員として使用する戦闘用トリガーは、刀や剣や銃や盾に転用して使ったり、トリオンそのものをエネルギー弾として使用したりする。
ボーダー隊員はある程度、戦闘ポジションを決め、それに合ったトリガーを使用する。
アタッカーなら近接用の刀や剣、槍などのトリガーを使用し、シューターならマシンガンやエネルギー弾を、スナイパーなら狙撃銃といった感じだ。
これらを兼用して運用する隊員もいる。
その他に、トラップに特化した特殊工作兵(トラッパー)や観測手(スポッター)などというポジションはあるが、ランク戦では専門に行ってる隊員は極わずかのみ。扱いが難しくなり手がいないのだ。
「ふむ、流石栞ちゃんわかりやすい」
横島は栞の説明で十分理解したようだ。
「それじゃ、実際にトリガー使ってみよっか」
栞は横島にそう言って、訓練施設へと場所を移動しようとする。
「横島、あんたポジション決めたの?」
何故か小南もついて来て、横島に聞く。
「いや~、どれがいいんだか」
「ふ~ん、仕方がないから私が付き合ってあげるわ。覚悟なさい。ボコボコにしてあげるんだから」
桐絵は上から目線で横島に息まく。
桐絵はこう見えて、ボーダーの中でも最上位の実力者だ。
ボーダーの中で、一人で小隊扱いの隊員は4人しかいないが、その1人に数えられているほどだ。
「横島さんのポジションって決まってるのよ。迅さんがこれにしてくれって……」
栞は苦笑い気味にこう話して、桐絵の耳元で横島のポジションを口ずさむ。
「はぁ!?なによそれ!?迅の奴、何考えてるのよ!!」
桐絵は耳元で栞にそのポジションを告げられ、大いに驚いていた。
私は小南押しですが、ここではどうだか。